日本を代表するNPOかものはしプロジェクトから今年4月に独立したカンボジア発のライフスタイルブランドSALASUSU(サラスースー)。
かものはし時代から続くカンボジア・シェムリアップにある工房でバッグやストール、サンダルなどひとつひとつ手作りで生産されています。
その工房ではどのような光景が広がっているのか、実際に働いている人々の姿をうかがうためにカンボジアに足を運んでみました。
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カンボジアの村に根付いた工房を訪問
SALASUSUの工房は、アンコールワットで有名なシェムリアップの市内から35km、トゥクトゥクを50分ほど走らせたところ、高い空のもと緑に囲まれた場所にありました。
暖かみのある木造の建物ですが、壁は風が通るように仕上げられており、なんとも涼しげなつくり。
工房に到着し、代表の青木さんに案内され工房の中へ。作り手の女性たちが働いている様子を見ながら青木さんからSALASUSUについてお話を伺いました。
SALASUSUが目指すものとは
青木さんは16年前から代表の1人として「子どもが売られない世界をつくる」ために活動する認定NPO法人かものはしプロジェクトを経営され、その活動のためカンボジアに10年間滞在されていました。
そんな長期の滞在の中で子どもが売られてしまう問題とは異なる観点で青木さんの心を動かしたのがカンボジア女性の「生きる力」や「頑張る力」といった内面について。
かものはしプロジェクトの活動を通して実際に売春宿に売られる子どもは減っていったものの、農村には未だに様々な事情を抱えた人々がいる。つい数年前まで出稼ぎで家を離れなくてはならず学校に通えない子どもも目の当たりにしてきました。
そのような背景をもって育った子どもたちは「生きる力」や「頑張る力」といった点でその後苦労をして生活していく姿をみて、青木さんは教育が人生をかけて取り組みたいテーマとなったそうです。
ミッションが異なるため、かものはしプロジェクトとは独立してNPO法人SALASUSUを立ち上げることになりました。
SALASUSUのSALAはカンボジアの言語であるクメール語で「学校」、SUSUは「がんばって」という意味。教育の機会に恵まれなかった作り手女性たちにとって、SALASUSUの工房が、がんばることを学ぶ学校のような場であってほしいという願いが込められています。
そのように思い至ったきっかけには一人の女性がいました。
彼女の名前はイアップ。SALASUSUの工房で縫製の技術を磨き、工房を卒業して、給料が4倍にもなる街にある工場の仕事を見つけることができました。
しかし、彼女は街に出てたった4日で工房に戻ってきてしまいます。
「街で住む場所が見つけられなかった」
「職場の人と馴染めなかった」
というのです。
日本であればいろいろな人の姿を見て学んだり、周りから応援してもらうことで「頑張る方法」を身につけています。
しかし、彼女との対話を通して、青木さんは「『頑張る力』は技術であり、環境によって左右される」と気づいたそうです。
そこで、彼女たちの秘める可能性を無駄にしないよう、「ライフスキルトレーニング」という教育を届けようと思ったのです。
ライフスキルとは
ライフスキルとはSALASUSUを知る上で欠かせないポイント。自分の人生をしなやかに送るために必要な「頑張る力」のことで、SALASUSUではこのスキルを以下の6つの能力で定義しています。
- 問題解決
- 自己管理
- 基礎リテラシー
- 自信
- 職業倫理
- 対人関係
このようなスキルを伸ばすために60本以上のトレーニングを開発。毎日お昼すぎの1時間はトレーニングに当てているとのこと。トータルで就業時間のうち20%の時間はライフトレーニングに当てています。
具体的には、例えばビンゴゲームがトレーニングに取り入れられています。
職場の人の名前と性格が掛け合わされたビンゴを通して、技術以外でも人の良さにも気づけるようなトレーニングをしています。
また、この工房には基本的に2年間しか在籍できず、その2年間でものづくりを通して人と関係を築き、自分を律し、問題解決する力やその基盤となる自信や知識などのライフスキルを学ぶようにプログラムが作られているのです。
そして、このライフスキルは5段階で成績をつけており、作り手女性一人ひとりの成長を可視化しています。すぐには成長は現れないものの、5ヶ月ほどトレーニングを受けていると、成長が感じられるようになってくるそう。
