私たちe-Educationの活動は、職員だけではなく、現地でともに活動するパートナー団体、現地の学校や教育局、日本ならではの技術や専門性で協業いただいている企業の皆様、寄付や温かいメッセージで支えて下さっているマンスリーサポーターの方々など、色々な関係者により成り立っています。
今回は、なかでも活動国へ駐在し、現地のパートナー団体のスタッフと日々仕事を推進してくれている大学生インターンのインタビューから、インターン生ならではのお仕事や苦労、インターン生自身の変化などを感じていただきたいです。
広報担当の水溜が、2023年春からバングラデシュへ渡航している上智大学4年生の河東さんへインタビューした内容をお届けします。
河東 春伽(かわひがし はるか)さん 上智大学総合グローバル学部4年。 中学生の時に聴いたマララ・ユスフザイさんのスピーチがきっかけで「ムスリム社会の教育」に関心を持ち、高校生からアラビア語を勉強。大学では教育開発学を専攻し、在学中には開発学を学ぶためにイギリスに交換留学。教育協力に関心があり、イギリスのOxfam GBやモロッコのローカルNGOでのボランティア、World Vision Japan、JICAでのインターンを経て、より現場経験を積みたいという想いからバングラデシュのインターンに応募。 |
ーー最初に、なぜe-Educationの海外インターンに応募したのか、背景について教えてもらえますか?
応募背景は3つあります。
1つ目は、途上国での教育分野で現場経験を積みたいということ。
2つ目は、ビジネスから教育課題を解決するという視点を持ちたいということ。
3つ目は、学問的な関心です。
1つ目については、JICAや国際NGOでのインターンの経験を経て、「教育に関する協力の分野でキャリア形成をしたいという想い」が増しました。その上で、途上国での現場経験を積むことが将来的に大きなアドバンテージになるのではと思いました。
また、NGOなどでインターンをするなかで、社会課題解決におけるビジネスセクターの役割の大きさを感じたので、「ビジネスの視点も踏まえた国際協力は何か」を学びたいと思ってたんです。
最後に、大学でムスリム社会のマイノリティの教育を学んでいて、国民の大半がムスリムであるバングラデシュの教育事情にも関心を持ちました。
ーー過去のインターンや大学での勉強があったからなんですね。e-Educationのインターンに応募する前には、迷いとか不安は無かったですか?
インターンと就活との兼ね合いが不安でしたが、その前の年もイギリスに留学していて、オンラインで就職活動を進めていたので、最終的にはどうにかなるだろうという気持ちでインターンに参加しようと決意しました。
あとは、はじめの頃は私自身は成長できる良い機会だけど、「大学生でビジネスの経験もない私が現地パートナーにとって何か貢献できることはあるのか」という気持ちも少しありました。
※イギリス留学時にはオンラインで授業やインターンを
ーー真剣に考えていたからこその不安や迷いですね。そもそも、国際協力や国際開発に興味が出たきっかけはどんなことがあったんですか?
中学生の時まで、英語が好きで先生になりたいと思っていたのですが、学校の授業でマララ・ユスフザイさん(人権活動家)のスピーチを題材に勉強をしたのがきっかけだったと思います。
英語も好きだったけど、海外の教育事情を知らなかったと感じました。
生まれだけで教育を受けられない人がいる。
宗教や女性というだけで教育を受けられない人がいる。
マララさんのスピーチを勉強して、「ムスリム社会の教育」に関心を持って、高校生からアラビア語を勉強するようになりました。
それから大学では教育開発学を専攻し、在学中には開発学を学ぶためにイギリスに交換留学をしました。
イギリスのOxfam Great BritainやモロッコのローカルNGOでのボランティア、ワールド・ビジョン・ジャパンやJICAでのインターンなどを経て、「より現場経験を積みたい」という想いから、e-Educationのバングラデシュのインターンに応募しました。
※高校生の時、カンボジア農村で小学生に日本語を教えた
ーー色々な国や組織で社会課題に関わってきた上で、e-Educationの海外インターンという選択をしてもらえたのは嬉しいです。それでは、バングラデシュ現地で担当している仕事を教えてもらえますか?
1つ目は、経済的に貧しい高校生へ提供している、オンライン学習支援プログラムに携わっています。
生徒集客のために地方学校へ訪問して支援プログラムの紹介をしたり、映像授業や復習テストなどが入った学習アプリについて改善の企画をしたり、(高校生につまづいた単元を教えたり、進路相談に乗る)オンライン大学生家庭教師の採用や管理などを、現地パートナー団体のスタッフと共にしています。
2つ目は、現地パートナー団体が運営しているバングラデシュの受験生向けの英作文添削サービスのマーケティング(経済的に余裕のある受験生への有償サービス。現地パートナー団体が持続的に非営利活動を行えるよう自主財源拡大のためにも不可欠な事業。)を担当しています。
一時は、英作文添削サービスの営業の仕方や、デジタルマーケティングの施策を考えたりしていましたが、現在は本の出版に向けた活動をしています。
また、今述べた2つ以外にも、現地パートナー団体が受託している国際機関やJICAなどのイベントの運営手伝いや、花王株式会社と共催している大学生に対する奨学金プログラムの選考や奨学生の対応、それから通訳などもしています。
※地方の高校訪問時に生徒たちと
ーー子ども達の支援に直結する活動だけに留まらなく色々な仕事を任されてますね。一緒に働いている仲間は、どんな関係性で、どんな人たちがいますか?
