途上国のヘルスケア水準の向上という課題は、言うまでもなく巨大で難解です。いったん基本に戻って考えてみると、「診断」と「対応・治療」の二つの課題と分けられます。
「対応・治療」は、実際に患者にトリートメントを与える必要があり、薬物・機械・専門家は絶対不可欠です。一方、「診断」は、異常を判断するときに、患者の情報がわかれば、客観的な基準と比較するだけで、ある程度状況が判明できると思います。
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シンプルな初期診断のツールとして機能
今回紹介する「Colorimetrix」というアプリは、試験紙のデータを解釈して、医学の専門家に送信する機能を実現しました。原理は誰でもわかるほど、極めてシンプルです。
- スマホで試験紙の写真を撮る
- アプリが画像の中で、試験紙の色に関する情報を読み取る
- 色の情報を判断基準と比べて、健康状況の異常がないかを判断
- 判断の結果を表示・転送することも可能
とはいえ、既存の試験紙の使い方と比べて、優れるところは多数存在しています。
- 医学知識を持つ専門家が不要で、いつでもどこでも診断できる
- スピードが速い:数秒で結果がわかる
- 主観的な部分を一切取り除く(一定のアルゴリズムで情報を解釈するため、主観の感覚で生じる誤差を排除)
つまり、医者を代替するまではできませんが、初期診断のツールとしてとても有力な武器になるのです。
途上国の患者の大多数は、医療の資源にアクセスしにくい状況の中で、このアプリと試験紙で、診断の課題の解決に大きく寄与することでしょう。
多くの人にアプリを利用してもらい、試験紙で収益化
一方で、ビジネスモデルの面でも非常に有望なアイデアだと思います。
まず、試験紙という継続的な消耗品は、単価が低く、リピートに使われる商品なので、「Razor & Blade」ビジネスモデルの典型的な例になります(詳しくはこちら)。
多くの人に、無料アプリを使ってもらい、試験紙で収益化することは可能だと思います。
そして、初期診断の次として、病気にかかる可能性が高い患者は必ず追加の医療支出が発生するのです。医者、病院への誘導効果も収益につながる種になります。
さらに、蓄積したナレッジにも大きなビジネス機会が秘めているのです。
診断の例が多ければ多いほど、精度を上げていくので、結果的に巨大な診断データベースになりえます。データベースを基づいて、薬物開発・医学研究等の用途がたくさんあり、商用化の価値が間違いなく高いです。
先進国からの先端技術で途上国の基本的な課題を解決して、そして途上国から先進国にフィードバックするというモデルは最も理想的な「リバースイノベーション」。
わかりやすさと可能性の大きさを兼ね備える「Colorimetrix」はまさに人の心を動かすグッドアイデアです。
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