CSRコンサルタント・安藤光展さん
CSRコンサルタント・安藤光展さんにインタビューを行った前回の記事では、お仕事や活動、国内外のCSRについて聞くことができました。
後編では、NPOの情報発信について安藤さんご自身のブログ運営や執筆活動をもとにポイントを伺いました(聞き手:佐藤慶一)。
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継続的に情報発信できる仕組みづくりを
佐藤:安藤さんはNPOのコンテンツマーケティングにも多く関わっています。NPOの情報発信における課題、そしてアドバイスを伺えますでしょうか。
安藤:まず、ブログを継続できている団体がないですよね。たとえば、週1回の更新を3年間続けているところがどれだけいるか考えてみたら、どれだけいるのとなります。
佐藤:そのあたりは大変わかります(笑)
安藤:ブログとなると本数やSEOなども大事になりますが、そもそも継続的な更新ができる仕組みができてないんですよね。
広報の方が任せられてがんばったけれど、別の人に変わるとまたゼロからやらないといけなくなる。逆に継続できるところはそれなりのインパクトを持ちますが、国内ではそのような団体は少ないですね。
情報発信に関してはまず「継続性」だと思います。もっと先のテクニカルの部分は後からでも学ぶことができますから。継続的にコンテンツを制作して、発信する仕組みを構築すること、それが重要です。最初は本数ではなく、一定のペースで発信する仕組みづくりですよね。
佐藤:トジョウエンジンも1年以上経ったのですが、毎日3~5本くらいは発信できる仕組みをつくっているところです。そのほかに課題はありますか?
安藤:もうひとつの課題というと、有名なNPOの代表がいるところです。NPO自体のブログではなくて、代表ブログの方が発信力を持っている場合ですね。
佐藤:たとえば、NPO法人フローレンス代表の駒崎さんや育て上げネット代表の工藤さんといった方々でしょうか。
安藤:そのあたりは筆頭ですよね。本もブログも書いていますが、代表が変わったときを考えると、団体の情報発信がどうなるのか気になります。属人的な発信に依存しすぎることはリスクが高いと考えることもできますよね。
「一人でしない」ことが重要
佐藤:組織でどのように発信していくのか、その仕組みづくりをしていくことが重要だということですね。各団体が情報発信を行う際に、どういうアドバイスやポイントがありますか?
安藤:「一人でしない」ということは重要かもしれません。どうしても担当者がひとりの場合だと、忙しくなるとどうしても優先順位が低くて更新されなくなることもあります。
その時に備えて、マニュアル化して誰でも発信できるようにしたり、書き溜めするとか、いろいろできそうですよね。あとは、とにかく書くこと。まずは300文字でもいいので、発信してみることからはじまります。
アクセスアップ用と検索対策用をバランスよく
佐藤:安藤さんはブラック企業の問題をはじめ、時事的なニュースをからめた記事を個人ブログ「CSRのその先へ」で書いています。そうなった時に、各NPO団体の取り組むイシューとニュース性の高いものをセットで発信することはどのように思いますか?
安藤:PV集められるものについて、方法論はないと思っています。週刊誌や新聞で話題になっている時事ネタやエンタメ系、お色気系ですね。
NPOの情報発信となるとエンタメ系は難しい、となると時事ネタに合わせた発信になります。選挙と児童買春とか、児童労働とか、時事問題と自分たちの専門性の話は大いに可能性のあると思います。
CSRや社会貢献といった言葉を入れるとPVが落ちるので、そのような言葉を使わずに問題の本質や側面を知ってもらえるようなコンテンツをつくることが重要です。オピニオン色は強くなりますが、NPOブログがアクセスを集めるのであれば、時事ネタは必要だと思います。
個人としては、PVを稼ぐ記事と稼がなくていい記事と分けることがよいかと思います。アクセスを上げる用と検索対策用の2つをバランスよく発信してくことですね。その際、時事問題と自分たちの専門性を重ねた記事は重要になります。
毎日2~3時間、情報収集している
佐藤:コンテンツマーケティングの話なので、「gooddoマガジン」や「CSRビズ」についてももう少し伺いたいです。
安藤:「gooddoマガジン」の方は2~3月はいったん休止していました。いまはQAコンテンツなどほかのところにリソースを割いています。更新していた時は、毎日更新で、社会貢献に興味がある人をターゲットに、オピニオンよりはニュース、キャンペーンや書評を中心にしていました。
「CSRビズ」は、立ち上げてからまだ3ヵ月ほどで、週3本ペースで更新しています。発信トピックはアジアのソーシャルグッドにまつわることです。
アクセスが集まるコンテンツではないので、今後はインタビューコンテンツを行うことを考えています。一時情報をどれだけサイトに盛り込めるのか、ということも情報発信やメディア運営において重要ですね。
佐藤:個人のメディア発信についても聞かせてください。平日毎日、テーマもCSRとニッチな領域。情報収集、情報発信を続けているのは素晴らしいと思います。その中で、意識していることや考えを聞かせてください。
安藤:1日にRSSやツイートなどを入れると2000~3000くらいの記事タイトルはチェックしています。CSRは意外と範囲が広い分野なので、平日は毎日2~3時間情報収集が欠かせません。
佐藤:執筆にはどのくらいの時間をかけられているんですか?
