READYFOR株式会社・田才諒哉さん(左)と、VOYAGE PROGRAMアドバイザーの鎌倉幸子さん(右)
「国際協力の分野で、新しいお金の流れを作りたい」
そんな想いから生まれた国際協力活動応援プログラム『VOYAGE PROGRAM』
2016年にスタートした第1期プログラムには8つのNGO/NPOが参加し、4ヶ月という短い間に、1,600人を超える支援者から、総支援金額3,600万円以上のお金が集まりました。
これまでの国際協力におけるファンドレイジングの常識を壊していった『VOYAGE PROGRAM』ですが、たくさんの支援が集まったことは成果の一部でしかありません。プログラムによって、一体どんな変化が起こったのか?第2期ではどんな変化を起こしていきたいのか?
今回は、国際協力団体を応援する2人のファンドレイザーである、READYFOR株式会社・田才諒哉さんと、VOYAGE PROGRAMアドバイザーの鎌倉幸子さんに、新しい挑戦にかける想いを伺いました。
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NGOで培った知見を、もっと多くの人に知ってもらうために選んだ道
ーー鎌倉さんは1期に引き続き、プログラムをサポートされていますが、昨年末のシャンティ国際ボランティア会を退職後、現在どんな活動をされているのですか?
鎌倉幸子さん(以下、鎌倉):シャンティを去年の12月31日付で退職して、1月からフリーで活動しています。「かまくらさちこ株式会社」という会社を立ち上げ、図書館運営のコンサルティングや、いろんな団体のファンドレイジングのお手伝いをしています。
15年間勤務してきたシャンティを辞めた理由はいくつかあります。最近だと私の活動ってファンドレイジングとか広報周りの担当って思われがちですが、東京事務所経験だけじゃなくってカンボジア事務所でも8年間働きましたし、後の7年が東京事務所勤務でした。かつ2011年に東日本大震災が起きてからは岩手事務所の兼務、という日々でしたね。
NGO職員って現場だけとか、事務局だけっていう方が多いんですけど、私はどっちの業務も経験したので、どちらの状況も考えながら活動ができたんじゃないかと思います。
東京事務所にいるとやっぱりファンドレイジングの業務が大きな比重を占めていたのですが、例えば現地のスタッフに活動報告などを求める場合でも、そのタイミングなどを鑑みることができました。
今雨期だからこうなんじゃないか、大変なんじゃないか、と現場感覚も把握しつつ仕事をするっていうのは、今でこそ当たり前なんですけど、事務局と現場で齟齬が生まれることがよくあるんですね。そこでは私は橋渡し的な役割ができていたと思います。
2016年に独立し、新しい挑戦を始めた鎌倉幸子さん
ーー鎌倉さんは、日本でまだクラウドファンディングの知名度の低かったころにREADYFORで挑戦されましたが、何か変わったことはありましたか?
鎌倉:2012年に、初めてREADYFORで陸前高田のプロジェクトでクラウドファンディングに挑戦しました。目標金額の200万円に対し、最終的には800万円以上の支援を集めることができました。
それを経てから周囲の人に「クラウドファンディングによく挑戦したね」とか「アドバイスがほしい」とか「結局それって何なの?」と、大なり小なりやってみたいという人がシャンティ事務所に相談に多く来られるようになりました。
私は全然ウェルカムだったのですが、なんとなくシャンティ事務所に外部から「お金集めのやり方を聞きに来る人」が増えたら、面白くないと思う人も増えるのでは、と感じました。シャンティのノウハウを流出させる、みたいな。
でも、私としては、別にNGO同士って競合じゃないし、分野もうちと違って医療支援とか、シャンティが活動していない石巻のプロジェクトとか、いろいろな社会貢献活動を行っている団体があります。
そんな経験を経て、私が持っている知見を一般に還元できるような立場で、プロジェクトの現場のオペレーションと事務局の仕事の大変さの双方を知っている人間として、コンサルティングみたいなことをできたらいいなと常々思うようになり、2015年の末をもって独立するに至りました。
ーーREADYFORの国際協力活動応援プログラム『VOYAGE PROGRAM』のアドバイザーになったきっかけはなんですか?
鎌倉:シャンティをやめようとしていたちょうどその時、たまたまREADYFORの方々へ講演させていただく機会があって、そのあと社長の米良さんとご飯を食べに行ったときに、もし独立する気があればお手伝いいただけませんか、という話をいただいたんですね。そこで田才さんから「国際協力活動へのお金の流れを変えたい」という熱い思いを聞かされて…(笑)。それで今、READYFORでのアドバイザーとして仕事をやらせていただいています。
予想を超えた成果が生まれた第1期『VOYAGE PROGRAM』
ーーなるほど。それでは熱い思いを持たれている田才さんに質問です。通常の国際協力プロジェクトのクラウドファンディングとVOYAGE PROGRAMの違いは何ですか?
