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みなさん、こんにちは。e-Education事務局長の薄井です。

前回の記事では、途上国支援の取り組みが「先進国による押し付け」になってしまわないよう意識すべき姿勢をご紹介しました。

今回も引き続き、なかなかイメージしずらい「国際協力NGOの国内業務」を解説しつつ、現在の仕事に役立っているなと感じたオススメ書籍をご紹介していこうと思います。

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言葉で伝える仕事

私は2015年5月にe-Educationの事務局長に就任し、各国を飛び回りプロジェクトを推進する職員たちを支える「自称・東京お留守番係」として業務に取り組んできました。

「東京お留守番係」ではありましたが、スタッフ6名の小規模NGOであるためとても「オフィスお留守番係」ではいられず、振り返ってみますと様々なシーンで組織や活動内容についてお話をする仕事を担当してきました。

NPO/NGOスタッフがお話をさせていただく機会としては、支援者の方々へ向けた成果報告や、採用や研修での事業説明に加えて、以下のような対外的な発信の場があります。

①カンファレンス

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社会的インパクト評価に関するカンファレンスに登壇

NPO/NGOの特徴は、あまり他団体を「競合」として設定せず、非営利セクター全体を盛り上げるために「競争」ではなく「共創」というアプローチを選択するところにあります。

そのため、先進的な取り組みや優良事例の共有を目的として、行政や民間(中間支援組織など)が主催するイベントが多く開催されています。そうしたイベントには、NPO/NGO関係者や企業CSR担当者など、いわゆる「玄人」の参加者が多いのが特徴で、トーク内容については専門的・実践的な内容が扱われる傾向があります。

②大学での講義

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早稲田大学の「ボランティア論」という講義でゲストスピーカーを担当

e-Educationはもともと大学生のプロジェクトとして活動をスタートしました。そうした団体の歴史もあり、毎年複数の大学から講義のオファーをいただいています。

担当者の方からは「教科書やネット検索で触れられない生の情報で学生に刺激を与えたい」といったご要望をいただくことが多いです。カンファレンスや成果報告会と違い、受講している学生の全員が必ずしも「NPO/NGOに興味を持っている」わけではないところがポイントで、オープニングの掴みやワークの時間を設けてできる限りインタラクティブにするなどの工夫が重要になります。

③審査会(助成金など)

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三菱UFJリサーチ&コンサルティング社主催「ソーシャルビジネス支援プログラム」でのプレゼンテーション審査

財団や企業が運営している助成プログラムは年々進化し、そして多様になっています。助成対象ひとつをとっても、「①既存事業の拡張」や「②新規事業の立ち上げ」、「③組織基盤の強化」などの違いがあり、NPO/NGOが生み出す社会的インパクトを最大化させるために非常に考えられて運営されています。

それに関連して、助成先を決める審査プロセスにおいて「対面でのコミュニケーションを重視する」傾向が強まっていると感じています。申請書だけで助成先が決定されるのではなく、審査員の方にオフィスへお越しいただきヒアリングが実施されたり、選抜された団体による最終プレゼンテーションが設けられたりというものが増えています。

こうした審査会においては、それぞれの助成金の審査基準を見極めて話すというのも当然ですが、それ以上に「事業にかける想いや熱量」そして「e-Educationという団体、薄井大地という個人の信頼性」を審査員の方に伝えられるかが合否の分かれ目になります。

ありのままに伝えるという作法

こうした登壇の機会では、私はあまり事前準備の時間を長く取らず、作り込み過ぎないことを大切にしています。そして、当日の空気を大事にし、即時性や即興性を心掛けています。

もともと私が話すということに真剣に向き合った最初の機会は、「アナウンス研究会」というサークルで活動をした大学時代です。その中で私は「実況ゼミ」という活動の責任者を務め、週末には東京六大学野球の試合が行われている神宮球場へ足を運び、ラジオ実況を想定した実況練習を4年間飽きることなく続けました。

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大学時代、週末に何度も通った明治神宮野球場
(By Kakidai (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons)

大学卒業後はなかなか試合観戦に足を運ぶことも少なくなりましたが、先日サークルの後輩たちがインターネット配信サービス「BIG6.TV」で実況デビューしたというニュースが届き、それを読んでとても嬉しい気持ちになりました。その時に改めて、大学時代の経験が自分にとっての大きなターニングポイントであり、そして今の自分を支えている大切な財産なのだなと実感しました。

目に映るもの、肌で感じたものを、言葉を使って魅力的に伝えることはとても楽しく、奥深いものでした。私はその後バングラデシュやインド、フィリピンなどアジアの途上国を多く訪れることになり、「アナウンスの経験」と「途上国の経験」が掛け算されて今の自分があるのだと思っています。

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バングラデシュの農村で床屋(1回30円くらい)に行ったら

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物珍しさから村人が大集合してくる貴重な経験

ありのままに伝えようとすると、「平凡になってしまう」あるいは「機械的になってしまう」という不安が付きまといます。しかし、借り物の言葉だけでなく、自分の経験に基づく言葉を織り交ぜることで、ありのままでも自然とオリジナルになると私は思っています。

言葉を支える土台は「技術」ではなく「哲学」

所属サークルの影響もあり、学生時代からアナウンサーの方が書いた本をよく読んでいました。アナウンサーの書籍のおもしろさは、アナウンス業を通じて形成された「一人一人の違った人生観や世界観」に触れられる点です。

