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「すべての人が、自分の存在の尊さに気付ける世界へ」

優しい笑顔で描く未来を語ってくれたのはエイズ孤児支援NGO PLAS代表の門田瑠衣子さん。

世界には様々な理由から心の中に課題を抱える人が数多くおり、エイズ孤児も例外ではありません。エイズ孤児とは「片親ないし両親をエイズで失った18歳未満の子ども」をさし、現時点で全世界に1780万人いると言われています。

彼らは患者自身に焦点が当たるエイズ支援の陰で、親をなくし、差別を受ける中で、自分を責め、生きる意味さえ見出せなくなってしまいます。そんな彼らが誇りをもって生きていける未来を守るために11年間活動を続けてきた門田さん。

これまでどのような困難を乗り越え、どのような想いを胸に活動を続けていくのか。

門田さんの挑戦、そして素顔に迫ります。

 (聞き手:大竹浩貴)

 

アフリカの子どもたちが未来を切り開ける社会へ

ーーまず、門田さんが代表を務めるエイズ孤児支援NGO・PLASについて教えてください

私たちは「HIV/エイズによって影響を受ける子どもたちが未来を切り拓ける社会を実現する。」をミッションとしています。エイズ孤児の可能性を広げるための教育支援活動、HIV/エイズの理解を深めることで差別解消やエイズ孤児の増加を抑えるためのエイズ啓蒙活動の二つを軸として活動を続けてきました。また、地域と共に活動していくこと、あげる支援だけではなく、彼らが自立できるようにつくる支援を行うことを大切にし、現地リーダーの育成やスモールビジネス支援活動にも力を入れてきました。

ーー「地域・自立」を大切にしているんですね。

そうですね。日本とアフリカということでどうしても物理的に距離は離れてしまい、現地にいる時間は限られてしまいます。

しかし、そこにはメリットもあります。最初の2〜3年は私が現地に付きっきりでプロジェクトを回していたのですが、次第に私が現地にいない時でも彼ら自身で動いてくれるようになり、現地主体の体制がスムーズに出来上がったと思います。

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ケニアで出会った赤ちゃんたち

ーーそんな門田さんが国際協力に興味を持つようになったきっかけは何ですか。

最初に国際協力に興味を持ったのは、大学2年生の時にフィリピンについて授業で学んだことがきっかけでした。自分には関係ないと思っていた途上国の貧困が私たちの生活と隣り合わせであることに気付き、衝撃を受けたんです。

その時から積極的に海外ボランティアに参加するようになりました。今のNGO・PLASの活動の原点になっているのは大学院2年生夏、ケニアに渡航した際に一つのベッドに隔離されるように並べられた赤ちゃんたちに出会った時でした。

「彼らの親は、エイズで亡くなってしまってね。ここで保護してるんだ」

初めて、エイズ孤児を目の当たりにした瞬間でした。彼らのために「何か」しなければと強く思い、帰国直後、同じ思いを持った仲間たちと共にエイズ孤児支援NGO PLASを立ち上げました。

ーー「何か」しなければという想いを持ちつつも、実行に移せない学生もたくさんいると思います。門田さんにはその当時、計画や当てのようなものはあったのですか?

正直、なかったですね。

資金も知識も事業計画もない学生7人で情熱だけで立ち上げたので、相当苦労しました。NGO・PLAS初のプロジェクトはウガンダでの小学校建設だったのですが、最初は全くうまくいかず、本当に苦しかったです。11年間を振り替えってみてもあの時が一番辛かったですね。

でも、あの時、くじけず真摯に現地の人たちと向き合い、一緒に壁を乗り越えられたことは自分の中でとても大きな糧となりました。また、あの時得た教訓は今でも団体の核の価値観として残っていると感じています。

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夢中で走り抜けた11年間

ーー団体設立時の想いやきっかけについて紹介されることの多い門田さんですが、設立からの11年間、長い道のりだったと思います。頑張り続けることが出来たエンジンの原点のようなものはあったのでしょうか。