田才諒哉さん(以下、田才):サポート体制が手厚いと言うことですね。鎌倉さんからアドバイスをいただくとか、電通の並河さんを始めとして多くの著名な方にもサポーターとして入ってもらっていることは、やはり大きな特徴だと思います。
加えて一番良かったのは、参加団体同士の横のつながりができたということでした。他の団体がどうやってファンドレイジングをやっているかを聞く機会は普段なかなかないですし、特に地方団体の方々にとっては得るものが多かったようです。
北九州が拠点のロシナンテスや京都が拠点のテラ・ルネッサンスのような地方団体が、ほかの団体のファンドレイジングの様子とか、どのような人がやっているのかなど情報がほとんど入ってこない中で、クルーメンバーとして3回のミーティングを顔を付き合わせてやることができたのは、本当に意味があったと思います。
内部で情報共有用に作ったFacebookグループも、最初は僕しか情報発信しないような媒体だったのですが、最終的にはかなり盛り上がって、お互いでコミュニケーションを自然に取り合うツールにもなっています。
テラ・ルネッサンスがシャンティのオフィスで秘密の作戦会議をしていたりとか、自団体だけでなく別の参加団体のプロジェクトを支援していたりとか、参加している他の団体の苦労がわかるからこそ、支援をしたいという部分も出てきていたようです。
『VOYAGE PROGRAM』を立ち上げたREADYFOR株式会社の田才諒哉さん
ーー支援者同士がつながるだけでなく、団体同士がつながるというのは、プログラムを立ち上げる時から意識されていたんでしょうか?
田才:このプログラムを始めた当初から、横の団体につながりを作るというのはもともとやりたかったことなのですか、僕の思っていた以上にうまくできたというのは本当によかったです。
実際1期はプロジェクトが終わってからもつながりがあります。日本ソマリア青年機構やシャプラニールの方が、テラ・ルネッサンスのイベントに参加したりとか、ロシナンテスのある北九州のビルでウォーターエイドがイベントをやるときに、ロシナンテスが広報を手伝ったりとか、みんなでザンビア料理を食べに行ったりとか(笑)
クラウドファンディングが終わってもそのつながりを保てるというのがすごく良いなと思います。僕も鎌倉さんもいろんな場面で混ぜてもらったり・・・
鎌倉:ロシナンテスの方も、北九州から東京までわざわざ来ちゃいますもんね(笑)
田才:そうなんですよ、北九州から。でもロシナンテスなど地方団体の方は、やはり「情報に飢えている」と言っていました。こういった機会があるのが、本当に嬉しいと。
鎌倉:さっき私が言っていたことでもあるんですが、自分の団体に他の団体から資金調達の方法を聞きに来ることって、やっぱりあまり望ましく思わない人が大なり小なりいるはずなんですよね。このVOYAGEの間だからこその現象なのか、それぞれのファンドレイザーが各団体のオフィスから飛び出して、自分たちの手の内を包み隠さず明かすっていうのは、本当に不思議な光景でしたね。
「それって本当に言っちゃっていいの?」なんていうノウハウもお互いに共有しあって、みんなが一緒に知見をためていたのは本当に嬉しいことです。他の団体の嫌なところを探し合うのではなく、良いところを共有しあって、成長し合うことができれば、NGO業界全体のレベルアップにもなるんじゃないかなと思います。
田才:これもロシナンテスの例なんですけど、テラ・ルネッサンスとか、かものはしプロジェクトがインターン生をうまく使って広報活動しているのを見て、インターン生を募集し始めたそうなんです。
ロシナンテスの方は「北九州で国際協力のインターンはなかなか集まらないだろう」と最初思っていたらしいんですが、想定していたよりも人が集まったそうです。
そうした取り組みができたのも『VOYAGE PROGRAM』の余波的な部分かと思っています。一緒に参加している団体から学び、それを実践して変化につなげているというのは、団体のファンドレイジングのスキルだけではなくて、団体の能力の底上げにもつながっているように思います。
鎌倉:ノウハウどころか、Twitterとかでお互いの団体のプロジェクトを拡散したりシェアしたりしていましたよね。それぞれファンドレイジングが大変なはずなのに、他団体のお金集めを手伝っているわけじゃないですか。これって本当に凄いことで、普通だったらあり得ないことですよね。
支援者同士が出会い、つながり、一緒に成長していくプログラム
ーー『VOYAGE PROGRAM』のメリットとして、実行者団体の得られるメリットはよく分かったのですが、支援者が得られるメリットってどういったものなのでしょうか?
