みなさん、こんにちは。e-Educationの三輪です。
先日、日本・ミャンマー・バングラデシュという3カ国の若者が一緒に旅をして学び合う実践型教育プログラム「LAMP」が始まりました。
3カ国の若者が一緒に旅をして学び合う実践型教育プログラム「LAMP」が始まります!
旅の始まりは日本。ミャンマーとバングラデシュの若者たち合計10名が日本を訪れ、《学ぶ・行動する・作る》という3つのキーワードをもとに作られた講義やフィールドワークを通じて、一人一人の成長のみならず国境を超えたチーム作りに挑みます。
2月9日からの6日間開催された日本プログラムが終了しましたので、今回はどんな6日間だったか、その一部をご紹介いたします。
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1日目
雪の降る東京で、日本プログラムの初日が始まりました。まずe-Education代表である私から「LAMP」を立ち上げた経緯と、このプログラムに込めたコンセプトに紹介しました。
そして早速、一人目のゲスト講師であるドキュメンタリー作家・茂野新太さんに講義いただきました。既に2本ミャンマーのドキュメンタリー映画を作られているものの、実はまだ現役の大学生。大学生ながら国境を超えた挑戦をしている茂野さんは、きっと参加者たちの良いロールモデルになると考え、ゲスト講師のトップバッターをお願いしました。
講義では、実際に作られたドキュメンタリー映画を上映いただき、ミャンマーの若手クリエイターたちと一緒に、どうやって作品を作り上げたのか、映画製作の背景やそこに込めた想いについてお話し頂きました。
Co-directed by Myanmar filmmakers to get wider viewpoints of both Japan and Myanmar.(ミャンマーの映像制作者たちと一緒に作品を作り上げることで、日本とミャンマー、それぞれの視点が広がった)
茂野さんの最後の言葉は参加者全員に響き、国境を超えたチームで活動する大切さを学んだ講義でした。
- 茂野さんのインターン先:ヤンゴン編集プロダクション
- ドキュメンタリー製作に挑戦した経緯:ミャンマーで学生がドキュメンタリー 第二次大戦下のミャンマーを振り返る – CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
2日目
2日目は《Act(行動する)》というテーマに沿って、日本を代表する社会起業家3名から参加者たちにしてミッションを提供いただき、チームに分かれて社会課題の解決に挑みました。
- インタビュー記事:DBICサポーター FILE 03:後藤 学 株式会社 Helte 代表取締役 | デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)
- NHKおはよう日本:「高齢者がテレビ電話で国際交流」
- テレビ朝日 スーパーJチャンネル:「生きがい発見!”仕事付き”高齢者住宅」
- 世界の女性社会起業家22人に選出:世界ーに選出!一般社団法人防災ガール代表理事「田中美咲」、世界的コンペで日本人唯一のノミネート&最優秀女性社会起業家に
- WEBインタビュー記事:防災にファッションを取り込むように、非日常を日常に。「防災ガール」が生む新しいビジネスの切り口 | ライフハッカー[日本版]
- 日テレNEWS24:防災ガールの活動 「普段の生活に防災を」
ミッション発表後、早速チームに分かれて活動を開始。
「Sail (セイル)」後藤さんからのミッションに挑むチームは、日本の高齢者のリアルな声を聞くために、浅草へ移動。3カ国の若者たちが力を合わせてヒアリング調査を実施しました。
1チーム5名ずつに分かれて活動を開始
電車で浅草へ移動。海外参加者たちにとって初めての地下鉄でした
浅草でヒアリング調査。みんなで協力しながらインタビューを実施
他チームもミッションに沿って、課題のリアルを知るために足を使って情報を集めます。《Act(行動する)》のテーマ通り、参加者みんな行動しながら考え、2日後に控える起業家たちへのプレゼンテーションへ向けて準備が始まりました。
3日目
3日目は朝早くからチームに分かれて再び調査へ。
「Factelier」 山田さんからのミッションに挑むチームは、ファクトリエのお店に伺い、山田さんへ直接インタビューさせて頂きました。
日本の電車移動を楽しむ海外参加者たち
お店で商品に触れながら、山田さんからものづくりへの想いをヒアリングする参加者たち
「こんな考え方があるなんて知らなかった」とメモがいっぱいになりました
約1日かけて現場調査を重ねた参加者たち。学んだことをどうやってプレゼンテーションにまとめあげ、どう伝えたら良いのか。参加者たちの悩みに応えるために、午後は”発信のプロ”であるゲスト講師2名を招き、特別講義を開催しました。
著名ブロガーの松本博樹さん
写真家の苅部太郎さん
『ノマド的節約術』を運営されている著名ブロガーの松本さんと、ロヒンギャ難民の人々をポラロイドで撮影した『Letters To You』など数々の作品を手がけてきた写真家の苅部さん。お二人とも好きなこと、得意なことを仕事にされており、特に海外参加者たちは生き方や働き方にも刺激を受けていました。
Focus on
what only you can do(自分にしかできないことをしよう)
