先日放送されたNHKドキュメンタリー番組『明日世界が終わるとしても』、いかがでしたでしょうか?
私も映像の録画データを送ってもらい、一人でゆっくり見返しました。自分が番組になるというのは、やっぱり少し恥ずかしく、なぜか緊張もして、変な汗が出てくるものですね。
NHKの方々と何度も打ち合わせたので、概ねの内容は分かっていたつもりですが、それでも番組後半につれて込み上げてくるものがありました。
取材を受けるまでの葛藤、取材中に大泣きした夜、番組終了後にいただいた感想。
ドキュメンタリーの放送を終えて、私からどうしてもみなさんにお伝えしたいことがあり、ここでご紹介させてください。
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取材を受けるまでの葛藤
テロ事件の現場から少し離れたホテルから撮影(2016年7月1日)
「バングラデシュで活動してきたことは、本当に間違っていなかったのか?」
2016年7月1日。あのテロ事件が起こって以来、私はe-Educationの活動を、農村部の高校生たちの大学受験を応援するという活動を、100%信じることができなくなっていました。
大学受験の先に何があるのか。大学生が抱える痛みにもっと目を向けられたら、テロを防げたんじゃないか。考えだすとキリがなく、何度も悩んで悔んで、私は心の病気にかかりました。
思うように身体が動かず、これ以上みんなに迷惑をかけまいと、代表を降りようとしていたところ、職員全員から「1ヶ月休職命令」を受けました。
1ヶ月という長いお休みをもらって、自分の深い部分と向き合った結果、バングラデシュを拠点にするという決断をすることができました。休みを作ってくれ、私の背中を押してくれた仲間には本当に感謝しかありません。
背中を押してくれたe-Educationの職員たち(左から薄井、吉川、三輪、中野、古波津)
「バングラデシュの若者の可能性を信じたい。私のことを信じてくれる仲間たちの応援に応えたい」
そう想うと自然と力が湧いて来て、福岡で開催されたICCというイベントでは、かつてないほど気持ちを込めてプレゼンすることができました。よかったらぜひご覧いただけると幸いです。
大絶賛された感動のプレゼンテーション「e-Education」 (ICC FUKUOKA 2017 カタパルト・グランプリ) – YouTube
そして、このプレゼンをご覧になった方々から講演や取材の依頼をいただくようになり、今回のNHKドキュメンタリーの企画も動き始めました。
「やった。みんなへようやく恩を返せる!」
そう思って取材を受けることを決めましたが、この直後、また悲しい事件がバングラデシュで発生しました。
それがロヒンギャ難民問題です。
取材中に大泣きした夜
2017年8月末。ロヒンギャと呼ばれる人たちがミャンマーでの争いから逃れ、バングラデシュに避難してきました。その数は日に日に増え、1ヶ月で40万人を超える人たちがバングラデシュに押し寄せました。
約1ヶ月の間、新聞の一面はほぼロヒンギャ難民問題
新聞の一面はほぼ毎日ロヒンギャ難民であり、ミャンマー大使館の近くでデモを起こしている若者たちをニュースで見ると、涙が止まりませんでした。
「また止められないのか」
私たちe-Educationはミャンマーでも教育支援をしており、弱い立場の声を受け止められなかった悔しさと、どんな立場にたって支援して良いか分からない難しさで、また心が壊れそうになりました。
「カイト、僕たちで何とかしよう!」
そんな時、救いの声をかけてくれたのは今度もバングラデシュの仲間たちでした。テロ事件が起きた時と同じように、悲しみや怒りに流されず、今目の前にある問題を一生懸命解決しようとする仲間たちに、私は目を覚ましてもらいました。
彼らだけではありません。今は大学生となったe-Educationの元生徒たちがロヒンギャの人たちのためにぜひ活動したいと名乗り出てくました。
そのうちの一人が、番組にも登場したシャフィという青年です。
シャフィという希望
(『明日世界が終わるとしても』ウェブサイトより引用)
彼と初めて出会ったのは約5年前。彼が高校3年生の時、バングラデシュの農村で出会いました。
どうしてe-Educationの授業を受けようと思ったのと質問すると、彼はこう答えます。
「家族のためにも、僕は大学に行かなければならないんだ」
大学受験を前にして父親を失ったシャフィ。大学進学は家族の悲願でもあり、彼は朝から深夜まで一生懸命勉強しました。
しかし、現実は甘くありません。
