Photo: GirlForward
政府による認定や国内への受け入れの実績が極めて少ないこともあって、日本ではあまり大きな関心が向けられていない難民問題。
トジョウエンジンではこれまでにも、様々な境遇で難民となった人々を支援する様々な取り組みをご紹介してきました。
今回ご紹介するのは、アメリカ合衆国の大都市、シカゴに移り住んだ難民の少女たちの生活をメンターがサポートし、夢を応援してゆくプロジェクト「GirlForward」です。
SPONSERD LINK
Image: UNHCR
難民の再定住先としてのシカゴ
先月発表された国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によれば、2013年度に確認された難民は全世界で1670万人。アメリカ合衆国はそのうち約6万6000人を第三国定住先として受け入れています。
合衆国の中でもイリノイ州のシカゴ市は、1975年のインドシナ難民の受け入れ以降、様々な事情で難民となった人々の有力な移住先となってきました。
「World Relief Chicago」や「refugeeONE」といった難民支援団体が拠点を置いているなど、衣食住の支援環境が比較的整っていることがその理由の一つのようです。
Photo: GirlForward
難民の家庭の少女たちが抱える課題
とはいえ、急激な生活環境の変化に順応しつつ、新天地で一から生活を始めることには、やはり様々な困難や障害が伴います。
特に、兄弟姉妹が複数いる家族で移り住んだ場合、年長の女の子は、学業と並行して、料理や洗濯のような家事や、年少の弟や妹の世話といった、家庭を支える仕事を担うことになります。
しかしそれらは時に、彼女らの時間的・精神的な負担となって、学校などの環境に馴染めず孤立してしまったり、自らの将来像を十分に描くことができなかったりする大きな要因になってしまうことも。
こうしたことは、難民の家庭の少女たちにとって大きな課題になっていました。
Image: GirlForward
「GirlForward」が展開するふたつのプロジェクト
「GirlForward」は、もともとシカゴで難民の再定住支援の活動に携わっていたBlair Brettschneider(ブレア・ブレットシュナイダー、以下ブレア)さんによって、難民の家庭の少女が抱えるこれらの問題に取り組むべく設立された非営利団体です。
2011年の活動開始以来、100名以上の少女をサポートしてきた「GirlForward」が展開しているのは、主に次のふたつのプロジェクトです。
Photo: GirlForward
メンターがマンツーマンでサポート
ひとつは、所属するボランティアメンバーによるメンター制度です。
「GirlForward」には、メンターとしてのトレーニングを受けた21歳から40歳までの女性がボランティアとして登録されており、出自や家庭事情の様々な難民の少女たち(14歳から19歳)の活動を手助けしています。
家族ともコミュニケーションを取って家庭環境をケアしつつ、生活してゆく上で不可欠な英語の習得や学校の課題などをマンツーマンでサポート。
1年間のコミットや、1週間に2時間以上の面談実施がメンター登録の条件のため、きめ細かく、長期的な見通しを持って支えることが可能になっています。
Photo: GirlForward
充実した内容のキャンプ・プログラム
もうひとつは、「GirlForward」のサポートを受けている難民の少女たちが集団で参加するキャンプ形式のプログラムです。
毎年6月20日の、世界難民の日に合わせて開催されるこのプログラムでは、難民問題や世界の社会情勢への理解を深める座学や、シカゴ市内の野外で行うフィールドワークやレクリエーション、さらにはプレゼンテーションやライティングのスキルを身につけるレクチャーなど、多彩なメニューを無料で提供。
同じ年代、同じ境遇の少女たちが、仲間意識を持って楽しみながら、難民として育つ自らの在り方を見つめ直したり、将来取り組みたいことに思いを馳せたりする機会になっているようです。
メンタープログラムを修了した少女と担当ボランティア。 Photo: GirlForward
“夢は将来そのもの”
こうした「GirlForward」の一連の活動の根底にあるのは、「強い心と能力と自信を備えた少女こそ、自分だけでなく家族や地域全体を支えられるような自立した女性になる」というビジョン。
2008年にイラクから難民として渡ってきたのち、サポートを受けている14歳のある少女は、ファッションデザイナーになることに加えて、イラクに戻って貧しい人のために孤児院と病院を開くことを自分の夢として掲げた上で、次のように話しているそうです。
私は自分の夢を信じています。夢は将来そのものだから、持ち続けることが人生で一番大切なことだと思うのです。
夢が無ければ、きっと将来もありません。
先のビジョンが彼女たちによって形になる日も、そう遠くないかもしれません。
SPONSERD LINK