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ICCカタパルト・グランプリに登壇しました(出展:INDUSTRY CO-CREATION

みなさん、プレゼンやスピーチは得意でしょうか?

私は苦手でした。

中学生の頃、全校生徒の前でスピーチする機会があったのですが、あまりの緊張で声が震え、途中で頭が真っ白になり、言葉が途切れてしまったことがありました。

わずか数秒の沈黙だったと思いますが、あれほど長いと思った時間はありません。急に静まる講堂と、心配そうに私を見つめる生徒たちの顔は、その後何度も夢に出てきました。それはもう、悪夢です。

「もっと話すのが上手くなりたい」

そんな体験、みなさんにもありませんか?

SPONSERD LINK

自己紹介

改めまして、こんにちは。三輪開人と申します。NPO法人e-Educationの代表として、途上国で教育支援をしてます。

e-Educationは「最高の授業を世界の果てまで届ける」というミッションを掲げ、バングラデシュをはじめとした途上国の貧しい高校生に映像授業を届け、彼らの大学受験を応援しています。私は2013年に前職JICA(国際協力機構)を退職して、e-Educationへ転職、そのまま代表になりました。

E education miwakaito

バングラデシュをはじめとしたアジア各国で教育支援をしています

嬉しいことに代表着任時から、講演や取材の機会をいただき、団体内の勉強会などもカウントすると、年間50〜60回人前でプレゼンする機会がありました。ざっくりカウントすると、前職を退職してから200回近くプレゼンしている計算です。

そんな中で最も緊張したのが、先日登壇した「CATAPULT GRAND PRIX(カタパルト・グランプリ)」でした。注目のベンチャー企業総勢20社が、1社12分間のプレゼンテーションを行い、参加者同士による投票で順位が決まります。主催者の小林さんが「プレゼンの達人たちによる天下一武道会」と喩える大きなイベントで、なんとe-Educationが優勝しました。

Grandprix eye

第一回カタパルト・グランプリで優勝しました(出展:INDUSTRY CO-CREATION

» 動画を見る(私のプレゼンは50:15〜)

しばらく海外拠点で仕事することを決めていた私にとって、もしかしたら国内最後になるかもしれないプレゼン機会であり、いつも以上に気合いを入れて準備して挑みましたが、まさか優勝できるとは思ってもおりませんでした。

イベントが終わって数週間経ちますが、未だに興奮と感動が残っており、何かカタチにまとめたいと思ってこの記事を書き始めたのですが、良い区切りだと思い、しばらくのあいだ書くことはないであろう、プレゼンテーションに対する私なりの考えをまとめることにしました。かなり長めの文章(3万5千字以上)になりますが、何か一つでも参考なれば嬉しいです。

目次

1.はじめに(感謝から、恩返しへ)
2.プレゼンを磨くための心構え

3.プレゼン=プレゼント

4.短時間でプレゼンを組み立てるコツ

5.シンプルで不完全なスライドを目指して

6.準備は本番を裏切らない

7.本番で意識していること

8.終了直後が、成長のチャンス

9.おわりに(プレゼンは誰のために?)

1.はじめに(感謝から、恩返しへ)

まずは感謝を。

そもそも、なぜこの機会にプレゼンテーションについてまとめようと思ったかというと、過去にプレゼン大会やピッチコンテストで受賞された起業家・経営者の方々が、自身のプレゼン戦略や工夫を丁寧に記事化してくれていたからです。

これらの記事は一例ですが、一般論や総論ではなく、実例や体験談を交えたプレゼンテーションノウハウはとても参考になり、プレゼンの機会をもらう度に彼らの記事を読み返し、多くのヒントを得ました。

これだけ濃厚で実践的な学びを無償で提供してくださる方々には感謝しかなく、いつか私も何か賞をいただくようなことがあれば、ぜひ彼らと同じように自分の知見をまとめることで、恩を次につづく人たちへ送りたいと思ってきました。

ここから「心を動かすプレゼンテーション」をするために、私が心がけてきたことや実践してきたことを、できる限り漏れがないよう丁寧にお伝えしていきます。

プレゼンの心構えから、スライドの作り方、本番に向けた準備など合計9つの章に分かれており、1章あたり2,000字〜5,000字程度の文量がありますので、時間のない方は上の目次から気になる箇所だけでもまずチェックしてみてください。

2.プレゼンを磨くための心構え

「話すのが好きな人=プレゼンテーションの上手い人」

と、勘違いしている人も多いのではないでしょうか?他でもない私がしばらく勘違いしていた一人なのですが、プレゼンテーションの上手い人が、必ずしも話すのが好きだというわけではありません。むしろ苦手な方も大勢いらっしゃいます。

もちろん話すのが苦手な人たちが、なんの練習もなく人前でプレゼンできるわけではありません。彼/彼女らは「実践」によって、自らのプレゼンスキルを磨いていました。

2ー1.場数が全て、実践あるのみ

具体例をご紹介します。

ホームレス状態を生み出さない社会をつくるために奮闘している認定NPO法人Homedoor代表の川口加奈さんのケースです。彼女は私よりも年下なのですが、ホームレス問題に10年以上向き合っている先輩NPO経営者であり、尊敬する社会起業家です。

そんな彼女と、世界各地でアイスクリーム事業を展開しているBen & Jerry’sのソーシャルビジネスコンペティション「集まれ!よよよい仲間たち」の決勝大会で競ったことがありました。

5人のファイナリストから優勝したのは川口さん。コンペに負けたのが悔しくて、彼女がどうプレゼンスキルを磨いたのか尋ねたところ、「何度も練習しただけ」とすごくシンプルな答えが返って来ました。

Yoyoyoi

写真中央の川口加奈さんが優勝(出典:Ben & Jerry’s

さらに話を聞くと、彼女は起業当初何を話していいかわからず、今も人前で話すのはあまり得意ではないとのこと。それでも、年間100回以上、これまで何度も何度もプレゼンする中で、自然に話すことができるようになったそうです。

その後も彼女のように、話すのが好きでなくても、プレゼンの達人と言われる人たちと出会う度に「実践」の差を痛感し、場数が最も重要だということを学びました。

2ー2.学ぶは、真似ぶ

プレゼンが上手い人たちには、他にも共通点がありました。

それは本を読むよりも、他の人のプレゼンを動画で見たり、もしくは直接講演を見たり聞いたりしながら日々研究しているとうことでした。

上手い人のプレゼンには、様々な工夫が練りこまれており、彼らのスライドや話し方を真似るだけで、自分のプレゼンスキルが少しずつ磨かれていきます。

私もe-Educationの創業者である税所篤快のプレゼンを何度も見て、いつしかほぼ完全にコピーできるようになりました。

e-Education創業者の税所篤快が「みんなの夢AWARD2010」で優勝した時のプレゼン(2010年)

ただ、いろんな人の真似ばかりしていると少し不安にもなります。彼らのプレゼンの劣化版になっていないか?自分のオリジナリティはどこにあるのか?そんな不安を抱えていた頃、よく相談に乗っていただいた先輩社会人の方からこんな言葉をいただきました。

「いろんな人から少しずつ良い点を真似して、さらに組み合わせることができたら、それはもう立派なオリジナルだよ」

これが救いの言葉であり、プレゼンスキルの磨き方が見えた瞬間でした。

たとえば、この記事の冒頭部分も株式会社Misocaの豊吉さんのブログ元EdSurge上杉周作さんのブログの2記事から少しずつヒントをもらって書いているのですが、自分の気持ちを今まで以上に表現でき、オリジナルだと感じられるようになったのです。

2ー3.毎日が小さな実践

プレゼンスキルを磨く方法は、一対多数のプレゼン練習をすることだけではありません。「心を動かす」という意味では、日常会話もプレゼンの一種ですし、日常における様々な行為がプレゼンのトレーニングになります。

その中でも、私はブログとプレゼンテーションは非常に近いと思っています。どんな導入から始めた方がいいのか?言いたいことを伝えるにはどんな言葉を選んだ方がいいのか?共通点はたくさんあります。

私は前職を退職する2013年まであまり人前でプレゼンする機会がなかったのですが、その準備もかねて1年間毎日ブログを書いていた時期がありました。その結果、プレゼンの組み立て方や言葉の選び方が磨かれ、プレゼンスキルは少しずつ向上していきました。

このように、実際にプレゼンする機会がなくても、動画を見て真似したり、ブログ記事を書いてみたりするなど、プレゼンスキルを磨く方法はたくさんあり、この「実践」こそが上達への確実な道だと今も変わらず思っています。

3.プレゼン=プレゼント

「プレゼンテーションの目的とは、相手の心を動かし、相手の行動を変えることである」

この考えに異論を唱える人は少ないでしょう。講演会であっても、社内のプレゼンであっても、必ず自分の言葉を聞いてくれる人がいて、彼らの心をどう変えるかがプレゼンテーションの良し悪しを測る大切な指標です。

ただ、「心を動かす」とは、一体どういうことなんでしょう?

どんな状態からどんな状態へ動かすのか?それに掛かる時間はどれくらいなのか?例えば12分間のプレゼンをする場合、最初と最後でどれくらい心が変わっていれば目標達成といえるのか?もし目標を達成できたのであれば、それはどの瞬間を持って達成されたのか?考え出すとキリがありません。

そこで整理しました。「プレゼン=プレゼント」だと考えて、プレゼントが自分の手から離れて相手の手に渡るという一連の流れに置き換えてみました。

シンプルな例として、好きな異性や大切な家族へ、何かプレゼントを渡すシーンを想像してみてください。プレゼントを受け取った相手が喜んでくれ、気に入ってくれたら嬉しいですよね。

プレゼンも同じです。相手が喜んで、自分が渡したものを気に入ってくれる、そんなプレゼンにするには、どんなことに気をつけたらいいのか?