松本さんや苅部さんの言葉の中には、発信力をどう磨くかだけではなく、どれだけ多くの人たちと一緒に言葉や写真の力を広げていくのか、仲間たちと一緒に活動する意義についても紹介いただき、翌日に控えるプレゼンテーションの準備が大きく進みました。
- 運営されているブログ:『ノマド的節約術』
- インタビュー記事:「もっと人に会いたい」。ノマド的節約術やOMIYA!運営者の松本博樹が語る【場所にとらわれない働き方】とは? | 灯台もと暮らし
4日目
日本プログラムも後半戦。4日目の朝は、六本木ヒルズまで移動して、今回のプログラムのアドバイザーメンバーにもなって頂いた一橋大学名誉教授の米倉誠一郎先生に特別講義を開いて頂きました。
戦後日本がどのように復興したのか、「教育」の必要性について講義いただきました
真剣に講義を聞く生徒たち。「目から鱗の話ばかりだった」という感想をもらいました
米倉先生の講義が終わると、参加者たちはプレゼンテーションの最終準備に。午後は、3名の社会起業家へ向けてプレゼンテーションが開かれました。
そして迎えたプレゼン本番。参加者たちはチームごとに持ち時間10分間で、起業家から出されたミッションに対して、自分たちなりの仮説やアイデアを発表しました。
防災ガール・田中さんのミッションに挑んだチームのプレゼン
“How to make Japan a world-leading country for DRR for the Olympic and Paralympic Games?(オリンピックやパラリンピックに向けて、日本が世界に誇る防災先進国になるためにはどうしたらよいか?)”
防災先進国と呼ばれる日本。幼少期から防災訓練があり、会社でも全国の自治体でも防災訓練は行われており、世界に誇る防災教育が行われていますが、訪日外国人向けの防災サービスが整っているかといえば、そうでもありません。
このチームは、都内の防災環境のリアルを知るために渋谷へ出かけ、街頭調査を実施しましたが、やはり外国人向けの防災案内は整備されているとは言い難く、彼らの挑戦がはじました。
身近なもので防災に使えるものはないか?外国から旅行できた人たちがすぐアクセスできる防災ツールはないか?
3ヶ国の若者たちが意見を出し合い、生まれたアイデアがこちらです。
Suicaの裏側に防災Tipsをのせるアイデア
都内のWi-Fi接続時に防災クイズを出すというアイデア
いずれのアイデアも、海外から来た参加者たちならではの視点や想いが詰まったものであり、プレゼンを聞いていただいた田中さんからは、こんな素敵なコメントをいただきました。
私がこの7年間でみてきた日本全国の防災のアイデアと1ミリもかぶることなく、それでいてゆうに超えるアイデアがミャンマーとバングラデシュの若者たちから出てきてしまった。
アイデアだけで泣きそうになった。#LAMP #eedu #防災 #オリパラ— 田中美咲 | misaki tanaka (@misakitanaka) 2019年2月12日
彼らだけではありません。他のグループも社会起業家たちをハッとさせるプレゼンを披露してくれ、国境を超えて若者たちが協力し合うことによって生まれる無限の可能性を再確認する時間となりました。
5日目
プレゼンテーションを終えて、チームの結束力が強まった参加者たち。このタイミングで、ミャンマーとバングラデシュの2カ国に関連したロヒンギャ難民問題について、みんなで考える時間を作りました。
朝は参加者みんなとNHKのスタジオに行き、ロヒンギャの取材をされていたディレクターの方へ訪ね、どのような想いで取材され、映像にされたのかヒアリングさせて頂きました。
昨年e-Educationの取り組みをドキュメンタリー番組にまとめて頂いた方々を訪ねました
世界の隅にあるような小さな声を、できる限り多くの人へ届けたかったのです
NHKの方の言葉を聞き、参加者みんなが発信することの意義について考える場となりました。
そして午後は在日ビルマロヒンギャ協会(BRAJ)代表の長谷川健一さん、娘の留理華さんにお話を伺いました。お二人とも既に日本国籍をもたれていますが、家族同士ではロヒンギャの言葉で会話するほど自身の文化を大切にされており、現在はバングラデシュの難民キャンプで学校を運営する活動もされています。
- インタビュー記事:“ロヒンギャ系日本人”が群馬にいた! 「差別なんて古くない?」 – ganas 開発メディア
- ロヒンギャ難民特別支援の取り組み:世界難民の日×ロヒンギャ難民特別支援のクラウドファンディングキャンペーン(Earth Company)
そんなお二人の話にバングラデシュやミャンマー、そして日本の参加者たちは一気に引き込まれました。
「今こそ平和と教育が必要だ」と語ってくれた健一さん
「宗教や人種の問題ではないはずです」と話してくれた留理華さん
お二人の話を伺う前、ミャンマーの参加者とバングラデシュの参加者が熱く議論している姿を見ました。
「なぜアウンサンスーチーさんはずっと沈黙しているの?」
「どうしてロヒンギャの人たちはミャンマーに戻りたくないの?」
SNSにはフェイクニュースが溢れ、テレビや新聞にも情報の偏りがある今を生きる彼らにとって、ロヒンギャの文化を知り、難民キャンプで暮らす現地の人たちの声を誰よりも理解しているお2人の言葉は、参加者全員の心に深く響きました。
(ロヒンギャの人たちにとっての希望は何ですか?という質問に対して)ここにいるあなたたち全員が希望であり、私たちの手で一緒に明るい未来を作っていきましょう!