田才:実行者のメリットは確かに間違いなく大きいですよね。そういった意味でも、支援者のメリットを大きくしていくのは、まさに今後の課題だと僕は思っています。『VOYAGE PROGRAM』の団体がお金を集めたことによって、結果的に途上国に対してこんな結果が出ましたとか、評価的な部分まで『VOYAGE PROGRAM』のサイトやメディアで紹介していけると良いと思っています。
終わった後のプロジェクトについても『VOYAGE PROGRAM』として伝えていく責任はあると感じています。僕たちがもっと発信できるようになれば、支援者の方々もこのプロジェクトで集まった支援がこういう風に実現されていくんだとより実感できるんじゃないかと。そして、今挑戦している『VOYAGE PROGRAM』の団体にも支援してみようか、そういった気持ちになれる仕組みを作っていきたいです。
鎌倉:私の知る限りでも、『VOYAGE PROGRAM』では同じ人が数団体のプロジェクトに支援をしていたりしています。ここに行けばいろんなプロジェクトがあるという、ある種プラットフォームみたいな役割も果たせるようになっています。READYFORのトップページに載らないプロジェクトであっても、素敵なプロジェクトはたくさんあります。その中で、こういった形で国際協力のプロジェクトが特化してまとまっていると支援者の方々は選びやすいですよね。
私にとって、寄付は社会貢献の一部だと思っているんです。例えば体力がある人はボランティアに行けばいいし、忙しくて行けない人は金銭的な支援ができるし、それはどういった形であっても社会貢献の一部ですよね。だから『VOYAGE PROGRAM』もそういった社会貢献の一部になれるようにしていけばいいのでは、と思います。
田才:後は、支援者様にとってのメリットとしては、VOYAGE TALKというイベントですね。次回は2016年12月17日(土)に開催予定です。国際協力を「する人」と「応援したい人」をオフライン上でつなぐことができる場で、これからもっと大きくしていきたいなと思っています。「会えるアイドル」じゃないですけど、「会えるVOYAGE」として魅力的なイベントになっているかな、と思います。
鎌倉:前回もそうでしたが、土曜日の昼から100人以上もの人が集まるってすごいことですよね。しかも、企画の趣旨がファンドレイジングというところで、お金が絡むって言うのをわかった上であれだけの方が来てくださったのは本当に凄いことだと思います。これまで「絶対無理だよ」と思われていたものが案外無理ではなかったり、そういう場があると人が集まる、と言うことが分かっただけでもかなり大きな収穫でしたね。
田才:『VOYAGE PROGRAM』では、これまでのファンドレイジングの常識をくつがえしたいというか、今の時代に合うような「新しいファンドレイジングの手法」もどんどん模索しながらチャレンジしていきたいですね。僕らもどんな寄付の未来があるか未知数な部分が多いですが、「想いの乗ったお金がたくさん流れる」、そんな未来を一緒に描きながら挑戦してくださる団体さんにぜひ集まっていただきたいと考えています。
学校のように学びあい、新しいお金の流れが生まれるコミュニティを目指して
ーー最後に、第2期『VOYAGE PROGRAM』に対する意気込みを教えてください。
田才:すべての団体が達成できるようにサポートさせていただくというのはもちろんのこと、このプログラムに参加したからこそファンドレイジングへの意識が変わった、団体が変わった、と言ってもらえるようなプログラムにしたいです。これは3期以降のテーマになると思い、すでに構想は固まりつつあるのですが、団体規模によってもファンドレイジングのニーズが違うということが分かってきたので、大小問わず、どんな規模の団体にも満足してもらえるようなプログラムを展開していきます。
鎌倉:私も全団体達成はもちろんだと思っています。田才さんの口癖でもある「あきらめない」というのは重要ですよね。『VOYAGE PROGRAM』全体で見れば1期、2期とコミュニティが大きくなっていて、これまでタブーとされてきたファンドレイジングの話を、団体間の壁を超えて、もっと腹を割ってしていけるようにしないといけないですね。そうしないと寄付市場がどんどんクローズになってしまいます。
『VOYAGE PROGRAM』はまさに、ファンドレイジングのノウハウから実践、目標達成までをすべて包括した「“超”実践型ファンドレイジングスクール」ですよね。VOYAGEの担当者が数か月以上もコミュニケーションを取る体制もすごいと思います。もっといろいろな団体にこのサービスを広げていきたいですよね。
第2期『VOYAGE PROGRAM』について
2016年10月より、第2期『VOYAGE PROGRAM』が始まりました。
応募団体は第1期を上回る10団体。分野も国もさらに増え、地球全体の課題を解決するための航海が始まりました。
このトジョウエンジンは、そんな10団体で挑戦する人たちの想いをご紹介していきます。よかったらぜひご覧ください。
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