Photo: Wikipedia
2014年4月、海外メディア「Fast Company」が「最も革新的な10つのアフリカベンチャー企業」を選出しました。
アフリカならではの課題をアフリカならではの方法で解決しようとする10社は、一体どんなモデルで、どんな価値をアフリカの人に提供しているのでしょうか。すべて紹介したいと思います。
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1. IHUB:ケニア発・大学連携型のインキュベーター
IHUBはケニアの技術起業の活発化を目指し、3つの取り組みを行っています。起業家のオフィススペース、投資家が集まる場、そしてベンチャー企業で働きたい人のジョブフェアです。
起業したい人に向けて、IHUBのメンバー制度には3段階あります。最初のWhite memberはIHUBにアクセスする権限だけを持ち、アイデアに賛同するパートナーが見つかったら、オフィススペースが利用できるGreen memberになり、さらに製品/技術のプロトタイプを作ると、スペース・起業コンサルティング等、多様なサービスを利用できるRed memberになります。
創設以来の3年間で、すでに1万人以上のメンバーが利用しているとのこと。ここで、150社のスタートアップが誕生しました。その中の多数は、アフリカならではの課題を取り組んでいます。IHUBは、ケニアの起業家・技術者の重要なコミュニティになっています。
2. SANERGY:トイレの提供で、収入増加・衛生改善・肥料供給の課題を解決
先進国では想像しにくいですが、アフリカではトイレの不足で、衛生の問題は深刻です。それに着眼したSANERGYは、「The SANERGY MODEL」を設計しました。
- スラムに安価で質が良いトイレを設置し、ローカルの管理人を募ります。
- 管理人はトイレの有料利用で収益を儲けながら、スラムの衛生条件の改善にも貢献しています。
- 一方、SANERGYはトイレのふん便を回収して肥料に加工し、農民に低価格で提供します。
この素晴らしいモデルを通じて、管理人・コミュニティー・農民のwin-win-winの成果を収めています。これまで、415軒のトイレは設置済みで、490人の住民に仕事の機会を与えて、毎日17,000人以上の利用者はきれいなトイレを使っています。
3. ONE ACRE FUND:農民に生産材料と技術研修を提供
生産性低下による収入低下は、アフリカの農民の厳しい生活の原因になっています。必要な材料(特に種と肥料)と農業技術を持っていない小規模農業の従業者は、貧しい生活を送って続いています。
こんな状況から脱出するために、文字通りの「seed money」と農業技術の研修を提供するのは必要です。更に、交通インフラは整備できていないため、市場へのアクセスも問題になっています。
これらの課題を解決し、農業の生産性向上を実現する為に、ONE ACRE FUNDは以下のことを行っています。
- 種・肥料を買う少額ローン
- 農民が買った種・肥料のデリバリ
- 農業生産技術の研修
- 農産物の購買
この4つのサービスを一括提供し、東アフリカの8万人の農民の状況を改善しました。
4. ROCKET INTERNET:新興国のベンチャーキャピタルファンド
ROCKET INTERNETの本拠地はドイツのベルリンですが、アフリカを始めとする新興国のベンチャー案件に多数参入しました。
多くの案件は、先進国と同じビジネスモデルをアフリカでも展開できるというパターンですが、そこに先進国の経験を活かす可能性が有ります。最近、ROCKET INTERNETがIPOするニュースも出てきています。
5. KONGA:アフリカのEコマースサイト
アフリカでEコマースを立ち上げるには、たくさんのハードルを考えられます。たとえば、リテラシーが低い客層、安全な支払い手段、信頼できる物流網などといったことです。
そのたくさんの課題がある中、KONGAは比較的に順調に成長してきた成功例の一つ。最近もVCの注目を集めて、Series Bの融資を遂げました。
Rocket Internetの投資を受けたJamiaと、ナイジェリアでeコマースの2強になりました。KONGAのオペレーションについてのさらに具体的な分析を楽しみにしています。
6. STERIO.ME:SMSとフリーコールで教育コンテンツを提供
収益を獲得する手法がまだ不明ですが、Sterio.Meはアフリカの現状に応じた教育コンテンツを提供するモデルを作りました。
