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ファストファッションが世界的に流行し、途上国で製造したものを先進国で消費するというアパレル業界の流れが強まる中、Made in JapanにこだわりをもつファッションブランドFactelier(ファクトリエ)と途上国で教育支援をするNPO e-Educationが「途上国のものづくり」をテーマに語ります。

本日は両団体の対談イベントとしてファクトリエ銀座店で開催された「ものづくりカレッジ」の様子を余すところなくお伝えします!

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はじめに

ものづくりカレッジのスタートはまずはアイスブレイクから。

参加者のみなさんに「バングラデシュのイメージ」を上げていただいたところ、「グラミン銀行」や「ユーグレナ」といった会社の名前や「カレー」といった食文化までさまざまなイメージが。

しかし、実際にバングラデシュを訪れたことのある人は参加者の中でも1〜2名と極小数派。バングラデシュのリアルとはどのようなものなのか、普段バングラデシュに滞在しているe-Education代表・三輪を交えてのトークセッションが始まりました。

トークセッション

第一部 途上国に教育を届けるe-Educationの挑戦とは?

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トークセッションの第一部はe-Education代表の三輪から当団体についてのプレゼンテーション。

e-Educationは途上国で映像授業を届けるNGOです。バングラデシュから始まった途上国の教育革命ストーリーを三輪は「よそ者」「わか者」「ばか者」という3つのキーワードで語ります。

1つ目の「よそ者」とは、まさしくバングラデシュに飛び立った三輪自身のこと。

実は、学生時代にバングラデシュ発のファッションブランド「マザーハウス」でインターンをしていた三輪。現地の工房でバッグを生産する手伝いをしていたところ、現地の職人が非常に丁寧でレベルが高く、途中でじゃまもの扱いされてしまい仕事がなくなってしまったのだとか。

そのような状況でどうにかバングラデシュに貢献できる方法がないかと悩んでいる頃に出会ったのがのちのe-Education創業者である税所篤快。

税所は当時、大学2年生でバングラデシュのグラミン銀行でインターンをしていました。ただ、三輪曰く彼はエクセルが使いこなせず、銀行で働いているにもかかわらず銀行員になりきれなかったのだそう。

そんなバッグが作れないバッグ屋さんとエクセルが使えない銀行マンが会うと何が起こるか。それ以外の分野でバングラデシュのために働こう!と意気込んだのでした。

そして、2人が共通して感じていたバングラデシュの課題が「教育」だったのです。

彼らが出会ったのがある一人の高校生。農村部で先生不足が顕著な中、「家族を支えたい」という一心で灯油ランプのもとで勉強していた生徒でした。電気のない田舎で毎日灯油ランプが切れるまで勉強を続けている彼をみてどうにか最高の教育を届けることができないか、と考えた結果思いついたのが、日本の予備校で使われている「映像授業」でした。

バングラデシュの林修をDVDに収録し、農村部で授業を行ったところ、なんと1年目にバングラデシュの東京大学、ダッカ大学に1人の学生が合格したのでした。

よそものだからこそ持っている「共通の原体験」
よそ者だからこそ知っている「未来の常識」

この「よそ者」の力から始まったのがe-Educationなのです。

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2点目の「わか者」で紹介されたのはラオスに飛びったった日本人学生のストーリー。
彼は大学に入るまで学校の勉強についていくことができず、引きこもりを経験していました。

大学に入学してから学生の多さに圧倒された彼でしたが、ひょんなことからフィリピンに1ヶ月間渡航してみたところ、授業が難しくて学校についていけない、学校に通うのが大変という途上国の人々に大きな共感を覚えます。

水を得た魚のように自分の居場所を途上国に見出した彼は「落ちこぼれだからこそできることがある」と気付き、ラオスへ。

ラオスでは自身も苦労した算数のむずかしさを現地の小学生に乗り越えてもらうために「かけ算九九のうた」を制作し、2週間でクラスの平均点を2倍にまで引き上げました。

その功績が認められ、日本で文部大臣に表彰されるほどに。

三輪はこのストーリーから

若者だからこそ持っている「弱さを認める力」
若者だからこそ知っている「新しい共感の力」

が世界を変えるとうったえます。

そして、3つ目の「ばか者

この話のなかでは

バカものだからこそもっている「夢に挑戦するちから」
バカものだからこそしっている「失敗をたのしむ力」

がキーワードとなりました。

2016年7月、バングラデシュでは痛ましいテロ事件が起こりました。実は、三輪はその当時テロ事件の現場からそう遠くない場所に滞在していて、事件後72時間安全確保のためホテルから出ることができませんでした。

そんな身動きがとれず、食べ物も手に入れることができない中で、助けてくれたのがバングラデシュの仲間たち。
雨のなかずぶ濡れになりながらも食べ物を持ってきてくれたそうです。

そんなとき、三輪は「これはチャンスだ!」と思ったそう。

テロの実行者が優秀なわかものだったという報道に胸を痛めながらも、自分を助けてくれるのも同じバングラデシュのわかもの。ここに希望を見出した三輪はダッカの大学を巡っては講演を繰り返し、バングラデシュの学生たちに明るい未来への道があることを説いてまわったのです。