ダッカ大学の受験に挑むも、結果は不合格。そして第二志望で国立大学へ進学することになりましが、彼は笑っていました。
「人生は入試の結果で決まりません。挑戦させてくれて、本当にありがとうございました」
彼は同じメッセージを後輩たちにも伝えてくれました
そして4年後。久しぶりに会った彼の顔つきはずいぶん大人になっており、大学生活の楽しさや悩みについてあれこれ聞きました。
「大学受験の時、挑戦できて本当に良かった。今度は僕が地元の後輩たちの挑戦を応援したい」
生活費をギリギリまで切り詰めながら大学に通っている彼が、誰かの役に立ちたいと頑張っている姿を見て、胸が熱くなりました。
彼のような大学生たちのために「奨学金&インターンシップ制度」を作り、大学生になったe-Educationの元生徒たちが、地元の中高生の学習サポートをすることで奨学金を提供するプログラムを作りました。
そして2017年9月。ロヒンギャ難民問題を目の当たりにし、シャフィたちは動き出します。
「彼ら(ロヒンギャの人たち)のために、今できる限りのことをしたい」
こうしてロヒンギャ難民支援プロジェクトが立ち上がりました。彼らの勇気ある行動は、私を含めたくさんの人たちを巻き込み、2万人を超える人たちに食料を届ける大きなムーブメントとなりました。
明日世界が終わるとしても
「バングラデシュで活動してきたことは、本当に間違っていなかったのか?」
テロ事件があってからずっと続くこの悩み。
取材を受ける中でさらに悩み、途中不安で潰されそうになりそうな時もありましたが、シャフィをはじめとしたe-Educationの元生徒たちと再会し、彼らと一緒に挑戦を続ける中で、心がどんどん晴れていきました。
既に3回難民キャンプで支援活動を行なっている大学生トゥシャ
ロヒンギャ難民キャンプでたくさんのショックを受けながらも、明るい未来を諦めない若者たち。キラキラした目で未来を語る彼らこそがこの国の主人公であり、これまで応援してきたことを誇りに思えるようになりました。
「これまでやってきたことは間違っていなかった。バングラデシュに帰ってきてよかった」
言葉にした瞬間、涙が止まらなくなりました。
その日の取材が終わり、「私たちこそカイトさんと出会えて本当に幸せです」と彼らに言われて更に大泣きしたのは、ここだけの話です。
明日世界が終わるとしても、私は彼らのような若者の可能性を開いていきたいです。
番組終了後にいただいた感想
番組放送を終えて2日。記事を書いている今この瞬間も番組の感想メッセージを頂いています。
幼稚園から中学までずっと一緒だった幼馴染。一緒に甲子園を目指した掛西野球部の仲間。大学の居場所を作ってくれた先輩後輩や同級生。今でもずっと尊敬しているJICAの同僚。e-Educationの活動をずっと応援してくれてた方々。そしてどんなことがあっても応援し続けてくれる両親。
大好きな人たちから届くメッセージの中に「バングラデシュ」や「シャフィ」という言葉があるのを見て、もう一回泣きしました。
テロ事件やロヒンギャ難民の問題があって、どんどんイメージが悪くなっているバングラデシュという国。
それでも良いところはたくさんあって、でもそれを伝えるのが難しくて、ずっとずっと悩んできましたが、温かい感想をもらうたびに、バングラデシュのイメージが変わってきている気がして、嬉しくてたまりません。
温かいメッセージを送ってくれた皆さん、本当に有難うございました。
皆さんの見方が変われば、皆さんの想いがバングラデシュの若者たちに届けば、きっと未来は明るくなっていきます。
彼らと皆さんをもっとお繋ぎできるよう、これからも頑張ります。
皆さんへのお願い
最後に、皆さんへお願いがあります。
私たちe-Educationの活動は、みなさん一人一人の応援によって成り立っています。
毎月1000円の寄付があれば、家族のために大学へ進学しようと勉強している、村の高校生6人に教育を届けることができます。
また毎月3000円の寄付があれば、シャフィのような大学生1人が、毎月大学に通いながら地元の高校生のサポートを行うための奨学金を届けることができます。
「若者たちの力がテロではなく、未来に向かうように」
そのための道は、間違いなくシャフィたちが歩いてきた道であり、e-Educationの生徒たちがこれから歩いていく道であると、今、心から信じています。
彼らと最高の未来を一緒に作っていくために、ぜひご協力よろしくお願いいたします!
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