現地情報

【ネパール】子どもたちに教育の機会を作るためe-Educationで働くスタッフの想いとは?

村の学校では教室に先生が来ないことも

今回は、2019年10月に帰国したネパール4代目インターンの三笘源が過ごした現地での挑戦の日々をご紹介します。

三笘は九州大学在籍で、大学を1年間休学し2018年8月から2019年10月までネパールに駐在。e-Educationの現地スタッフとして首都カトマンズと農村部の学校を行ったり来たりしながら教育支援活動を実施しました。

三笘がe-Educationで働くようになった経緯とは?

高校2年生の時、日帰りで福岡から東京へ。創業者税所とアドバイザー米倉先生と。
高校2年生の時、日帰りで福岡から東京へ。創業者税所とアドバイザー米倉先生と。



三笘とe-Educationの最初の接点は、彼が中学3年生の時に見たニュース番組「NEWS ZERO」がきっかけでした。番組でe-Education創業者の税所篤快の特集を見た時に「自分がしたいのはこれだ!」とe-Educationの活動に興味を持ちました。

当時の将来の夢は学校の先生で、「学生にとって楽しい授業とは何か?」を考えていた三笘。
そんな時に、自身が通っていた中学校が市の中でも成績があまり良いとは言えず、その状況をなんとかしようと友人との間でオンラインビデオ通話を繋げて、勉強会を始めました。
オンライン勉強会で友人が納得しながら勉強する様子を見て、”映像による勉強”の持つ力に関心を持つようになりました。
また、当時あるNPOの国際交流プログラムに参加していたことから海外にも興味があり、「教育」×「映像」×「海外」と自分の興味関心分野とマッチしていたe-Educationで挑戦したいという気持ちが芽生えました。

そこから実際にe-Educationの活動地を見るため、e-Education代表三輪開人の紹介で1週間ネパールに滞在した際に、自分を家族のように迎え入れてくれる現地の人々の温かさに触れました。しかし、いつも笑顔で温かい現地の人たちからは想像のできないような問題がネパールにはたくさんあることもその時知りました。
早期結婚、カースト制度、出稼ぎ労働者、地方出身者と都心出身者の高校進学率の格差など、日本にいるときには知らなかった問題が山積みで、自分の中で「ネパールの学生に教育を届ける活動がしたい!」という想いが高まるようになり、e-Educationのインターンとして参画しました。

一人でも多くの子どもたちに質の高い教育を届けたい三笘がぶつかった壁

ネパールにおける最も大きな教育課題は、農村部と都心部の学校の学習環境の格差で、特に顕著に現れるのは、全国共通の中学修了試験(SEE)の成績です。
都市部の私立学校では毎年約90%の生徒が合格ラインに到達するのに対して、厳しい山々に囲まれた農村部の公立学校では約30%に留まります。

e-Educationの取り組みでは、現地の有名な中学の先生の協力のもと、特に課題になっている科目である数学の映像教材を作成し、農村部のモデル校2校への提供を実施しています。その後、教員研修とカンファレンスによって、映像教材の導入校は5校以上に増え、これまでに約700人の中学生をサポートし、農村部の数学力向上に取り組んでいます。

農村部にいる子どもの学習の質を上げるため、先生たちには授業中の補助教材としてe-Educationの映像教材を用いてもらう取り組みをしています。新しく映像教材を授業に導入する先生たちに分かりやすく使ってもらうためにガイドラインという冊子を作成しました。ガイドライン作成にあたって三笘は多くの壁にぶつかりました。今回はガイドライン作成にあたって三笘がぶつかった壁を2つ紹介します。

ガイドラインに掲載する適した言語を決定する壁

三笘は、ガイドラインを使う農村部の先生たちが理解しやすいようにネパール語で書くべきだと考えていました。
一方、現地パートナーのスタッフは、最近農村部でも英語で授業をしようという波が起きていることと、ブランディングのことを考え、英語で書くべきだと考えていて、お互いの意見が割れてしまいました。

「農村部の先生が使うのだから分かりやすいネパール語にした方が良い」と思う三笘。
「ネパール人はこれから英語を話す必要があるのだから今後のことを考えて英語にすべきだ」と思う現地パートナースタッフ。

現地パートナーとミーティングの様子
現地パートナーとミーティングの様子


このような議論を重ねて、現地パートナーが目指す支援の形と、自分が正しいと思ったことの狭間で悩みながらも、三笘は「日本人の立場だからこそ気づくことができる現地の人の想いに耳を傾け尊重したい」と考えました。このように、三笘は現地パートナーと意見を出し合い、現地の人の想いも尊重した、英語とネパール語2つの言語でガイドラインを作ることに決めました。

言語やスキルが多岐に渡るからこその壁

しかし、掲載する言語が決まっても、ガイドラインを実際に作ろうとしたとき、また新たな問題にぶつかりました。

例えば日本では、パソコンを使って資料を作成することは大学の授業や仕事でも当たり前に行われています。だから簡単にできることだと思うかもしれません。しかしネパールでは、それが当たり前のことではないのです。

ネパールでは英語は話せてもネパール語を話せない人ネパール語を話すことはできてもタイピングで文字起こしができない人など、言語やパソコンスキルは人によってばらばらです。
実際に三笘がガイドラインを作製する時に、以下のような順序で作製することとなりました。

①三笘がモデル校の先生に映像教材を使った授業のレッスンプランをネパール語で聞き取り
 ↓
②三笘が英語でタイピング(英語版ガイドライン完成)
 ↓
③三笘が英語版ガイドラインを現地パートナーにネパール語に手書きで翻訳を依頼
 ↓
④現地の知り合いのローカルNPOにネパール語でタイピング依頼(ネパール語版ガイドライン完成)

モデル校の先生と三笘
モデル校の先生と三笘


このように価値観や文化の違い、そして何かをしようとするときに日本では簡単にできることも多くの人の協力を必要とし、すぐに実行できないもどかしさなど1つのプロジェクトを進めるだけでいくつもの壁にぶつかりました。しかしこの経験から相手の価値観も踏まえた上で、プロジェクトを共に推し進めることやネパールの人たちが大切にしている考え方なども学ぶことができました。

困難を乗り越えて見つけた自分なりの教育支援

三笘は、現地のパートナーや先生たちとの意見の衝突など困難を乗り越えたからこそ視野が広がり、「ネパールにとって理想の教育とは何か?」をより深く考えるようになりました。

先進国からの支援慣れや、せっかくいい成績で学校を卒業しても国内の産業が乏しいため失業率が高い現状、音楽や美術などの情操教育がないためクリエイティビティが育たない教育環境、などの課題を目の当たりにして、
「ネパールの課題を先進国からの支援に頼らず、自分たちの力で解決しようというやる気が育つ教育が必要。」
と考え、単なる学習支援や成績向上だけではなくて、
「ネパールの子どもたちが身の回りの関心事や課題に自分なりのテーマを考えてアクションをする事で、自信や学びを得る教育を届けたい。」

単なる学習支援や成績向上だけではなくて、
「子どもたちが自分たちの身の回りの問題に興味を持って、自分の頭で何とかしようとする解決力も同時に身に着けてほしい!」
そんな想いから、社会の問題を自分事として捉えて行動していける子どもたちを増やすことで、ネパールの未来が明るいものになるだろうと、個人としても教育プログラムを立ち上げ行動していました。

このようにe-Educationは、インターン生である大学生自身が挑戦し、そして成長できる場を提供しながら、「最高の教育を世界の果てまで」というミッションを実現していきます。

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