私がプレゼンを内容を考える前に、まず自分に対して言い聞かせていること、プレゼンとの向き合い方についてご紹介します。

3ー1.自分よりも、相手のことを

そもそもの話として、自分の好きなものが、相手も好きであるとは限りません。

そんなことはわかっていると思うかもしれませんが、実際プレゼンテーションでは自分の好きを相手に押し付けてしまいがちです。

企業の方のプレゼンであれば自社のサービスがどれだけ素晴らしいか、NPO/NGOの方のプレゼンであればどれだけ大きな社会課題を解決しようとしているのか。どちらも大事ですが、自分と相手の前提条件が少しずれているだけで悲しい結末になります。

プレゼントを例にしてみます。例えば好きな女性がカバンを欲しがっていたのを覚えていて、「赤色」のカバンをしてみたところ、実は「赤色」よりも「青色」の方が好きだった、という悲しいすれ違いは簡単に想像できるでしょう。

にもかかわらず、プレゼンになると忘れてしまいがちです。たとえば、値段を気にしていない人に価格がいくら他社よりも安いかを説明したり、アフリカに興味のある人にアジアの課題を説明してしまっていたり。ほんの小さな意識のズレのはずが、説明すればするほど心の距離が遠くなっていくというケースは少なくありません。

なので、自分が伝えたいこと・言いたいことはしっかり持ちながらも、プレゼンの機会を頂く度に、必ず相手のことを考えるようにしています。学生なのか、社会人なのか、そもそもどんなことに関心があって私の話を聞いてくれるのか。主催者や推薦者に毎回必ず確認しています。

そしてプレゼンを聞いてくれる人のイメージができたら、相手に一度なりきって、自分のプレゼンを聞いた後に出てくるであろう質問をいくつか想像するようにしてみます。

そうすると、説明不足な点が明確にになり、事前にプレゼンの内容を修正できます。最近では、どんなに時間がなくても、3〜5つくらい事前に自分へ質問を投げかけ、それに答えられるようプレゼンを修正するようにしており、意識し始めてからプレゼンの評価が随分良くなったと思います。

よかったら、ぜひ試してみてください。

3ー2.誰かにではなく、あの人に

「相手のこと」についてもう少し掘り下げます。

例えば、大学生を相手にプレゼンする機会があったとして、いったいどんな「相手」を想像しますか?

学年が違うだけで、彼らの関心は大きく異なります。以前「国際協力論」という講義でお話しさせていただいたことがあったのですが、1年生は「なんとなく関心があって」授業に参加し、3年生や4年生は「将来の働き方・就職先を考えるために」授業へ参加していました。

さらに、就職活動中の大学生であったとしても、国際協力の分野も選択肢の一つとして考えている人と、どうしても国際協力の分野で働きたい人では、聞きたい内容が異なりますし、アフリカで働きたい人と教育支援をしたい人でも、知りたい内容が異なります。

時間が十分にあれば、それら全てを踏まえてプレゼンを組み立てることもできますが、全部を満遍なく網羅すればいいというわけでもありません。

万人に受けるプレゼントなんてないのです。赤が好きな人もいれば、青が好きな人もいます。だったらどっちも用意すればいいかというと、そんなこともなく、満遍なくをねらったら、全部中途半端にもなるかもしれません。

「全ての人に興味をもってもらうことは諦める。中途半端になるくらいなら、誰か一人の心に深く響いてほしい」

そう思って、私はプレゼンを作る際に「最初の一人」を想像するようにしています。

大学で講義する時であれば、どんな学年なのか、なぜ授業をとったのか、どんなことを聞きたいのか、どんなメッセージを期待しているのか、どうしたらその期待を超えられるのか。

誰からのためにではなく、「あの人」のためにプレゼンするよう心がけています。

Miwakaito presen

大学で講義するときは、必ず参加学生の学年までチェックするよう心がけます

3ー3.スライドではなく、自分が主役

「赤いカバンと、青いカバン、どちらがいいのであろう」
「似たようなカバンを、すでに持っていたらどうしよう」
「いっそのこと、0からオーダーメイドで作ってみるのはどうか」

プレゼントを渡す時、似たようなことで悩んだことはないでしょうか?

プレゼンでも同じように悩むことがあります。どの写真を使ったらいいのか、他のプレゼンテーターとかぶっていないか、自分なりのオリジナリティはあるか。

特にプレゼン大会のような場に参加すると、とても悩みます。今回参加したICCも、登壇する順番が20団体中最後ということで、とくに悩みました。19人が最高のプレゼントを渡した後に、同じ相手にプレゼントを渡すシーンを想像していただければ、私の悩みも共感いただけるのではないでしょうか。

でも、そんな悩みが心に浮かんでくる度に、自分に言い聞かせました。

「スライドではなく、自分が主役」

自分の用意したスライドより、他の人が用意したスライドの方が分かりやすく、インパクトがある、なんてことはあって当然です。もしくはフォントや写真の使い方がすごく似ていて、二番煎じのような気分になることもしばしばあります。

しかし、どんなにスライドが劣っていても、もしくは似ていたとしても、自分という人間が似ているわけではありません。似たような事業に打ち込んでいても、同じようなサービスを開発したとしても、自分の体験は自分だけもものであり、それだけでプレゼンはオリジナルなものになります。

自分という人間こそが最大の差別化であり、プレゼンの主役なのです。

3ー4.背伸びしすぎず、謙虚になりすぎず

では、自分という主役を表現するには、どうしたらいいのでしょうか?

はじめて会った異性に告白するようなものです。しかも相手はモテモテで、20人近い人に告白されているような状態で、一体自分という人間を表現するために何をどう伝えたらいいでしょう?

今回ICCでたくさんの素晴らしいプレゼンを聞きながら、ふいに就職活動のことを思い出しました。イメージは、グループ面接。一人一人が会心の自己PRをした後に、自分がPRをする、そんな気分でした。

しかも、です。実際の就活であれば「本当かな?」と聞き流して自分のPRに専念できたのですが、一緒に登壇した人たちは紛れもないリーダーばかり。何らかの分野で日本一、もしくは世界屈指の実績を叩き出し、それでいて更なる成長を目指す、そんな起業家・経営者ばかりでした。

心はもちろん穏やかじゃありません。皆さんのプレゼンを聞きながら感動と胃痛を同時に味わい、居ても立っても居られず、休み時間のほとんどをトイレで過ごしました。鼓動が早くなっているのが分かり、心を沈める魔法の言葉を思い出します。

「細心にして、大胆であれ」

就職活動で何度も思い返した言葉でした。

もともとは、中学生だった頃、野球の監督から教えてもらった言葉です。決して慢心することなく、だからといって小さくまとめすぎるな。一見、相反するような2つのことを、同時に意識するようになったのはちょうどこの頃からでした。

話を戻すと、就職活動の時も、プレゼンする時も、やっぱり2つのことを意識するようにしています。

ひとつは背伸びしすぎないこと。身の丈を超えた言葉はどうしても薄っぺらく聞こえてしまうものです。だから、自分のことや自分の事業のことを説明するときは、自分が一番馴染みのある言葉を選ぶようにしています。

今回は日本語でのプレゼンでしたが、英語でプレゼンする時は特に注意しています。難しい単語や言い回しを頑張って覚えるのではなく、たとえ幼稚だと思われても、自分がよく使っている単語を、感情を込めて出せる言葉を選ぶようにしています。

そしてもうひとつ、背伸びしすぎないこと以上に注意しているのが、謙虚になりすぎないこと。私は自分の良さよりも欠点の方がサッと言えてしまう人間であり、尊敬する人間を前にすると、言葉が上手く出なくなってしまいます。

今回のICCでも尊敬する起業家・経営者の皆さんと名刺交換する度に手が震えましたし、思っていたことの半分も言えずに後でちょっと反省する、なんてことを繰り返していました。

でも、プレゼンはそれじゃダメなんです。プレゼンの機会をいただいた以上、つまり、自分という人間を真っ直ぐ見てもらうステージを用意していただいている以上、推薦してくれた方や自分の話を聞いてくれる人たちのために、自分の欠点から一度離れなくてはなりません。

「私のようなもののために、こんな機会をいただいて」
「大層なことを、言える立場ではないのですが」
「場違いな話をしてしまい、恐縮です」

これらは本心であっても、やっぱり時間の限られたプレゼンで出すべき言葉ではありません。謙虚な姿勢はもちろん大事ですが、あまりにも謙遜すると、自分のプレゼンの魅力を奪ってしまうリスクもあるのです。

背伸びしすぎず、謙虚になりすぎず。このバランスにいつも気をつけています。

Miwakaito sports

スポーツもプレゼンも「背伸びしすぎず、謙虚になりすぎず」です

3ー5.一番渡したいものを真っ直ぐに

「プレゼン=プレゼント」と最初に例えましたが、ここで少し補足をしますと、
プレゼンにおけるプレゼントは「複数」存在することがあります。

異なる人に対して、別々のプレゼントを用意すると言う意味もありますが、ここでイメージしてもらいたいのは、同じ相手であっても何種類かプレゼントを用意するケースのことです。

今回のICCにおけるプレゼンが良い例です。「バングラデシュの課題について知ってもらう」「e-Educationの取り組みについて知ってもらう」「応援(してもらう)」という3つの目標を立てており、当日になって「協力(してもらう)」という4つ目の目標を立てました。

どれも大事な目標であり、それぞれの目標に沿った内容にしたつもりなのですが、内容にはハッキリとした強弱をつけました。今回は「応援(してもらう)」ことを最優先の目標にして、残りの要素は思い切り削りました。

例えば、私たちe-Educationは、バングラデシュ以外にアジア5カ国(フィリピン・インドネシア・ミャンマー・ラオス・ネパール)で教育支援の活動をしており、それぞれの国について過去に何度もプレゼンしています。

ICCの会場には、すでにフィリピンやインドネシアで事業を展開している企業の皆様もいらっしゃり、懇親会でお話しした際には「他の国のことも話してくれたら良かったのに」とコメントいただきましたが、もう一度プレゼンするとしても、やはりバングラデシュの事例に絞ったプレゼンをするでしょう。

それは「応援(してもらう)」ことが一番の目標であり、この目標を達成するには他の国での取り組みを紹介する時間はない、と判断したからです。

プレゼントの数が多いに越したことはありません。私も実際、フィリピンやインドネシアでどう応援・協力いただけるか、本番とは別のプレゼン資料まで用意しており、プレゼン終了後の意見交換会ではむしろ他の国の話題の方が多かった気がします。

それでも、すべてのプレゼントを一度に見せたところで「心を動かす」ことができるわけではありません。全部のプレゼントを渡したい気持ちをグッと堪え、一番渡したいものを絞り込む必要があるのです。

「相手(あの人)のことを真剣に考えて、ありのままの自分で、一番渡したいプレゼントを真っ直ぐ渡す」

今回プレゼンの準備で悩んだ度に、この言葉に立ち返り、プレゼンの内容を推敲しました。

ここから短時間でプレゼンを組み立てるテクニックや具体的なスライドの作り方についてご紹介していきますが、もしプレゼンに迷った際にはぜひ「プレゼン=プレゼント」という考え方に立ち返って見てください。

4.短時間でプレゼンを組み立てるコツ

突然ですが、ここで質問です。大学一講義分(60分〜90分)のプレゼンを作るのに、どれくらい時間がかかりますか?

