みなさんこんにちは、e-Educationの吉川です。
春を迎え、新たにやりたいことや挑戦したいことが見つかった方もいるのではないでしょうか。一方、やりたいことが見つかっても、なかなか行動に移せない、と感じることはありませんか?
私は、結婚して息子が生まれたその翌月に会社を辞め、そこからNPOのフィールドで途上国の教育支援に携わっています。なぜそこまでして途上国支援にこだわるのか、この記事ではその理由をお伝えします。
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仕事に加え、社外の活動としての途上国支援
5年ほど前の話です。私は教育系企業で働きながら、社外の活動としてネパール支援NGOの活動にも取り組んでいました。
会社の仕事だけではなく、時間を使って自分のやりたいことをやろうと入社前から決めていて、特に途上国支援をやりたいと思っていました。これまで様々な国を見てきた中で、アジア最貧国とも言われるネパールと出会い、路上で生活するストリートチルドレンや、孤児院出身の若者の自立を支援していました。
「何とかして彼らのために仕事を作りたい。自立して働いていけるスキルを身につけてほしい」
こんなことを思い、私は平日の夜や休日を使って動き回っていました。仕事の合間にアイデアを思いつくと、帰宅してから調べ物をはじめて気がつけば夜が明けていたこともしばしば。そして年間2回ある長期休暇を利用してネパールへ訪れ、準備してきたアイデアを実行に移す、そんなことを繰り返していました。
それでも、なかなか考えているようには進まず、課題の大きさを感じるとともに、自分の無力さに何度も悔しい思いをしてきました。考えてみれば当たり前のことです。ちょっと考えついたことで簡単に問題が解決されるようなものなら、きっと既に解決されているに違いありません。
「問題解決の答えがあるなら、すでに誰かが実践しているはず」
当然の話に聞こえるかもしれませんが、私がここにたどり着くまでには時間がかかりました。悔しさは増える一方でしたが、同時に課題の根深さを知ることができ、長い時間かけて取り組み少しずつ改善していくしかない、と腹をくくることができました。
「微力かもしれない。でも無力ではない」
何度も自分にそう言い聞かせながら、実践と失敗から多くのことを学び、その学びを活かしてさらに一歩ずつ前進していけるようになりました。
途上国での挑戦が形になっていく嬉しさ
ネパールでの活動に関して、様々な場所でプレゼンテーションをする機会がありました。ネパールを多くの人に知ってもらいたい、何かのアイデアをつかみ取りたい、そんな気持ちで必死になっていたことを覚えています。
そんな中、日本のある企業の経営者の方と出会いました。
「ネパールの若者が日本で働き、技術を身につけられるな仕事を作ろう」
出会ってすぐに意気投合し、話はどんどん盛り上がり、実際にネパールへ何度も足を運んで頂きました。ネパールでの法人登記、受入準備、仕事内容の確認等々、様々な準備や体制が整いました。想いを形にすべく動いてきたことが一つ一つ、形になっていくことがとても嬉しかったです。
自分だけで挑戦しようとしていたことから、多くの方と協力をして取り組めることもとても心強く、さらに未来に続いてく取り組みになると思いました。
体制が整ってからは、日本で学び働くいてく候補生の選抜と育成に取り掛かりました。そして、プロジェクト最初の候補生を6名を選抜しました。心優しく、それでいて男気のある頼れるビジェイ、彼がその6名のリーダーでした。
日本に行ってしっかり学び、働いていくために、全員が毎日必死で日本語を勉強していました。ビジェイは誰よりも一生懸命勉強していました。夢や希望に向かって努力するということは、こんなにも素敵なんだと、彼から改めて教わりました。
全てが順調に整い、あとは日本に行くビザを申請し受理するのみでした。この時、新しいプロジェクトの始まりに誰もが心を踊らせていました。
しかし、ビジェイをはじめとして6名全員のビザはおりませんでした。
夢が絶望に変わるとき
何か書類に不備があったのか、現地スタッフとも何度も連絡を取り合いました。候補生たちは全員が不安になりながらも、誰ひとりとして日本に行けることをこのときは諦めていませんでした。
「ゆうすけ、僕たちは諦めずに勉強も頑張る。いつか必ず日本に行きたいんだ」
勉強を終えてすっかり暗くなっている帰り道の途中、ビジェイはそう話してくれました。
初回の反省を踏まえ、その後も再度入念に準備をして再申請を行いました。もう失敗は許されない、そう思い取り組みましたが、結果は同じく、彼らのビザがおりることはありませんでした。日本に行くことはできない、という事実を突きつけられ、夢も希望も失いました。
そんな中、ビジェイは他のメンバーにも私にも、明るく前向きに振る舞ってくれました。
「努力してきたことは無駄じゃない。夢に向かって頑張る機会を作ってくれたことに感謝している」