留理華さんの最後の言葉はこのプログラムに込めた想いそのものであり、これから旅を続けて今私たちにできることを探していこうと思います。
集合写真は、平和の象徴でもあるピースサインで
6日目
プログラム最終日。5日間で学んだことを参加者一人一人が3分にまとめて発表する最後のプレゼンテーションを開く前に、最後のゲスト講師であるドキュメンタリー作家の久保田徹さんに登壇いただきました。
この日の朝に海外ロケから帰国された久保田さん
久保田さんは茂野さんと同じ大学生の映像作家。そしてロヒンギャの問題を事件発生前から追いかけており、2016年には『Light up Rohingya』で国際平和映像祭にてAFP通信賞、学生部門賞を受賞された若手クリエイターです。
そして現在は、自身の手だけで作品を作るのではなく、ミャンマーのクリエイターたちとチームを組み、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプを一緒に取材しにいくなど、国境を超えたチームを作って活動しています。実はこのプログラムを立ち上げる際に、久保田さんたちの活動から着想を得ていたこともあり、最後の講師はぜひ彼にお願いしたいと考えていました。
- インタビュー記事:22歳、慶応大5年の映像作家が追う最大級の人道危機「ロヒンギャ問題」 | BUSINESS INSIDER JAPAN
- 国際平和映像祭2016 学生部門賞受賞作品:『Light up Rohingya』
- 国際平和映像祭2018出展作品:『Prayer in Peace』
Documentary films empowers people to think by themselves
without offering specific answer, but throwing questions.(ドキュメンタリーは人々が考える力を引き出すものだ。答えを渡すのではなく、問いを投げかけるという手法でで。)
久保田さんの言葉は「LAMP」のプログラムそのものを象徴するような言葉であり、このプログラムを通じて良い問いを生み出し続けていこうと思いました。
そして、最後の5日間で学んだことを参加者一人一人が3分にまとめて発表する最後のプレゼンテーションが始まりました。ストップウォッチは一切止めません。参加者15名、合計時間45分で全員がリレー形式でプレゼンしました。
トップバッターはバングラデシュのIffat「タイムマネジメントの重要さを学びました」
「教育者として、ここで学んだことを母国の生徒たちに伝えたい」と話してくれたミャンマーのJohn。
「努力する人が輝く場所を作りたい」と今後取り組むことを話してくれた若林
「チームで挑戦することの意義を学んだ」と5日間を振り返ったバングラデシュのTusha
「平和をつくりたい、みんなと一緒に」と想いを語ってくれたミャンマーのOhmar
「これからもクレイジーでいこう!」と最後にプレゼンをまとめた中川
ここで紹介した6人以外の9人も、それぞれが学んだことや今後やろうと思っていることをプレゼンにまとめ、45分で全員分のプレゼンがしっかり終わりました。
一人一人が誰かの想いを代弁し、全員分揃って一つのプレゼンになっており、《Learn-Act-Make》な6日間がギュッと詰まった時間でした。
参加者15名、素晴らしいチームへと成長した6日間でした
最後に
「LAMP」は、ここで終わりではありません。
4月にミャンマー、そして8月にバングラデシュと、まだまだ旅は続きます。
もちろん渡航する時だけではなく、それまでに振り返りや渡航準備を重ねながら、「学ぶ・行動する・作る」に溢れた時間にしていけたらと思います。
最後になりますが、今回の日本プログラムにご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました。皆さまの感謝の気持ちを忘れずに、彼らと学びの旅を続けてまいります!

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