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こちらのポスターは一体何の広告でしょう?

こんにちは!

e-Education Projectスリランカ担当の大水希望です。地方学生の可能性を広げることを目標に活動しています。

前回は留学先の大学で実施したアンケート調査についてお話しさせていただきました。

今回はアンケート調査から見えてきたスリランカの教育事情についてお話ししたいと思います。

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スリランカの教育制度とは?

まず、アンケートの結果をお伝えする前に、スリランカの教育制度について簡単にご説明します。

スリランカはイギリスやルワンダと同じ教育システムを導入しています。Grade1からGrade11が義務教育であり、学生たちは3つの大きな試験を突破しなけなければなりません。

【スリランカの三大試験】

  • Grade5:  シッシャッタと呼ばれる全国一斉の奨学金試験
  • Grade11: 中学卒業試験と高校入試試験を兼ねたO-level試験
  • Grade13: 高校卒業試験と大学入試試験を兼ねたA-level試験

この中でも近年重要視されているのがシッシャッタ。なぜなら、シッシャッタの成績によって、Grade6からどの学校に行けるかが決まるからです。良い成績を取れば都市部の有名校へ進み、優秀な先生のもとで大学受験の年まで勉強することができます。

とは言え、小さな子どもたちの学力に大きな差はありません。だから近年、親は必死になってシッシャッタ対策に向けて多くの学習費を払っており、「保護者の競争」などとも呼ばれているそうです。

アンケートの結果から見えてきたニーズ

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話を戻します。

大学生に協力してもらったアンケートを集計したところ、以下のことがわかりました。

  • 大学生の9割以上はAレベル(Grade12~13)の時に塾に通っている
  • 学校の授業ではシラバスが終わらないことも多く、全範囲を網羅できない
  • 地域によって数学、サイエンス(生物・物理・化学)など理系の先生が不足している
  • 学校によって先生や設備の質に差がある
  • 学校は全て無料なので成績や進路は努力次第

スリランカにはバングラデシュと同様「塾文化」があるということがわかりました。公立学校の学費が全て無料のスリランカでは、皆同じように基礎教育を受けることができるため、大学に合格するためには塾へ通い、とにかく人より勉強量を増やす必要があるのです。

もちろん、学校にもレベル差があります。有名な学校は都市部に多く存在するため、農村部から通うためには家を離れて生活する必要があるのです。

このアンケートのおかげで、貧しい農村部の家庭と裕福な都心部の家庭において、学校の差と塾の有無という2重の教育格差があることが見えてきました。

「地方の学校では、Aレベル試験の受験対策コンテンツに対するニーズが大きいかもしれない!」

バングラデシュと同じように、地方の大学受験生向けのコンテンツが求められている可能性が高いと考えられました。

見えてきたニーズの先に待っていた葛藤

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ビルの窓は塾の広告がビッシリ!

Aレベル試験対策コンテンツへのニーズが見えた一方で、アンケートの中に何人もの学生が書いていた気になる回答がありました。

「塾が学生たちにとって、かなりの負担になっている」

スリランカは非常に教育熱あふれる国です。その理由として、スリランカが学歴社会であることが挙げられ、学歴がなければ就きたい仕事に就くことができません。

しかし、学歴を掴むのも非常に険しい道のり。国立大学は15校しか存在せず、私立大学はほとんどないため、対象年齢の約2%しか大学に進むことは出来ないのです。その数少ない入学枠をめぐって、熾烈な受験戦争が繰り広げられるのはきっと簡単に想像できるでしょう。

「もし、地方の学生がAレベル試験対策コンテンツを必要としていたとして、自分がそのコンテンツを作って提供すれば目の前の学生たちは喜んでくれるかもしれない。でも、もっと大きな視点で考えると、Aレベル対策はスリランカの受験戦争を後押しすることに繋がるのではないか?学生たちが負担になっていると感じているその塾に重きを置くことは、果たして正しいことだろうか?」

疑問がどんどん頭の中に浮かんできます。「教育」という人の一生に関わる問題であるという意識が、プロジェクトを進めるうえで大きな壁となりました。

「受験戦争を助長するようなことはしたくない…」

その一方で、学生にとって塾が大きな意味をなすことは紛れもない事実であり、この葛藤に苦しみました。

答えを探して学校へ!と思ったら・・・

日本人へのインタビューと学生へのアンケートから、スリランカの教育事情が徐々に見えてきました。

次のステップは自分の目で確認すること。つまり、実際に試験に向けて勉強している学生たちの考えや、そこで教える先生たちの考えを聞くということです。この学校訪問は、今後のプロジェクトの方向性を決める大事なものであり、しっかりと準備をしていかなければなりません。

しかし、気合いとは裏腹に、次の週はスリランカのお正月。お正月は日本と同じで皆が休みを取ります。プロジェクトは一旦ストップとなるため、私もお正月を楽しむことにしました。

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スリランカの正月については、こちらの記事にまとめました

そして正月が明け、プロジェクトが再開。エンジンを入れ直します。

次回は、大学教授に対して行ったインタビューと最初の学校訪問についてお話ししたいと思います。


途上国の教育課題を若者の力で解決する

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