彼の優しい言葉が胸に響き、ただ、それ以上に悔しくて涙が出そうになりました。朝早くから夜遅くまで日本語の勉強をして、楽しそうに日本のことを話をしている彼らのことを思うと、本当に申し訳ない気持ちになりました。「彼らのためにできることをしたい」そう思い自分なりに頑張ってきました。
ただ、「自分なりに頑張る」という意識に、きっと自分自身に対しても甘えがあったんだと、そのときに感じました。
「なんて無責任に行動をしてきてしまったんだろう。期待させて夢をを見せてきたけれど、叶わない夢なら最初から見せないほうが良かったんじゃないか」
そう自分を責めました。
それからしばらく、ネパールのために自分が何をすべきなのかが分からなくなりました。ネパールの人のためになることができているのか、自分がやりたいことをただやっているだけなのか、自問自答を繰り返しました。
それでも、時は今なお進み続けている
それから2年近く経ったある日のこと、久しぶりにビジェイからメッセージがきました。彼らに対して申し訳ないという気持ちから、なかなか連絡をできずにいたので、突然の連絡に驚きながらもメッセージを読みました。
「今、僕はカタールで働いている。仕事は大変だけど、元気に頑張っているよ。ゆうすけには、すごく感謝している。また、ネパールで会いましょう」
ビジェイは、過酷の建設現場で昼夜働き、そのお金をネパールで暮らす家族に送りながら生活していました。写真も送られてきましたが、たった2年しかたっていないのに、当時のまだ可愛らしさがあった姿は一変し、体はがっちりして目つきは鋭くなっていました。彼のために何もしてあげられなかった、そう改めて感じました。
それと同時に、わざわざ感謝していると送ってくれた彼のメッセージに、救われる思いがしたの同時に、止まっていた時が動き出したような感覚になりました。過酷な状況の中でも人に感謝を伝えながら生きているビジェイの強さに、がつんと頭を打たれた気分でした。
やっぱり彼らのために自分にできることをしたい、そう改めて強く思いました。「できるか、できないか」ではなくて、覚悟と責任をもって「やるか、やらないか」だ。そう思うようになりました。
自分が悩んだり落ち込んだりしている今この瞬間も、過酷な状況で働き、生きている仲間がいます。勉強したくてもできない生徒がいます。学校に行きたくても働かなければならない子どもたちがいます。満足に食事を取ることもできない家族もいます。
これらは全て、「今、この瞬間」に起きていることで、問われているのは、「今、自分が何をするか」なんだと感じました。問題を目の前にして、そこからもう逃げないと決意しました。
途上国支援を本業に
2年前までは、会社員として働きながら、社外の時間をつかって途上国支援を行っていました。ただ、それではどうしても活動が中途半端になってしまったり、いざというときに動けないもどかしさを感じていました。
ビジェイのおかげで決断することができ、会社を辞めて途上国支援を本業にし、NPO法人e-Educationで教育支援に挑戦する形となりました。
これまでの葛藤、失敗、挫折があり、かつ仲間がいたからこそ、その決断をして前に進むことができました。もちろん、その決断を応援し支えてくれている家族の存在があってこそです。
前職を退職する際には、息子が0才1ヶ月という状況でした。途上国支援の仕事ということで、月の半分は海外出張していて家にいない、さらに収入はかなり少なくなるので、妻や妻の家族には今も心配と迷惑をかけていると思います。頭が上がらないというか、日に日に家庭でのポジションは低くなってはいるのですが、それでも感謝しても感謝しきれません。
先月はついに、妻と息子(1才9ヶ月)も連れて一緒にネパールへ行きました。子どももまだ小さいのでネパールでの生活は大丈夫かと心配もしていましたが、どろんこになりながら一番はしゃいで楽しんでいたのは息子です。そんな息子の姿を見ていて、より頑張って、息子に負けないように成長していかないといけないなと感じました。
やりたいことを仕事に、そして、それが誰かのためになるという仕事ができていることを幸せに感じています。まだまだ微力で、山積している問題を解決するのは簡単ではないですが、どれだけ時間がかかったとしても、一歩ずつしっかりと前進していこうと思います。
ビジェイには本当に感謝をしています。遠く過酷な環境で一生懸命に生きる彼のことを思うと、自然と力が湧いてきます。ビジェイの健康と安全をいつも願いながら、私は途上国の教育支援にこれからも取り組んでいきます。
ビジェイのような仲間の力になれるように、一人でも多くの人の夢と希望を実現できるように、これからも働き続けていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
2017年4月25日でネパールの震災から丸2年が経ちます。震災から2年という節目に、これからのネパールの復興のこと、いま私たちにできることをネパール料理を食べながら一緒に考えてみませんか?
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