そのロールモデルが実は先程のイアップさん。
トレーニングを受けているうちに、彼女自身が
「次は自分がライフスキルトレーナーになりたい」
という夢を持ち始めたというのです。
SALASUSUのライフスキルトレーニングは着実に現地の人々に根付いていました。
SALASUSUでは世界のどこでもライフスキルを享受できるように、イアップさんのように教育を受け、トレーナーを目指す人が増えるようにトレーニングに引き続き取り組んで行きます。
工房内見学
染色されたいぐさを織る工程
青木さんからSALASUSUについてお話を伺った後は、実際に工房の中を順番に見学。
工房内では、材料のいぐさを選別する人、その選別したいぐさを染色する人、またいぐさを織る作業や、裁断する人、ミシンで仕上げる人など、様々な役割が分担されている様子がうかがえました。
20人ほどいるミシンの作業に当たる人たちは商品やブランドごとに少数のチームで仕事に取り掛かっているそう。
そのようなチームでの仕事も対人関係やコミュニケーションの方法を学ぶひとつとなるのでしょう。
新しく仲間となる10人の新入生
新しくSALASUSUの一員となる女性たち
また、私の訪れた日はタイミングよく1年に1回の新入生の入学式の日。新たに10代の女性たち10人がSALASUSUの仲間となりました。
入学式では代表の青木さんからのお話や先輩となる作り手女性からのお話を新入生に送り、最後はダンス付きの校歌を歌ってSALASUSUの工房の一体感を垣間見ることができました。
ここでの2年間を通してこの10人の女性がどのように成長していくのか楽しみですね。
作り手と買い手の出会い
実際に私のバッグを作った女性からサインをいただきました!
そして、今回の訪問で楽しみにしていたことのひとつが、作り手と会うこと。
SALASUSUの商品には、生産に当たった作り手の名前がスタンプで示されています。私はカンボジアに行く前にSALASUSUのクラッチバッグを購入しており、そこにも3人の名前のスタンプが押されていました。
青木さんが実際に私の購入したバッグを作ったメンバーを呼んでくださり、対面。少々照れくさそうにしながらも優しい笑顔で迎えてくれました。
そして、実際に工房に来てくれた証にと、3人のサインをいただくことに。
作り手と出会うことで買った商品に思いが込められたようで、ただの商品ではなくプレゼントをもらったような感覚に。他のどんな商品よりも大切に使いたい、またカンボジアを離れても彼女たちを応援したいという気持ちが湧いてきました。
今回、買い手である私と作り手をつないでくれたのはこちらの航空券を模したSALASUSUの工房行きチケット。日本でSALASUSUの商品を購入したときにいただくことができました。
チケットを手にしたときに新しい世界に飛び込むような、わくわくする気持ちが湧いてくるのは私だけではないはず。商品と共にこのチケットを手にしたときには工房を訪れようと感じていました。
ただ、実はSALASUSUの工房はこのチケットが無くても有料で見学することも可能です。現在は年間2000〜3000人程度の方が工房を訪れているそう。修学旅行など団体の方も多いようで、高校生が同年代の作り手の女性の姿を見ることで強い印象をもって帰る方も多いようです。
ぜひ、この工房を訪れるためにカンボジアに行かれるのはいかがでしょう?
ポップアップショップ実施
そして、せっかくなら商品をもって工房に行くのはいかがでしょう?自分たちが作ったバッグやサンダルなど使ってくれていたら作り手の方々も嬉しいですよね。
カンボジアに行く前に商品を見てみたい!という方は今月7月18日〜31日まで小田急百貨新宿店にてポップアップショップが実施されているのでぜひ足を運んでみてください。先着で特典もあるみたいです!
期間:7月18日(水)〜31日(火)
営業時間:月〜土 10時〜20時半
日 10時〜20時
場所:小田急百貨新宿店 本館2階 サンドリーズ・アレー
普段は目にすることのできない作り手の方々の姿、商品への思い入れを変えてくれること間違いなしです。ぜひSALASUSUの商品から、「作り手に会いに行く旅」に出てみてください。
団体情報
WEB: https://salasusu.com/ja/
Instagram: @salasusu
Facebook: https://www.facebook.com/salasusufromcambodia/
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