私が読んだ本の中では、フジテレビ・三宅正治さんの『言葉に魂(おもい)をこめて』や、ニッポン放送・吉田尚記さんの『ツイッターってラジオだ!』などが、テレビやラジオから離れて「人」や「社会」の見方に迫るユニークな内容でしたのでオススメです。

さて、今回の記事では私の人生に最も大きな影響を与えたアナウンサーの一人であるテレビ東京・大橋未歩さんの『逃げない力』をご紹介したいと思います。

困難との正面衝突から得た「魔法の考え方」

大橋さんは2002年にテレビ東京に入社し、スポーツやバラエティーを中心に数々の人気番組を担当。アナウンサーの仕事と並行して、ファイナンシャルプランナーの資格取得や、早稲田大学大学院に入学してスポーツビジネスの研究に取り組むなどマルチな才能と行動力も彼女の魅力でした。15年の長きにわたりトップアナウンサーとして活躍され、今年12月上旬にテレビ東京を退社することが発表されています。

さて、この本の第1章では新人時代の苦しい経験が赤裸々に綴られています。夢であったオリンピックの仕事を目の前にして、担当プロデューサーから「大橋とは一緒に仕事をしたくないスタッフもたくさんいることを覚えておけ」と釘を刺されるほどの大きな挫折を経験したのです。

その後どのように社内の信頼を勝ち取り、看板アナウンサーとして成功を収めたのか。これまでのアナウンサー人生を振り返り、そのポイントを大橋さんは「魔法の考え方」という表現で紹介しています。

それではここから大橋さんの言葉を一部引用しながら、「仕事と人生が楽しくなる魔法の考え方」に迫っていきたいと思います。

(1)「原点」や「本質」を大切にする

気軽にテレビを見ているお茶の間のみなさんにとっては「うまく進行したい」なんていう私の思いは単なるエゴイズムでしかないのです。

プレゼンや人前で話す機会なら、なにより「伝える」ということが一番の目的です。
であれば、「上手に伝えなければいけない」とか「失敗してはいけない」という「自分の都合」はいったん忘れて、「何を伝えたいか」に心を傾けてみます。

人前で話すのが苦手という人はとても多いですよね。プロのアナウンサーでなくとも、緊張の中で「なんとか上手く伝えなければ」と必死になった経験はほとんどの人にあるものだと思います。

大橋さんは、仕事での一つのミスをきっかけにイップス(精神的な理由により極めて簡単な動作ができなくなる症状)を発症したそうです。極度のプレッシャーと向き合いながらも、番組で共演する所ジョージさんの言葉などを通じて肩の力を抜いて仕事に取り組めるようになった経緯がこの本で紹介されています。

やはり人は様々な思い込みによって自分を追い詰めてしまうものです。そうした時には、「原点」を見失っているのではないかと自分を疑う視点も大切ですね。

(2) 正しいプライドを持つ

ほんとうは、プライドなんて必要ありません。仕事へかけるプライドは持つべきだと思いますが、自分を大きく見せるプライドは仕事の邪魔になるだけ。

人からの評価は水物、でも経験はどこにも逃げない本物の財産だと思っています。

大橋さんは、入社半年で生番組のキャスターに抜擢された際に「前任者と同じレベルが求められている」と思い込んで虚勢を張り続けてしまったと振り返っています。わからないのにわかったふりをしたり、謝ることができなかったりして、その結果「お前とは仕事したくない」と言われるほど孤立してしまったのです。

チームの一員として仕事をする上で、他のチームメンバーの目に自分がどう映っているかは非常に重要です。そしてまた同時に、「全く関係ない他者」(大橋さんの場合は週刊誌の記事であったり”世間の目”でした)からの評価は重要でなく、自分のために積み重ねるべきは【無意味な評価】ではなく【有意義な経験】なのです。

(3) 自分と組織を、冷静かつ客観的に捉える

会社員として最も怖いのは、嫌々仕事をやることを体が覚えてしまい、いつのまにか主体的に動けなくなることだと思っています。

やりたいことがみつからない時、うまく波に乗っていけない時のおススメは「恩返しの時間」にするということです。

アナウンサー(特に在京キー局)は非常に華やかな舞台で働いているイメージがあり、そして多くの人に知られる「有名人」です。しかし忘れられがちなのは、注目を集める存在であると同時に「会社員」でもあるということ。

大橋さんが意識する「マイナスの感情を放置しない」という姿勢は、働く人々みんなに通じるとても大切なものだと思います。担当する仕事の100%全てが自分のやりたいことだというケースは極めて稀です。その変わらない事実を変えようと疲弊してしまうのではなく、それでも自分が悪い方向に変わってしまわないようにどんなアクションができるか。

大橋さんは夢であったオリンピックの仕事を担当してから「次なる目標」がすぐに見つからなかったとき、アナウンス部の上司に「人手が足りない場合は、何でもしますので言ってください」と伝えたそうです。そして、それまで支えてくれていた他のアナウンサーへ恩を返すつもりで日々の業務に取り組んだというエピソードには、幸せに働くためのたくさんのヒントが詰まっていると感じました。

いかがだったでしょうか?

テレビで目にするアナウンサーは、とても遠い「向こう側」の存在に思いがちですが、その悩みや困難を乗り越えた経験はとても身近なものに感じられませんか?

これからも、なかなかイメージしずらい「国際協力NGOの国内業務」を解説しながら、オススメ書籍をご紹介していこうと思います。

それでは、次回もお楽しみに。

 


途上国の教育課題を若者の力で解決する

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