同じテーマもしくは似たようなテーマであれば、以前活用したプレゼンのスライドをベースに組み立てることができますが、全く異なるテーマで話すこともしばしばあります。

その際は0からプレゼンを組み立てるのですが、最近はできる限り短時間でプレゼンを仕上げようと努力しています。もう少し正確に言うと、プレゼンの組み立てやスライド作成の時間を短縮し、本番を想定した模擬練習の時間を増やすようにしています。

私には普段の仕事があり、もちろんプレゼンも大切な仕事ですが、それだけをしているわけにもいきません。一つ一つの仕事が早いわけでもないので、プレゼンの準備に1日取られるわけにはいかないのです。

では、どうしたらプレゼンを短時間で組み立てられるのか?答えは自分なりの型やフレームを作ることあり、ここでは私がいつも利用している型やフレームについてご紹介します。

4ー1.5つの基本要素

「接点・披露・納得・共感・会心」

私はプレゼンを組み立てる時、いつもこの5つの要素をまず考えるようにしています。

もともとはgreenz.jpが主催している“1DAY”編集学校での学びが元になっているのですが、相手の「心を動かす」ために必要な要素がギュッと詰まっています。

"1DAY"編集学校 from Yoshihiro Kanematsu

まず、相手との接点を探して心の距離を縮め、伝えたいアイデアやメッセージを端的に伝える。そのあとは、納得のある数字と共感してもらえるエピソードを紹介し、右脳と左脳に訴えかける。最後は、会心の言葉で相手の心を動かす。

これが私の考えるプレゼンの基本構成なのですが、具体例として私たちの事業e-Educationについて、5つの要素に分けてご紹介します。

(1) 接点

プレゼンの構成を考える際、最初に意識するのは聴衆者との「接点」です。

多くのプレゼンの場合、聴衆者は初めて出会う人。当然ですが、自分のことを全て知っているなんてことはなく、共通点すら分からないケースがほとんどです。

そんな状況で「これが問題なんです!」「こんな素晴らしい解決策があります!」といっても、心に響くことは滅多にないでしょう。

そこで、プレゼンの冒頭では、いつも聴衆者と自分の「接点」を作るようにしています。「接点」の作り方は大きく分けて3種類。過去・今・未来で接点を作ることができます。

例えば、仕事術をテーマにプレゼンするとしたら、「大事な仕事を後回しにしてしまうことってありませんか?」と過去の接点を探す方法と、「もっと仕事を早く終わらせたいと思いませんか?」と未来の接点を探す方法があります。

このように身近な共通点や類似体験があれば、過去と未来の接点を見つけて、心の距離を縮めることができますが、「途上国で教育支援」のようなテーマだとなかなか過去と未来で接点を作ることができません。

そこで使える接点作りの方法が「今」であり、たとえば私はe-Educationの事業を紹介する際に、こんな写真で接点を作っています。

Setten

こちらの写真、何の写真かわかりますか?

途上国の農村でよく見る光景なのですが、街明かりの下で学生が勉強している写真です。写真に写っているのは、大学に進学するために一生懸命勉強しているバングラデシュの高校生なのですが、彼の家には明かりがなく、彼は夜23時〜24時まで外で一生懸命勉強しているのです。

「この写真を見て、悔しくなりませんか?」

このような問いかけが接点となり、途上国に行ったことのない人であっても、同じように「悔しい」「かわいそう」という気持ちを共有することができます。

聴衆者と心の距離が縮まったら、プレゼンの目的は半分達成できたも同然。初めてあった人と接点を作ることができるかは、プレゼンの結果を大きく左右する最初の関門なんです。

これからプレゼンの構成を考える際は、ぜひ「接点」を意識してください。

【参考】
カタパルト・グランプリで入賞されたウェルスナビの柴山さん、SmartHRの宮田さんのプレゼンにも「接点」がうまく設けられてました。柴山さんは「退職金だけでは老後の生活が成り立たなくなる」という導入からプレゼンを始め(動画の52:30頃を参照)、宮田さんはサービス開発のキッカケとして奥さんが産休・育休手続きに困っている時の写真(動画の14:00頃をを参照)を紹介し、聴衆との「接点」を作られていました。

(2) 披露

「接点」を作ることができたら、次は「披露」です。自社のサービスや取り組みを、端的にわかりやすく説明することが重要です。

私たちを例にすると、大学進学を目指すバングラデシュの貧しい高校生に対して教育支援をしているのですが、「映像教育」という手法で彼らの大学進学を応援しています・・・と話しても、具体的なイメージが浮かばない人も多いでしょう。

そこで、こんなスライドを使って説明しています。

Hirou

今では超有名人になった東進ハイスクールの人気講師、林修先生。(実は学生時代に林修先生のアシスタントをしていた経験もあって)、私たちはバングラデシュ版の林修先生を探し、そんな先生の授業を収録して、それを貧しい農村の高校生たちに届ける、という活動をしています・・・と話せば、きっと具体的なイメージが浮かんでくるでしょう。

また「披露」の具体例として、いつも頭に浮かぶのは2007年にAppleの創業者スティーブ・ジョブスがiPhoneをはじめて発表した時の動画です。

iPhone を発表するスティーブ・ジョブス(日本語字幕) – YouTube

iPod、電話、インターネット通信機器。iPod、電話…お分かりですね?これらは独立した3つのデバイスではなく、なんと1つのデバイスなのです

iPhoneを発表した言葉のインパクトは今もずっと残っており、いつかこんな「披露」ができるようになりたいです。

【参考】
カタパルト・グランプリでは「披露」としてサービスのデモンストレーションをされる人もいれば、映像をつかってサービスを上手く説明されている方もいました。ファームノートの小林さんは実際にユーザーがサービスを利用している動画を紹介し(動画の10:20頃を参照)、akippaの金谷さんはプロモーションビデオを活用されており(動画の1:10頃を参照)、どちらも言葉以上のインパクトがありました。

(3) 納得

サービスやアイデアを「披露」したら、なぜそのサービスやアイデアが優れているか理由を説明する必要があります。

ここで意識しているのが、右脳と左脳に訴えるということ。理性と感情の両方を動かせる理由があって、はじめて「心が動く」と私は考えます。

そこでまずは「左脳」に訴える方法なのですが、最も効果的な方法は「数字を示す」ことです。

どれくらいの人に使われているのか?どれくらいの利益を生んでいるのか?その成長率は?一つ一つの数字が、サービスの魅力を説明してくれます。

例えば、e-Education事業について説明する時は、以下のような数字を紹介しています。

Nattoku

  • 事業開始半年後の大学受験で、貧しい農村から現地のNo.1大学に1人の高校生が合格した
  • 2015年までに、現地の難関大学へ進学した生徒数は100人を超えた
  • なお、私たちが支援を開始するまで、その村から約40年間でたった1人しか合格者がいなかった

「私たちの活動はとにかく素晴らしいのです!」といくら説明しても、それを補足する数字がなければ、どれくらい魅力ある事業なのか理解いただくことはできません。

自分たちの事業について「納得」してもらうために、ぜひ数字を積極的に活用しましょう。

【参考】
カタパルト・グランプリでは全員が数字・実績をうまく組み込みながらプレゼンされておりましたが、中でも印象深かったのは入賞されたCerevoの岩佐さんでした。「グローバルニッチ」というユニークな戦略を100×100×100という非常に分かりやすい数字で説明されており(動画の33:30頃を参照)、他の方々の数字の魅せ方もとても参考になりました。

(4) 共感

では、サービスやアイデアの説明として「納得」してもらえたら心が動くかというと、そうではありません。「納得」に加えて、「共感」してもらうことも重要です。

例えば、私たちe-Educationの事業を説明する際、「○○人が大学に進学した」と説明しても、それだけで応援・支援していただける人はほとんどいません。でも、こんな補足があったら、どうでしょう。

Kyoukan

(出典:『ウェークアップ!ぷらす』2011年8月6日放送)

彼女は、初年度No.1国立大学に進学した高校生(ヘラルくん)のお母様なのですが、「e-Educationに出会えて本当に幸せだった」と涙を流しながら、喜んでくれました。私もお母様には何度かお会いしていますが、お会いするたびに私の手をギュッと握ってくれ、いつも「ありがとう」の言葉をいただきます。

バングラデシュには学校に行けない子どもも大勢いますが、だからといって高校まで進学している学生が幸せな一生を送れるわけではありません。ヘラルくんは、少しでも家族を幸せにしたいと思い、一生懸命勉強していましたが、1度目の大学受験に失敗して、家の仕事を手伝いながら浪人生活を送っていました。

そんな息子を都市部の予備校に通わせたいと思いながらも、経済的な理由で予備校に通わせてあげられないことを悔やんでいたお母様。私たちe-Educationが彼ら親子と出会ったのはちょうどこの頃で、彼は私たちの映像授業を誰よりも活用して、合格の切符を手に入れました。

そんなことがあり、お母様はいつも私が村を尋ねると「ありがとう」と迎え入れてくれます。このお母様の涙や手の温もりこそが、私たちが活動を続ける理由です・・・と説明すれば、私たちe-Educationの事業に「共感」いただける人も多いのではないでしょうか?

