「この世界にバイクで運べない物なんてない」
新鮮な卵や、フラフープ、鮫皮までバイクで運んでしまうホーチミンのバイク乗り達の姿は、まるで私たちにそう語りかけてくるようです。
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ベトナムのバイク乗りを追いかける写真家
ほとんどの人が車を持っておらず、地下鉄もないホーチミンでは、多くの人がどこへ行くにもバイクで移動しています。通勤や通学はもちろんのこと、ときには信じられないほどたくさんの果物やおもちゃ、生きたニワトリを運ぶことによって磨き上げられたその運転技術はもはや達人の域。ホーチミンに住んで数年になる写真家のハンス・ケンプさんは、そんな達人バイク乗り達の姿を記録しています。
ケンプさんは、時間があるとバイクタクシーを雇い、ベトナムの町をクルージングするそうです。
百羽ぐらいの生きたカモを乗せたバイクを見かけたときは、すぐにUターンしてそのバイクの横を一緒に走りながら、何とかその姿を写真に収めようとします。町中をジグザグに走り回り、何か面白い積み荷を運んでいるバイクがあればそれを追いかけるのです。この活動を数日間、数週間、数か月間と続けているうちに、気が付けば私は合わせて数百時間をホンダのスーパーカブの後ろに座って過ごしていました。
変わりゆく街の変わらないもの
ケンプさんがそれほどまで熱心に写真を撮影を行った裏には、”ベトナムの原風景”とも言うべきバイク乗り達の姿を、変わってしまう前に写真に収めたい、という思いがあったそうです。
ケンプさんがバイクの写真を10年前から撮るようになってから、運転しやすいようにと道幅は広くなり、よりたくさんの人が車を買うようになりました。また、多くの家庭で冷蔵庫が使われる始めたことで、農家が毎日バイクに乗せて運んでくる新鮮な食べ物を買う必要も、徐々になくなっているそうです。
とは言っても、ホーチミンは今だ3700万台のバイクを抱える都市。2005年に出版した写真集「Bike of Burden」を最近見返したケンプさんは、街の姿が当時からそれほど大きく変わっていないことに気付いたそうです。
ケンプさんが撮影したホーチミンのバイク乗り達の姿は、今までバイクの後ろに何か乗せたことのある人ならば、必ず衝撃を受けるはず。何か難しい問題に直面した際には、そっとこのバイク乗り達の姿を思い浮かべて、「この世界に不可能なんてない」ということを思い出したいですね。
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