「僕がちょっとネパールで診察しても、ネパールは変わらない。お金がない人達でも継続的に医療を受けられる仕組みを考えるために、公衆衛生を学んでるんだ。」
そう話すのは、日本で医師として勤務する傍ら、東京大学大学院に通うサッキャ・サンディープさん。
サッキャさんは、震災後、故郷ネパールへより良い医療を届けるために、同じ大学の学生の仲間とあるプロジェクトを立ち上げました。
今回は、現在クラウドファンディングで131万円を集める挑戦をしている「ASHA Nepal Project」をご紹介します!
SPONSERD LINK
震災で見えた現実
震災直後の様子
ネパール大震災以後、ネパールには多くの医療支援が入りました。
日本で医師として活躍するネパール人のサッキャさんも一時帰国して、被災地診療の活動に参加しました。
しかし、彼は活動を通してネパールの地方部の医療機関の根本的な問題に気づかされました。
それは、ネパールの地方部では全くと言っていいほどIT化が進んでおらず、カルテは紙に手書きで整理されておらず、さらに患者さんが持ち帰るので医師の手元にはほとんど記録が残らないということです。
後で見返せる患者さんの情報がほとんど無く、あっても整理されてなくてどれがだれの診察をしたのかも判別がつきづらい。
つまり、患者さんの経過を振り返る、地域の医療ニーズを把握するなど、医療にとって必要なことがなかなかできていないのです。
日本で当たり前のことがネパールでできていない。
この現状を受け、サッキャさんはネパール地方部の医療問題の解決策を考え始めました。
医療情報があれば、多くの人を救えるのではないか?
整理されていない紙のカルテが山積みに
医療情報が整理されておらず、活用されないのであれば記録をする労力が無駄になる。
またカルテを患者が持ち帰ることによって、患者も2度目の診察の際、同じ説明を最初から何度も繰り返すことになり適切な治療が受けられない。
この大きく2つの問題を見たときに、サッキャさんは次のアイデアを思いつきました。
「もしも必要な医療情報を収集・整理・活用できる医療情報のデータベースソフトウェアを作れば、もっと村の人々が”継続的”に医療を受けられるのではないか。」
このアイデアを実現するために、在学中の東京大学大学院で、医師,看護師,臨床心理士研修生,そしてソフトウェアエンジニアに声をかけました。
そして幸運にも、今自分たちが持っているもので何かできないか、そう考える仲間が集まり、ASHA Nepal Projectをスタートさせることができました。
ASHAとは”Affordable and Sustainable Healthcare Access”の頭文字をとったものですが、ネパール語では“希望”を意味します。
まさに希望の星となるプロジェクトですよね。
“ASHA fusion”
ソフトウェアのシステム図
そして、ついに議論に議論を重ねて、ASHA Nepal Projectは1つのソフトウェアを作り上げました。
医療情報をデータベース化できるソフトウェアを”ASHA fusion”です。
ASHA fusionはこんな4つの特徴を持ってます。
- ソフトウェア自体はタダ
- 使いやすさを重視したデザインで、気軽にスマホやタブレットで操作できる
- 電気やネットが不安定なところでも、使えるような設計にしている
- 情報を収集し、瞬時に共有することができる
問題を解決しつつ、インフラ整備がまだ不十分な環境に合わせてつくられたソフトウェアになっています。素晴らしいですよね。
ASHA fusionの可能性を確かめに!
今年3月に行った現地訪問
そして、実際に医療情報をデータベース化することがネパールに本当に役に立つのか確かめるため、今年の3月に訪問診察を行いました。
ASHA Nepal Projectと共に活動したNGOは、これまでは毎回、簡単な診察メモを書いて患者さんに渡して、自分たちでは記録をもたないという方法をとっていたので、自分たちが行った診察で何が足りなかったのか、全くわからない状況でした。
そこで今回は、ネパールの現地の医師、看護師の方々に、ノートパソコンやタブレットでASHA fusionを使ってもらい、診察メモと同内容を記録してもらいました。
合計約170人もの患者さんを診察し、診察が終わった後には、その地域でどういう病気が多いのかを可視化することができるようになりました。
今回の訪問診察を通して、改めてソフトウェアの可能性が実際に見て感じることができました。
現地の人に根ざしたソフトウェアにするために
しかしながら、まだネパールの人たちがこのソフトウェアを自分たちだけで使い続けられる段階ではありません。
使いやすさ、必要な情報、そして、情報の活用方法。これらを現地の人たちと議論して、磨き上げなければ、ただ「日本から持って行ったソフトウェア」で終わってしまいます。
現地の人と一緒に、現地の現場で本当に役に立つもの。ASHA Fusionで集めた情報が、長い目で見て、その地方に住む人たちの笑顔に繋がる。それが、私たちの目指すところだと考えると、これから「彼らのソフトウェア」にしていく必要があるのです。
サッキャさんと日本の仲間と現地の仲間たちと子供たち
そのため、この9月の渡航と10月の渡航の費用を集めるために、ASHA Nepalは現在クラウドファンディングに挑戦しています。
9月9日の11時までにあと50万円ほど必要となっています。
日本で“当たり前”にできる診療記録の蓄積が、ネパールの医療者にとっても“当たり前”となるためにみなさんのお力を是非お貸しください。
SPONSERD LINK