「○○人合格した」という説明も重要ですが、それ以上に大切なことが、そのサービスやアイデアの先にどんな感動があるか、です。大切なお客様の笑顔こそ、共感を生む最大のセールスポイントになります。

【参考】
カタパルト・グランプリでも「共感」を呼ぶ言葉がいくつもありました。UMITRONの山田さんはプレゼンの最後にお客様のリアルな声を紹介し(動画の53:00を参照)、TECH::CAMPの真子さんは受講者のインタビュー動画を紹介し(動画の47:20を参照)、「共感」を呼ぶリアルな声を届けられていました。

(5) 会心

「納得」と「共感」を生むことができたら、あと一押しです。「披露」したサービスやアイデアの魅力を深く心に刻むために、「会心」の言葉を届けましょう。

以前参加したプレゼンの勉強会で聞いた話なのですが、プレゼンテーションの中で印象に残る言葉は多くて2つか3つ程度とのこと。つまりどれだけ良いプレゼンができたとしても、心に刻まれるのはほ1フレーズか2フレーズであり、印象づけたい言葉はしっかり練り込まなければなりません。

「途上国版ドラゴン桜プロジェクトで、不可能はないことを証明したい」

これが私たちの事業を説明する際の「会心」の言葉の一つなのですが、聴衆の関心ごとに合わせて毎回変えるように心がけており、今回のICCのプレゼンではこちらの言葉を力を込めました。

「ICCモデルで、(バングラデシュの)若者の可能性を切り開く」

ICCの熱気を、経営者たちの対談から生まれる深い学びを、そこで生まれる温かい繋がりを、企業やセクターの枠を超えて産業が生まれる可能性を、テロ事件以降どんよりとした空気が立ち込めるバングラデシュに届けたい。

そんな思いを込めて生まれたのが「ICCモデルで、(バングラデシュの)若者の可能性を切り開く」であり、私のプレゼンで唯一2回(最後似たような言葉で締めたので実際は3回)使った言葉でした。

【参考】
ICCの初日に行われた「CATAPULT(カタパルト)-スタートアップ・コンテスト-」で優勝されたWAmazingの加藤さんのプレゼンには「無料の魔法」「手の中の旅行エージェント」という言葉でサービスの特徴をうまく説明されており(動画の19:00頃を参照)、カタパルト・グランプリ登壇者皆さんも「会心」の言葉をうまく活用されていました。

4ー2.物語化

「接点・披露・納得・共感・会心」という5つの型に当てはめたら、必ず次に「物語化」というチェック作業をしています。

納得や共感を生むエピソードを作る際に、だいたい「物語化」はできている・・・と思った方は、ちょっと待ってください。なんとなく「物語っぽくなっている」で止めてしまっていませんでしょうか?

自分ではプレゼンの内容をしっかりまとめたつもりでも、いざチェックしてみると、ところどころ断絶があったり、無駄な説明が含まれていたり、なんとなく他人事に聞こえてしまう、といったことがあります(全部私の失敗体験です)。

これらの勿体ないミスをなくすために、私がしている作業が「物語化」であり、具体的にしている3つのチェック手法についてお伝えします。

(1)一本道をつくる

まずは自分のプレゼンが一本道になっているか確認しましょう。

途中で話が脱線していませんか?急に話が戻ったりしていませんか?

特に気をつけた方がいいのが時系列です。事業をわかりやすく説明するには時系列を崩して説明する方が良い場合もあるのですが、これを急にやってしまうと視聴者が混乱してしまいます。

また、事業の経過についても時間の流れをしっかり示す必要があります。たとえば、私たちe-Educationはバングラデシュで教育支援をしていますが、「貧しい高校生がNo.1大学に合格」「難関大学への合格者が累計100名を突破」「教育大臣から表彰を受ける」とだけ説明しても、それぞれがいつなのか時間の流れを示さないと、具体的なイメージが湧いて来ません。

プレゼンが一本道になっているか、ぜひチェックしてみてください。

Ipponmichi

時間の流れを伝えるために、左上に年数を入れるようにしました

(2)余計な情報は入れない

プレゼンが一本道になっていても、余計な情報が含まれているために伝えたいメッセージが薄れてしまうこともあります。

いくつか気をつけるべきポイントがあるのですが、自分が言いたいことや好きなところほど注意が必要です。自分が言いたいだけで、大切な情報が入っていない、もしくは薄れしてまうことがあります。

最近は「ちなみに」と補足を入れたくなるところを注意してチェックするようにしており、本当にプレゼンをする上で必要な情報かどうか確認し、不要そうであれば迷わず削除するようにしています。

新しい情報は時に視聴者みなさんを混乱させます。例えば、e-Educationは「税所篤快」という大切な相棒が立ち上げた団体であり、私は2代目の代表なのですが、それを説明していると短い時間で伝えたいポイントにたどり着けません。

彼の存在抜きにe-Educationという団体は存在せず、彼のおかげで団体がここまで進化してきたのも事実ですが、視聴者がそれを知らないとe-Educationという団体について理解できないというわけではありません。

新出単語を増やさず、あくまで視聴者と自分の距離を大切に言葉を選んでいく。小さな話ですが、これだけでもプレゼンの質は随分と変わります。

Cut

今回カットしたスライド。新出単語がたくさん出ないよう気を配りました

(3)ジブンゴトとして語る

これは創業者以外の方へぜひともお伝えしたいことなのですが、自分が所属する団体の活動を説明する際、創業者や代表のことをいくら紹介しても、なかなか視聴者の心に響きません。

上でお伝えした通り、私たちe-Educationも税所篤快という創業者がいて、私はいわゆる2代目代表なのですが、当初プレゼンをどう組み立てるか凄く悩みました。

最初は創業ストーリーを「彼が」という主語で伝えていたのですが、何度か繰り返しているうちに、プレゼンの中に「自分(ジブン)」が足りないことに気がつきました。

「〜〜さんから、こう聞きました」
「〜〜と、言われています」
「〜〜であるらしいです」

これではやはり説得力がありません。

プレゼンで大切なことは自分と視聴者の距離です。たとえ事業を紹介するときに創業者や代表抜きには物語を作れないとしても、そこには「自分(ジブン)」が関わった理由があるはずであり、どんなに小さな話であっても自分の体験が、自分の言葉が相手の心を掴むのです。

プレゼンの主役は自分であり、どんな物語でもジブンゴトとして語っていきましょう。

4ー3.パブリック・ナラティブ・チェック

いきなりですが、「パブリック・ナラティブ」という言葉をご存知でしょうか?

最近少しずつ日本でも聞くようになりましたが、もともとは”オバマを大統領にした男”として有名なマーシャル・ガンツ氏が唱えるリーダーシップ術の一つです。

恥ずかしながら私は昨年までマーシャル・ガンツ氏のことを知らなかったのですが、Community Organizing JAPAN(コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン)が主催するワークショップに参加し、心を動かすための話法として「パブリック・ナラティブ」を学びました。

そして最近では、プレゼンを組み立てる際の最終チェック段階で、この「パブリック・ナラティブ」という手法を用いています。

Coj

(出典:Community Organizing JAPAN

「パグリック・ナラティブ」とは?

「パグリック・ナラティブ」は、端的に言うと”人の心を動かす物語”であり、3つの要素によって構成されます。

(1)Story of SELF(自身のストーリー)と、(2)Story of US(自分と聞き手をつなぎ一体感を作るストーリー)、(3)Story of NOW(なぜ今なのか、今具体的にできることを伝えるストーリー)という3つの要素によって構成されます。

Community Organizing JAPANのセミナーに参加したとき、以下の動画を見ながらSELF・US・NOWがいかに大切か学びました。

後にLGBT人権活動家になるJames Croft(ジェームス・クロフト)さんによるハーバード大学でのスピーチ。「6.1 Seconds(6.1秒)」と言う言葉から始まるプレゼンは、たった5分の内容であるにもかかわらず心をわし掴みにされ、何度も見返しました。

まだご覧になったことのない方はぜひご覧ください。英語でうまく聞き取れないと言う方は、字幕を表示しながら見ると良いでしょう。彼の使っている英語はとてもシンプルで、SELF・US・NOWがうまく組み合わさっている正にお手本のようなプレゼンです。

ここからは、彼の動画を参考にSELF・US・NOWという3つの要素をどうプレゼンに取り込んでいるのか、自身のプレゼンにどう反映させたたらいいかお伝えします。

(1)Story of SELF

これは先ほど紹介した「ジブンゴトとして語る」と同じ内容なのですが、なぜ自分が行動に至ったのかを相手に具体的にイメージしてもらうまで、言葉を研ぎ澄ます必要があります。

ジェームスさんのスピーチは、こんな導入から始まります。

私は幼いころバレーダンサーで、毎週レオタードと青いキラキラしたホットパンツを着て練習していました…それが大好きでした

笑いながら幼少期の1シーンを語り、その後学校のクラスメイトや先生からの言葉で傷ついたエピソードを打ち明けます。

スピーチを聞いていた聴衆も、レオタードを着ていた話を聞いてジェームスさんと一緒に笑い、そこから傷ついたエピソードを聞いて静かになり、たった10秒足らずで共感している様子がわかります。

自分の過去を語るとき、具体的な色や匂いをはじめ、情景が目に浮かぶような1シーンを入れることで、自分の物語は相手の心に届くようになります。

(2)Story of US

難しいのはここからです。自身の物語を語る必要性は、何度も繰り返して行っておりますが、ここでいうUSは、自分と聞き手をつなぎ一体感を作るストーリーです。

ジェームスさんは「LGBT(セクシャルマイノリティ)」という当事者でないと理解が難しいテーマについてスピーチしていますが、こんな言葉で一体感を作り出しています。

誰も味方になってくれなかった経験は誰にもあるのではないでしょうか。身長が周りの友人たちよりも高すぎたり、もしくはすごく小さかったり…

想像してください。もし家に帰って、庭にある木が揺れていたら…近づいて見ると何者かが首を吊っていたとしたら…それが家族や友人だったとしたら…

コンプレックスを身近な例に言い直し、自分の家族や友人が命を落とす危険すらあり得ることを具体的な情景で説明しており、聞いていた人はもう他人事のようには思えないでしょう。

普段は遠くに感じる課題を、いかに近くに感じてもらい、一体感を作ることができるか。難しいですが、できる限り自分と聞き手がつながるストーリーを作れるよう心がけるようにしています。

(3)Story of NOW

「なぜ今なのか?」「今すぐ、具体的に何ができるのか?」

プレゼンを作り終えたら、必ずチェックするようにしているのがこのNOWにかかる問いです。

ジェームスさんのプレゼンでは、やはりこの2つの質問に対する答えがスピーチの中で、はっきりと以下のように述べられています。

ゲイだとカミングアウトできるまでの10年間、私はたくさんのチャンスを失ってきた…高校教師でありながら、ゲイの高校生たちの良いモデルとなることができなかった…もう絶対時間を無駄にしたくない!私は動かなければならない!…(ゲイの)子どもたちが命を落とす前に、しっかりと手を差し伸べてあげられるように…

