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こんにちは。e-Educationフィリピン担当の秦大輝です!フィリピンの首都マニラのスラム街に住む高校生たちに、大学受験対策の映像授業を提供するために日々走り回っています。

ミンダナオ島でのプロジェクトを撤退し、再出発を決意。再度マニラに向けて旅立った経緯は前回の記事でご紹介しました。今回はその続きを書き綴りたいと思います。実は、マニラに到着したその日、思わぬトラブルに巻き込まれてしまったのです。

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プロジェクト撤退、再出発のためマニラへ

到着した空港には、久しぶりの再会を喜ぶ家族。リゾート帰りで楽しそうに思い出を話すカップル。空港のカウンターで職員に怒鳴りつけているおじさん。色々な人がいました。

マニラ空港に3週間ぶりに到着した時はすでに夕方。ミンダナオでプロジェクトを撤退し、再出発という事実がいまだに忘れられない僕は下を向いて、空港の中を歩いていました。

「早く家に帰って寝たい」

そう思って、タクシー乗り場を探して行ったり来たり。道を聞くために英語で話しかけることにハードルがあった英語の出来ない僕は、30分位同じ場所をぐるぐる回っていました。

空港でのある外国人との出会い

「君、何してるの?どっか行きたいの?」

振り向くと黒い帽子をかぶった見覚えのある顔の人が立っていました。さきほど空港のカウンターで職員に怒鳴りつけていた40歳くらいの欧米人のような風貌のおじさんでした。

一瞬ためらいましたが、「タクシー乗り場が分からなくて・・」ということを片言の英語で告げました。するとその方は、イメージと全然違い、笑顔で詳しく道を教えてくれました。

「君、時間ある?せっかくなら僕と話さない?」と、おじさん。このように親切にされることも久しぶりだったので、ちょっと怪しみながらも快諾し、空港出口の横の花壇にこしかけて、話をすることになりました。

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国を超えた友情?あたたかい交流

どこの国の出身か?学生か?フィリピンで何をしているのか?そんな自己紹介まじりの会話からスタート。

話を聞いてみると、彼はオーストラリア出身ということでした。そのときちょうど読んでいたブログにオーストラリアの学校について書いてあったので、教育制度など詳しく教えてもらいました。

また彼は日本の沖縄にも来たことがあるとのことで、僕よりも沖縄に詳しく沖縄の観光地など教えてもらっていました。

そして、彼が大学生時代に、モンゴルで教育関係でのボランティアをしていたことが判明。こんな風に共通点の多いこと、趣味が合うことから、だんだんと親近感を覚えていました。

何より感動したのは、彼の英語が聞き取れないことが分かると、ゆっくり話をしてくれるという優しさ。

疲れていた自分にとって、人のあたたかさに触れる時間。見ず知らずの海外の方との打ち解けられたことが嬉しくて、気づくと1時間近く話し込んでいました。

彼が経験したマニラ空港での最悪の事態

「さっきカウンターで怒鳴りつけてたけど、何してたの?」 満を持して、ずっと気になっていたことを質問しました。すると、彼はその話になった瞬間、顔を曇らせ下を向いて、それに至った経緯を話し出したのです。

ダイビングのために訪れていたフィリピンで、有数のリゾート地ボラカイ島からの帰宅中。経由地点のマニラ空港の荷物の受け取りで、自身の荷物がないことに気づきました。

そこで、航空会社に問い合わせると、違う便に彼の荷物を乗せてしまい。その中に入っていたクレジットカードや重要なものも手元にない状態になってしまったそうです。

そのせいで、乗り継ぎの飛行機にのれずに、マニラの空港外で途方にくれていたということでした。しかし、仕事の日がせまっているので、早く飛行機にのらないといけないという事情。

