Voyage sekiguchi

「就職活動」

社会人であれば、きっと誰もが通ったであろう学生時代のビッグイベント。

「学生の時、いちばん忙しい時期だった」と大勢の人たちが語る中、日本から遥か遠くにあるアフリカのソマリアに心を寄せる大学生がいます。

名前は関口詩織さん。就活や卒論など多忙な学生生活を送りながら、日本ソマリア青年機構の代表として、日々活動を続けています。

「正直、紛争地に対して、学生だからできることというものはほとんどないんですよ」

忙しい。力が足りない。それでも、彼女がソマリアに想いを馳せ、活動に打ち込む理由とは?

関口さんの想い、そして素顔に迫ります。

(聞き手:熱田紗耶)

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ーー国際協力を始めるきっかけを教えてください。

高校生の頃から人の役に立てる仕事につきたいと思っていました。

そんな関心から、日本は法治国家なので、国内で人を助けるためにはまずは法律を学ぶことが重要だと考えていました。そんな高校3年生の夏、シリア内戦が始まって1年が経ち、内戦により日本人のジャーナリストの方が亡くなりました。

その事件の影響で、TVではシリアのドキュメンタリー等の番組が放映されていました。その番組を見てシリアの惨状に気づき、日本国内は法治国家だから法律を学ばないと人を助けられない、と考えていた私にとって、法の秩序のない中で人が苦しんでいる状況が存在していることに初めて気が付きました。

日本国内で人を助けたいと思っていた私にとって、国外のさらに困っている人達、支援へのアクセスが全く得られない人達がいることに気づき、紛争地支援に興味を持ち始めました。

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忙しくても、就活中でも譲れない想い

ーー学生生活もあるという忙しい生活の中で、団体に対してどんなモチベーションで活動しているんですか?

私は日本ソマリア青年機構の代表を勤めている傍ら、就職活動中で、卒業論文も書かなければなりません。正直今年の代表を引き受けるか迷ったのですが、続けるきっかけになったのは実際に現地で困っている人を見て、彼らの話を聞いたからでした。

現地に渡航した際にソマリアのギャングからこんな話を聞きました。

「自分たちの状況を助けてほしい。日本ソマリア青年機構は自分達の状況を変えるきっかけを与えてくれた。そしてこの活動が社会に対して行動を起こす希望になっている」

彼らの話を聞き、私達の団体が最前線で責任を果たしていく必要がある、そして覚悟を持って活動していく必要があると実感しました。

就活や学業、団体の活動以外にもやらなければならないことはあるのですが、まずは自分の団体での責任を果たすために、自分の時間はやりくりして可能な限り団体の活動に時間を使うようにしています。

ーー就活は人生の中で大切なタイミングである、という考えもあると思います。それでも団体の活動を優先させる理由はなんですか?

この団体の中で一番共感しているひとつの理念があります。それは「今困っている人達に対して、何かしら今ここでできることをする」ということです。

正直、紛争地に対して、学生だからできることというものはほとんどないんですよ。やはり学生は政治的・経済的な制限があるので、例えば軍に入って何かができるわけでもなく、外交的な手腕があるわけでもないです。

一方で、学生ではない人たちは、紛争地であるシリアやソマリアは国際社会が介入できないほど治安が悪いので、誰も関与できないから関与しない、そう考えている人が多いように思います。

そんな中でも日本ソマリア青年機構は、学生という立場であっても今困っている人達に対して何かしら今ここでできることをしなければならない、という理念を持って活動しています。だから、将来のためにスキルを貯めるために就活をするだとか、将来の準備をする必要ももちろんあると思います。

ですが、今ここでできることを放棄するべきではないなというのは、団体の活動を通じても思っているので、学生であることを通じてできることがあればそれをしていきたいと思っています。確かに就活も大変なんですけどね(笑)

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誇りと実績ある団体を目指して

ーー関口さんの他にはどんな学生メンバーが活躍されていますか?

大学も学年も異なる、いろんなメンバーがいます。

就活を控えている人でも必ず活動に参加してくれていますし、2〜3年生とこれから入ってくる1年生たちも、日本で唯一紛争地ソマリアにアクセスしている、一番困っている人たちを助けることができる、そんな団体で活動しているということにとても誇りを持って活動してくれている、と感じています。

ーー日本で唯一ソマリアにアクセスしている学生団体である日本ソマリア学生機構は、現地でどんな活動をしているんですか?

