昨年、東南アジアのe-commerce(EC: 電子商取引)市場は大きく動きました。
それぞれが他とは違った手法で、バックに巨額の資金を連ねて新地開拓。Tech in Asiaによれば、2013年だけで5億ドル(約510億円)ほど東南アジアのeコマーススタートアップに投資されたそうです。
この一連の流れを見ていると今現在、東南アジアのeコマース市場はバブル状態にあると言えるでしょう。この記事では、改めてなぜこの業界に注目が集まっているのか、問題点、そして今後について考えていきたいと思います。
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東南アジアのeコマース市場が魅力的な理由
1. 強い経済成長
ASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールなど)のほとんどの経済が急成長しており、それに伴い国の平均所得も上昇傾向にあり、より多くの人の購買意欲を高めています。
BCGの調査によれば、インドネシアだけで2020年までに、約7000万人が中所得層に入るそうです。
2. テクノロジーを知る大きい若年層
技術に精通した、多くの若い消費者は、東南アジアの市場のもう一つの魅力的な面です。
東南アジアの約3億人が30歳以下で、都市へ移住する数も増えてきています。さらに、世界でも高いテクノロジー(スマートフォン・PCなど)との関わりを持っており、フェイスブックやツイッターなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)がeコマースの消費者を拡大させることでしょう。
3. 未開拓の大市場
他の新興国市場と比べて、東南アジアのeコマース産業は、未開拓です。例えば、旅行予約サイトは東南アジアでは比較的浸透しています。C2C(消費者(Consumer)同士での取引)も成長しています。
その一方で、オンラインでのB2C(企業から個人消費者への取り引き)はまだ始まったばかりと言えます。
4. アマゾンに勝てる!
B2Cの市場セグメントでは、アマゾンに対抗できる地元スタートアップが数多く存在します。
アマゾンはもちろん東南アジア(CMLV:カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム諸国以外)でもサービスを提供しており、配送料と配送時間では勝ち目はないでしょう。
しかし、アマゾンの主要プロダクトであるKindle販売などの、これらの地域での直接オーダーはまだ行なわれていません。
まだ巨大なeコマース企業であることは変わりありませんが、下記でご紹介するローカル企業にマーケットシェアを奪われつつあります。
2012年4月から翌年3月にかけて、アマゾンは5ヵ国全てでマーケットシェアを落としています。
東南アジアのeコマースの現状
Rocket Internetが引っ張る2つの企業
以前トジョウエンジンでも、フィリピン発のネット通販ベンチャー「Lazada」が新たに1億ドルを調達という記事をご紹介しました。
この黒幕には、ドイツの世界最大のインターネットインキュベーター「Rocket Internet」があります。
そして、Rocket Internetは、「Zalora」というファッションのオンライン取り引きに特化した企業にも大きく投資しています。
アマゾンとは真逆で、同時期に全地域で利用者が増加しています。
他のグローバルeコマース企業も参戦!
アマゾンに対抗するのは、Rocket Internet傘下のスタートアップだけではありません。日本の楽天と、中国のアリババも台頭してきています。
ファッションの他にも、ニッチ市場を狙った企業もあります。アマゾンの横に立つオフィスサプライのStaplesや、スポーツ用品のDicksSportingGoodsなどは有名です。
ちなみに、Zapposは2009年に、赤ちゃん用品を扱うDiapersは2010年にアマゾンに買収されています。
eコマースの高い需要
オンラインショップ、Pomelo Fashionを運営するジョウさんは言います。
都会から離れたところに住んでいる人たちにとって、eコマースは地元には無い、多種多様なプロダクトへのアクセスを与える。価格競争で、人々がより多くのものを少ないお金で買うこともできるようになるだろう。これは人々の生活を劇的に変えることだろう。
そしてもちろん、eコマースは雇用を創出し、オンライン・マーケティングやグラフィック・デザインなどの、職の多様化も図れることでしょう。
今後への課題
上記の良いニュースがある一方、東南アジアのeコマース市場は様々な理由から未開発です。利益率が低く、広いスケールでのサービス提供が必須の企業にとって、これらは大きな問題となります。
1. 分散された市場
東南アジアは、大きく非常に断片化されたマーケットです。それぞれの国が違う法律と向き合うeコマース企業を必要としており、消費者の好みなど普遍的ではないのが特徴です。
2. 低いインターネット/スマホ普及率
ほとんどの場合、eコマースは消費者がオンラインの時に使われます。しかし、2012年のITUのデータによれば、シンガポール、マレーシア、ブルネイを除く全ての東南アジアの国でインターネット普及率は40%以下、という結果です。
インドネシアでこの数字は20%、ラオス・ミャンマー・カンボジアの発展途上国では一桁でした。そのため、モバイル(携帯)eコマースが認識され始めてきています。
携帯電話の普及率は2008年から急激に成長してきていますが、多くが基本的な機能しか兼ね備えていなく、インターネットは使えません。
シンガポール、マレーシア、タイで広く使用されているスマホ(スマートフォン)は、インドネシアは未だに23%、フィリピンでは15%程度となっています。
ただ、インターネットと携帯電話の普及率が日に日に伸びてきていることは事実です。
3. eコマースの認識不足
テクノロジーが普及していないことは、消費者のeコマースに対しての認識が無い、ということにもなります。つまり、この地域に進出した企業が最初に始めなければいけないのは、eコマースとは何か?どのような利点があるのか、という説明です。
オンラインでのセキュリティの問題も重要で、東南アジア諸国では注意されています。
4. ロジスティクスの問題
そして、東南アジア全土でのインフラ不足、という大きな壁に当たります。”第二の都会”と呼ばれる地域、地方では、基本的な道路の整備などが欠かせません。ジャカルタやバンコクなどの大都会では、渋滞が配送時間を遅らせることでしょう。
Photo: ISCVT
5. フィナンシャルサービスの未開発
シンガポール以外、銀行・クレジットカードが発達している地域は少ないのが現状。Vela Asiaの昨年の調査結果によると、50%のシンガポールの人たちがeコマースでの決済をオンラインで行なったとのこと。
ちなみにインドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンでは5%以下です。
COD(キャッシュオンデリバリー)が一番ポピュラーな決済方法ですが、紛失・強盗・未払いなどのリスクがあります。モバイル決済も、フィリピンなどでは始まっていますが、まだ広がりを見せていない様子です。
問題解決への道
東南アジアでのeコマース事業の大きなポテンシャルが注目されがちですが、このような問題は深く国々に根付いています。インターネット企業はこれらの壁を壊すために日々奮闘しています。
しかし、インフラ整備など、これらの地域でのeコマース事業は、資本集約型ビジネスでしょう。つまり、Rocket Internetのような巨大な資本を抱えている企業しか参入できなくなり、参入障壁が上がり、競争が減る可能性も考えられます。
現時点で、eコマース事業の今後を語るのは難しいですが、多くのメディアが、2014年もこの産業は成長し続けるだろう、と言っています。
既存のグローバル企業に対抗できる、途上国発の企業が今後どんどん進出してくることに期待したいです!
[Techonomy/TigerMine/ecommerce.milo]
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