航空会社のカウンターにいた係員に事情を話しても、代わりのチケットも発行されず、相手にもされないので、怒鳴りつけていたそうです。

「最悪の1日になった・・」、そう語る彼の顔は今にも泣きそうな顔になっていました。その後も、詳しく状況について、語ってきました。

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助けて欲しい・・5万円貸して欲しい

「1つお願いがあるんだ・・お金を貸して欲しい」 そう言って彼は、飛行機のチケット分の5万円を貸して欲しいと言ってきました。

「出た!金っ!無理!・・」 そう思いました。続けて彼は、その5万円をどのように返済するかの詳細を話し始めました。

それは、彼の大切にする時計を僕に預け、入金を完了した時点でオーストラリアの実家まで送るということに。そして、その時計が家族からもらった大切なものであるということを伝えてきました。

怪しいとは思っていたのですが、長い時間話し込んでいたこともあり、かつ、返済方法が詳細につめられていき、だんだんその疑念が薄れていきました。

疲れていたことや、僕自身が思考停止していたということもありましたが、彼のこの言葉が僕の決断を促しました。

「僕は今日、人生最悪の日を送った。見ず知らずの国で信じれる存在がいないうえに、ないがしろにされた。ただ目の前にいる君と話しているうちに心が軽くなった。君のおかげで、人に失望しなくて良くなった。人生で忘れられない日になった。そんな君を裏切れる訳が無い。」

そして、続けて彼はこう言いました。

「お互い、人情を持った人間として、僕を信じて欲しい、僕も君が時計を返してくれることを信じている」

僕は、ついにはATMから5万円を引き出していました。

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もちろん僕はこう伝えました。「君も知ってると思うけど、僕は学生だからあんまりお金がないんだ。この5万円は、この渡航のために一生懸命働いたお金。絶対返してほしい。」

「もちろん!人生最悪の日が君のおかげで、最高の日になった。僕は人間に失望しなくてよくなったんだ!オーストラリアに来たときはすぐに僕に連絡してほしい。最高のおもてなしをさせてほしい。」

そして彼にお金を手渡しました。不安もありますが、最後の言葉が存在意義を悩んでいた自分の状況には響きました。

何かすごくいいことをした。そう思ってゲートまで見送って、さよならをし、家路につきました。

返ってくることのなかったお金

約束の返済予定の2日、さらに1週間近く経ちました。結局お金は帰ってくることはありませんでした。僕は詐欺にあったということをその時初めて実感しました。

お金が無くなったことは痛かったです。5万円とは言っても、学生の自分としては大金でした。こつこつ働いて貯めたお金でした。

しかし、なによりそのときの僕は、人間に失望していました。世界には良心につけこむ悪い人はいないと勝手に思っていたのです。

地球の歩き方を読んで、だまされる訳ないとタカをくくっていました。しかし、現実は違いました。詐欺師は人を騙すプロフェッショナルでした。

「何が人情だよ。ばかみたいじゃん・・」

部屋で1人になったとき、涙が出ていました。怒りというより、失望でした。

ふと、見たFacebookのウォールには、出席できなかった飲み会や同窓会の写真がアップされていました。

その下には友人とその彼女がディズニーランドに行っている写真。そして、サークルで旅行に行ってる写真。日本ではスノボのシーズンも始まっていました。

みんな日本で、信頼できる友達と純粋に大切なときを過ごしている。もし、僕が日本にいたら、見ず知らずの信頼できない人からこんな仕打ちを受けないですんだだろうなと思いました。

結局、僕はこの国でひとりぼっち

「何で、ひどい目に会ってまで、異国のためにやってかないといけないの、かわいそうじゃん。もっと波風たたないで平穏にいきたら幸せかな・・」  初めて日本に帰りたいと思いました。

撤退や詐欺、悪い事が続いたこの日の自分は、3週間前の決意・目的なんてかすむほど落ち込んでいました。自暴自棄になっていました。

悪いことは続くものだ。そう思いました。

哀愁

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いつかではなく今! 逃げ続けてきた僕が大学生活の残り期間全てをドラゴン桜にかけた理由(青山学院大学4年・秦大輝)

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