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こんにちは!e-Educationミンダナオ島プロジェクト担当の佐藤建明です。「教育開発」という夢を掲げ、フィリピンのミンダナオ島にて映像授業を活用した教育プロジェクトを展開しようと奮戦しております。

皆さんは「二宮金次郎尊徳」少年の銅像をご覧になったことがあるでしょうか。薪を担いで読書に勤しむその姿は「勤勉」「倹約」の象徴として多くの日本人に親しまれてきました。

しかし、意外にも彼が成人してからの偉業に関しては、あまり周知のものではないかと思われます。天保の大飢饉の際、彼は「報徳金」という共済基金を立ち上げ、小田原農民4万人を救った極めて優れたプロジェクトリーダーだったのです。

立ち上げ以来掲げてきた二宮尊徳の精神

僕は昨年の秋に、ミンダナオ島でプロジェクトを立ち上げて以来、ずっと二宮尊徳の座右の銘を、自身の銘としても掲げプロジェクトに取り組んできました。

その座右の銘とは、論語の一節にある「己に打ち克てば、天下はその徳に従う」です。大意は「自分の心持ち、心構えさえしっかりしていれば、できないことはない」というもので、なんだかたいそうなことを言っているように思えます。

しかし、この言葉で何度、自分を奮い起こしたでしょうか。

プロジェクトが上手く進み、気が抜けそうなときこそ、この言葉を思い出して自分を律します。また一方、現地チームがなかなかまとまらず、孤独と不安でもうやめたくなることも多々ありました。

そんな時にもこの言葉を思い出し、「リーダーの自分が毅然としていなければチームは動かない」と自分を鼓舞しました。

前回の記事は、現地コーディネーターが続々立ち上がり、プロジェクトの「自走化」に向けて大きく前進したことついて書きました。現地コーディネーターは、プロジェクトを進めていくために考え出した自身のアイデアやプラン、教育に対する「想い」に誇りを持っています。

そして僕自身も、自分の確固たる「想い」を持ちながらプロジェクトに取り組んでいます。そんなこだわりを両者が持っているからこそ「衝突」もあります。今回はそんな現地での様子に関して書かせていただけたらと思います。

コーディネーター ジョジョさんとの「衝突」

実は先日、カミーギン島コーディネーターのジョジョさんと一悶着ありました。カミーギン島でもいよいよプロジェクトが本格始動するにあたり、全島内のOHSPコーディネーターと教育局長を招いた全体オリエンテーションを企画していた際のこと。

準備段階では、自分とジョジョさんはその企画の詳細やコンセプトについてしっかり「理解した」状態だと両者ともに思っていました。

そして残りの準備や企画、参加者の招集などは現地コーディネーターのジョジョさんに一任し、僕はカガヤンデオロ現地チームで起きた問題を解決するために島を後にしたのです。

カガヤンデオロでの問題解決や、新たに加わった撮影・編修に協力してくれるメンバーと度重なる打ち合わせなどをしていた僕は、ついカミーギン島をジョジョさんに任せっきりにしていました。

言語の壁、まさかのオリエン断念

そして、カミーギン島全体オリエンテーションの直前になり、重大な問題が露見しました。結局、全体オリエンを11月に延期せざるをえなくなったのです。

カミーギン島教育局長や島内の教育関係者への大きなインパクトを与えることのできるビッグチャンスを不意にしてしまったジョジョさんの落胆はどれほどのものだったでしょうか。

問題の原因は、「言語の壁」と言えばそれまでです。これまで毎週、両教育局を往復しながら直接顔を突き合わせて交渉していたことで、互いの微妙なズレを毎回微調整できていました。

しかし、今回はメールや電話ベースでの確認が続いてしまい、いつの間にか僕とジョジョさんの間で、大きなアイデアギャップができていたのでした。

事実確認や責任の所在、そして事態改善のために何度もメールや電話で議論・確認しましたが埒があかない。そのため、思わず感情的になる場面もしばしばでした。

結局、僕とジョジョさんの議論は、カガヤンデオロ現地コーディネーターの熱血アクロ校長に間を取り持っていただき、なんとか表面的には収束しました。

共同代表カイトさんに気づかされた大事な視点

e-Education代表のカイトさん(三輪開人)には、これまで何度も助けられてきました。今回の一件をご相談した際、カイトさんは次のことを僕に気づかせてくれたのです。

「国際協力の場面にトラブルはつきもの。和解交渉でとりわけ大事なのは相手への『共感』と『尊敬』だ」と。

僕はプロジェクト全体の成功を焦るあまり、現場一人ひとりの関係者への、とりわけ一緒にプロジェクトを作り上げている現地コーディネーターへの協働」の姿勢をいつしか忘れていたのです。

いざ、カミーギン島へ

ジョジョさんにどんな顔をして会えばよいのかわかりませんでした。しかし、僕は「共感」と「尊敬」の姿勢でとにかく臨んでみようとカミーギン島に向かいました。

いざ、ジョジョさんのオフィスに着き、ぎこちなく挨拶をして今回の一件を謝ると、ジョジョさんがニッコリこんな一言を。

まあ、とりあえずバナナを食べようじゃないか。

僕は思わず爆笑してしまいました。その後の和解交渉と今回の事実確認、そして次回の成功に向けた議論が非常にスムーズに行ったのは言うまでもありません。まさに一本取られました。

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へんなプライドに拘って、責任の所在をなすりつけるような一方的な姿勢では物事は進みません。「共感」と「尊敬」。これまでは、とにかく自分が頑張ってさえいれば周囲はついてくるものと、どこかでそんな「甘え」がありました。

「己に打ち克てば、天下はその徳に従う」

二宮尊徳は、村民の怠惰、役人の反発にも屈せず、「寛大な心」と「強烈なリーダーシップ」で農地改革を推進し、天保の大飢饉を乗り越え、4万人の小田原農民を餓死から救いました。

僕は「己に打ち克つ」というのは、単に自己を律するだけでなく、チームのあらゆる失敗や反発も呑み込む「度量の大きさ」「寛容さ」に通じるのではないかと今は考えるようになりました。

それは相手をどこまでも「思いやる」姿勢でしょうか。

ミンダナオ島プロジェクト本格始動!

ミンダナオ島プロジェクトは全国展開されているOHSPというパブリックサービスとの協働プロジェクトです。そのため学校現場の先生方と教育局を動かすことが何より不可欠です。

先日、アクロ校長の強烈なリーダーシップの下、カガヤンデオロ全OHSPコーディネーターと地方教育局博士らを招いた全体オリエンテーションを実施しました。

そこでのプレゼンが功を奏し、なんと来週、地方教育局(14の市教育局を統括する上位機関)の全体会議で総勢200名の前でプレゼンさせていただくことになったのです。

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先日の全体オリエンテーションにて

またカミーギン島でも、教育局長の直々の指示のもと、ジョジョITコーディネーターを中心に、e-Educationプロジェクトのコンテンツ作成などに対し、島内全校の教師を動員できる体制が整いました。

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NPO法人Class For Everyone様から寄贈いただいたPC

ミンダナオ島プロジェクトはまだまだ始まったばかりです。しかし、プロジェクトに対する現地の「オーナーシップ」は日々大きくなっています。

引き続きご声援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。


途上国の教育課題を若者の力で解決する

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