2024年夏、バングラデシュで歴史的な政変が起こりました。
発端は公務員採用の優遇枠をめぐる抗議運動の激化で、これにより1,500人以上の若者が命を落とす悲劇となってしまいました。この混乱は全国に広がり、抗議活動が最高潮に達した8月5日、シェイク・ハシナ首相は退陣して国外へ逃亡しました。現在は暫定政権が樹立され、混乱の収束が図られています。
皆さまは、この抗議運動がバングラデシュの教育にどのような影響を与えたかをご存じでしょうか?政変についてメディアで報道されることはあっても、国の未来を担う子どもたちを支える教育への影響が取り上げられる機会は多くありません。
今回、私たちはバングラデシュの政変によって引き起こされた現地の実情や教育への影響、そして政変を受けて私たちe-Educationが行っている教育支援について知っていただくため、特別イベントを開催しました。
質疑応答では参加者から大変多くの質問を頂き、30分以上に渡って質疑応答が行われるほど、イベントは盛況となりました。
<イベント概要>
開催日:2024年12月12日(木)19:30~21:00
実施方法:Zoomでのオンライン開催
登壇者:e-Education代表 三輪開人
<イベントの様子>
1. e-Educationの事業紹介
イベント冒頭では、e-Educationが2010年よりバングラデシュで行ってきた教育支援活動について代表・三輪からご紹介しました。
e-Educationは創業時から、首都ダッカの有名予備校講師の授業を撮影した映像授業を作成し、経済的な理由で塾や予備校に通えない貧しい子どもたちに提供しています。
しかし、新型コロナウイルスの世界的流行により、高校生は外出が困難になり、教育格差がさらに広がりました。この影響は高校生だけでなく、アルバイト代で学費を稼いでいた大学生にも及び、アルバイトがなくなったことで大学退学の危機に直面する大学生も増加しました。
そこで、高校生と大学生をオンラインで繋ぎ、高校生の学習を支える伴走支援を開始しました。
この支援は、勉強面のサポートだけでなく、近しい境遇の大学生が高校生の学習や進路の悩みに寄り添いながら伴走する仕組みで、生徒たちに大きな安心感を与えました。
この伴走サポートは、政変による心の傷を抱えた学生たちの心の支えにも繋がっています。
2. 政変の経緯
e-Educationの事業説明後、今回のバングラデシュ政変が起きた背景について、現地の仲間たちや生徒たちからのリアルな声を交えながら、政変の経緯や影響についてお伝えしました。
2024年のバングラデシュ政変の背景には、公務員採用の優遇枠をめぐる長年の対立がありました。
この制度は、1971年の独立戦争退役軍人の家族を支援する目的で導入されたものです。しかし、時が経つにつれ、恩恵を受ける世代が孫世代に移行すると、不公平感が強まり、一部の若者から批判を浴びるようになりました。
2018年に廃止されたこの制度は、2024年に高等裁判所が違憲と判断して復活しました。これをきっかけに、若者を中心とする全国的な抗議運動へと発展します。
抗議の様子はSNSを通じて瞬く間に広がり、その過程で多くの犠牲者が生じたのです。
三輪からは、政変の中でe-Educationのバングラデシュメンバーや友人が状況をどのように捉え、SNSでどのような発信を行っていたのかについて、実際のSNS投稿や現地メンバーとのコミュニケーションを通じて得たリアルな現地の温度感を交えた具体的な話がありました。
3. 政変が教育へもたらした影響
政変の影響により、教育制度全体や学校にも多大な影響が及びました。いくつかの地域では学校が閉鎖され、高校卒業時に受ける試験が今年度は廃止に。さらに、大学入試も実施が困難となり、No.1国立大学であるダッカ大学も入試の延期を決めました。
また、教育制度や仕組みだけでなく、バングラデシュの政変は私たちの想像以上に高校生たちの生活や学習にも深刻な影響を与えています。
三輪からは、e-Educationが現在サポートしている生徒の一人である“アミン”のストーリーを紹介させていただきました。
アミンは弁護士になるという夢を抱いていました。
幼い頃に両親が離婚し、母親が一人でアミンを育ててきました。母親は不安定な仕事を抱えながらも、アミンの夢を誰よりも応援し、彼女の努力を支えてきました。
母親に支えられながら夢に向かって勉強していましたが、バングラデシュの政変が彼女の人生を変えてしまいます。
政変により街は混乱し、外出が困難になる中で勉強に集中できなくなりました。
抗議活動が過激化し、身近な人に犠牲者が出る状況で、アミンの不安は増大。家でも母親はアミンの安全を気にかけ続け、外出禁止を強く薦めましたが、家の中も心が休まる場所とはなりませんでした。
心が休まる場所を失い、弁護士になるという夢を諦めかけていたアミン。
しかし、先輩の紹介でe-Educationを知り、家族を支えたいという想いと夢を諦めきれない気持ちから、映像授業や大学生の伴走支援を受けながら再び夢に向かって勉強を始める決意をしました。
アミンの紹介は以下の記事でも取り上げていますので、ぜひご覧ください。
https://eedu.jp/localreport/20241130.html
<参加者の声>
"ニュースなどでは知ることができない、バングラデシュの今を知ることができて、大変貴重な時間だった。また現地で今を生きる自身と同年代の方々のストーリーが強く心に残った。"(20代女性)
"私のように、バングラデシュのリアルな今を知らない人もたくさんいると思うので、日本にそういったリアルを知れる機会や情報がもっと増えればいいなと思う。きっとまずは知ることから、少しづつ変化がうまれていくと思う。そして私自身も、何が今できるのか、考え続けたい。"(20代女性)
"日本では報道されない難局が続いていたりもすると思いますが、現地のために引き続き粘り強く頑張って頂きたいです!"(40代男性)
<次回イベントのご案内>
先日12月12日に開催された特別イベントに続き、【緊急企画】バングラデシュの政変に翻弄される若者の今に迫る〜現地バングラデシュのスタッフが語る激動のリアル〜を12月26日(木)に実施します。
前回のイベントでは、ニュースなどでは報道されないバングラデシュのリアルを代表の三輪からお話しさせていただきましたが、
今回のイベントでは三輪に加え、バングラデシュの現地パートナーであるラジョンとレミが登壇し、バングラデシュ人から見た政変や教育への影響について話をする予定です。
「バングラデシュでの政変が起きたときにバングラデシュの人は何を考えたのか」
「政変を通して現地の教育にどのような影響があったのか」
「e-Educationとしてどのように生徒と向き合っていくのか」
など、現地実際に活動している2人だからこその視点から様々な話が聞けるイベントになっています。
【イベント詳細】
・日時:12/26(木)19:30~21:00
・場所:オンライン
・登壇者:三輪開人(e-Education代表)、ラジョン(現地パートナー)、レミ(現地パートナー)
・定員:100名
・費用:無料
※日本語通訳が入ります。
皆さまのご参加をお待ちしております!!
私たちは、バングラデシュの教育を支えるため、困難に直面する子どもたちへ学びの機会を届けています。あなたのご寄付が彼らの未来への希望となります。共感いただいた方は、ぜひ力をお貸しください。