各電器メーカーは、スマホ・タブレットの低コスト化を努めていますが、スマートデバイスと比べると、フィーチャーフォンのコスト優位性はやはり大きいです。
このような現状を踏まえて、Sterio.MeはSMSとフリーコールの組合せに基づいたモデルを開発しました。Sterio.Meのプラットフォームでは、先生たちは学生に送りたい音声コンテンツを録音し、質問を設計できます。
そして、プラットフォームから、SMSを学生に送ります。SMSに返信すると、先生が録音したコンテンツをフリーコールで聴くことが可能に。質問もSMSの返信を通じて回答することができます。
先生が作成した現地言語のコンテンツを、比較的に低いコストで遠隔送信。これでは、学校を通えない学生も勉強のチャンスを得られます。現在、ナイジェリアの75軒の学校でパイロットプロジェクトは実施中ですが、今後の事業拡大を期待しています。
7. UPENERGY:ウガンダの良い台所を作る
ウガンダの人々の台所に実は大きなチャンスがあります。燃焼効率が良いレンジを利用するだけで、50%の調理時間・燃料と炭素の排出量を削減することが可能です。そして、不十分な燃焼で生まれた有毒なガスも防げます。
炭素の排出量を削減すると、ウガンダにより多くの「炭素クレジット」を与えて、先進国でレンジを生産する企業に売ると、炭素クレジットが入手しやすくなるため、レンジを生産するコストも安くなります。
このような「炭素の好循環」を見つけたUPENERGYには、もう一つの強みはマーケティングとセールスです。
UPENERGYは地元の小売業者と提携し、特徴が目立つポスター等の販売ツールをパートナーに配ります。2011年10月からの2年間、30のパートナーができ、2.2万のレンジを販売しました。今後、水のフィルター・ソーラーライト等にも横展開する予定です。
8. DAPTIO:最先端の適応学習サービスをアフリカに
適応学習は2012年から、オンライン教育業界のホットトピックになっていましたが、大規模の成功例はまだできていないようです(こちらのレポートに参考してください)。
このような斬新なアイディアの実現は、一般的な考え方だと、先進国でまず成功例を作ってから、「安い」「シンプルな」バージョンを新興国に「輸出」するパターンでしょう。
しかし、逆に考えると、新興国では、伝統的なF2F教育は未発達で、質が高い教育に対するニーズが高いからこそ、ゼロから高度なオンライン教育を受け入れるインセンティブが高いでしょう。
南アフリカで、適応学習サービスの普及を目指すDAPTIOはこのような「逆輸出」の一例となるポテンシャルがあります。
9. PREPCLASS:受験勉強のプロ
日本で盛んでいる受験勉強。国内外のいろいろな試験に向けて、専門家から指導を受けることは珍しくありません。標準化試験は効果的な選抜手段でありつつ、受験指導へのアクセスがない人にとって、不公平な試合になりかねないのです。
それを解決する為に、PREPCLASSはオンライン+オフラインの試験勉強サービスを提供します。PREPCLASS一つの特徴は、「distribution center」です。
distribution centerは、ナイジェリア各地のネットカフェー・中学校・塾で、学生はPREPCLASSのアカウントを買い、そちらのパソコンでサービスを利用できます。
800ナイジェリアナイラ(約500円、ナイジェリア人の平均年収の約1%)で無制限の時間を利用するというプライシングも、地元にとって合理的でしょう。
10. AWEZA:言葉の壁を超えるクラウドソーシング
南アフリカには、11種類の公用語があります。様々な言語を使う人々が同じところに住むのは、アフリカでは典型的な状況。こんな言語の壁を超えることは決して簡単ではありませんが、クラウドソーシングという手段を活かしてチャンレンジするAwezaがあります。
誰のスマホからでも、一つの言語の言葉の意味を別の言語での解釈を追加することが可能です。言葉の発音を録音する機能もあります。このプロジェクト自身は、ビジネスに成っていないが、言語の壁を壊す巨大のデータベースを作っています。
アフリカ言語のリアルタイムの通翻訳、文字/音声認識等の高度なサービスは生まれる日は決して遠くではないと思います。
難題にチャンレンジするアフリカベンチャー
一見先進国に住んでいる人々と無関係ですが、実は人間として本質的なニーズに、如何により革新的な手段で応えるか、という難題にチャンレンジしているアフリカベンチャーたち。これらの革新的なアフリカベンチャーを見ると、わくわくしませんか?
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