最近、ワクワクするニュースがありました。天才中学生棋士、藤井四段の快進撃です。
史上最年少の将棋プロ棋士としてデビューして以来、公式戦で一度も負けていない藤井さん。連勝記録はどんどん更新され、ついに23連勝。あの羽生善治三冠を上回って歴代3位の記録となり、勢いが止まりません。
私は将棋のプロではありません。それでもこんなにワクワクするのは、きっと自分の仕事の将来が、国際協力の未来が、藤井四段の快進撃と重なって見えるからだと思います。
「国際協力の定石は、きっと若者たちによって覆されていく」
この記事では、私がこれまで信じてきた国際協力の未来と、若者の可能性についてお伝えできればと思います。
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国際協力の定石
「定石」という言葉をご存知でしょうか?
辞書で調べると、囲碁や将棋において長年の研究によって最善とされる決まった指し方(打ち方)のことを意味する言葉であり、「定石を踏む」「定石通り」といった言葉は、様々な分野で用いられます。
私は大学を卒業するまで「定石」という言葉を日常的に使うことはなかったのですが、社会人になってJICAで働き始めると「定石」という言葉を何度か聞く機会がありました。
そう、国際協力の分野には「定石」があるのです。
考えてみれば当然の話です。1955年から日本の国際協力が始まったと言われていますが、現在に至るまでの約60年の間、その知識と経験は蓄積され、「最善手」とも言える仕組みと手法が生み出されてきました。
JICA職員としての私の最初の仕事は、まさにこの「定石」を覚えることから始まりました。棋士が棋譜を研究して対局するように、私も「定石」を研究しながら国際協力の現場に飛び込みました。
定石を更新していく、国際協力の専門家たち
バングラデシュの首都ダッカのゴミ処理場
私がはじめて飛び込んだ現場は、JICA職員の新人研修の一環でバングラデシュに赴任した際に担当した、廃棄物処管理能力強化プロジェクトでした。
1000万人以上の人々が暮らすバングラデシュの首都ダッカ。私が着任した2010年、ゴミの発生量は1日4000トンを超えており、その処理は困難を極めていました。
雨が降ると、ゴミが汚水となって街中に広がり、雨が止むと異臭を放つ。そんな光景を見て、かつての日本を思い浮かべた日本人がいました。廃棄物処理能力強化プロジェクトの専門家、Iさんです。
東京の「ゴミ戦争」をキッカケに長年ゴミ処理の仕事に関わってこられたIさん。ダッカ市役所の中に「廃棄物管理局」を設立して指令系統を一元化し、20ヘクタールの埋立地を改善して今後何十年ものゴミを集約して衛生的に管理できる場所を設けることに成功しました。
その中でも最大の成果は、住民参加型のゴミ処理手法「ワード・ベースド・アプローチ」の確立です。この手法は、各地域の清掃員たちに専用の事務所を設け、マスクや安全具を支給することで、これまで蔑まれていた清掃員たちの地位を向上させるものでした。
「街をきれいにする、これほど素晴らしい仕事はない。あなたたちがいなければ、この街は崩壊する。それくらい意義のある仕事なんだ!」
異臭を放つゴミ処理の現場に飛び込み、清掃員たちを鼓舞するIさんの活躍を間近でみて、プロの仕事が何たるかを学びました。国際協力の専門家たちは、日本で磨き上げた定石を、現地の文化や風習に合わせて更新していたのです。
ちなみに、7年近く経った今でもこの仕組みは生きており、雨の中でゴミを集める地域の清掃員の人たちを見て、なんだか胸が熱くなりました。
埃ある町を、誇り溢れる町に
定石は、本当に定石のままでいいのか
Iさんの活躍をみて、そしてJICAの仕事を通じて、私は国際協力における定石の大切さを学びました。
国際協力は、国と国を結ぶ絆であり、時には人の命が関わることもあります。失敗は許されず、常に高い成果が期待されるプロの仕事であり、その中核を担う組織の一つであるJICAで働くことができたことは、今でも誇りに思っています。
ただ、国際協力の定石を知れば知るほど、生まれて来た疑問がありました。
「定石は、本当に定石のままでいいのか?」
将棋や囲碁のように「ルール(ゴールや前提)」が変わらなければ、基本的に定石が崩れることはありません。新しい一手も定石の更新に等しく、いずれは定石の一部となります。
しかし、「ルール」自体が変わったらどうでしょう?王将ではなく金将を2枚とったら勝ちというゴールになったら?飛車角よりも強い駒を新たに加えるという前提が加わったら?定石は崩れると思いませんか?
