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こんにちは、マニラプロジェクトマネージャーの伊藤聡紀です。現在マニラで、大学受験用コンテンツを届けるため日々走り回っています。

前回の記事では、生徒達のモチベーションを上げるために、UP(フィリピン大学)生チューターを派遣したことについて書きました。今回は、そんな毎日が授業に終われる毎日の中で遭遇した事件について書きたいと思います。

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バスの降車時、盗難に遭ったことに気付く

ある日の午後のこと。僕は、カバンの中を見つめ、一人絶望していました。

1校目の授業が終わり、次の高校に向かおうと、いつものようにジープニー(小型バス)に乗り込みました。そして、お金を払おうとカバンから財布を取り出そうとした瞬間、自分が事件に遭っていたことに気付かされました。

今までカバンの閉め忘れなんて一度もした事がない。それなのに、その日はチャックが大きく開いて中身が丸見えでした。

「まさか!」

サーッと血の気が引くのを感じつつ、中身を確認すると嫌な予感は的中していました。周りの人から危ないから気をつけて、と何度も言われていたのに財布をスラれてしまったのです。

望みは、ほぼゼロということは分かっていました。しかし、最後に財布を出したジープニー乗り場の前の露店に急いで行き、財布を知らないか訪ねました。しかし、店のおばさんは同情した顔で「ごめん知らないわ」と申し訳なさそうに一言。

いつもお金は財布にしか入れていなかったため、スリにあった時の所持金は0でした。

幸い少しのお金を予備として家に置いていましたが、カードも財布に入れていたので、お金を引き出せなくなってしまったのです。その時は授業を予定していた学校にも滞在先に帰る運賃もなく、無一文でジープニー乗り場で立ち尽くしていました。

しばらくすると、人生で初めてお金を盗まれたという絶望感が薄れ、自分の不注意さに対する苛立ちと盗んだ人に対する怒りが込み上げてきました。

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見知らぬ人の優しさに支えられて

盗難に遭った場所は、家からジープニーで30分はかかる場所。歩けば確実に1時間以上はかかります。しかし、早く家に帰って、カード会社に連絡しなければ二次災害になりかねない。

すぐに向かうはずだった学校に連絡を取り、その日は行けないという事を伝え、焦る気持ちを抑えながら歩いて帰ろうと決意しました。そんな嫌な汗をかきながら、もう一度露店の前を通りかかると、さっきのおばさんが「財布は見つかった?」と心配してくれている様子。

見つからず歩いて帰るところだと言うと、おばさんが「これ使いなよ」と、なんとジープニー代8ペソを渡してくれました。財布を盗られて絶望や怒りの感情の中、不意に人に温かくされて一瞬戸惑いもありました。しかし、何よりその一言に救われました。

親切な行為に感謝して、すぐに家に帰る事ができました。そして。カードを止めて、ひとまず財布以外の盗難を防ぐ事ができたのです。その後すぐに警察に行って事情を説明し捜索してもらう事になりましたが、ほとんど希望が無いということで、とにかく事件報告書を発行してもらって帰路につきました。

すぐに家族と連絡を取り、送金してくれる事になりました。しかし、私にとって、これがフィリピン滞在で初めて、金銭的な問題に直面したこと。この日以来、この状況から立ち直るまで、不安は続くことになったのです。

実は、このとき盗まれたタイミングが悪く、あと5日ほどで滞在用のビザが切れるというときでした。今回2度目のビザ延長。しかし、当然延長のためのお金はどこにもありません。

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不安と惨めになるも、家族や国内外メンバーの励まし

この時の私は異国の地でお金を失い、不安と共にどんどん惨めな気持ちになっていました。しかし、そんな危機的状況を救ってくれたのは、またもや人の優しさでした。

家でビザの話をして困っているという話をしていると、大家さんがその話を聞いてビザ代なら貸してあげるよと言って、この窮地を救ってくれました。さらにその晩、節約のため夕飯をバナナで済まそうとしていると、同居人の韓国人デイビッドが部屋に入ってきて言いました。

「あき、今から家の人全員で外食するから一緒に行こう!食べて、今回の事は忘れよう!」

次の日には、プロジェクトパートナーのパトリックも同じ事を言って自分の事を励ましてくれました。

今回の一件で家族、e-Educationのメンバー、フィリピンの友人など、様々な人達に助けられ、この状況を乗り切る事ができました。そして、幸いにもプロジェクトに大きな支障をきたすことも無く、進める事が出来ています。

しかし、本当にお金が無いという状況を人生で初めて経験して、自分の今までの甘さを痛いほど実感させられたのです。

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本気で生きるということ

突然ですが、皆さんは「生きる」ということに今、全力を出していますか?おそらく、迷うことなく「Yes」と言える人は、少ないと思います。なぜなら生きていること、またこれから生きて行くことが当たり前のこと過ぎて、日常で考えるきっかけが無いからだと思います。

私自信も、今回の経験をするまでは考えたこともありませんでした。しかし、こんなにも一人では、何も出来ないと痛感したのは初めて。「生きる」という事に対して、こんなに真剣に考えさせられた事が無かったように思います。

実際、誰かに助けてもらわなければ、この国に滞在することも、食べる事も出来ませんでした。正直、自分が存在するという事に、大きな危機感を感じずにはいられない経験でした。

“Be serious(本気になれ!)”

これは、私が生徒にいつも言っていることです。

本気にならなければ、難しい試験には合格出来ない。それと同時に、この言葉は自分自信に向けて言っていたのではないかと思います。

本気にならなければ道は切り開けない。本気でなければ生きていけない。私は、日本では味わえないようなこの貪欲さを学ぶことができました。


途上国の教育課題を若者の力で解決する

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