もし興味があれば、そこにいる彼に話しかけてください、参加いただく方法をお伝えします…そしてもし一緒に行動してくれるという方は今日の夕方5時から7時に○○○まで来てください…

プレゼンの目的が「応援してもらうこと」「協力してもらうこと」だとしたら、具体的にどう応援・協力してもらうのか。それはなぜ今必要なのか。これが明確であるほど、相手の心に深く刺さり、プレゼンの目的に近づきます。

Now

ICCのプレゼンでは3ヶ月後(2017年5月)には日本を離れるため「今」が重要であることを説明しました

以上、SELF・US・NOWという「パグリック・ナラティブ」の3要素をご紹介しましたが、特にUSとNOWはどうしても抜けがちになるので、プレゼンに磨きをかける際にはぜひUSとNOWを中心にチェックしてみてください。

4ー4.型のリサイクル

さて、「短時間でプレゼンを組み立てるコツ」と言いつつ、細かな作業が多いことに疑問を感じた方もいらっしゃると思いますが、もちろん私も毎回丁寧に同じ作業を繰り返しているわけではありません。

一度、自分なりの「型」ができたら、あとはその応用です。プレゼンの目的や制限時間、聴衆の特長や人数を踏まえて、プレゼンを組み合わせたり、スライドの一部を修正・追加・削減していきます。

参考までに、私はe-Educationの事業について説明するプレゼンを6種類持っており、講義や講演会の依頼が来たときは、すぐにどれか一つをベースにしてプレゼンの骨子を固めるようにしています。

以前、 ICC STARTUP 2016という別イベントに招待いただいた際は、大学生向けに「あなたの一歩が、世界を変える」というテーマで講演しており、カタパルト・グランプリでは紹介しなかった他の国の挑戦も紹介しています。

「若者の力で、社会を変える 」 e-Education 三輪開人 from Industry Co-Creation on Vimeo.

以上、この章の冒頭でもお伝えしましたが、プレゼンを短時間で組み立て、本番を想定した模擬練習(=実践)の時間を増やすことが大切です。いつもプレゼンの組み立てに時間がかかってしまうという方は、ぜひ「5つの基本要素(接点・披露・納得・共感・会心)」「物語化(一本道・余計な情報削除・ジブンゴト)」「パブリック・ナラティブ・チェック(SELF・US・NOW)」の3ステップで一気にプレゼンを組み立ててみてください。

5.シンプルで不完全なスライドを目指して

「単純であることは究極の洗練である」

これはレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉ですが、スライド作りでとても大切な考え方です。

想像してください。目を細めないと見えないような小さな文字がビッシリ詰まったスライド、いろんな矢印が飛び交って目が回りそうになるスライド。これは私が大学の講義で度々見た光景であり、「配布資料を読むだけで十分じゃん」と何度も思いました。

笑い話に聞こえるかもしれませんが、プロジェクターで映る内容をそのまま読み上げる方は本当に多く、そうでなくてもスライドに無駄な情報が含まれていて視聴者を困らせてしまっている人は少なくないでしょう。

繰り返しますが、プレゼンの主役はスライドではありません。主役はあくまでプレゼンする「私」であり、スライドはあくまで私を引き立てるサポート役です。サポート役が目立ちすぎたり、主役である私と違う動き(=発言とスライドの言葉の違い)をすると、プレゼンが崩れてしまいます。

良いサポート役になってもらうには、余計なものを削ぎ落とす必要があり、単純・シンプルであることがスライド作りのコツなのです。

では、どうやったらシンプルなスライドを作ることができるでしょう?

ここでお勧めしたい本があります。世界各国でベストセラーになった『プレゼンテーションZEN』です。

5ー1.『プレゼンテーション ZEN』

『プレゼンテーションZEN』は、タイトルの通りZEN(禅)の考えをもとに、プレゼンテーションのあるべき姿について解説されている書籍であり、2008年のAmazon.comビジネス部門で世界第3位になった名著です。

著者のガー・レイノルズ氏は日本(関西)に住んでおり、大学で教鞭をとっておられる他、TEDxTokyoなどイベントや講演会などにも登壇されており、動画もYoutube上にアップされています。良いプレゼンを「竹」に例えた以下の動画は必見であり、未視聴の方はぜひご覧ください。

TEDxTokyo – Garr Reynolds – Lessons from the Bamboo – [English] – YouTube

私も以前、別の機会にガー・レイノルズ氏のプレゼンを直接見たことがあるのですが、ユーモアをまぜつつ聴衆との距離をうまく縮めていく一方で、スライドは徹底的にシンプル化されており、美しい写真に一言だけ添えられていて「それだけ?」と少し不安になりました。

でも、『プレゼンテーションZEN』を読み込み、何度も実践を重ねた今、不安になるくらいが丁度良いんだと思えるようになりました。

5ー2.シンプルであれ、不完全であれ

「日本人のプレゼンはつまらない」

私が参加したガー・レイノルズ氏の講義は、いきなりこんな言葉から始まりました。

「念のために」と持っている情報を全て盛り込み、失敗しないように物事を進めようとする日本人の姿勢こそがプレゼンをダメにしているというレイノルズ氏の言葉は胸に深く刺さり、自分もこれまで不安になると情報を多めに入れる癖が当時ありました。

情報をたくさん入れ込むと、スライドに書かれている文字を目で追ってしまい、目の前にいる人たちから視線も意識も離れて、気がつけばパソコンと会話をしてしまっている。そんな苦い経験が私にもありました。

対するレイノルズ氏はと言うと、目線を一切私たち聴衆からそらさず、まるでマジックを見ているかのような感覚になりました。

あとで調べてみると、その日の講義もTEDxTokyoも登壇するステージの前にスライドが写っているモニターがあり、わざわざ後ろやパソコンを見なくてもプレゼンできる仕組みだったのですが、おそらくモニターがなくても同じようにプレゼンできたのでろうなと思いました。

なぜなら、プレゼンのスライドが不完全だったのです。ひとつのスライドに書かれている文字が本当に少なく、あくまで自身の話を補完するサポート役でしかありませんでした。

「何が書かれているか不安になるなら、いっそのこと何も書かなければいい」

こんなことを思った私は、それからしばらく写真だけを使ったプレゼンに挑戦してみたのですが、これが思ったよりも上手くいきました。スライドだけでは情報が足りないため、聴衆が僕の方を見てくれるようになり、結果的に自分の言葉が届く、という手応えを得られるようになりました。

Simple

こちらは今回のICCのプレゼンでも使ったスライドですが、「40,000」「深刻な先生不足」としか書かれておらず、それを繋ぐ説明は自分でプレゼンしなければなりません。

「アジア最貧国と呼ばれるバングラデシュは大変な国なんです。まず、先生の数が全然足りませんでした。その数4万人。これは2010年のデータで…」

ICC本番ではこのようにプレゼンしましたが、スライドにとらわれず、自分の言葉でしっかり説明できていることを、お分かりいただけるかと思います。

コツはスライドをシンプルに、そしてあえて不完全にすること。不安になるくらい言葉を消すくらいがちょうど良いのです。

5ー3.1スライド0.5メッセージ

それでは、シンプルで不完全なスライドを作るには、実施どうすればいいでしょう?

ICCの私のプレゼンを例に、ぜひみなさんもどうスライドを作ればいいか考えてみてください。

「バングラデシュの予備校で有名な先生を見つけ、彼の授業を収録して、それをDVDにする」

さて、これだけの内容を説明するには、何枚スライドを作ればいいでしょう。

1枚で説明できる、と思う方もいるでしょう。決して無理ではありません。これが日本であれば東進ハイスクールの授業風景を見せるだけで、多くの方が理解できます。

ただ、海外であれば、それもバングラデシュのように行ったことがない国であれば話は別です。そもそも予備校があるかもわかりませんし、有名な先生と言われても顔が思い浮かびません。また海外の収録もイメージしにくいですし、本当にDVD化できるかもきになる方がいるでしょう。

このように、聴衆のことを思い浮かべながらスライドを作っていくと、想定していた2倍〜3倍のスライドを用意しなければならない場合があり、これを「1スライド0.5メッセージ」の状態と勝手に呼んでいます。

実際、「バングラデシュの予備校で有名な先生を見つけ、彼の授業を収録して、それをDVDにする」を説明するために、私が用意したスライドは以下の通り4枚であり、プレゼンの時間がもう少しあればあと2枚〜3枚くらい足していたと思います。

1slide

1つのスライドで全てを言い切る必要はありません。それよりもメッセージを背景や理由も踏まえて丁寧に伝えていくことが大切であり、私は「1スライド0.5メッセージ」と称して、あえて自分が口頭で説明しなければならない不完全さをスライドに残すようにしています。

5ー4.スライド作りの3つの節制

シンプルなスライドを作るときに心がけていることは、メッセージを絞ることだけではありません。パワーポイントであれ、Mac専用ソフトKeynoteであれば、私はスライドを作るときにあと3つ気をつけていることがあります。

(1)文字は大きく、少なく

今回ICCでつかったプレゼンスライドを確認したところ、一番小さい文字は50pt、一行の最大文字数は「①バングラデシュの課題を知ってもらう」の18文字でした。過去に作ったスライドも確認したところ、最近作ったものはほぼ同じ条件でした。

これは上で紹介した不完全さを作るためでもありますが、聴衆への配慮も少しあります。今回のICCもそうでしたが、会場が100人規模の場合、最後尾からプレゼンのスライドを確認することは難しく、小さい文字はほとんど見えません。

「どうせ見えないのであれば、いっそのこと省いてしまえ」

そんな風に考え、スライドに残す文字はできる限り少なく、また文字サイズは大きくするよう心がけました。

Moji

前日のリアルテック・カタパルトの会場(100〜200人規模)。プレゼンのスライド文字は最後尾からギリギリ確認できる程度

(2)文字のフォントとカラーは最小限に

スライドに文字入力するとき、サイズや文量の他に大切にしていることが「違和感を作らないこと」です。

これは『プレゼンテーションZEN』にも書いてあったことなのですが、写真と言葉がマッチしていなかったり、雑な配色でスライドを作ると聴衆が違和感を抱いてしまい、自分の言葉から意識が離れてしまいます。これは勿体無いですよね。

