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こんにちは!e-Educationミンダナオ島プロジェクト担当の佐藤建明です。「教育開発」という夢を掲げ、フィリピンのミンダナオ島にて映像授業を活用した教育プロジェクトを展開しようと奮戦しております。

前回の記事では、より現地に根ざした視点を意識し、現地のオープンハイスクールプログラム(OHSP)に飛び込み訪問したことをお話いたしました。今回は、そのOHSPで僕が確信した「ローカルニーズ」と、現地での新たな出会いに関してお話させていただけたらと思います。

オープンハイスクールプログラム(OHSP)を飛び込みで訪問

秦くんがマニラに飛んだ翌日。プロジェクトの再出発を決意した僕は、現地の高校ですでに実施されているOHSPに飛び込みで訪れました。

OHSPとは、正規教育課程からドロップアウトした高校生(ドロップアウトの理由は貧困や病気、妊娠や育児など様々)を対象とした”Alternative”な学習機会を提供することを目的としたフィリピン政府による教育プログラムです。

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現地のオープンハイスクールプログラム(OHSP)の様子

このプログラムでは、ドロップアウトした生徒に対して、”モジュール”と呼ばれる簡易テキストを毎週土曜日に現地の高校で配布。生徒らはモジュールを用いて「独学」で教科学習を進めるのです。

彼らの多くは、平日は仕事や育児に追われていますので、夕方や夜、あるいは仕事が休みの日に「モジュール」を使って学習します(中には「モジュール」を職場に持って行って勉強している非常に意志の強い生徒もいます)。

OHSPは、様々な家庭環境や事情があるにせよ、なんとか勉強を続けようとする生徒にとって画期的なプログラムだと言えるでしょう。

OHSPで発見した2つの問題点

ところが、いくつかの高校のOHSPを巡りながら、先生や生徒に話を聞くうちに2つの問題点に気がつきました。それは以下の通りです。

  • 生徒には「生授業」に参加する機会がないこと
  • 「モジュール」が分かりにくいこと

OHSPは、たしかに”Alternative”な学習機会を提供することを目的としていますが、生徒は「モジュール」を使って独学するのみで、先生が「モジュール」を解説してくれるような「生の授業」に参加する機会はありません。

さらに、勉強の頼みの綱であるはずの「モジュール」がとてもわかりにくいのです。その理由は以下の2つです。

  • すべて英語で書かれていること
  • 解答プロセスがかなり簡略化されていること

わかりにくい「モジュール」

1点目、在来言語が約2,000も存在する多言語国家フィリピンでは、英語が学術言語・公用語として定められているので、当然「モジュール」も英語で書かれています。

とは言え、全ての生徒が英語に堪能なわけではないので、通常のクラスでは、先生は生徒が理解しやすいように現地語と英語をバランスよく用いながら授業を進めます。

ところが、OHSPの生徒にはそうした「生の授業」に参加する機会はないので、英語のみで書かれた「モジュール」だけで理解を図らなければなりません。

さらに2点目。「モジュール」は正規履修カリキュラムに則り、全教科・全科目を全学年分網羅している全国共通のテキストです。様々な例題や演習も記載されていますが、問題なのは「肝心の問題解説が非常に乏しい」ということです。

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解説に乏しいモジュール

みなさんも、学生時代、数学の演習なんかをやっていて、解説を見てもよくわからない問題に遭遇し、なんとも歯がゆい思いをしたことがあるのではないでしょうか。

OHSPの生徒は、全て英語で書かれた、しかも解説に乏しい簡易テキストを用いながら、「自力で」学習を進めなければならず、彼らの学習環境は非常に厳しいと言えます。

「ローカルニーズ」に根ざした「映像授業」の可能性

僕は先生や生徒へのインタビューを続けるうちに、OHSPとe-Educationプロジェクトの相性は抜群なのではないかと考えました。僕が考えた映像授業のコンセプトは次の通りです。

「モジュール」をベーステキストにして、講師は解答プロセスに徹底的に重きを置いた「モジュール」の解説講義をします。もちろん講師は、生徒が理解しやすいように、現地語と英語を上手く使い分けて話すこと。そして、時には現地ならではのジョークなんかも織り交ぜて、画面越しに生徒をモチベートする。

というシンプルなもの。とは言え、両者は「全ての若者に教育の機会を提供する」という目的を共有していますし、パブリックサービスとして全国で展開されているOHSPを、e-Educationの映像授業を活用してカスタマイズできればどうかと考えました。

そうすれば、将来的には全国レベルでフィリピンの教育状況を改善でき、さらにe-Educationプロジェクトにとっても新しいステージへの挑戦になるのではないかと考えたのです。

そして何より僕自身の「教育開発」という理想に向けて、より大きな一歩を踏み出せると考えました。

OHSPのパイオニア「アクロ校長」現る!

僕は早速、この新しく考え出した映像授業のコンセプトを、OHSPが行われている現地の高校にプレゼンして回り、4つの高校から賛同・協力を得られることになりました。

そんなある日、プロジェクトの実施に向けて現地の高校を駆け回っていた僕は、とある高校で、カガヤンデオロで初めてOHSPを導入したアクロ校長に出会ったのです。

アクロ校長は現地の先生方や教育局からの人望厚く、教育にとても強い情熱を持っている兄貴肌な先生です。

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熱血アクロ校長(真ん中の白いシャツの方)

アクロ校長と僕は、OHSPとe-Educationプロジェクトのコラボに関して話し合い、早速プロジェクトの実現に向けてすぐ動き出そうと意気投合したのでした。

現地のOHSPで「ローカルニーズ」を見出し、具体的に固まりはじめたプロジェクトコンセプト。次回は、そのコンセプトを元に、早速トライアル授業を行ったことに関してお話させていただけたらと思います。

本日もご愛読くださり、誠にありがとうございました!


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