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こんにちは、マニラプロジェクトマネージャーの伊藤聡紀です。現在マニラで大学受験用コンテンツを届けるため日々走り回っています。

前回の記事では、UPCAT(フィリピン大学入試)直前の生徒の様子について書かせて頂きました。そして、今回はUPCAT本番についてお伝えします。

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UPCAT合格を信じてラストスパート

8月の1週目。これまで山あり谷ありのマニラプロジェクトでしたが、毎日実施校に駆け回り、あっという間に勝負の週を迎えていました。生徒たちも、週末には本番という事で心なしかそわそわしています。

そして、私も生徒と同じように一日一日、本番が近づくごとに緊張していました。これまで、UPCATのために生徒たちへ、週3日、放課後に授業コンテンツを届けてきました。正直なところ反省点ばかりで、生徒に対して当初自分が思い描いていたような授業を届ける事が出来たとは言えません。

しかし、本プロジェクトに共感してくれたパトリックをはじめとするUP生、とても協力的な学校の先生方、そしていつも明るくて元気をくれる生徒がいてくれたおかげでここまで来ました。そういった周りの人への感謝の気持ちも込めて、各学校のUPCAT前の最終授業で生徒を激励しました。

そして、バララ高校での激励後、何人かの生徒たちはキャンパスの雰囲気や、試験当日のテストセンターの場所確認のため、フィリピン大学に下見に行くとのことでした。

フィリピンにも願掛けや迷信がある?

私も皆から一緒に行こうと誘われ、行ってみる事に。みんなどこの高校の生徒たちも試験当日を目前に控え、UPを下見に来ている様子です。そこに来て、初めて知ったのですが、日本と同じように試験へ挑む上でいろいろと迷信があるようでした。

日本では試験前、道で滑ったり転んだりすると試験にも落ちるという事を良く言われますが、ここフィリピン大学入試でも試験前にしてはいけない事があります。

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理由は分かりませんが、フィリピン大学の象徴であるモニュメントの前で写真を撮ると試験に落ちると言われています。実際、たまたまモニュメントの近くを通りかかった時「記念にここで写真を撮ろう」と生徒に言うと、驚いた顔で「それはダメ!」と言われてしまいました。

皆さんも良く聞く、カツ丼やキットカットなど、成功や合格のために験を担ぐものが日本にもありますが、試験や勝負の結果を何かに投影するのは日本人だけではないようです。

むしろ迷信や噂というものは、日本人に負けないくらいフィリピンの人たちは好きです。生徒たちは「UPのあの学部等には昔自殺した幽霊がいる」といった話をしょっちゅうしていました。

こんな興味深い発見もありながら、私たちは試験直前の準備を済ませ、ついにUPCAT当日を迎えたのです。

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勝負の日!ハプニングを乗り越え、全員で合格へ

ついに迎えたフィリピン大学受験の日。パトリックと試験を終えた生徒を迎えようと、大学で待ち合わせする事にしました。UPCATは全国8キャンパスで朝・昼の2部制で行われます。そのため、マニラに住む多くの生徒が受けるDilimanキャンパスへ昼頃に向かう事に。

やはりフィリピンの公立で最高学府にあたるUPの受験日という事もあり、その日は大渋滞でした。キャンパスに近づけば近づくほど、渋滞は酷くなって、一向に進みません。

やっとの思いでUPに着いても、送迎の車でごった返し。いつもの広大でゆったりとしたキャンパスの雰囲気はありませんでした。ようやく生徒たちとの待ち合わせ場所に到着すると、すでに受験を終えた生徒が何人かいました。

試験最大のネックは、時間

「試験はどうだった?」と真っ先に感想を聞くと、皆難しい顔をしています。「う〜ん、時間がなくて問題を考える時間が足りなかったよ」、こんな風に何人かの感想を聞いて、共通していたのは時間の問題でした。

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授業でも時間を計りながら解く訓練をしていたので、生徒が時間内に解くことが難しいのは分かっていました。そのための対策やテクニックの実践等ももちろん行いました。それでもやはり、試験本番という場で緊張してしまったのでした。

全体的に時間が最大のネックになり、生徒を困らせていたことが明確になり、今度の大きなヒントになりました。結果的にですが、DVDの授業を観る時間と、問題を解く時間との都合で、本番と同じ量の問題を解く練習が出来ていませんでした。

試験が終わって気付く事は非常に多く、このような対策を詰め切れなかった部分で後悔が残ってしまいました。プロジェクトも荒削りで修正するべきところばかりなため、今回の反省点を絶対に次に生かして行こうと思います。

一方で、UP生のアドバイスを生かして受験本番を緊張しながらも、乗り越えた生徒がたくさんいました。睡眠、朝食、服装、受験前にすべきことなど、UP生が合格のために実践した事を参考に受験に臨んだ事で、大きな問題もなく終えられたという話を聞いて安心しました。生徒もダメだったと言いつつも、どこかやり切ったという顔をしています。

やはり、受験という一つの山場では一人一人にドラマがあって、生徒にとって忘れられない物になったと思います。そして私自身、一つのドラマと出会う事になりました。一人の女子生徒のある出来事をきっかけに、人の人生に大きく関わっているんだと強く実感する事になりました。

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受験できない?

そのドラマは、受験日2日目の朝から始まりました。急に電話が鳴り、出てみるとパトリックが慌てた様子で話し始めました。

「マサイ高校のウェンディーが、病気で朝の部の受験が出来なかった。だけど、なんとか午後の部で受けたいらしいから、なんとかしてあげてほしい!」と言われ、寝ぼけた声で「ぉ、おう!」と言って、UPに直ちに向かいました。

あいにくパトリックは用事があって、今すぐには迎えないとのこと。とにかく早く不安で不安でしょうがない生徒をなんとかしようという思いで向かいました。

メールでウェンディと連絡を取って、受験予定の建物の前で落ち合う事に。メールの文面からも不安さが伺えたので、何を話そうかと色々と考えていましたが、良い考えが思い浮かびませんでした。

そんな中、本人が体調が悪そうで不安な顔をして、待ち合わせ場所に現れました。「大丈夫?」「うん。」付き添いの人が誰もいなかったので、余計に不安になっていました。

しかし、彼女はどうしても受けたいと言います。私もそんな彼女の思いをかなえたいと思い、無理をしないように言って事情を説明しに受験会場にいきました。そして、係の人を見つけ、出来るだけの事をしようと事情を説明し受験させてもらえるようお願いしました。

「彼女に受験させてあげて下さい!」

「……わかった。中に入れ!」

係員の人は一瞬困った表情をしましたが、なんとか許可を得られる事ができたのです。2人ともその言葉を聞いてほっとしました。とにかく開始まで時間もないという事で、リラックスして今まで通りに受けるよう言いました。「ありがとう」と言って、受験会場に入っていく彼女を見送りました。

突然の重大な場面に出くわし、なんとか受験できる事になって安心しました。しかしながら、自分の果たす責任の大きさを感じずにはいられませんでした。生徒はもちろんのこと、この出来事は私にとっても忘れられないものとなったのでした。

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途上国の教育課題を若者の力で解決する

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