正直な感想を言ってしまうと、11年間はあっという間だったなと思います。もともと、気付いてしまった問題をほっておけないという性格もあり、目の前にあるエイズ孤児という問題を改善することにひたすら必死でしたね。

あえて原点をあげるとすれば、現地の人たちの前向きな姿勢に支えられてきました。辛い環境にいるはずの彼らが、問題改善に一生懸命取り組む姿をみて、自分もくじけてはいられないなと勇気づけられました。

もう一つは、母親になったということも大きかったかなと思います。母親として、仕事に復帰しアフリカに渡航したときに、エイズに苦しむ彼らの”母親”としての悩みに痛烈に共感したんです。

HIVシングルマザーとして、子どもを一人で育てていくことの不安さ。その愛する子どもを残して、自分がエイズで死んでしまうかもしれない恐怖。彼女たちにそんな辛い思いをしてほしくない。これも活動を続けるうえでの一つの大きなモチベーションでした。

全ての人に命の大切さを

ーーシングルマザーへの支援といえば、今回クラウドファンディングに挑戦する新プロジェクトの支援対象でもありますね。

はい。これまでは就学できないエイズ孤児を支援する活動を中心に行ってきました。しかし、近年、治療薬の普及や啓蒙活動の成果などにより状況は少しずつ改善されてきており、求められる支援も変化してきました。

つまり、入学はできても家庭の経済的理由から卒業することが困難な子どもが増加してきたんです。そのために、今回のクラウドファンディングの対象でもある新プロジェクトでは、HIV陽性シングルマザーが自ら稼いで子どもを学校に通わせられるように、自立できる仕組みづくりをケニア現地NPOと協同して行っていきます。

ーーエイズ孤児が学校に通い続けることが出来るよう、彼らの家庭にも支援の輪を広げていくということですね。

そうです。もちろん、HIV陽性シングルマザーだけでなくエイズ孤児やその親子への支援のための新プロジェクトも行っていきます。

彼らは、エイズ孤児として生きる中で様々な身体的、精神的ハラスメントを受け、心に課題を抱えています。「悪魔の子」と罵られ、虐待を受けることだってあります。

「お父さん、お母さんは僕のせいで死んでしまったんだ」

そんな気持ちを抱えながら、でも誰も味方がいない、相談できない。そんな自己肯定感の低さから「どうせ僕なんて」と頑張ること自体をあきらめてしまう子どもがとても多いんです。

私たちは、彼らの頑張る気持ちを支えるために実績のある現地NPOと、彼らの想い、そして、お母さんたちの不安や悩みも受け止めるカウンセリング活動をもう一つの新プロジェクトとして行っていきます。

エイズ孤児もシングルマザーもすべての人が平等に、自分の命の大切さをかみしめながら生きることのできる未来を創るために、私は活動を続けていきたいと思っています。

ーー最後に10年後の団体、そして門田さん自身のビジョンを教えてください。

団体としては、これまで行ってきた活動、そしてこれから行う活動をケニアやウガンダだけでなくより多くの国、地域に広げていければいいなと考えています。

私自身としては、正直、明確なビジョンのようなものはあえて持たないようにしています。

これまで夢中にやってきた活動と同じように、目の前にある解決しなければいけない課題に対して全力で取り組んでいければいいなと思っています。

(インタビュー終了)

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『VOYAGE Program』での挑戦

『VOYAGE PROGRAM』は、国際最大規模のクラウドファンディングサービスを手がけるREADYFORが行う国際協力活動応援プログラムであり、エイズ孤児支援NGO・PLASは第二回参加団体に選出されました。

門田さんたちは「エイズによる貧困の連鎖からの脱却へ。ケニアのママを支えたい!」というプロジェクトの成功に向け、現在活動資金を集めています。

応援したい方・関心のある方はぜひNGO PLASプロジェクページをご覧ください!

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