基本的には現地バングラデシュのパートナー団体の中で、バングラデシュのメンバーと一緒に働いています。
現地パートナー団体のオフィスは首都のダッカにあり、アルバイトの方を含めると100名以上のメンバーが働いています。
普段よく一緒に仕事をするのは、オンライン学習支援プログラムも、英作文添削サービスも、それぞれの事業を推進している現地スタッフ2人ずつです。
また、e-Educationのバングラデシュ担当職員さんと毎週ミーティングを行って、各事業の進捗を報告しながら、課題を共有してアドバイスをもらいながら、1つ1つ解決していけるように取り組んでいます。
ーー私もオフィスを訪問した時に、非常に多くのスタッフがいて、気さくで優しい人たちばかりだと感じました。現地で仕事をするなかで、様々な苦労があったと思いますが、特に苦労したことはありますか?
現地メンバーを巻き込むことです。
インターンを始めてから新しい企画や「ここを改善したら良いのでは?」と思うところも多く、色々改善や施策を提案しました。
一方で、私が現地メンバーのモチベーションを掴み切れずに、何度もリマインドをしたり、結局自分で全部やってしまったり、結構独りよがりになってしまうことが多かったです。
この原因は、現地メンバーとの信頼関係を築く前に業務に関して提案をしていたことで、現地メンバーも「突然来た現地も良く分かっていない日本の大学生が何を言っているんだ」という気持ちを多少なりとも持っていたからなのだと思っています。
それから、とにかく話す時間を増やすようにしました。
業務以外のことでも現地メンバーのことを理解しようとしたことで少しづつ、メンバーがどういうことに興味があるのかを理解できるようになり、「一緒に良くしていく」という感覚を持って現地メンバーも動いてくれるようになりました。
※オンライン学習支援プグラムの担当スタッフとの会議
ーー国や背景が違う人と一緒に働くからこそぶつかる困難ですね。その時は、バングラデシュ担当職員とはどんな相談をして、どう乗り越えていきましたか?
さっきの話では、ある調査をする必要があったのですが、現地スタッフ2人に来週までにお願いしても動いてもらえずリマインドをしたりしていて、それでも結局やってもらえなくて自分がやる、という風になってしまいました。
自分自身、これまでチームで何かを進めた経験があまり多くなかったのも認識していたので、e-Educationの上司の方や、バングラデシュの一期前のインターンをされてたメンターの方に、相談をしました。
上司からは、たとえば日本人は真面目でお願いしたらやってくれることでも、「無駄なことをやりたくない」という考えの人もいるから、やる意味だったり、やりがい、信頼関係を大事にして取り組むと良い、というアドバイスをいただきました。
それからはタスク分けじゃなくて、一緒に集まって作業する時間を作って話しながら、「なんでやらなきゃいけないのか」だったり「これをやらなかったらどうなると思う」とか、一緒に考えてもらうことを意識していったら、動いてもらえるようになっていきました。
最初はみんなベンガル語で話していて、いつ話しかけて良いか分からなかったんですが、バングラデシュの人はお話が好きで、自分が壁を作っていたんだと気付いていって、お茶を取りに行く時に会話したり、チャットで仕事のお願いや確認をするのじゃなく直接言いに行くようにしたり、一緒にご飯に行ったりなど、信頼関係を作っていこうと行動を変えていきました。
※大学で調査活動をしていた上司(中央)たちと河東さん(一番右)
ーーそれは一度日本の会社で働いている人でもぶつかりそうな壁で、彼らとの仕事の進め方を掴んでいけた河東さんは、とても素晴らしいなと思いました。逆にインターンを通して、嬉しかった話はありますか?
