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「自分がこの仕事を今後5年、10年続けている姿を想像してみたんですが、それが難しかったんです」

こう語るのはシャプラニールで働く藤﨑文子さん。自動車会社で勤務された後、国際協力の最前線で活躍するNPOへ転職することを決意した理由を伺いました。

転職して以来、20年近くにわたって途上国を舞台に活躍されてきた藤崎さんは、一体何を思って働き方を変え、今どんな想いを持って仕事をしているのか。

藤崎さんの決断、そして素顔に迫ります。

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国を超えた、確かな繋がりを求めて

ーー藤﨑さんが、国際協力に携わろうと思ったきっかけと、シャプラニールでの活動を始めたきっかけを教えてください。

私は、社会人になった時に自動車会社でアジア市場を担当する仕事に就きました。もともとアジア好きで学生時代に旅行して、世界を見ていくなかで、「自分の置かれている立場が非常に恵まれているものだ」と改めて気付くことが多くありました。そこで、まずは「社会がどういう風に動いているのか、仕組みを知りたい!」と考え、企業に就職しました。

しかし、就職してから5年くらい経った頃、「自分がこの仕事を今後5年、10年続けている姿を想像できるか?」と思ったときに、非常にそれが難しく、想像することができませんでした。当時は、それなりに仕事も任せてもらえていた分、やりがいもあり、将来的には海外駐在もあったかもしれません。世界の環境問題などを考えた時に「このまま働き続けていいのか?」とも考えるようになりました。

特に新車は、途上国の中でも数パーセントの人しか持てない贅沢品で、「旅行で訪れた国々でたくさんの親切を受けたアジアの人たちと繋がっているという実感が持てない」と思うようになりました。その後、自分が興味を持っていたNGO職員としての仕事がしたい!と思い就職活動を始めました。その中で、たまたまシャプラ二―ルの求人募集を見つけて「ここだったら良いかもしれない」と応募したのが、シャプラニールに出会ったきっかけです。ですので、実はそんなにリサーチをして入ったわけではないです(笑)

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ーーもともとアジアへ旅行に行くのが好きと仰っていましたが、学生時代にアジア旅行をして、忘れられない出来事がありましたらお教えください。

インドのレストランでスプーンを落としてしまったときに「すみません、代わりのスプーンを下さい!」と言っても誰にも気付いてもらえなくて、その辺の掃除をしていた男の子に、「ちょっと、スプーン取って!」と言ったら無視をされたことがありました。しばらくしたら、カウンターの人が気付いて取り替えてくれたのですが、思い返してみると、あの男の子は床の掃除はしていいけどテーブルの上のものは触ってはいけない!というカーストだったのか、本当に下働きの男の子だったのかもしれない…、と思いました。

たとえ、あの男の子がどんなに気の利く、優秀な子どもだったとしても、「将来自分の好きな仕事に就けないのかもしれない」と思ったときに、当時学生だった私も、お金がなくて貧乏旅行をしていたのですが「少なくとも選択肢を持っている自分がどれだけ恵まれているのか」、ひしと感じるようになりました。シャプラ二―ルの「すべての人々がもつ豊かな可能性が開花する社会の実現」というビジョンは、このとき私が感じた出来事と繋がっているんだなと思っています。

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旅行で感じたヒントが、今の仕事に繋がっている

途上国の子どもたちには、きっと敵わない

ーーシャプラ二―ルで活動を始めたことで、見えたことや変わったことはありますか?

私はシャプラ二―ルで5年くらいフェアトレード部門の仕事をしてからバングラデシュに駐在しました。ストリートチルドレン支援事業を担当するようになり、ダッカ市内のパートナー団体が運営するセンターや青空教室の子どもたちとの出会いは私にとって凄く刺激的でした。その中で、一番強く残っている出来事が、駐在してから半年くらい経った頃のことです。

バングラデシュには1週間くらいのイスラム教の休みがあり、日本のお正月のようにバングラデシュの人たちの多くは帰省します。駐在員は国外に出てしまうことが多く、そのお休みの直前に子どもたちと遊んでいた時、こう聞かれました。ある男の子に「ねぇねぇ、お休みはどうするの?」と。

しかし、当時私は入国した時のビザから滞在のビザに切り替えるのに時間がかかっていた影響で出国ができなかったため、「たぶん私は、ここにいないといけないから、日本には帰れないの。」と返すと、その男の子はびっくりした顔で私を見上げました。「かわいそうだね…家族に会えないの?」と、彼に言われました。

自身が親や兄弟と離れて路上生活をしている子どもにそう言われたことに驚きました。「なんて人間はここまで人に優しくなれるのだろう…?」と人間の心の広さみたいなものを強く感じました。それは決して勉強してできるものではなく、既に中に持っているものだと理解した時に「ああ、この子どもたちに敵わないな…。」という感情が私の中に芽生えました。

誰にでもそういうポテンシャルはあるはずなので、私たちが「何かしてあげている」必要はなく、彼らに舞台を用意することだけでいいのかもしれないと思いました。今、私たちが支援しているバングラデシュの女の子たちも、10歳くらいで学校も行かずに親元を離れて働いているけれども、ものすごく思いやりがあるということが私にとっては大きな希望です。今の仕事は、きっとそこからエネルギーを感じているのだと思います。