では、ここで改めて質問します。
「国際協力のルールは、本当に変わっていないのでしょうか?」
教育の分野を例にすると、2000年に設定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」によって普遍的初等教育の達成が、もっとざっくり言うと、すべての子どもが小学校に通えるようにすることが、世界各国の共通目標になりました。
そして2015年。今だに達成できていない国はあるものの一定の成果を上げ、新たに設定された「持続可能な開発目標(SDGs)」では、2030年までにすべての男女が無償で初等・中等教育を修了することが目標となりました。目指すべきゴールが、変わったのです。
変わったのはゴールだけではありません。「ミレニアム開発目標(MDGs)」が制定された2000年には、iPhoneをはじめとしたスマートフォンは存在せず、FacebookもTwitterもありませんでした。
Facebookが誕生したのは2004年。それから10年も経たないうちにユーザー数は10億人を超え、2017年5月には月間アクティブユーザーが19億人を超えました。「ミレニアム開発目標(MDGs)」を作った人たちの中に、この未来をいったい誰が予想できたでしょう?
定石は、きっと若者たちによって覆されていく
ところで、Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏が2017年現在何歳かご存知でしょうか?
答えは32歳。1984年5月に生まれ、20代で億万長者になりました。2016年の『フォーブス』調べによると、総資産約446億ドルで世界6位となり、最年少でのトップ10入りを果たしたそうです。
これはザッカーバーグ氏に限った話ではありません。20代で世界に名を轟かれている企業経営者はたくさんおり、スポーツ業界であれば世界記録を更新した10代選手も少なくありません。
「若者の力が、社会を変える」
ビジネスやスポーツの世界であれば当たり前とも言える考え方が、国際協力には当てはまらないのでしょうか?
私はそうは思いません。確信を持ったのは、ある日本人大学生との出会いでした。
彼は10代の頃からバングラデシュで働いていました。2006年にノーベル平和賞を受賞されたムハマド・ユヌス博士が創設したグラミン銀行グループの最年少日本人インターンとして働き、新しい事業のアイデアを練っていました。
バングラデシュの都市部と農村部の教育格差を解消する。そのためには都市部にいる最高の先生の授業を撮影して、(当時はインターネットが農村部に届いていなかったので)DVDにして貧しい村の高校生たちに届けて、彼らの大学受験を応援する。東進ハイスクールのように、『ドラゴン桜』のように、映像教育で奇跡の逆転合格を作り出す。
彼の話を聞けば聞くほどワクワクしてきました。定石を知らない若者のアイデアが、定石を覆していく。そんな未来がハッキリ見え、私は彼の挑戦を手伝うことを決めました。
これが税所篤快という大学生との出会いであり、e-Educationの活動の始まりです。
バングラデシュ最高峰の先生の授業をDVDにして農村の高校生たちへ
あれから7年。バングラデシュでは、貧しい村から100人以上の難関大学合格者が生まれ、世界各地で1万人を超える中高生に映像授業を届けて来ました。その活動の中心には、いつも日本の大学生や途上国の若者たちがいて、彼らは国際協力の常識に囚われず、ユニークなアイデアと驚くほどの行動力で、小さな奇跡を生み出し続けて来ました。
定石を覆す仲間を探しています
「国際協力の定石は、きっと若者たちによって覆されていく」
e-Educationの立ち上げから7年。あの時描いた未来図が変わったことは一度もなく、今もこれからも、私は若者たちの可能性を信じ、若者たちの挑戦を応援し続けます。
最後に告知となりますが、現在私たちはe-Educationは、そんな定石を一緒に覆していく仲間(大学生)を探しています。
アジアで1年間、国際協力の最前線で挑戦する実践型長期インターン。毎回5〜10倍近い募集があり、今回もどんな仲間と出会えるか本当に楽しみです。
今回の募集は、フィリピン・ミャンマー・ネパール・インドネシア・ラオスの5カ国。インターン時期は今年の9月から、もしくは来年の4月からの2種類で、きっと自分にあったプロジェクトがあるはずです。
若者の「一歩」には、世界を変える力があります。そしてそんな「一歩」を、e-Educationは全力で応援します。
「最高の授業を世界の果てまで届ける」
このミッションを実現するために、私たちと一緒に夢を追いかけてくれる最高の仲間を探しています。東京・関西で説明会もありますので、気になる方はぜひインターン募集記事をご覧ください!
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