Voyage takahashi

「国際協力の仕事に就きたい」

決して珍しくないキャリアの一つです。そうでなくてもテレビ番組やネットニュースを見て、「途上国の貧しい人たちを助けたい」と思ったことがある人はきっと少なくないはず。

では、どうやったら国際協力の仕事に就くことができるのでしょう?

「高い英語能力」「途上国の実務経験○○年以上」

就職活動や転職活動をする中で、多くの人たちが高いハードルを感じ、その道を諦めてしまいます。

しかし、本当に諦めるべきなのでしょうか?

「企業での経験は、すべてNGOで活きています」

こう語るのはNPO法人ウォーターエイドジャパン事務局長の高橋郁さん。高校生の頃から国際協力の道に興味がありつつも、まず企業に就職することを選択しました。

なかなか描くことができない国際協力のキャリアを、彼女はどう描き、どんな道を選んできたのか?

高橋さんの選択、そして素顔に迫ります。

(聞き手:熱田紗耶)

SPONSERD LINK

なんとなく途上国に関わりたい、では難しい

ーー国際協力に興味を持ったきっかけを教えてください

国際協力に関心を持ったのは高校生の時です。まだ国際協力というほどではなかったのですが、高校一年の時に出された夏休みの課題が、「差別」をテーマにレポートを書く、というものでした。

私の中で「差別」と聞いてふと思い浮かんだのが「アパルトヘイト」でした。そこで色々な本を読んで、初めてアフリカの人たちの生活の中にある困難を知りました。

例えば、黒人というだけで不当に逮捕された家族が二度と家に戻ってこなかったという話、それから教育を受けられない、ひどい住環境で暮らさざるを得ないという話。こう言った話を読んで憤りを感じました。世界には何人も偉い人たちがいるのに、なぜこのような問題が解決されないんだろう、と思ったことがはじまりでした。

ーーその問題意識から、大学生活や就職活動ではどのように活動したのでしょうか?

憤りを感じていたある時、新聞に『国連の職員になるためには』というような内容の書評を見つけました。アフリカなど途上国の課題を解決することに対して、自分が国連職員になることで貢献する方法もあるんだと知りました。そこで大学は社会学部に入り、アフリカの開発について学びました。しかし、その時はまだ「国際協力の仕事に就きたい」と決めきれていませんでした。

そんな時、ゼミの旅行でケニアに行きました。インドを経由して行ったのですが、初めての途上国だったということもあり、着いて早々にお腹を壊してしまい3日間ほど動けず、そのままケニアに向かいました。この経験から、なんとなく途上国に関わりたいと思っていたけど、自分は途上国では1日足りとも生きていけないんだ、と痛感しました。その後は周りと同じように就職活動をして、流通業の企業に就職しました。

Voyage takahashi01

あまり知られていないNGOの多様な職種

ーー企業に就職したのに、なぜNGOの世界に入ったのでしょうか?

仕事を続ける中で1日の半分近くの時間を仕事に使っていることに気づきました。やはり高校生のときから関心を持ってきた国際協力への気持ちも残っており、自分の時間をたくさん使うのであれば、日本に住む限られた年齢層を対象とする今の仕事よりも、途上国の人々のために仕事がしたい、と思うようになりました。

ーー企業からNGOの世界に入るにはどのような方法があったのですか?

いくつかのNGOの人材募集を見て履歴書を送ったのですが、私の当時の経歴では採用されませんでした。いろいろなNGOの人材募集にある「求める人材」を見るうちに、海外の大学院で勉強すること、または、青年海外協力隊などで途上国での実務経験を積むということで、NGO職員になれるのでは、と思うようになりました。そこでイギリスの大学院で開発と紛争について学ぶことに決め、帰国してからNGOに入りました。

応募する職種も大事だということに後々気付きました。私が応募した職種は、たまたま「広報・マーケティング」だったんですね。だから流通業での社会人経験がマッチしたため受かったんだと思います。もし応募している職種が、現場でのプロジェクト担当だったら、私は海外での実務経験がなかったので受からなかったと思います。

Voyage takahashi02

企業の経験は、すべてNGOで活きている

ーーNGOの海外にある現場で活躍したい場合は、同じような実務経験がないと難しいのでしょうか?