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貧しくても、逞しく、そして優しく生きるバングラデシュの子どもたち

新しい常識を作る、という仕事

ーー「子どもたちに教育を受けさせることが大事」ということを伝える、活動の難しさを感じることもたくさんあったことと思います。そうしたなかで、これまで取り組んできて感じた彼女たちの成長をお教えください。

家事使用人の問題というのは、バングラデシュの人にとっては「問題じゃない・あたりまえ」と思っている人が多いのが現状です。雇用主は子どもを働かせているという感覚はなく、むしろ「この子は田舎に居たら食べることもなかなかできないし、着る物もない。それよりは、少なくとも3食と着る物を年に何回か買ってあげているから自分は良いことをしている」と思っている方が多いです。

そもそも、社会問題として認識されていなかったことを「これは問題です!」「これは子どもが働いていて、本来学校に行くべきところを、権利を剥奪された状態にあるので問題です!」という認識を持ってもらうこと自体がまだ非常に難しいのです。悪いと思っている人たちのほうが意識を変えやすいと思っています。一人一人の生活を変えるために、個別に取り組んでいって、勉強するチャンスやお友達と話せる時間を持たせることはそんなに難しくないはずです。私は、それを大きな社会的な常識にしていくというところは非常に大きなチャレンジになると思っています。

それと、今回のクラウドファンディングではあまりフィーチャーしていないのですが、私たちは2、3年前からアドボカシー活動も行なうようになりました。特に、去年始めたコミュニティラジオと提携して、私たちから情報を提供して番組を作ってもらう取り組みもはじめています。今年の1月~3月にかけて3ヶ所のラジオ局で前半ディスカッション、後半ドラマという構成で「働く女の子たちがどんな思いをしているのか」ということを、特別番組を通して伝えています。現地では、良かれと思って子どもを働きに出している親がほとんどなので、これを聴いたことで「自分の娘がそんなにつらい思いをしていることは知らなかった」「働きに出そうと思っていたけれど、もうやめます」と泣きながら言われます。

この取り組みでは、ものすごく手ごたえを感じています。これからも手法を変えながらメッセージを伝え続けていきたいです。

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これ以上ない幸せな仕事の、その先へ

ーー藤﨑さんが20年間活動を続けてきて良かったと思う側面とこれからの課題を教えてください。

国際協力は様々な関わり方がある中で、私たちはバングデシュにこだわって活動をしています。時々、自分が進歩しているか不安になる時もあるのですが、私たちのプロジェクトに関わった人たちの変化を見ることができるのは良いことだと思っています。例えば今はシャプラ二―ルは支援していませんが、2000年代に10年間支援したストリートチルドレン支援プロジェクトでは、今でも地元地域の方々がセンターが運営を継続しており、私たちがサポートした子どもたちが成人になりセンターの教師になって働いています。

そういう支援の後日談のようなものを見ることができるのはシャプラ二―ルで働いているからであって、活動を続けてきて本当に良かったと思っています。自分が担当したプロジェクトの15年後の姿を見られるのはNGO・ODAを問わず稀なことで、小さな女の子だったのに、今は先生や大学生になっている姿を見られることは、これ以上ない幸せだと思っています。少なくとも「シャプラ二ールがいたおかげで自分はこうなれた!」という子どもたちがいるということを思い出しながら自分の人生を終えることができればいいなと思っています。

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教わる側にいた子どもたちが、気がつけば教える側の大人へ

また、自分たちの活動の強みや弱みを知ることで見えてくるものもあると考えています。活動する上でNGOスタッフ自らが縛られることなく、女性も男性も働きやすい環境を作れたらいいなと思っています。

先の取り組みとしては、もう少し広がりを持たせた活動にしていきたいです。今行っているプロジェクトはひとつひとつ完成度が高いものだと自負していますが、社会全体に影響を与えるまでには至っていません。発言の影響が大きい立場にある人たちに見てもらい、広げることもこれから必要だと考えています。小さなプロジェクトをこまごまとやるのではなく、広く全体に掛け合っていくことができれば「シャプラニール=○○の団体!」という風に伝わりやすくなると思います。

ーー最後にクラウドファンディングへの意気込みをお願いします!

「チャンスを与えられれば、誰でも花を咲かせることができる!」ということを、ご支援いただいた皆さまにも、このプロジェクトの実現を通じて見ていただきたいと思っています。私たちのこれまでの活動をこれからも継続し、多くの少女たちを支援していくためには大切なプロジェクトです。是非、ご覧いただけましたら幸いです。

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『VOYAGE PROGRAM』での挑戦

『VOYAGE PROGRAM』は、国際最大規模のクラウドファンディングサービスを手がけるREADYFORが新たにはじめた国際協力活動応援プログラムであり、シャプラニールは第2回参加団体に選出されました。

藤崎さんたちは過酷な児童労働からの解放へバングラデシュの少女たちに教育を!というプロジェクトの成功に向け、現在活動資金を集めています。

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