違和感なくスライドを見てもらうために心がけていることは、文字のフォントとカラーを最小限に抑えることです。今回のICCのケースだと、フォントはヒラギノ明朝ProNとヒラギノ角ゴStdNの2種類だけ、カラーは基本は黒と白で、強調したい箇所だけ青か橙の4色でスライドを作りました。

(3)エフェクト・アニメーションは最小限に

違和感を作らないために、もう一つ心がけているのがエフェクトやアニメーションです。

パワーポイントを触り始めたとき、いろいろなエフェクトを使うのが面白くて、ついついあれもこれも利用していた時があったのですが、プレゼンで見慣れぬエフェクトやアニメーションが出てくると、そちらに意識が移ってしまいます。これもやはり勿体無いです。

なので、私は最近極力エフェクトやアニメーションを使わないように意識しており、今回のICCでも使ったエフェクトは場面切り替えでカラーフェードを使い、どうしてもモーションをつけたい箇所だけマジックムーブ(Keynoteの特殊エフェクト)を使い、アニメーションは一切使いませんでした。

このように、文字の変化やエフェクトを抑える一方、写真にはこだわりました。特にプレゼンの主役である自分が写っている写真は貴重なのですが、意識しないと(誰かにお願いしないと)プレゼンで使える写真にはなりません。

今回はICCのプレゼンスライド用に何枚かバングラデシュで写真を撮影してきましたが、大事なプレゼンであれば抑えるところは抑えて時間を短縮し、その分写真や動画の用意に時間をかけることをおススメします。

Sessei2

自分が活動している写真は日頃から集めておくとプレゼンで役立ちます

6.準備は本番を裏切らない

プレゼンテーションが上手い人は、大きく2通りに分けることができます。観客を魅了する話術を自然に実践できる人と、念入りな準備を積み重ねて本番に挑む人です。

さて、ここで質問ですが、みなさんはどちらのタイプの人間でしょう?

もしプレゼンに少しでも不安を抱えているのであれば、ぜひこの機会に念入りな準備について覚えていただければ幸いです。

ちなみに、これから紹介する方法は私が独自に見出した方法ではありません。これまで素晴らしいプレゼンをされた方々にどう準備をしてきたか聞いて回り、自分なりにアレンジした方法です。

少々細かいですが、もし一つでも参考になれば、次のプレゼンを準備する際に試してみてください!

6ー1.どんなに時間がなくてもやる5Pチェック

Purpose, People, Place, Print, Protocol

私は、どんなに準備期間が少なくても、必ずこの5つだけは事前にチェックするようにしており、必要であれば主催者の方に確認するようにしています。

早速、一つ一つご紹介しましょう。

【Purpose】プレゼンの趣旨をもう一度確認する

まず、プレゼンの目的をしっかり確認しましょう。誰に、どんな行動をとって欲しくてプレゼンをしますか?繰り返しになりますが、プレゼンは聴き手の心を掴み、行動に繋げるためにするものです。

外部からの講演依頼であれば、何を求められているか、会の趣旨をきちんと掴みましょう。コンペなどに応募する際には、評価方法についてもチェックが必要です。誰がどう評価して結果が決まるのか、何度も確認してからプレゼンに挑みましょう。

【People】聴き手を徹底的に調べる

今回のICCでは、登壇される方はもちろん、参加される方々のお名前と所属先の会社が、関係者限定で公開されました。

今回は登壇者による相互評価によって結果が決まるということで、登壇者全員のプロフィールや過去のインタビュー記事、SNSを持っている方は最近何をされていたのかチェックするようにしました。

幸い、今回のICCは3日間のプログラムとなっており、最終日のカタパルト・グランプリの前に、私を含む登壇者ほぼ全員が何らかのセッションに登壇されていたので、私はどんな方と一緒に登壇するのか可能な限り知りたくて、いろいろなセッションで直接お話を伺いました。

一緒に登壇する人はどんな話をするのか、プレゼンを聞いてくれる人は誰なのか、プレゼンを評価する人はどんな人なのか、できる限り明確なイメージをもって本番に臨みましょう。

Grandprix eye

今回一緒に登壇した19名のことはできる限り事前にチェックしました(出展:INDUSTRY CO-CREATION

【Place】プレゼンする場所について確認する

いくら良いスライドを用意しても、当日プロジェクターが使えなかったら無駄になってしまいますし、映像を流したくてもスピーカーがなかったらマイクで音を直接拾うなど代替手段を考えなければなりません。

なので、私はプレゼンをお受けする際には、プロジェクター・マイク・スピーカーの有無に加えて、会場の大きさや照明の有無など、細かな点についても確認するようにしています。

また、時間に都合がつくようであれば、会場の下見をさせてもらうこともあります。今回は会場の前日下見はできなかったものの、会場の間取りを含む詳細情報は事前にいただくことができ、当日も朝早めにくれば会場を確認できるというご配慮いただきました。

さらに休憩時間を利用して、登壇者一人一人がリハーサルする時間もあり、ステージに立って会場がどう見えるか確認することができました。私はスライドの前を歩きながらプレゼンする予定で、自分の影がスライドに写ってしまわないか心配だったのですが、これもリハーサルで解消されました。

運営の方には多少負担をかけてしまうかもしれませんが、より良いプレゼンを一緒に作り上げるためにも、場所の確認はしっかり行うようにしましょう。

【Print】プリント配布が必要かどうか確認する

今回のICCでは配布物の用意は不要でしたが、大学や企業で講義する機会をいただくと、主催者の方からプリントを別途用意してほしいという希望をもらうことがあります。

ここで、少しプリント配布に対する考えを説明すると、私はできる限りプレゼンする際は前の前のプレゼン(=自分)を見てほしいと思っており、資料配布はできる限りプレゼン後にしてもらえないかお願いするようにしています。

また、上でも少し触れたように、プレゼンのスライドは不完全であるべきだと思っているので、例えば欠席された方向けにプレゼン資料を共有するためのプリントを用意する必要があれば、スライドをそのまま渡すのであればなく要点だけまとめたプリントを別途作るよう心がけています。

手間はかかりますが、それでも不完全なスライドは渡したくないですし、かといって配布資料を事前に見てもらいたくはないので、必要であれば主催者の方としっかり相談するようにしましょう。

【Protocol】やってはいけないことを確認する

昨年末、タイで開かれた国際カンファレンスでプレゼンする機会があったのですが、こんな服装指定がありました。

Thai

前国王への弔意を表すために、黒または白の衣服着用が推奨されました

このように服装をはじめ、事前にプロトコルやマナーが設定されていることもあり、ここはしっかり守られなければなりませんし、大丈夫か気になることは事前に確認しなければなりません。

今回のICCでは、バングラデシュの民族衣装を着て登壇したいと思っていたのですが、それがルールに反しているかだけでなく、会場の空気を乱していないか暗黙のルールまで確認する必要がありました。

すると、前日のリアルテック・カタパルトというイベントで、ソーラーパネル清掃ロボットを中東で販売している株式会社未来機械の三宅社長が民族衣装を纏って登壇されており、当日は安心して挑むことができました。

もし特別な演出を考えている方は、必ず事前に運営スタッフに確認し、できれば会場の空気に反していないか確認するよう心がけましょう。

6ー2.本番までの1週間でする4つの準備

プレゼンの準備が進み、スライドがほぼ完成して、本番まで残り1週間。さて、こんな状態でみなさんはどんな準備をしますか?

頭の中でイメージするだけでは不十分であり、身の周りのツールを使ってプレゼンの質を高めましょう。ここでは私が本番までの1週間でする4つの準備をお伝えします。

【ビデオ撮影】ビデオを見て、悪い癖を知る

自分のプレゼンを見たことがありますか?プレゼンを一番磨く方法は、自分をよく分析することです。iPhoneなどスマホを使って、自分のプレゼンを動画で撮影しましょう。誰でもできます。簡単です。

動画を撮り終えたらすぐにチェックを。特に意識してほしいことは、立ち振る舞いです。背中が猫背になっていないか、スライドに気を取られていないか、ソワソワして体が動いして待っていないか。

一つ一つの動作を確認することで、プレゼンは確実に上達します。一度やると非常に多くの気づきがあるので、まだやったことがないという方は、ぜひ挑戦してみましょう。

【録音】音声だけ聴いて、癖と間を把握する

iPhoneなどを使ってプレゼンの動画を一度撮ったら、映像抜きの音だけで聞くのも良い手段です。「えー」や「あのー」と言った言葉の癖や、言葉に詰まったところが手に取るように分かります。

そしてさらに大事なのは「間」を把握すること。話の切れ目で不自然な「間」がないか、もしくは意図して作りにいった「間」をきちんと演出できているか。この「間」を意識してコントロールできるようになれば、聴き手の心をしっかり掴むことができるでしょう。

【リスト作成】アクシデントを想定する

プレゼンでは、予想外のことが頻繁に起こります。しかし、そんな事態もリストを事前に作って整理しておけば容易に回避できます。

今回のICCでは不要でしたが、以前特に効果があったのは問答集の作成です。質問されそうなことを事前にイメージすることで、プレゼンの内容自体も磨きがかかりました。

それからアクシデント対策も重要です。マイクの不備や映像の音声エラー。想像しうる限りアクシデントをリスト化して、動じない心を作りましょう。

【模擬プレゼン】本番と全く同じ状況で練習する

プレゼン前日もしくは前々日にぜひお勧めしたいことがあります。それは本番と「全く」同じ状態で練習することです。

本番会場で練習することがベストですが、家でも同じようなイメージを作ることができます。本番と同じ服装で、呼び込みがあってステージに立つ仕草から練習すれば、本番に近い緊張も味わえるはず。心臓がバクバクするくらいの緊張をもって練習できたら最高です。

もし早めにプレゼンが完成していれば、もっと早く本番の模擬プレゼンを行なってみてもいいでしょう。誰かを読んでフィードバックをもらうことができれば、プレゼンの質は確実に上がります。

ただ、直前にコメントをもらっても大幅な変更は難しいので、私は直前になると一人で予行練習をするようにしています。この辺りはバランスだと思いますが、自分に合ったやり方で本番と全く同じ状況で練習してみましょう。