そして、そんなバングラデシュのわかものの一人であるシャフィさんから日本人に向けて当日はサプライズのビデオメッセージが。

シャフィさんも三輪と同じようにバングラデシュの若者を応援しているのですが、そんな若者をぜひ日本に送りたいとのメッセージ。

将来、日本とバングラデシュをつなぐリーダーになるかもしれない若者を一緒に応援しようという思いを込めて、第一部を締めくくりました。

第二部 ファクトリエ山田氏×e-Education三輪クロストーク

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トークセッションの第二部はファクトリエ代表の山田氏とe-Education代表の三輪のクロストーク。
「ものづくりと途上国の正しい関係」というテーマのもと、途上国の産業についてや三輪の生活など、なかなか日本からでは目にできない「リアル」を山田氏が紐解いていきます。

クロストークの前半は、第一部のプレゼンテーションを踏まえての三輪自身の話やバングラデシュの生活について。

山田氏の「三輪さんの膨大なエネルギーの源泉は?」との質問からはじまります。

まず、教育という観点からは自分のことを「受験マニア」と呼ぶ三輪が自身の大学受験を振り返って語ります。

大学受験は自分の弱み強みを認識して、弱みをカバーするか強みを伸ばすかなどの戦略が大事だといいます。その上で、数学が得意な人は数学が得意な人なりの国語の解き方があるなど、個々の教科に関してもその人らしさが出るといいます。

この様子から「受験勉強は人生」と語り、教育が多様性を秘めていることの面白さを伝えます。世界各国の受験制度を見る中で、例え問題が悪くても人生を切り開く道がたくさんあるようにさまざまな切り抜け方がある点に面白みを感じるのだとか。

また、2つ目のエネルギーの源泉は、バングラデシュのテロ後に感じた使命感。

ダッカで起きたテロの影響でバングラデシュから多くの日本人が引き上げるなか、バングラデシュを変えるために「テロの現場近くにいた私じゃなくて誰が行く」という思いが強く湧いてきたといいます。

テロの起きたバングラデシュに拠点を移すことが「自分と会社と社会が一本の線でつながる」選択肢だったのです。

そしてクロストーク後半、いよいよものづくりの話題へ。

まずはバングラデシュの産業についてです。
バングラデシュは10年ほど前までは農業7割・縫製3割といった産業構成をとっていましたが、近年は「デジタルバングラデシュ」と呼ばれる政策でIT産業を後押ししてるおかげもあって、エンジニアが徐々に育っているのだとか。

時給換算150円程度で日本の一流大学を出たエンジニアと同等のスキルをもつバングラデシュのエンジニアには注目が集まるのだという。

ただ、ITに限らずものづくり全般に言えることですが、途上国でもインターネットが普及した現在、いわゆる「下請け」をしていたバングラデシュの人材の中では変化が起き始めています。

自分の生産したもの・サービスがどこで消費されているのか今までは見えることはありませんでしたが、現在ではインターネットを通じて自分の商品の最終型を確認することが可能になりました。

その状況について山田さんは
「例えば10ドルで途上国の職人が作っているものが先進国で100倍の値段で売られている現状を知ったら職人は疑問を持つのでは?」との問いを投げかけます。

それに対して三輪からアメリカの企業のケースを紹介。アメリカでは現在、途上国の人が先進国の人々にECサイトを通じて商品を販売するモデルが見られるようになっており、途上国のオリジナル商品を直接届けるようになっているという。

既存のブランドの下請けではなく、途上国オリジナル商品を届けられるようになることで、「ブランドという考えが覆る」と山田氏。

一方で、直接的な販売が可能になるにあたって、コミュニケーションの壁が立ちはだかるのも確かです。

映像授業という間接的なコミュニケーションをしている三輪からみて「生のコミュニケーション」の大切さとは?

教育は、TeachingとCoachingの2つがありますが、知識を与えるTeachingはDVDという映像で可能な一方、Coaching(育てること)はリアクション・オリジナリティのある切り口を伝えることでしか成し遂げられないといいます。

山田氏もこの「生のコミュニケーション」の大切さを服を仕立てる過程で感じるといいます。
ファクトリエのコンシェルジュと呼ばれる職人は、お客さんの骨格や色彩をみて1番適した服をオーダーすることができ、この領域は生のコミュニケーションでしかなせるものではなく、機械によって取って代わられるものではないそう。

また、そのように勢いよく伸びるバングラデシュに滞在する三輪に対して山田氏から「日本に帰ってきて感じることは?」との質問。

日本との1番大きな違いは「高校生が国を変えたいという」こと。自分たちが主人公という感覚は今の日本にはない感覚ではないかといいます。

「これはものづくりでも起こるのでは?」と三輪。

実際に生産している量は途上国の人たちのほうが多く、この生産を通して技術が向上し先進国に追いつく可能性は十分に考えられるといいます。その先の未来には「先進国が途上国から学ぶ」時代がすぐそこまで来ていると言います。

各国が互いに尊敬する姿勢が重要であり、そうすることで日本の中にいるだけではわからないものづくりのよさに気づくことができるのだとか。

その上で、途上国と日本の双方の良さに気づくための旅先として「バングラデシュでみなさんをお待ちしています」とトークセッションを締めくくりました。

おわりに

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トークセッションのあとには、ベトナムのお茶をいただきながらしばし参加者、登壇者交えながらの歓談。

「知的欲求」が強いというファクトリエのファンの方々は、セッションが終わってからも熱が冷めることがなく、積極的な質疑や熱い意見交換を行いました。

途上国とものづくり。私達の日常からは遠いようで実は身近であり、すぐ先の未来では途上国と先進国の新たな交わりが待っているということをひしひしと感じさせられるイベントでした。

ファクトリエでは定期的に他団体とイベントを開催しているので、今回参加されたみなさんも、そうでない方々もぜひまたご参加ください!


途上国の教育課題を若者の力で解決する

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