地方へ訪問した際に訪れた農村部のマドラサ(ムスリム系の宗教学校)では嬉しいことがありました。
e-Educationのオンライン学習支援の生徒集客のために、ダッカから車で8時間ほどかけて北部の貧しい農村地域を訪問しました。
マドラサは宗教学校ですが、特に貧しい子どもたちの教育を保証する場にもなっています。
地方のマドラサに通うような貧しい子どもたちもe-Educationのオンライン学習支援で大学進学のチャンスを持てるような状況を作りたいと思って、地方のマドラサを訪問させてもらいました。
私は高校生の時からアラビア語を勉強しているので、マドラサの校長先生や先生方に対してアラビア語で簡単なコミュニケーションを取って、e-Educationの活動やオンライン学習支援のことをお話したところ、非常に感心してくださって、校長先生が自ら全クラスを周り、生徒に対して活動のことを説明してくれました。
想いが伝わったと同時に、自分がこれまで勉強してきたアラビア語やイスラム教の知識が活動に繋がったという実感もあり、嬉しかったです。
※地方でベンガル語を覚えて保護者に活動説明をした
ーー河東さんのこれまでの経験など、集大成が見えた瞬間だったんですね。まだインターン期間は少し残っていますが、これまでで成長したこと、変化したこと、インターンの魅力など、感じていることはありますか?
成長したことは大きく2つあるかなと思います。
1つは、周りの人を頼る力を身に付けたことです。
先ほども話しましたが、これまでの経験上で、自分で大きな目標を立てて目標に向かって努力してきたことが多かったので、一人で全てをやろうとしてしまうことが多かったですが、インターンを通じて、1人でできることは限られるということ、周りを巻き込むことで大きなインパクトを出せるということを学びました。
もう1つは、長期的視点を培えたことです。
これまでのインターンでは、短期的な指標をもとに与えられたタスクに取り組むということが多かったですが、e-Educationのインターンは与えられる裁量が大きく、現地パートナーは企業でもあるのでビジネスの視点も必要で、長期的にどういうメリットがあるのか、私のインターン期間終了後も残って活用してもらえるような仕組みはどう作ればよいのか等の視点を身に付けることができました。
変化については、現場のリアルを知れたことで、変化があったと感じてます。
農村部のe-Educationの元生徒の実家を訪問し、厳しい生活環境を目の当たりにしたり、チューター(生徒を支える大学生家庭教師)からの相談で「生徒が結婚して家族が家から出ることを認めないから予備校を辞めたいと言っているけどどうすればよいか」という相談を受けることなど、現地の生徒が直面している困難を知り、e-Educationインターンとしてできることの可能性や限界も感じました。
この現場経験が、今後、自分が何の知識やスキルを身に付けてどう問題の解決に貢献できるのかを考えるきっかけにもなりました。
また、このインターンの魅力は、業務内外でも、特にバングラデシュでは国際機関やJICA、開発コンサルタントなど国際協力分野で活躍される方にお会いする機会がたくさんあります。
実際に、バングラデシュで私が一番仲良くしている方は国際機関のコンサルタントとして働いている韓国人の方です。
ロールモデルを見つけることができたり、開発分野でのネットワーキングという側面でもバングラデシュに来て良かったなと思っています。
ーー最後にe-Educationのインターン応募を検討している皆さんへメッセージをお願いします
1年間という長期間を途上国でのインターンに費やすという大きな決断です。
一方で、成長できる機会は十分に整っています。
新しい環境や異文化での困難、失敗もネガティブに捉えることなく、成長や学びの機会とポジティブに捉えることができる方は、1年間という限られた機会でも楽しみながら成長できると思います。
また、e-Educationでは、インターン生であっても新しい提案やアイデアがとても歓迎されるため、あなたのこれまでの経験や大学での学び、新しいアイデアはe-Educationの活動や現地パートナーの成長に貢献できると思います。
新しい挑戦を楽しめる方、国際協力に関わりたいという想いを持っている方、教育格差の解決に向き合いたい方、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
e-Educationでは現在、河東さんのようなインターンを募集しています。
新たなe-Educationの一員として、「最高の教育を世界の果てまで」という私たちのミッションに向かって、私達と共に様々な活動に挑戦して頂きたいと考えています。
途上国の子どもたちに教育の機会を届けることを通して、彼らが夢や想いを実現することをサポートし、誇りを持って生きていける社会の実現に、一緒に挑みましょう。
熱い意思を持った方のご応募をお待ちしております!
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各国の事業では、e-Education職員に加えて、現地のローカルリーダーと日本からの大学生インタ—ンが活躍しています。
皆さまからのご寄付は、途上国の子ども達の学力向上や人生を変える原体験になるだけでなく、日本の若者の成長にも役立ちます。
e-Educationでは今クラウドファンディングを実施しています。
https://for-good.net/project/1000390
コロナ以降、都市部と農村部の子どもたちの教育格差は拡大し、支援を必要とする子どもたちの数は増え続けているにも関わらず、近年の円安や現地の状況変化などによって、実は必要な分だけの支援を行うことが厳しい現状があります。
e-Educationが大事にしている「日本の若者の人材育成」にも価値がある、と感じていただけた方には、ぜひクラウドファンディングに参加し、ご支援をいただけないでしょうか?
心よりお待ちしています。