Sessei

本番と同じ格好で練習するだけで、気合の入り方が全然変わります

6ー3.当日(直前)にする3つの準備

いよいよプレゼン本番当日。

緊張で頭が真っ白になりそうなのを堪えて、ぜひ最後の3つの準備を進めましょう。

【仲間づくり】会場の人と積極的に会話する

多くのプレゼンの場合、事前に会場の人と話す時間があります。この時間を有効に使いましょう。

私は隣に座った人や、周りにいる人と積極的に会話するようにしています。聴き手と先に仲良くなってしまうのです。

今回は登壇者席が設けられており、UMITRONの山田さんの隣に座ったのですが、意外なところで繋がった共通の友人がいることがわかって話が盛り上がり、緊張も随分ほぐれました。

プレゼンは競争ではありませんし、本番だけが全てではありません。会場にいる時間をフルに使ってプレゼンを補完しましょう。

【イメトレ】最初の1分と、最後1分の練習を

プレゼンまで残り1時間。ここまで来ると「あとはどうにでもなれ」と投げやりになりそうになるのですが、最後の1時間を使って、最初の1分間と最後の1分間をとにかく練習するようにしています。

プレゼンの勝負は最初1分で決まるとよく聞きます。どうすれば聴き手の心を掴むことができるのか、話す内容や立ち振る舞いまで、直前まで練り込みましょう。最初に話す言葉、観客の反応、グッと心を掴む仕掛け、全てを何度も頭の中で繰り返せば、もう怖いものははありません。

と言いながら、それでも緊張が消えるわけではないので、とにかく頭が真っ白になっても自然に身体が動き、勝手に言葉が出るようになるまでイメトレしましょう。

【感謝】全部忘れて目の前の景色を楽しむ、感謝する

プレゼンまで残りあと10分間。頭が真っ白になりそうな状態をこらえる必要は、もうありません。

ここまで来たら後は練習を信じて、全部忘れてしまいましょう。それよりも、聴き手の人たちの喜ぶ顔をイメージすることが大切です。

それから支えてくれた人への感謝も忘れずに。今回福岡でICCに参加できたのも、東京や海外で頑張ってくれている仲間たちのおかげであり、彼らへの感謝の気持ちを心の中でつぶやくと、自然と緊張が和らぎました。

会場にいる人たちの顔をしっかり見て、支えてくれる人たちの顔を思い浮かべ、彼らへの感謝の気持ちを言葉に込めて、目の前の景色を思いっきり楽しみましょう。

7.本番で意識していること

準備が整い、いよいよ本番。

当日の興奮と緊張ですべてを忘れそうになるのですが、最近はプレゼンをしている時にも意識して、いくつかのことができるようになりました。

今回ICCで登壇した時は、5つのことを意識しており、ここでも一つずつご紹介します。

7ー1.最初の1分をとにかく大事に

プレゼンで一番緊張するのは、最初です。この記事で何度も紹介している通り、他の登壇社のプレゼンを聞いている時からずっと緊張しており、いざステージに立つと緊張で足がガタガタ震えてきました。

パソコンを触る手もずっと震えており、前の登壇者である株式会社divの真子社長のプレゼンが終わって、スポットライトが私に当たると、緊張は頂点に達します。

「それではカタパルト・グランプリならびにICC FUKUOKA最後のプレゼンテーションとなります。テーマは”今、アジアの教育が熱い”。準備の方はよろしいでしょうか?」

司会者から掛け声をかけてもらった瞬間、頭が真っ白になり、いろんなことを忘れそうになる中で、最初の1分間だけを何度も頭の中でイメージしました。

「みなさん、これが最後です。あと12分だけ、お時間をください」

スクリプトを忘れないために、話す文言とまったく同じスライドをあえて投影しし、一言ずつ声にするたびに、自分の心を整えました。

「…本日は3つのお願いがあってここに来ました。まず1つ、私たちが活動しているバングラデシュという国について知ってもらうこと。2つ目、私たちe-Educationの取り組みについて知ってもらうこと。3つ目は、応援してもらうこと。繰り返します、応援してもらうことが本日の目標になっております」

冒頭から数えてここまで約1分。この1分間を何度も練習し、本番でもここだけは一言一句意識して、丁寧に進めていきました。

1min start

最後の「くり返します、応援してもらうことが本日のゴールになります」という言葉で、会場に小さな笑いが起き、ここでスイッチを入れ替えます。

プレゼンを聞いてくれる方とどうやって心の距離を縮めるか、ここから「仲間探し」が始まります。

7ー2.一人一人見つめて、仲間を探す

聴衆者が多くても少なくても、私は必ず会場の人たちの顔をできる限り見ながら話すようにしています。

ステージが広い場合は隅にいらっしゃる方の顔が見えるように歩き回りますし、必要があれば会場の一番後ろまで行くこともあります。今回はステージ上であれば動いていいと言われていたので、両端の方々の顔が見れるよう、左右に移動しながらプレゼンをしていました。

ただ、もちろん全員の方を同時に見ることはできず、今回のICCのように広い会場では、前に座っていただいている50人くらいと目を合わせることが限界です。

それでも10分あればほぼ全ての人たちと視線を交換することはできますし、自分のことをしっかり見て、嬉しい反応を返してくれる仲間のような人には、目を合わせて言葉を届けるよう心がけます。

今回のプレゼンでは、最前列および二列目に登壇者の方々が座っていらっしゃり、ほぼ全ての皆さんが「仲間」になってくれました。

特に目があったのが、席が隣だったUMITRONの山田さんと、ウェルスナビの柴山さん。お二人とも私の一言一言に反応してくださり、こちらに笑顔を返してくれたので、私も嬉しくなって何度も目線を送っていました。

プレゼンに慣れていなかった頃、聴衆者がとても怖く、できる限り目を合わせないようにしてたのですが、今では真逆の考えになり、いかに会場の人たちを「仲間」にするか考えるようになりました。

プレゼンは会場のみんなで作るものであり、「仲間」が増えるほど、自分の言葉は会場に響き渡る。そんな風に思いながらプレゼンするようにしています。

では、どうやって聴衆を「仲間」にするのか?次は、目の前にいる人たちと心をつなぐ小技についてご紹介します。

7ー3.心をつなぐ小技(問いかけ、挙手)

Hayashi sensei

動画の51:20頃に一度、53:00頃にもう一度、会場に質問を投げかけました

「このかたを知っているという方は、手をあげてください」

これは私がプレゼンの途中で投げかけた質問なのですが、時間が限られていても、できる限りプレゼンを聞いてくれる方々が、手を挙げるなど何かアクションにつながる質問をするようにしています。

時間に余裕がある場合は、マイクを渡して答えをきくような質問もします。1対1で言葉のやり取りができれば、心の距離は縮まっていきます。

手をあげてもらうと、さらに隣にいる人をはじめ、会場が一つになる空気が生まれ、自分のその一人になることができます。

「プレゼンする時は、必ず何か一つ質問しよう」

こう思い始めてもう1年以上経ちますが、質問を出せるようになってから、聴衆を怖く感じるようなことは徐々になくなっていき、そしてずっと挑戦してみたかった「沈黙」ができるようになりました。

7ー4.沈黙のススメ(緩急、強弱)

「君のプレゼンは、なんだか話し慣れすぎているからなのか、心に響かないんだよね」

もう2年前になるんでしょうか。当時私は、社会起業塾イニシアティブというNGO/NPOの経営者向けのトレーニングプログラムに参加しており、半年に渡るプログラムの最終成果を発表するプレゼンで、こんなコメントをいただきました。

今回のICCには劣るものの、私なりに何度も練習を重ねて挑んだプレゼンであり、とてもショックを受けたことを今でも覚えています。

当日のプレゼンの様子はビデオで残っていたので、後日ひとりで見返したのですが、いつものプレゼン以上に気合も入っており、言葉に感情も乗っているように見えました。

ただ、「話し慣れている」というコメントの通り、どこかプレゼンが単調になっているようにも感じました。そこで、他の方のプレゼンを見てみると、たしかに言葉はぎこちなく、ペースもバラバラで、見るからに不完全なのですが、そこに「人間らしさ」のようなものを感じ取ることができました。

もしかしたら、以前は私もそうだったのかもしれせんが、場数を重ね、言葉が自然と出てくるようになるにつれて、確かに戸惑いや緊張は(内面では今も変わらずずっとあるのですが)表情や言葉に出なくなってきた気もします。

では、どうしたら良いのでしょうか?どうしたら、いつものプレゼンに「人間らしさ」を加えることができるのでしょうか?考えた結果、私はプレゼンの途中で意図的に「沈黙」を作るようになりました。

「間」と言い換えることもできるでしょう。プレゼンの途中、流れを変えたいところで、数秒の沈黙を作るようにしてみたところ、会場の空気が変わることが分かり、確かな手応えを感じるようになりました。

今回のICCのプレゼンでも、バングラデシュのテロ事件の話をする前に、ほんの少しだけ「沈黙」を作りました。事前に何度も練習して、ここだけは言いたい言葉をぐっとこらえました。

Chinmoku

動画の57:00頃から何度か「沈黙」を作り始めました

すると、「ざわっ」という音が聞こえそうなくらい、会場の空気が変わり、下を向いていた方が私を見てくれたのも確認できました。たった1秒足らずの沈黙をつくるだけで、ここまで効果があるんだと実感できました。

そして今回一番伝えたかったエピソードに移ります。あと意識すべきことは一つだけ、「ラストスパート」でした。

7ー5.ラストスパートとフィナーレ

Last 1min

動画の1:01:15頃から「ラストスパート」に入りました

「…”応援してもらいたい”と思ってここに来たのですが、みなさんのプレゼンを聞いて、ちょっと欲が出てしまいました。”協力いただきたい”と思ったので、残った1分半で、最後、バングラデシュがどれだけ熱い国なのか、駆け足で紹介させてください!」

プレゼン終了予定時間まで残りあと少し。私はプレゼンの流れをもう一度大きく変えました。言葉は今まで以上に早口になり、最後は呼吸する間も忘れて一気に言葉を出し切りました。

もともとこんな終わり方を想定していたわけではありません。ただ、他の登壇者の話を聞いて気持ちが高まり、伝えたい内容がどんどん増えていったのです。おそらく他の登壇者の方々も、そうだったんじゃないかと思います。

