OLYMPUS DIGITAL CAMERA

こんにちは!e-Educationミンダナオ島プロジェクト担当の佐藤建明です。「教育開発」という夢を掲げ、フィリピンのミンダナオ島にて映像授業を活用した教育プロジェクトを展開しようと奮戦しております。

前回の記事では、現地のオープンハイスクールプログラム(OHSP)において、映像授業の大きな可能性を見出し、さらに現地の強力な教育リーダーに出会ったことをお話しました。今回は、早速そのOHSPを対象としたトライアル授業を行ったことについてお伝えしたいと思います。

教育開発のエキスパート、アモール博士へ頼み込む

現地の公立高校で展開されているドロップアウトを対象としたOHSP。そこで「映像授業」の大きなニーズがあると確信した僕は、現時点でのアイデアを実行に移そうと、ミンダナオ島屈指の教育開発の専門家であるアモール博士のもとを訪れました。

僕はこれまでも週に1回程度、定期的にアモール博士のもとを訪れては、プロジェクトのアドバイスをいただいていました。

そこで、僕は恐れ多くも「アモール博士!トライアル授業を作成するために、博士の知る中で最高の先生をどうか紹介していただけないでしょうか?」と思い切って頼んでみたのです。

するとアモール博士はしばらく考えたあと、「わかったわ!私の高校に、素晴らしい数学の先生がいるから彼女を紹介してあげましょう。」と言ってくださりました。

教育開発の教授でもあり、またある私立高校の学長でもあるアモール博士の紹介は、大した肩書きも能力も人脈もない僕にとって本当に力強いものでした。

現地の先生と一緒に、トライアル授業の作成

アモール博士が紹介してくださったバナアグ先生、グレ先生と僕は、早速ミーティングを行い、以下の内容でトライアル授業を作成することに決めました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

授業撮影時の様子

トライアルの対象は高校4年生。そして、科目は数学の「三角関数」(高校生500名にアンケートをとった中で、もっとも難しいとされるトピックのひとつであったため)としました。

テキストはOHSPで使用される「モジュール」をベースとし、冒頭解説から基本例題、演習問題までを網羅するものです。

バナアグ先生、グレ先生と僕は、トライアルの映像授業において、いくつか工夫をこしらえていましたが、実際に授業を行ってみて、僕はあらためてその「効果」に気づくことになったのです。

総勢250名を対象に、いざトライアル授業を実施

トライアル授業の対象は、カガヤンデオロ市内の3つの公立高校のOHSPに通う全4年生と、そしていくつかの通常クラスに通う4年生を合わせた総勢250名程度。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

現地のグサ高校でのトライアル

トライアルは、1.「三角関数」のプレテストを解く→2. 映像授業を受ける→3.評価テストの3段構成で行い、それぞれの時点でアンケートをとりました。

トライアルの結果は、「映像授業」の可能性を非常に感じさせるものでした。1時間程度の映像授業でも、その学習効果と即効性は明快で、7割近くの生徒がテストの解答数を大きく伸ばしました。さらには、ほぼ全ての生徒が「もっと映像授業を活用して勉強したい」と答えたのです。

しかし、テストの出題範囲が非常に限定されていたこと、映像授業という「目新しさ」が生徒にとってはウケたこと、などを考慮すれば、一概にこの結果を良しとすることはできないでしょう。

とは言え、トライアル授業のコンテンツは、視聴する生徒をしっかり釘付けにし、彼らの自主的な学びを促す「工夫」がほどこされていました。

トライアルの映像授業における「工夫」と、その「成果」とは

トライアル後、僕は先生や生徒にインタビューを行い、アンケートの結果と併せて、今回のトライアルの「工夫」がどういった「成果」をもたらしたか考えてみました。

1点目の工夫としては、やはり授業内で英語と現地語を上手く使い分けた点が挙げられます。

問題の導入や、画面越しの生徒に質問を投げかける際、またジョークを飛ばす際など、画面越しに生徒との「擬似的な」交流を図る際は、現地語を積極的に用いました。

こうしたインタラクティヴなやり取りを、問題や解説の合間に挟むことで、画面越しの生徒をモチベートし、彼らの学びに対する「主体性」を換気させることができました。

普段は「生の授業」を受ける機会のないドロップアウトの生徒たちにとっては、「映像授業」といえど、こうした「擬似」授業に、大きな驚きと関心を示していました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

解説の合間にジョークを飛ばし笑いを誘う(動画だとわかりやすいのですが)

もちろん専門用語や解答プロセスの解説は、学術言語である英語を用います。しかし、正しい発音や用法も併せて学ぶことができるという「新たな発見」も、生徒へのインタビューを通じて知ることができました。

2点目の工夫としては、「解答プロセス」にとにかく重きを置いた点でした。

OHSPのテキスト「モジュール」の弱点は、その簡略化された問題解説にあります。そこで練習問題における解答プロセスを逐一解説していくことで、どういったステップを踏めば、回答に至るかを徹底的に押さえたのです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

生の授業に比べれば、「映像授業」は確かに、そのインパクトや学びに対する「強制力」といった面は弱いかもしれません。しかし、「映像授業」ならばつまずいたところで何度でも、納得がいくまで繰り返し学習することができます。

  • 生徒の学びに対する「自主性」を換気する工夫
  • プロセスに徹底して重きを置いた解説

この2点を重視した「映像授業」を作成することで、OHSPをより質の高い教育プログラムへとカスタマイズできると、僕はトライアルを通じて確信しました。

現地の教育局へ「e-Education」を売り込む

トライアルの結果と、先生や生徒へのインタビューを踏まえて、僕は、OHSPとe-Educationの提供する「映像授業」の相性は抜群だと確信。

そして、「映像授業」の提供だけでなく、生徒一人一人に応じたサポート体制を作り、より多くの生徒の学習機会の充実を図りたいと思いました。そのためには、現地の大学生を中心としたプロジェクトサポートチームを結成し、現地の教育局と正式に協力関係を構築することが不可欠だと考えたのです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

現地の教育学部の学生らと

そこで、僕は先のトライアル結果を携えて、トライアル先の高校の先生と一緒に、現地の教育局を訪問。

これだけ明快な「成果」が出たのだから、現地の教育局も「e-Educationプロジェクト」と快く協働してくれるに違いない、と踏んでいた僕は、すぐにその考えが甘かったことに気づかされました。

無事にトライアルが成功したものの、e-Educationプロジェクトとの正式な協働には難色を示す現地の教育局。次回の記事では、あの手この手と様々な方法を試みた結果、プロジェクトがどうなったのかについてお話させていただけたらと思います。

本日もご愛読くださり、誠にありがとうございました!


途上国の教育課題を若者の力で解決する

SPONSERD LINK