日本側から現地に対して行う活動として、半年に一回ケニアに渡航しています。渡航の際には、数日間、意識改革プログラムとしてソマリア人ギャングへのワークショップと、ギャングたちが実際に社会に働きかけて、社会に対して自分たちで行動を起こしたという勇気を讃えて、クロージングセレモニーを開く、という一連の流れになっています。

5ヶ月間、私たちが行けない期間に関しては、カウンセリングやスキルトレーニングを行ってます。カウンセリングを行う理由としては、社会の中で爪弾きにされているギャング集団なので、日頃の鬱憤を晴らすために、武力を使ったり犯罪行為に走っているのが現状です。

ですから、そのはけ口として私たちが話を聞くために、一ヶ月間必ず電話をしています。スキルトレーニングは、具体的な職に就くことも社会復帰の一環となるので、社会に出て行く際に必要な物理的な職業訓練だけではなく、社会的な地位を上げる、英語などの語学面もフォローしたトレーニングを行います。

加えて薬物更生プログラムも行っています。薬物漬けで生活が成り立たなくなっているギャングもいるので、薬物依存の状態から更生していけるようなプログラムを他の団体に頼んで開催しています。

あとはライフスキル講座といって、ギャングとしての生き方だけでなくほかのユースリーダーとして活躍していく、という新しい将来像を見せるという活動を5ヶ月間で実施しています。この5ヶ月間の活動と意識改革プログラムが一連の流れとなっています。

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ソマリアでぶつかった壁

ーー関口さんは団体の代表として、どんな仕事をしているんですか?

一連のプログラムの実施運営の管理・統括を行っています。あとは今後の意識改革プログラム実施に向けた更なる議論もしています。まだプログラムを始めて2〜3年しか経っていないので、そのシステムの改善点を出して、課題を踏まえて論理構成を立て直す、そうした議論の主導を行っています。

あとは日々の団体の運営もあります。広報活動や会計であったり、今NPO化も考えているので、法人化するための手続き等を行っています。すべての活動に担当者は就いているのですが、進捗を確認して管理しています。

また団体には、ソマリア人の方も所属しているので、ソマリア側の代表と日々活動の調整を行っています。

ーーソマリア人の方たちと団体を運営していく中で大変なことはありますか?

ソマリアでは、NGOとしてわかりやすい成果を望める活動を好む傾向にあります。例えばスポーツであったり、地域の復興や若者の育成であったり。彼らにはギャングプロジェクトは最初反対されていたんですね。なぜかというと、ギャングは地域の中でも排除されているという事実があるので、犯罪者に対して君たちはアクセスしているのか、という外部からの批判が懸念されていたからです。

また私達日本側としては、地域悪化の原因であり、且つテロリストになってしまう可能性もあるギャングを更生していこう、ということで団体の活動をギャングプロジェクト一本に絞ろうと提案していました。ですが現地のNGO団体は、NGOとしての基盤を強くするためには多岐の分野に携わっていたほうがNGOとして協働しやすいと考えているので、いくつかのチャンネルを持つことが重要であると考えています。

でも、私たちの団体ではひとつの支援に特化したいと考えているので、この部分で現地理解とこちらの意向が合わなかったことがありました。

ーーそれをどうやって解決したのですか?

スポーツプログラムをギャングプログラムの中に組み込むという形で対応しています。その部分はソマリア人メンバーに任せるといった具合に、チャンネルを増やす努力をしています。

このような形で彼らの意見も吸収していますが、こちら側の本来の目的である、ソマリア人ギャングの抱える問題に対してアプローチするというキャパシティも限られています。そのため、できるだけギャングプログラムに対してだけ活動するように促しています。

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私たちにしかできないことを

ーー今後どういったことに挑戦していきたいですか?

団体の継続性を保つことを重視したいです。

後輩を成長させることと、外部に対するプレゼンス(存在感・影響力)を高め、内部の規律を確立していくといったことです。具体的には団体のNPO法人化に向けて動いています。

全体代表の永井が今まで団体内の色々な機能を創出してきているのですが、この部分を根付かせることが私の役割だと思っています。ソマリアへのアプローチに対して、日本ソマリア青年機構が最前線であり、学生が紛争地にアクセスできる唯一の機関だと考えているので、この活動を出来る限り存続させたいという想いがあり、そのため団体の継続性の担保に力を入れたいと考えています。

ーークラウドファンディングに対する意気込みをいただけますか?

今までの意識改革プログラムとスキルトレーニングという2つのみのシンプルな構成でした。ですが、さらにギャングに対して多面的なサポートを行う必要が出てきていると感じています。

現地の職業を斡旋、まではいかないのですが、求人を必要としている仕事や現地の労働事情をリサーチして情報を提供していくであったり、そうした幾つかの発展的なサポートを通じてギャング達に、より多面的なサポートを行っていきたい。

それによってギャング達の社会復帰もしっかりと厚みを持ったものになっていくと思っています。なので今テロリストになっていく直前の人たちに対して、こちらができる最大限のサポートへのお手伝いをお願いしたいと考えています。

あとは募集期限に向けて頑張って活動資金を集めていきたいと思っていますので、応援どうぞよろしくお願いいたします!

(インタビュー終わり)

『VOYAGE PROGRAM』での挑戦

『VOYAGE PROGRAM』は、国際最大規模のクラウドファンディングサービスを手がけるREADYFORが新たにはじめた国際協力活動応援プログラムであり、日本ソマリア青年機構は第一回参加団体に選出されました。

関口さんたちは「自爆テロリストになる前に。ソマリア人ギャングの社会復帰支援」というプロジェクトの成功に向け、現在活動資金を集めています。

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