ただ、同時に完成版プレゼンでも30秒ほどのバッファーは用意しており、そこでありったけの想いを伝える「ラストスパート」の時間と、最後に出すべき「フィナーレ」の言葉は決めていたので、この「ラストスパート」の時間を使って、新たにバングラデシュの魅力について伝えようと思ったのです。

結果、私はバングラデシュの魅力について5枚スライドを追加したのですが、試しに練習して見たところ1分以上オーバーする計算に。それでも、想いを全部伝えきるには、多少早く口になってもやりきりたく、スライドを消さないままプレゼンに挑みました。

本番では肝心のスライドをスキップしたり、小さなミスはたくさんあったのですが、バングラデシュが好きだという気持ちと、ぜひ皆さんと一緒にバングラデシュで事業を作りたいという気持ちは届いたのではないかと思います。

プレゼンが終わってしばらく経ってから、もう一度自分のプレゼンを見返して見たのですが、最後の1分はとても楽しそうに話していました。

プレゼンの印象はやはり最後どう終わるかがすごく大事だと思っていたので、この「ラストスパート」を全力で走りきることができて本当に良かったです。

以上、どれも小さなことですが、これら一つ一つを意識できた結果、優勝という結果に繋がったのではないかと思います。

8.終了直後が、成長のチャンス

プレゼンが終わった当日、優勝という結果に興奮してなかなか寝付けず、私はICCカタパルト・グランプリに登壇した20人のプレゼンを最初から見返しました。

最初はBGMのように見ながら眠りにつこう、くらいに思っていたのですが、やはり見始めるとスイッチが入ってしまい、気がついたらノートとペンを取り出し、参考になるところをメモし始めした。

もう癖になってきたのですが、私はプレゼンが終わったその日が一番成長できるチャンスだと思っており、プレゼンを改善するために以下のようなことをしています。

8ー1.感想を聞いて回る

プレゼンが終わった後の懇親会、いろんな方から声をかけていただきましたが、私からも積極的に声をかけて回りました。

どうやったらバングラデシュをはじめ協力いただけるか意見交換したかったこともありますが、プレゼンのどこが良かったのか感想を聞いて回りました。

自分が意図していた部分を評価してもらえた部分もあれば、全く意識していなかった箇所が良かったとおっしゃっていただける方もいらっしゃいました。

失礼のないよう、一人になった瞬間iPhoneでメモを取り、すぐに自分のアドレスにメールを送りました。

懇親会終了後、フェイスブックでいただいたメッセージの中にも、プレゼンの良かったポイントなどを教えてくださる方が何人もいらっしゃり、どのご意見も大変参考になりました。

当日フィードバックを下さった皆さん、嬉しいメッセージを送ってくれた皆さん、本当にありがとうございます。

8ー2.一人反省会

懇親会が終わってホテルに戻り、ゆっくりお風呂に入った後、しばらく当日出会ったた方々とメッセージのやり取りをしたり、お世話になった方々に報告メールを送っていたのですが、上でもお伝えしたとおり中々眠くならず、気がつけば一人反省会が始まりました。

何度も繰り返していますが、ICCのカタパルト・グランプリに登壇された方々のプレゼンは本当に素晴らしく、他の登壇者19人のプレゼンを見ていたら、ノート3枚分ほどのメモができていました。

Abe

同じソーシャル・セクターから参加した安部くんのプレゼンは本当に素晴らしく、彼のプレゼン(&コメント)で会場の流れが大きく変わりました

もちろん自分のプレゼンも見返しました。細かなミスはいくつもあり、今度はこうしよう、ああしよう、という改善案がいっぱい浮かんできて、そのまま当日つかったスライドに修正を加え始めました。

8ー3.プレゼン更新

「プレゼンが終わったその日に、1枚でもいいからスライドを更新する」

なんとなく決めた自分ルールではありますが、気がつけば1年近く継続できている習慣であり、今回もICCで活用したスライドを少し修正しました。

1文字だけ変えるといった小さな変更しかない時もありましたが、それでも2017年度だけで50回以上スライドを更新しており、そのたびに少しずつプレゼンが磨かれてきたと思うと、この更新作業が辞められなくなります。

冒頭でプレゼンを磨くには場数が大事だと言いましたが、本当に大事なのは実践の後の振り返りであり、これからもプレゼンの機会をいただく度に、プレゼンのスライドを更新していこうと思います。

9.おわりに(プレゼンは誰のために?)

「プレゼンは、目の前にいる相手のために」

冒頭でプレゼン=プレゼントだと言いましたが、最近プレゼンには他の目的があってもいいんじゃないかと思うようになりました。

この記事の最後として、プレゼンは誰のためにするものなのか、もう一度別の角度からご紹介させてください。

9ー1.自分のために

みなさんは、自分が今の仕事についた原体験を覚えていますか?

仕事の量が増え、忙しくなってくると、どうしても仕事のやりがいであったらい原点は忘れてしまうもので、私も時々なんのために仕事をしているのか分からなくなることがあります。

そんな時、プレゼンの機会をいただき、自分の実体験を人前で話すと、自然と原体験を思い返し、プレゼンが終えた後に「明日も頑張ろう」という気持ちになれるのです。

それだけではありません。今回のICCのプレゼンもそうでしたが、未来の計画について話そうと思った時、スライドや話す内容を考えながら、自然と自分の考えが整理されていきます。

頭では何となく描けていても、実際にスライドにしたり、言葉にしようとすると、抜け落ちているポイントがクリアになり、事業の計画や未来のビジョンが研ぎ澄まされていきます。

さらに、自分の決意を「固める」ときにもプレゼンテーションは役立ちます。私はこれからバングラデシュを拠点に活動するのですが、昨年末のイベントではじめて発表した時、はじめて自分の気持ちが固まった手応えを感じました。

「身体が前に進まなくても、言葉だけでも前に進めよう」

これは大切な人から教えてもらった言葉ですが、言葉にすると気持ちが固まり、これまで踏み込めなかった行動が取れるようになることがしばしばあります。

だから、私にとってプレゼンは、自分の原点に立ち返る手段であり、自分の考えを整理する手段でもあり、同時に、自分の気持ちを固める手段でもあるのです。

9ー2.仲間のために

今回のICCのプレゼンは、不相応だとは思いつつも「仲間のために」そして「社会のために」どうしても優勝したいと思っていました。

まず「仲間のために」ついてお話しすると、私にはいつも自分を支えてくれるe-Educationの仲間たちがおり、彼らのためにどうしても勝ちたいと思いました。

私は昨年、バングラデシュのテロ事件の影響で体と心の病気を患い、代表という立場でありながら一ヶ月という長いお休みをいただきました。今、元気に仕事に戻れたのは、休む時間を作ってくれた職員みんな、インターンみんなのおかげであり、「開人が戻ってくるのをいつまでも待っている!」とエールをくれる仲間たちのおかげです。

Nakama

創業期で苦しい時期に「休め」と行ってくれた職員みんなには本当に感謝しかありません

これまで大きなコンペや大会で、1位を取れたことは過去に一度もなかった私がこうやって優勝できたのは、大好きな仲間の支えや応援があったからであり、「仲間のために」プレゼンするといつも以上の力が出ることがわかりました。

プレゼンが終わった翌日、福岡から東京に戻りました。私はすぐに結果を直接みんなに伝えたくて、家によらずにそのまま出社したのですが、「疲れてるんだから、今日くらいしっかり休んでください」と家に追い返されそうになりました。素敵な仲間を持って本当に幸せです。

これからも彼らのために、仲間のために良いプレゼンテーションをできるよう頑張ろうと誓いました。

9ー3.社会のために

私の優勝を喜んでくれたのは、日本にいる仲間たちだけではありません。海外の仲間たち、とくにプレゼンのテーマでもあったバングラデシュの仲間たちも喜んでくれました。

プレゼンの2日前まで、私はちょうどバングラデシュにおり、帰国する直前、今回のプレゼン内容を現地の仲間たちに披露する時間を作ってもらいました。

バングラデシュのテロ事件がショックだったこと、若者たちの悩みをもっと受け止めていかなければならないこと、そのためにはCo-Creation(共に社会を作る)が必要であること。

私がプレゼンを終えると、現地のリーダーであるマヒンが、私の手を握ってこう言ってくれました。

「俺の想いも、開人に託していいか」

彼も想いは同じでした。もう二度とテロが起こってほしくないと心から願っており、そのためにはもっとバングラデシュの若者に希望を届けなければならないという決意がありました。彼だけでなく、仲間たち全員の想いを託してもらって、私はプレゼンに挑んだのです。

プレゼン前日、マヒンをはじめとした現地の仲間たちからも応援メッセージが届きました。彼らの想いを、彼らが願う社会を実現するために、最高のプレゼンテーションにしたい。そんな気持ちが、プレゼンで緊張する私の背中を押してくれました。

Bangladesh

家族のように温かくて大好きなバングラデシュの仲間たち

大好きな仲間のために。目指したい社会のために。

今までのどのプレゼンテーションよりもこの2つに対する気持ちが強く、その結果が優勝につながったのではないかと思います。

これから大切なプレゼンテーションを迎える全ての方へ。みなさんは、誰のためにプレゼンしますか?緊張して思うように気持ちを伝えられないという方は、ぜひ誰のためのプレゼンなのか、立ち返って見てはいかがでしょう。

最後の最後に

ここまで長文お付き合いいただき、ありがとうございました。

今回は「心を動かすプレゼンテーションをするために実践してきたこと」を思い返しながら記事を書いたのですが、書けば書くほど思いが溢れて来て、気がつけば3万5千字という想像をはるかに超えた文量になりました。

また、記事を書いている途中も、「次はこうしてみよう」といったアイデアが浮かんでは執筆が止まり、これまで参考にしてたプレゼン動画を見返していたら夜が明け、私はこんなにもプレゼンテーションに夢中になれるのかと驚きました。

私は、プレゼンテーションが好きです。この記事を書きながら再認識することができ、プレゼンの魅力をもっと多くの人たちに知ってもらいたいという新しい欲が出て来ました。

この記事を読んでくださった方が、何か一つでもヒントを得て、プレゼンを好きになってくれたら、これほど嬉しいことはありません。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


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