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「僕たちが話している今この瞬間、僕はアフリカの水たまりにいるカバを見ているんだ」

Charles Annenberg Weingartenさん(以下、ウェインガーテンさん)はセールスマンシップと本物の驚きが入り混じったような声でそう話します。

「パイプラインビーチでは波が砕けているのが見えるよ」

世界中の公園からライブ映像を配信

ウェインガーテンさんはアフリカでカバのそばに立っているわけでも、ビーチで海に足先を浸しているわけでもありません。実際には6匹の犬に囲まれて、カリフォルニア、サンタモニカのアパートにある緑色のソファーに座っています。

目の前にあるスクリーンには、世界中に設置されたライブカメラで撮影されている映像のうちいくつかのものが映しだされています。

ウェインガーデンさんが設立したExploreは、世界中のパークや施設に75台以上のHDカメラを設置。来年には150台までその数を増やす予定だそうです。

これまでに撮影された映像はのべ1億時間にも及び、カメラ映像はすべてExplore.orgでストリーミング再生されています。サイトのページビュー数は月間約3000PV、訪問者は100万人ほど。

そんなウェインガーデンさんの目標はテクノロジーを自然と相反するものとしてではなく、自然へと通じる入り口として使うこと。

ソーシャルメディアやEメールなど、何かとせわしくなくなった今日この頃、Explore.orgを訪れてゆったりと時間の流れる外の世界を眺めることでリラックスできるのが人気の理由のようです。

ウェインガーデンさんはExplore.orgについてこのように話しています。

様々なガジェットに囲まれて、私たちの日々選択肢の多さに圧倒されてしまいます。すべてのことが非常に早い。こんな時代だからこそ、私は安心できる場所を提供するとともにみなさんがスローダウンするお手伝いをしたいと考えています。

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先にあるのは未来の環境保護や国立公園のあり方

多くの人に安らぎの時間を提供するExplore.orgですが、ウェインガーデンさんはそのさらに先、未来の環境保護や国立公園のあり方まで見つめています。

「彼とチャーリー(ウェインガーデンさん)は世界中にカメラを設置してクマを撮影しようとしていたんだ」

そう話すのはアラスカのカトマイ国立公園でレンジャーとして働くRoy Woodさん(以下、ウッドさん)。

「パンダはもういる、ホッキョクグマもいる、そしたら次はヒグマだろうといった具合でね」

2012年、ウェインガーデンさんの同僚から突然連絡を受けたウッドさんは、Exploreの支援のもと、公園内にヒグマを撮影するためのHDカメラを設置。

このライブカメラ、ピーク時には2万人もの人が同時に視聴するほどの人気ぶり。カトマイ国立公園の年間来園者数が2万ほどであることを考えると、このライブカメラの導入がどれほど公園への関心を高めたのかをうかがい知ることができます。

また世界最大規模の鳥類保護団体であるオーデュボン協会でディレクターを務めるStephen Kressさんは、以前にExploreと海鳥を撮影する活動を行った経験からこのように話しています。

島々にカメラを設置ことは、誰でも鳥を見に行くことができる唯一の方法です。また実際に飛んでいる鳥を見ることなくして、人がそれらを守りたいという気持ちになることはまずありえません。

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映像、哲学、写真、そしてウェブを使ってハブをつくる

現在46歳、Exploreの設立者であるウェインガーデンさんとはいったいどんな人なのでしょうか?

ウェインガーデンさんのお母さんであるWallisさんはNPOを支援するAnnenberg Foundationの設立者。兄弟はAnnenberg Foundationで働いています。

裕福な家庭の出身であるウェインガーデンさん、しかし友人や同僚はウェインガーデンさんが質素生活を送っていると話しています。2つのベットルームがある山小屋風の家はサンタモニカにあり、愛車はホンダのエレメント、休日はサーフィンに行ったり、安いタイマッサージに行ったり、愛犬ラッキーと遊んだりして過ごすそう。

学生時代には映画の勉強をしており、卒業後はライターやクリエイティブ関係のディレクターとして働いた後EnerChiと言うヨガウェアを扱う会社を始めました。

2006年にはExploreをAnnenberg Foundationのフィルム部門として設立。世界中で「良い活動をしている人」を映像に収めるため、グリーンランドやルワンダ、中東諸国を回ったそうです。

その活動の中で、ウェインガーデンさんは徐々に「伝統的」な映像撮影の方法に疑問を持つようになります。

あまりにも時間がかかりすぎるのです。また、たくさんの人から承認をもらう必要もありました。

またウェインガーデンさんはこのようにも話しています。

私はいつもストーリーが語られる方法にとても不満を感じていました。そんな時に映像、哲学、写真、そしてウェブを使ってみんながその周りに集まり、みんながそれ称えるハブを作ろうと思いつきました。

将来的には水中撮影やドローンを使った撮影まで

2011年、ウェインガーデンさんはExploreをこれまでとは少し違った方向にシフト。Pearls of the Planetという世界中にライブカメラを設置する新しいプロジェクトを始めました。Exploreはこれまでに億単位の投資をこのプロジェクトに行ったそうです。

ウェインガーデンさんはExploreのライブカメラプロジェクトを拡大していく方法に関して、まだまだたくさんのアイデアを持っています。

現在は南アメリカでのHDカメラの設置を準備中。水中撮影やドローンを使った絶滅危惧種の撮影など、まだまだ野望は尽きることがありません。また、You Tubeのようにユーザーのカメラで撮影した動画をシェアできるような仕組みも検討しています。

Exploreは自然との触れ合いを促進しているのか?

おそらくExploreの最大の関心は、果たしてライブカメラによってビューアーがより自然と触れ合いたいという気持ちにさせているのか、それとは反対にスクリーンを通じて自然を「体験」することで、ユーザーが実際に自然と触れ合う機会を奪っているのかということでしょう。

この点に関してウェインガーデンさんはこのように語っています。

私たちはあなたがパソコンを閉じて、映像に移っているその場所へ向かってくれることを目指しています。もし実際にそこへは行けなくても、せめて木の下や地元の公園へ行ってほしいというのが私たちの願いです。

みなさんが最後に自然に触れたのはいつですか?

せわしない今の時代にこそ、たまにはそっとパソコンを閉じて、外に出て自然と触れ合い、自分をスローダウンさせることが必要なのかもしれませんね。

[Mashable]


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