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「辞任」

退職、転職といった言葉は最近よく耳にするようになった。しかし、外務省の医務官として赴任したスーダンにおいて、内戦で厳しい生活をしいられる人々を助けるために「辞任」した人は、おそらく世界に二人といないだろう。

川原尚行さん。認定NPO法人ロシナンテスの理事長として10年以上スーダンで医療活動を続け、現在はさらに大きな目標に向かって突き進んでいる。

なぜスーダンに残る決断をしたのか?これまでどんな壁を乗り越えてきたのか?そして、これから目指すゴールとは?

川原さんの挑戦、そして素顔に迫ります。

(聞き手:田才諒哉)

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ロシナンテスが考える「医療」とは

ーーまず川原さんが代表を務める「ロシナンテス」について教えてください。

私たちはアフリカにあるスーダンで医療活動を行っています。ハルツーム州の僻地にある、医療設備などのほとんどない地域にて、巡回診療を行うことをメインに活動しています。

そのほかにも、診療所の運営、井戸の建設など、ただ医療を届けるのではなく、そこで暮らす人々に清潔で安全な水を届けることや質の高い教育を届けることも重要視しており、それらすべてを幅広く捉え、「医」を届けることを団体のミッションとしています。

ーーただ「医療」を届けているのではない、「医」を届けている、ということなんですね。

はい。

綺麗な水がなければ安全な診療は行えませんし、地域の住民が綺麗な水を手に入れられれば、病気のリスクも低減できます。医療行為だけをみるのではなく、病気の予防からその人の未来まで、すべてを包括的に捉えて「医」と定義しています。

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医務官を辞任し、スーダンで起業

ーーそんな川原さんが国際協力の道を志したきっかけはなんだったのでしょうか?

私にとって初めての海外が仕事で訪れたタンザニアでした。初めての海外がアフリカで、そのインパクトは本当に大きかったです。

電気も水もなにもない地域へ行き、そこではまだその地域に根付く伝統医療が行われていて、村人たちは今を一生懸命に生きている。本当に力強く生きている姿を見て、「ああ、これが人間本来の姿なんだな」と一気に惹かれていきました。

その後、外務省の医務官としてスーダンに赴任することになったのですが、現地で起こる紛争の影響で日本からの援助が停止してしまったんですね。「いや、でもこれはなんとかしなきゃいけないんだ」と思い、医務官を辞任して自ら活動を行うようになりました。

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来る日も来る日も診療を続けてきた川原さん

ーー医務官を辞任してまで活動を志した決意が本当にすごいと思います。最初は一人で活動を始めたということだと思うのですが、現地で困難はなかったのでしょうか?

一人で始めるということ自体が大変ではあったのですが、私一人だけではやはりできないので、スーダンの方々に前線に立っていただき巡回診療を行っていただくようにしました。今は現地スタッフが9名いるのですが、彼らに診療をメインで行ってもらっています。

また、診察の中でもイスラームの文化と衝突したことはありました。例えば、ある部族では女性の口腔内を見ることがタブーであったりするので、しっかりと現地の文化や価値観を理解した上で診療活動を行っていかなければなりませんでした。

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All for one. One for all.

ーーなるほど。そうした困難をスーダンの方々と一緒に乗り越えて今があるのですね。スーダンでの活動のこれからの展望を教えてください。

これまで11年間にわたり巡回診療を始めとする地域医療を続けてきたのですが、巡回診療だけでは限界があると痛感するようになりました。巡回診療では29の村を15日間で回るため、ひとつの村に滞在できるのはわずか数時間。つまり、ひと月に数時間の限られた時間しか医療を届けられていません。

もちろん、それだけでも医療のない地域ではかなりの効果をみせているのですが、限られた時間の巡回診療を待っているのでは、救えない命もありました。とても悔しいことです。

そこで私たちは「土とレンガの診療所プロジェクト」と題し、現地住民と協力して診療所を建設するプロジェクトを始めています。合計3棟の診療所を建設予定なのですが、1棟の建設がすでに完了し、現在2棟目の建設に向けて動き出しています。

診療所を建設できれば、村人たちが自ら診察を受けに通うことができるようになり、必要なときに必要な医療が届けられるようになります。2棟目の診療所が完成すれば、5,000人の地域住民の方々に医療を届けることができるのです。

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スーダンの人たちと力を合わせ、2棟目の診療所を建設中

ーースーダンの人たちと協力しながら、一緒に「医」を届けていくロシナンテスの姿がみえてきたような気がします。最後に、川原さんにとって「国際協力」はどんなものか教えていただけますでしょうか?

ひとりのみんなの為に
みんなはひとりの為に

これがロシナンテスの標語でもあったりするのですが、まさにこれですね。「国際協力」というように「協力」なので、双方が自立してお互いに支えあっていく。そして、異文化と異文化が掛け合わさることで、新しい価値が生まれていくものだと思っています。これから診療所では日本の最先端のIT技術も取り入れていきたいと思っていますし、医者だけが医療をやるのではなく、いろんな分野の人が関わって「医」を届けていく、日本とスーダンの交わりで新しいものを生み出していけたらいいなと思っております。

(インタビュー終わり)

『VOYAGE PROGRAM』での挑戦

『VOYAGE PROGRAM』は、国際最大規模のクラウドファンディングサービスを手がけるREADYFORが新たにはじめた国際協力活動応援プログラムであり、認定NPO法人ロシナンテスは第一回参加団体に選出されました。

川原さんたちは「スーダンの無医村に診療所を建設し、7,000人の命を救いたい!」というプロジェクトの成功に向け、現在活動資金を集めています。

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