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こんにちは!e-Educationミンダナオ島プロジェクト担当の佐藤建明です。「教育開発」という夢を掲げ、フィリピンのミンダナオ島にて映像授業を活用した教育プロジェクトを展開しようと奮戦しております。

前回の記事では、日本への一時帰国を経て、新しい決意のもと再びミンダナオ島へ飛んだことに関してお話いたしました。今回の記事では、現地に到着して早々、無理難題を要求してくる教育局との交渉がスタートしたことに関してお話できればと思います。

パソコン50台という過度な期待

現地に着いてすぐに僕は、現地の有力なリーダーである熱血アクロ校長に会いに行きました。

現地での最初の話し合いの場には、教育地区長(フィリピンは全国に17の教育地区があり、その一地区長)やエレナ教育局長も参加しており、e-Educationプロジェクトが非常に期待されたプロジェクトなのだということを感じました。

一通り、今後のプロジェクトの方針や計画を確認した後のこと。とある関係者の方がこう切り出したのです。

「ところで次は何台のパソコンを寄贈してくれるんだ?ちゃんとIT教育の環境を整えるには50台は必要だ。それに大きなプロジェクターも。

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昨年、e-Educationミンダナオ島プロジェクトでは、プロジェクトの実施環境を整備するために、マニラのNPO法人Class For Everyoneと協働しました。そして、パイロット校の一つルンビア高校に、10台のノートパソコンを設置したという背景があります。

実は、僕が日本に帰国している間、現地ではこの「プロジェクトのためのPC設置」が教育関係者の間で一人歩きをしてしまいました。いつしか「e-Education=パソコン寄贈・設置プロジェクト」であるかのように見なされていたのです。

現地ではどの学校もPC環境が圧倒的に不足している上に、ノートパソコンは非常に高価(中古でも新米教師およそ一ヶ月分の給料に匹敵)です。そのため、こうした過度な期待を現地の先生方にかけられるのも無理はありませんでした。

再びゼロからスタートした確認と交渉

それから何度もアクロ校長はじめ関係者と議論を交わしては、e-Educationプロジェクトの目的や、自分の役割、そして学校や教育局側の要望に関してあらためて確認・交渉を重ねました。

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またe-Educationプロジェクトは、本当に日本の多くの方々に様々なかたちで「応援」をしていただいています。そうした様々な「応援」に対して、どのように我々が「より良い」プロジェクトを作り上げていくかという視点を、現地の関係者にも持っていただくよう何度も話し合いました。

この時期は、交渉が難航し、プロジェクトが頓挫するかもしれないという不安も相まって、心身ともかなりきつい時期でした。

難航してでも現地の「自主性」にこだわった理由

プロジェクトに責任を持って、現地関係者を引っ張っていくのはもちろん担当する日本の学生です。そして正直に申し上げれば僕自身、一時帰国した頃までは、恥ずかしながらミンダナオ島プロジェクトは「僕自身の成果であり所有物である」かのような感覚を持っていました。

しかし、一時帰国後、たくさんのパワフルな出会いに恵まれながら、様々なリーダーシップの在り方、プロジェクトの成功要因を少しずつ学びました。そして、僕自身のプロジェクトに対する「想い」も変わっていったのです。

e-Educationプロジェクトの「最終的な」本当の主人公は、バングラデシュのマヒンのような現地の大学生、そしてプロジェクトに参加する生徒や先生

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僕自身はあくまで彼らが進んでいく道を最初に整備し、彼らの「自主性」を喚起する「仕掛け人」であるべきだと考えるようになりました。 この現地の「自主性」をいかに喚起するのかという点について、僕はカイトさん(副代表の三輪開人)とも何度も議論をしました。

「枯れた井戸」にならないために

話は戻りますが、現地での直近の一番の課題はPC環境の不足であり、現地の方々がまず「カタチ」として日本サイドに最も期待しているものでした。しかし、リユースPCと言えど、その輸送やソフトウェア交換などには「少なからず」の必要経費が生じます。

もちろんこの必要経費を日本サイドで負担することは可能でしょう。しかし、先程も申し上げたように、現地の最終的な「主人公」は現地の方々です。

ここで、もし日本サイドが全ての必要環境を「気前よく」整備してあげればどうなるでしょうか。プロジェクトは目下順調に進むでしょうし、現地の方々もその一時はきっと大喜びです。

しかし、現地の方々はきっとこれから何か不足や必要があれば「これは日本のプロジェクトだから」と日本サイドの助けに「依存」するでしょう。もっと言うと、既に芽生え始めていた彼らの「自主性」を摘み取ることになるかもしれません。

最終的にミンダナオ島プロジェクトは、現地の「自主性」を失い、国際協力で少なからずありがちな「与える側の自己満足」や「枯れた井戸」になってしまうことでしょう。

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そのため僕は、交渉が多少難航してでも、現地の「自主性」をいかに喚起していくかに徹底してこだわったのです。

対等なプロジェクトパートナーとして

ついに現地で「自主性」の萌芽が見えてきたのは、コンテンツ作成に向けた講師選定の段階に入った時でした。アクロ校長の強い後押しもあり、カガヤンデオロ市教育局が、プロジェクトの本格始動に向けてルンビア高校への教師の増援を決定したのです。

プロジェクトに不可欠なPC環境整備の必要経費をe-Education側が負担し、学校側がその対価として講師の謝礼費を負担する。つまり、講師に無償で出演していただくことになったのです。

こうしてe-Educationミンダナオ島プロジェクトと現地の教育局は、「与える側と与えられる側」という依存関係ではなく、「対等なプロジェクトパートナー」として相互協力してコンテンツ作成を始めることができました。

元々、カガヤンデオロ市のルンビア高校での実施準備に並行して、カガヤンデオロ市から少し離れたカミーギン島でのプロジェクト実施も同時に準備していました。そこでも上記の条件でコンテンツ作成の方向がなんとかまとまりました。

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難航する交渉がひと段落したミンダナオ島プロジェクト。次回の記事では現地の大学生が立ち上げたとある「e-Educationスピンオフプロジェクト」に関してお話できればと思います。非常に可能性に富んだプロジェクトですので、ぜひお楽しみに。

本日もご愛読くださり、誠にありがとうございました!


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