安藤:リサーチを行い、まとめるので、1記事1時間くらいですね。1年半続けてきて、慣れたのでいまでは苦ではないです。週5本書くとなると1日作業していたり、土曜日を執筆デーにしたりとか、工夫はしています。
ニッチなテーマでニッチな情報をニッチな読者に
佐藤:安藤さんはCSRというニッチな分野で情報発信をされています。ニッチな分野で発信する際のポイントはありますか?NPOをはじめ、今後ニッチなテーマでの情報発信が増えてくると思いますので。
安藤:ジェネラリストになるか、スペシャリストになるか、という議論がありますよね。そうなったときに、どっちでもいいと思いますが、プロフェッショナルとして、ニッチなテーマでニッチな情報をニッチな読者に届けたほうがインパクトはあると思います。
NPOや社会貢献系のイベントに行くと、「『CSRのその先へ』の安藤さんですか」と言われることも増えました。月間2.5万読者のうち、2000~3000人は毎日読みに来てくれています。CSRや社会貢献関連の情報を探しているそれだけの人を抱えているというのはインパクトがあることだと思います。
少人数にしか届いていなかったとしても、問題の認知が広がったり、寄付獲得につながったり、求人につながったり、それぞれのメディアで設定したゴールを達成することが大事です。
また、1%の方に刺さるメディアがニッチメディアとしての立ち位置としては良いのかなと思います。読者数よりもアクションにどれだけつながったのかを重要視することがポイントの一つですね。
リアルの場への誘導に力を入れていきたい
佐藤:読者数よりもアクション、共感します。最後に今後の展望を聞かせてください。
安藤:今後のアクションとしては、「gooddo」では新しいプログラムを提供していく準備をしていきます。「CSRビズ」の方では、メディア運営も引き続き行っていきますが、研究会やセミナーなどといったリアル展開も進めていく予定です。
直近では5月14日(水)に「ジャンプインアジア交流会」というセミナーイベントを開催します。メディア運営を通じてリアルの場に人を呼ぶことを積極的に行っていきたいです。
今年はリアルの場への誘導に力を入れて、下地をつくるために、執筆活動など情報発信を精力的に行っていきたいと考えています。
昨年『この数字で世界経済のことが10倍わかる ~経済のモノサシと社会のモノサシ~』という本を出版できたのですが、もっとCSR寄りの本が書けたらいいなと、そんなことも思っています。
(インタビューおわり)
NPOの情報発信やブログ運営のポイントについて、いかがだったでしょうか。情報発信に力を入れていきたいNPO/NGOの方に参考になる部分がありましたら幸いです。
5/14開催 「ジャンプインアジア交流会」
今回インタビューさせていただいた安藤さん、さらにはe-Education Project共同代表である三輪も登壇するイベント「ジャンプインアジア交流会」が5月14日に開催されます。
【ジャンプインアジア交流会概要】
「アジアのソーシャルな側面を学び、新たなるビジネスチャンスを発見しよう!」をテーマに、「ソーシャルグッド(社会貢献)」領域の活動を6名のプレゼンターが発表します。アジアのソーシャルグッドを理解し、ビジネスにおけるチャンスとリスクを可視化し、今後のビジネスに生かすことのできる機会です。
【日時】 2014年5月14日(水) 18:00~22:00(17:30開場)
【主催】 ジャンプインアジア交流会事務局(シンガポールビズ株式会社)
【場所】 アクセス日本橋セミナールーム
東京都中央区日本橋室町1-5-3 福島ビル6F
東京メトロ銀座線 三越前駅 A4出口 徒歩1秒
日本橋三越正門ライオン像斜め前
【料金】 6,000円(懇親会費込み / 当日支払い)
【プレゼンター】
- 安藤光展氏(CSRコンサルタント)
- 佐々木 扶美氏(在バンコク / SRCSインターナショナル株式会社 代表取締役)
- 宮良多鶴子氏(オ・ライ・ティモールの会 副会長)
- 薄井大地氏(合同会社GCMP 代表)
- 日野雄介氏(NPO法人 Class for everyone 理事)
- 三輪開人(NGO e-Education Project 共同代表)
詳しくは、ジャンプインアジア交流会のイベントページをご覧ください。
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