以前トジョウエンジンでは、ヘルスケア領域のクラウドファンディングサイトの一つ「Watsi.org」を取り上げました。
その際には書かなかったのですが、実はWatsiはシリコンバレーのベンチャーキャピタル「Yコンビネーター」初の非営利団体なのです。
先日、Yコンビネーター創設者ポール・グレアムが代表から退きましたが、改めて彼自身も出資して呼び込んだWatsiについて紹介したいと思います。
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Yコンビネーターとは?
シリコンバレーで知らない人はいないほど有名なYコンビネーター。2005年に創業し、Dropbox、Airbnb、Redditなど、これまで約630のスタートアップを世に送り出してきました。
他のベンチャーキャピタルとは少し違い、Yコンビネーター自体は少額(1.4〜2万ドル)しか出資しません。選ばれたスタートアップは3ヵ月間シリコンバレーで集中的な始動を受け、投資家から資金を調達できるレベルまで育て上げます。
参考:Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール
Watsi.orgとは?
Watsi.orgは、治療/手術を必要とする患者とドナー(支援者)を繋げるクラウドファンディングプラットフォームです。一般的なサイトと違い、Watsiでは100%の寄付金が支援者のもとへ直接届きます。
例えば、妊娠中の女性に対して、定期的に病院へ通えたり出産後のサポートなどに対する寄付ができたりします。他にも、重度のヤケドを負った子どもへ寄付できたりと、様々な形でのヘルスケアサポートが可能になっています。
Yコンビネーターの新時代を築けるか
Watsiのファウンダー、チェイス・アダムは最初、Yコンビネーターに応募する予定はありませんでした。しかし、創設者のポール・グレアムから直々にアプローチされました。プレスリリースで以下のように書いています。
30秒「Watsi」のサイトを見た後、私はこれこそインターネットが創り出す一番革命的なものだと感じた。インターネットの”繋げる”という機能こそ今の時代最も必要とされている。私はこれほどまでに出資するものに対してエキサイティングになるのは初めてだ
もちろん、Watsiは非営利団体なので、Yコンビネーターは出資の代わりに寄付。過去6ヵ月で、70以上の治療プロジェクトを1300人のドナーから計5.5万ドル寄付で成功させました。寄付金は毎週28%ずつ上昇しているそうです。
Watsiの強み
チェイス・アダムが、Yコンビネーター主催のスタートアップスクールでWatsiについて語ったビデオがあり、これを見ればなぜあのYコンビネーターがWatsiを引き入れた理由が分かるでしょう。少し長いので、かいつまんでご紹介します。
アダムはもともと、アメリカ政府が途上国支援のために隊員を派遣する平和部隊の一人でした。派遣された国でバスに乗っているとき、ある女性が彼女の子供のためのお金をくれないか、とアダムに聞いてきたのが全ての始まりです。
Kickstarterなど、既存のクラウドファンディングプラットフォームがあることは知っていたものの、アダムはヘルスケアに特化したより良いサイトがあるべきだ、と思い「Watsi.org」を立ち上げました。
Watsiは10人で、ユーザーも、収入も、資金も無しでスタートしました。しかし、アダムはこれを気にせず、自らのお金を寄付し続けました。
さらに、“完璧な透明性”という目標を掲げ、100%の寄付が患者のために使われるだけでなく、Watsiが使ったお金、支援されたプロジェクトなど全てをGoogleドキュメントで公開しています!
1年半後、アダムはYコンビネータのHacker NewsにWatsiの取り組みを投稿し、その反響で2万弱のページビュー、TechCrunchやNBCなどにも取り上げられました。
ローンチから、7万ドルの支援金がWatsiのサイトを通じて送られました。そしてアダムは本格的な資金調達をしようと試みますが、ことごとく失敗に終わりました。
そんな中、ある日ポール・グレアムからメールが届きました。
今ベイエリアにいる?もしそうなら是非一度会いたい。
ポール・グレアムがWatsi初の取締役に
ポール・グレアムは、Yコンビネータ出身の数多くのスタートアップ企業の取締役に今まで一度もなったことがありませんでした。しかし、WatsiがYコンビネータに参画した3ヵ月後、ポールは初めて取締役になることを発表しました。
For the first time I agreed to be on a board of directors: @watsi‘s.
— Paul Graham (@paulg) 2013, 4月 19
さらに、昨年起きたボストン・マラソン爆発事件の直後には、こうツイートしています。
When terrible things happen to people I can’t help, I go to http://t.co/tYt9sGGPN4 and help people I can.
— Paul Graham (@paulg) 2013, 4月 15
(自分が何もしてあげられない人たちに悲しいことがあった時、私はWatsi.orgを見て、私が助けられる人々を支援する。)
Yコンビネータ卒業後、急成長!
ポール・グレアムは現在、自らの資金をWatsiに提供しています。
さらに、ツイッター、フェイスブック、グーグルへの投資で知られる伝説の投資家ロン・コンウェイや、サン・マイクロシステムズの共同設立者のビノッド・コースラなどからも出資を受けています。
Watsiのビジョンは、「
世界をより小さく、良くしていく」
ことです。
シリコンバレー最強のベンチャーキャピタルで培った起業家としてのあり方をもとに、今後は世界中の人々がお互いを助け合い、Watsiを通じて先進国と途上国が繋がっていく世の中になるかもしれません!
[Dutiee/AllThingsD/TNW/TechCrunch/YCombinator/Watsi]
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