NGOのなかには、広報や経理など国内のある職種をしばらく経験した後に他の職種、例えば海外に赴任した、という人も多くいます。なので、NGOの現場で働きたいという気持ちがあるなら、企業で経験した職種に一番近い職種から入るというのもひとつの手段だと思います。

ーー高橋さんと同じように企業からNGOに行こうと考えている人もいると思いますが、企業での経験がNGOで活かされていると感じるのはどんなときですか?

団体自体のビジョン・ミッションは途上国の人々の生活を変えることですが、団体としてやっていることは普通の会社と同じなんですね。複数の人と調整しながらプロジェクトを進めていったり、自分たちの活動を紹介するためにWebサイトやパンフレットを作ったり、企画書や報告書を作成したりしています。

また、お金の管理、つまり会計も自分たちの仕事です。こういった仕事はどこの企業でも共通しています。NGOでその仕事を一から丁寧に教えてくれることはあまりないです。企業や組織の仕事どういう風に動いているか、それを一度企業に入って経験することは、NGOに入ってから活きると思います。

ーー企業での経験が活きた具体的な経験があれば教えていただけますか?

すべての面で、企業での経験は活きていると思います。具体的な例をあげると、クレジットカードで寄付を受ける仕組みを作る際に、以前の仕事で得たクレジットカード決済の流れといった知識が手助けになりました。

また、どうやって物が販売されているかも小売業界にいた経験からわかります。なので、商品の売上の一部を寄付していただけるというお話を企業様から受けるときに役立っています。

Voyage takahashi04

すべての人に安全な水を届けるために

ーーこれまでの仕事での経験を活かしてお仕事をされてきたということですが、現在ウォーターエイドジャパンではどんなお仕事をされているのでしょうか?

すべての人が2030年までに安全な水を利用し、衛生的な生活を送ることができるようになることを目指し、アドボカシーとファンドレイズを行っています。水と衛生に対する関心を広げるための広報活動にも取り組んでいます。

アドボカシーをやっている理由としては、日本政府は水と衛生分野の二国間援助において、世界で最大の援助供与国なんです。なので、日本から水と衛生の問題に力を入れましょうと発信することには意義があると考えています。

水と衛生という話はなかなか世界で取り上げられていないという現実があります。例えばG7の伊勢志摩サミットでは、保健分野はひとつのアジェンダとして公式Webサイトにも掲載されています。

人が健康に生きていくためには安全な水とトイレは不可欠ですが、保健という話の中で水とトイレに関する課題が取り上げられないことがあります。なので、今後の世界的な会議の場で、水と衛生の課題をきちんと議論されるよう働きかけています。

Voyage takahashi05

ーー今回のクラウドファンディングにかける意気込みを一言お願いします。

今回のプロジェクトはインドでのプロジェクトになります。インドの首相は「お寺よりもトイレの設置を優先しよう」と呼びかけていて、トイレを建設することに力を入れています。

2019年までにはすべての人がトイレを使えるようにという目標を立てているのですが、そうするためには1日に何万個ものトイレを作る必要があります。かなり難しい目標ではありますが、外でトイレをするということは女性であればとても危険ですし、すぐに病気が蔓延する原因にもなります。なのでトイレを設置するだけでも、かなり生活環境が改善されるはずです。

日本では、トイレがあることが当たり前で、しかもとても質の良いトイレがあります。だからこそ、日本のみなさんにもぜひトイレを作ることでこんなにも人の生活が変わるんだ、ということを知ってもらえるきっかけになれば、と思っています。

(インタビュー終わり)

Voyage takahashi03

『VOYAGE PROGRAM』での挑戦

『VOYAGE PROGRAM』は、国際最大規模のクラウドファンディングサービスを手がけるREADYFORが新たにはじめた国際協力活動応援プログラムであり、ウォーターエイドジャパンは第一回参加団体に選出されました。

高橋さんたちは「月経のたびに学校へ行けなくなるインドの女の子を救いたい!」というプロジェクトの成功に向け、現在活動資金を集めています。

Voyage takahashi06

応援したい方・関心のある方はぜひプロジェクページをご覧ください!

高橋さんたちの活動を応援する »


途上国の教育課題を若者の力で解決する

SPONSERD LINK