ブルア中学・オープンハイスクール

ブルア中学・オープンハイスクール

こんにちは、特例認定NPO法人e-Educationの鈴木です。
残暑が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

先月8日(木)〜13(火)に「フィリピンフィールドスタディ’19」が開催されました。
今回のフィールドスタディの目的は「参加者がフィリピンの社会課題を解決するための一歩を考えること」です。
この記事では、10日(土)・3日目の様子を参加者でもある私がご報告させて頂きます。

3日目の流れ

  1. ブルア中学校オープンハイスクール訪問
  2. ルンビア中学校オープンハイスクール訪問
  3. 台風センドン被災者のための仮設住宅地エコビレ訪問

「I have no choice」ブルア中学校オープンハイスクール

この日は、2日目と同じ公立のブルア中学からプログラムがスタートしました。
2日目は平日のレギュラークラス(一般的な生徒が通う教室)を見学させて頂き、3日目は同じ学校のオープンハイスクール(様々な事情から平日の学校に通えない生徒のための、週末教室)とオープンシニアハイスクール(高校)を見学させて頂いたので、レギュラークラスとの違いを比較できたのがとても良かったです。

私たち日本人がオープンハイスクールの概要を聞いただけでは、「いわゆるドロップアウトした子どもたちなのかな」と想像するところだと思います。
確かにそういった側面がない訳ではないのですが、生徒一人一人に悲壮感は感じられず、むしろ楽しんで授業に参加していたり、一生懸命机に向かっている姿が印象的でした。

そうした雰囲気自体が、生徒たちにとってオープンハイスクールを利用しやすくしていると思いますし、周りの目も特段気にせずに制度を活用できている生徒も多いのではないだろうか、と感じました。
「不登校」と「一般的な登校」の中間、土日だけなら学校に通える、という受け皿があること自体、素晴らしいことだと思います。

みんな真剣な表情ですね

みんな真剣な表情ですね

先生や生徒にヒアリングを重ねていくうちに、浮き彫りになった問題点をまとめると、以下5点に集約されます。

  • 家庭の問題(親の理解不足、早期妊娠・出産など)
  • 個人の問題(病気や障害、高年齢、学習意欲や学力により授業についていけないなど)
  • 学校の問題(交友関係、先生との相性、エアコンがない、1クラスの生徒数が多いなど)
  • 地理的問題(家が遠すぎる、紛争や台風の被害が甚大など)
  • 経済的問題(自営業をせざるを得ない、家計を支えるため家政婦をせざるを得ないなど)

そんな中、とても印象的な女子生徒から話を聞くことができました。
彼女は元々教師を目指して、一般的な生徒と同様にレギュラークラスに通っていましたが、16歳で妊娠が発覚してしまいました。

生徒から直接ヒアリング

生徒から直接ヒアリング

結果、レギュラークラスに通うことができなくなり、オープンハイスクールに移ることに。
その時の気持ちを振り返る中「I have no choice……!」と言った後、目の前でワッと泣き出してしまいました。

それを聞いて、私は心が締め付けられるような想いでした。
もし彼女に適切な性知識があれば、未然に防げたのではないかと思わずにはいられませんでした。
子どもに「I have no choice.」と言わせてしまうこの世界の不条理を変えたい、そんな気持ちで一杯になりました。

彼女も今は子どもを育てながらオープンハイスクールに通い、大学進学&教師になるべく頑張っているとのこと。
母として、生徒として、夢に向かって頑張る彼女を心から応援したいです。
途上国の子どもたちを寄付で応援 »

将来の夢は兵士…、ルンビア中学校オープンハイスクール

午後から訪問したのが、ルンビア中学のオープンハイスクールです。
ここでも先生と生徒から現状の共有をしてもらいました。

先生から頂いたコメントで、

  • 教えれば教えるほど、オープンハイの生徒は感謝してくれる
  • オープンハイの生徒は特に、勉強だけでなく感情面のサポートも重要
  • レギュラーとオープンハイでは、意識的に教え方を変えている

と仰ってくださったのが印象的でした。

そんな生徒想いな先生方ですが、基本的には全員無償で週末の教壇に立たれています。
休日手当などももちろん出ず、モジュールと呼ばれる生徒たちに配布するプリントも自腹で印刷しているとのことでした。

自らの体験を赤裸々に話してくれ生徒たち

自らの体験を赤裸々に話してくれ生徒たち

私がインタビューした生徒の中に、「将来の夢は?」と聞くと「兵士になること」と言ってくれた男の子がいました。
最初にそれを聞いたときは、愛国心からそう言ったのかと思ったのですが、本当の理由は「たくさん人を殺せば、たくさんお金が稼げる。そうすれば家族も安心させられるし、オープンハイの先生にもお礼の報告ができる」とのことでした。

これは決して彼が悪い訳ではありませんし、将来の夢を聞いた時に「兵士」と答えてくれたのも彼一人ではなく、私が話を聞けた男子生徒の多くはそう答えていました。

私は彼らの夢を諸手を挙げて応援することはできませんが、現地の人にとって何が正義なのかを考えさせられました。

台風センドン被災者のための仮設住宅地エコビレ訪問

ルンビア中学からの帰り道、この日の最後に訪問したのが、エコビレです。
エコビレとは、2011年にフィリピンを襲った大型台風センドンの被災者が暮らす、集合仮設住宅です。

あるお母さんは、台風センドンによって近くの川が氾濫し、11台ものバスが流れてきて、数km先の海まで自分の家が流されてしまったそうです。

仮設住宅地エコビレ

仮設住宅地エコビレ

オープンハイスクールで出会った男の子は、センドンで被災し、経済的に苦しくなり、23歳になっても学校を卒業していないことを周りに馬鹿にされたことを悲しんでいました。
「僕は、同じような境遇にいるみんなのロールモデルになりたいんだ」
だから7年経っても学校に戻ってきたことを、目に涙を浮かべながら話してくれました。

私を含め今回の参加者全員が、学校・学年・クラス・年齢など、生徒一人一人によって事情も異なる、複雑な課題を抱えていることを実感する1日となりました。

e-Educationは、「最高の授業を世界の果てまで届ける」を使命に、フィリピンのオープンハイスクールの支援をはじめ、途上国で教育支援の活動をしています。
ぜひ私たちと一緒に、世界の子どもたちを寄付で応援しませんか?
途上国の子どもたちを寄付で応援 »


途上国の教育課題を若者の力で解決する

SPONSERD LINK