今回は、2020年3月に帰国した現役大学生のフィリピンインターン山崎真由が
「一人でも多くの子どもが、生まれ落ちた環境にかかわらず、夢を追える社会になったら」
という想いに至りe-Educationの活動に携わるきっかけとなった背景、実際に現地で一年半活動した中で感じたことをお伝えしたいと思います。
まず、山崎が海外に関心を持ったのは、母親がツアーコンダクターとして働いていたことがきっかけでした。
幼少期から様々な国の話を聞いていたことや、英語で海外の観光客と母が話しているのを見て、純粋に憧れを抱いていたと言います。
そういった背景から、山崎自身も海外に携わることに自然と関心が湧いていきました。
その後、e-Educationのような「国際協力」の活動へ心が動く体験をします。
それは、国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパンの広告で「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない」というコピーに出会ったことでした。
当時中学生だった山崎と同じくらいの少女の置かれている現状にとてもショックを受けたことがきっかけです。
一方で、高校の授業の関係でアフリカのブルキナファソ大使館に訪れた際、アフリカの人と初めて話しましたが、「私たちは東京オリンピック開催に関してサポートしたんだ」というエピソードを話してくれて、国と国は格差があるように見えても人と人は対等だということを感じました。
これらのことから、
「平等さ」はすぐには叶わなくても、個人レベルの「対等さ」とそれに基づく助け合いは誰にでも可能ではないかという想いが生まれてきました。
また、山崎本人はシングルマザーの家庭に育ったものの、とても機会に恵まれたといいます。
母親をはじめ、多くの大人が様々な経験を得る後押しをしてくれたことで、一見ハンディキャップのある環境も乗り越えていくことができました。
つまり「生まれ落ちた環境にかかわらず、夢を追える」経験を山崎本人がしてきたのです。
そんな山崎が、大学生になり、ある国際協力のイベントに参加した際に、e-Educationに出会い、インターンプログラムへの参加を決めました。
山崎の活動拠点は、フィリピン・ミンダナオ島のカガヤン・デ・オロ市。主に中等教育(日本でいう中学と高校の教育課程)の支援に携わることになりました。
事前に聞いていた子どもたちに起きている問題は、早期妊娠、児童労働、経済的に困難な家庭環境などでした。
ただ、実際に接した現地の人たちは、「解決しなければいけない問題」というよりは、「悲しい現実」として受け入れている印象だったといいます。
とはいえ、目の当たりにした教育格差は想像以上のものでした。
経済的に恵まれている子は英語を話し、住んでいる家も立派で、子どもたちが受けられる教育や設備も充実している一方で、英語も話せず、平日学校に通えない子もいる。どう頑張っても個人の努力では抜け出せない環境があることを知ります。
フィリピンでは、このように様々な背景により、平日学校に通えない子どもたちが、週末通うことで中学卒業の資格を得られる、オープンハイスクールプログラム(以下、OHSP)という仕組みがあります。
ここでは、平日に授業をしている教師が、有志で全教科を教える活動をしています。
山崎がe-Educationとして携わった現地での活動は、このOHSPのサポートがメインで、サポートを通して見た教育課題は以下のようなものでした。
週末はフィリピンでは家族と過ごすことが一般的で、週末に働くことが難しく教師が足りていない。また、英語の先生はいるけど、数学の先生がいないなど、教科ごとの先生も不足している。
現地ではビサヤ語が話されているものの、教科書は英語で書かれています。
子どもたちは、英語が全く読めない子から話すことができる子まで様々だが、できない子が置いてけぼりになってしまう。できない子は黒板を写すだけになってしまい、学べていない状況の子ができてしまう。
家族がいない子、妊娠している子など複雑な背景を持つ子どもに対して、相談できる大人や専門的なアドバイスをしてくれる大人が少ない。
OHSPは通常の学校教育をどれだけ週に一度で受けられるか、というところに重きを置いている。そのため広く浅くになってしまう。また、不可能な量を教師が教え切るために無理している。要請されているものが現実的ではない。
貸出形式で、授業中も足りておらず、教師すらも教科書が足りていないほど不足しているため、家に持って帰ることはできず、自習ができない。
教師が印刷に必要な紙やインクを自腹で買うこともあるほどで、通常クラスの子たちの分でも足りていない。教育局の予算割り当てが少ない。
このように大きな課題を抱えているOHSPで、インターン生である山崎が活動で残せると感じた価値は、大きく2つでした。
「外側の視点を提供すること」と「教師たちのサポート」です。
「外側の視点を提供すること」とは、現地で暮らす人にとっての日常に対して、ハッとするようなシーンを目の当たりにしたときに生まれる感情や、内側にいると見えづらい課題意識を持ち、活動へ還元していくこと。
現地の人の感覚に染まってしまっては、わざわざよそ者の山崎が来た意味がないので、この意識は忘れずに心に留めていました。
「教師のサポート」に関しては、前述した課題にあるように、教師たちの負荷が大きすぎる点をどうカバーできるか。子どもたちへの直接的な働きかけではなく、教師たちのサポートをすることで子どもたちに質の高い教育を提供できるのではないかと考えました。
教師のサポートで、e-Educationとして具体的に行ったのが、チューター制度の運営です。
チューター制度では数学の授業の半分を大学生が教えています。
現地の教育学部の大学生を招待し、規模の大きい中学に配置し、少人数制クラスを実現しています。
この制度により、受け身の授業から相互的な授業になり、学びへの主体性が発揮されることになりました。
また、大学生というロールモデルに出会うことも、子どもたちにとって付加価値であると感じられました。
この活動の成果を山崎自身は、「関わる人が増えたこと」「将来の教育者になり得る若者が現場の課題を身近に感じられる場になったこと」「モチベーションの高い子たちをしっかりと応援できたこと」を挙げています。
しかし、課題がこれでなくなったわけではありません。
週に一回のOHSPで成績を上げることはとても難しいことです。週末以外にもどこにいても勉強ができるような環境をテクノロジーによって提供していくことなど、できることはまだありそうです。
また、英語習得への課題解決も子どもたちの生きる力につながるものであり、サポートが必要な分野だと山崎自身は感じています。
そして、フィリピンでは、日本と違い子どもの数が増えています。
この課題解決を一年二年と遅らせてしまうことは、多くの子どもたちの機会損失を増やし、教育格差を急速に広げてしまうことにもつながります。
つまり1日でも早い支援が教育格差の是正への大きな一歩になります。
e-Educationでは、山崎のような現地で活動する大学生インターンへ挑戦の機会を提供しながら、「最高の教育を世界の果てまで」というミッションの実現に取り組んでいます。
山崎の挑戦をこの先につなげていくことは、支援に留まらず、現地の自立を促す仕組み作りも担っています。
みなさんもアジアの教育問題や子どもたちのために、海外で挑戦する日本人を応援しませんか?