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海外ルーツの児童に必要な支援とは?

8月10日、日本に暮らしている海外ルーツの子どもたち(以下、越境児童)がどうしたら「自分らしく生きる」ことができるのかをテーマに、対談イベントを開催しました。

スピーカーには、e-Education代表の三輪と、特別ゲストとして虹の架け橋教室(NPO法人 静岡県教育フォーラムの運営)の代表・山下様をお迎えし、ともに取り組んでいる越境児童の話を伺いました。

虹の架け橋教室では、越境児童が来日してから学校へ入学する前に、日本語を中心として、七夕や交通安全ルールなど日本の文化や日本の学校の習慣を3〜6ヶ月ほど、教わる場を提供しています。

▲教室の掃除をする児童たち
 
 
これまで学校側の需要に応じて、算数も教えてきた虹の架け橋教室様ですが、「おはよう」など簡単なことばしか話せない越境児童たちに日本語によって算数を教えることの難しさが課題でした。

皆さんは、勉強をする時、考えたことがあるでしょうか?
なぜ日常生活ではカブトムシのことを「虫」と呼ぶのに、理科の教科書では「昆虫」と呼ばれているのか。
算数にも同じように、数字を紙に書いて行う筆算のように「算数方言」といった算数の教科書でしか使われていない専門用語があります。

このように、日常会話と勉強で使う日本語が異なると、越境児童にとって勉強はより一層難しくなってしまいます。

そもそも算数は、苦手になりやすい教科と言われています。

しかし、算数ができるようになると、論理的に考える力や問題を解決する力が高まり、理科や社会など他の教科の学習がよりスムーズに進むというデータもあります。

そこでe-Educationは14年間、皆さまのご支援により途上国支援で培ってきたカリキュラム作りや授業の教え方、あるいは講師やパートナー団体など、教育ノウハウや人脈を活かし、越境児童に母語での個別授業をオンラインで提供する協働をしています。

母語での算数の勉強は、勉強意欲を高めます。

たとえば現地の先生と、母語でのあいさつや出身地の話で盛り上がることができるので、その時間が楽しいと思えるのです。

▲母国の先生から算数の授業を受けるフィリピンルーツのI君

 
 
ここで、越境児童たちにどのような支援が必要か?を考えてみてください。

まず”日本語”は、越境児童たちが日本の学校に通うようになると、友達との会話など学校生活を通しての学習が期待できます。

さらに母語が十分に定着していない状態で、家でも学校でも日本語を学ぼうとすると、どっちつかずの状態になってしまい、母語と日本語の両方の習得が難しくなると言われています。

つぎに”算数”は、学校へ編入しても友達や先生から母語で学べる機会はほとんどありません。

算数ができるようになると、母語の学びが進んだという事例も多くあり、算数の学びによる論理的な思考のおかげで文法や構造の理解が深まることがあるのです。

さいごに”頼れる人の存在”を考えると、虹の架け橋教室では卒業した生徒たちは、今度は教える側にまわって活躍する循環が生まれています。

実は、これまでe-Educationが活動してきた途上国では、支援を受けた卒業生が今度は授業や相談など先輩として現役の生徒たちをサポートするという正の連鎖が起きており、同様のことが起きています。

▲児童に勉強を教える卒業生Aさん(写真左)
 
 
卒業生は自分が勉強で何につまづいたかといった経験を生かして、後輩たちの勉強を支えているのです。

そして、卒業生の活動は、越境児童を支える家族にまで広がっています。

ある保護者会では、卒業生のAさんは自身の経験を熱く語ってくれました。

兄弟が病気にかかったことで病院へ行く際にお医者様からの話を親へ通訳をし、通院する度に学校を休んでは通訳をしなければならなかったAさん。
「子どもが日本語を話せるようになっても、子どもたちに負けないくらい日本語の勉強を頑張ってほしいですし、何かあった時は子どもの通訳に頼れば良いとは思わないでください」
自ら経験した苦労をもとに、保護者に訴えかけていました。

Aさんの話のように卒業生の言葉は、保護者が子どもの気持ちに寄り添うきっかけとなるのではないでしょうか?

卒業生たちが積み重ねた経験や学びが、後輩たちにとっての一歩目となり、次の世代はさらに大きく成長していけるのです。

e-Educationによる母語で行う算数のオンライン授業について、虹の架け橋教室の教室長である土井先生から次のようなお手紙をいただきました。

虹の架け橋教室の児童の保護者からも、楽しく勉強に励む息子の姿をみて、
「日本に来て良かった。あなたたちに出会えて良かった」
というメッセージもいただきました。

このように、越境児童たちが「自分らしく生きる」ためには、日本語・算数といった勉強のサポートに加え、日本と母国の先生・卒業生・保護者の協力といった孤立を生じさせないサポートも同時に必要だと考えています。

対談の最後は、三輪の「越境児童が『自分らしく生きる』を応援する活動を、日本全国にも広めていきたい」という強い想いで締めくくりました。

私たちと一緒に海外ルーツの子どもたちが、自分らしく生きられる社会を広げていただけませんか?

▲笑顔で算数のオンライン授業に励む児童



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