みなさんこんにちは!e-Educationのバングラデシュパートナー企業BacBon Ltdでインターンをしている松原信英です。
2018年1月からこの12月までの1年間、e-Educationの始まりの地バングラデシュで現地パートナーとともに駆け抜けてきました。
テレビやプレゼンコンペへの露出が増えて毎年着々と注目を集めているe-Educationはなぜ毎年成長を続けられるのか。それは必ずしも日本人スタッフたちが優れたスキルや熱意を持っているからだけではありません。
国際協力の世界で大きなインパクトを残すためには「現地パートナー」のたゆまぬ努力が不可欠です。本記事では、そんな現地パートナー企業のもとで私が1年間CEOアシスタントを経験し、学んだことをお伝えしようと思います。
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国際協力を仕事にするために二度目の途上国へ
バングラデシュの経験をお話する前に、私がなぜバングラデシュでのインターンを始めたのかお話させてください。
実は、私がe-Education関連で途上国に滞在するのは二度目なんです。大学2年次、2015年の半年間、インドネシアで高校生に映像教材を届け大学受験の支援をしていました。
インドネシアの高校生たちと
結果としてスラム地域のフリースクールから2名が国のトップ大学に合格を果たしてくれたのですが、個人としては力を出し切れたのか、本当に現地の役に立つことができたのかもやもやする部分がのこりました。
帰国後、NPOの活動とは一旦距離を置いて大学のゼミ活動などに注力していました。しかし、周りが徐々に就職活動を始め、将来のことを考え始めると「自分が本当にしたいことはなにか」という問いに直面します。
友人たちが官公庁や商社、メガバン、コンサルという名だたる企業・機関に進路を定める中、自分の出した答えは「国際協力を仕事にする」こと。
インドネシアで残ったもやもやに再び向き合いたい気持ちと途上国で感じた勢いの中で働きたいと思った結果でした。
ただ、「国際協力を仕事にする」といっても選択肢はいろいろあるんです。JICAや開発コンサル、商社やゼネコンでも捉え方次第で国際協力に十分なり得ます。また国連などを考えるためには修士号も最低限必要。
今の自分が取るべき選択肢がなかなか定まらず悩んでいると、久々に会ったe-Education代表の三輪さんから一言。
ノブがバングラで働いてる夢を見た。だから来年バングラで待ってる。
多くの人からしたら、この誘い方とこの言葉についていく人はなかなかいないと思いますが、悩んでいた当時の私にはビビっと来てしまって、即決でバングラ行きを決めました。
2014年バングラパートナーのマヒンと松原が始めて会ったとき
e-Educationのバングラデシュパートナーであるマヒンとは面識がありましたし、何よりNGOから始まった組織がJICAや世界銀行、アジア開発銀行などの公的機関、大手日系企業や現地政府、日本とバングラデシュ両国の大学など多くのパートナーシップを組んで国の発展を支えている現場というのは様々なアクターの役割をより深く知りたい私に最善の機会だったのです。
このような機会を経て2018年1月より私はバングラデシュのマヒンのもとでCEOアシスタントとして滞在を始めました。
くらべものにならない挑戦の数々
そして、いよいよ始まったバングラデシュでの生活。
映像教育はインドネシアで経験があったのでどうにか役に立てるだろうと思っていたのですが、バングラデシュに到着して現場を目の前にすると、想像を遥かに上回る速さでものごとが進んでいました。
それもそのはずインドネシアは何の経験もない大学生が一人で渡航して現地の組織が出来上がってるわけでもない中、手探りでプロジェクトを進めていたのですがBacbonはすでに30人を超えるスタッフを抱える立派な企業。
ちょうど私が渡航した1月は大きな企業案件が動いており、毎週、週末を返上してスタッフ一同仕事に取り組む毎日でした。
華やかな世界に思われがちな社会企業や国際協力も日常の多くはデスクワーク
途上国というと約束を守らないとか、仕事にもそんなに真剣に取り組んでいないというイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、全くの正反対。バングラデシュで一番働いているんじゃないかと思うくらい、みんな懸命に取り組んでいます。
特にCEOのマヒンは誰よりも足を動かして仕事に取り組んでいました。なによりも驚いたのが彼の初速のはやさ。国内外のネットワークを駆使して少しでも教育の質を向上できるチャンスを見出したら迷わず仕事として立ち上げます。
Casioの関数電卓をつかう高校生
私が滞在していた間だけでも、関数電卓、タブレット、スマートボード(電子黒板)、日系企業のCSRサポート(太陽光発電)、エンジニアの日本語教育などのプロジェクトを立ち上げ、進めていきました。(これらは私が関与したプロジェクトというだけであって、会社としてはさらに多くのプロジェクトを動かしています。)
彼はバングラデシュ国内で新聞やTVなど様々なメディアに取り上げられ、注目を浴びている起業家なのですが、その裏には数え切れないほどの挑戦が隠れていることを知りました。
9年の蓄積
9年の歴史を物語る写真の数々@チャンドプールオフィス
それでは、なぜこのような取り組み方が可能なのでしょうか。それは9年間の蓄積があるからだと感じました。バングラデシュで映像授業のプロジェクトが始まったのは2009年。すでに9年もの月日が流れています。
例えば、映像教育を用いた大学受験支援ではこの9年間、毎年最難関ダッカ大学の合格者を輩出しています。これは偶然ではなく、組織としてノウハウを確実に蓄積しているからだと言うことがわかりました。
生徒の理解が難しい分野の把握や、現地予備校の競合分析、学習管理モニタリングなど毎年データが残されて最高の教育を届けられるような土台があるんです。
タブレットで授業を受ける生徒
私は日本側との取り次ぎや各学校を訪問して生徒の募集をかけるときには貢献できたかとは思いますが、その他の業務はローカルスタッフだけで自走できる状態であったのは非常に驚きでした。
このように裨益者に最も良いものを届けるための「学ぶ組織」の重要性やその組織が出来上がっていく課程を垣間見れたことは非常に大きな学びとなりました。
経営者の苦悩
ただ、いつも順調かというとそうではありません。
私はこの1年間CEOマヒンの家の1室を借りて住ませてもらっていたので、仕事場でも家でも時間をともにしていました。そこでわかったのは経営者は誰よりも働いて誰よりも結果を残しているけど、誰よりも悩んでいるということ。
大学生からはじまったバングラデシュのプロジェクトですが、今では会社という形をとっておりもちろん30人のスタッフには給料を支払わなければなりません。
社会課題を解決すると同時にスタッフの生活の責任も背負っている経営者。そして彼自身、一児の父という家庭をもった1人の個人でもあります。
マヒンと1歳の娘さん
そのすべての歯車を上手く組み合わせてスムーズに回すことは容易ではありません。彼が頭を抱える姿も幾度となく見てきました。
「この事業は収益性が良くないから止めようと思う」「スタッフを減らそうと思うんだけどどう思う?」「忙しすぎて家族に会えない」
このような悩みに対する相談を何度も受けました。彼の不安を私がどれだけ解消できたかはわかりませんが、周りからの期待が大きい分そのストレスも相当のもの。
もし彼が折れてしまったらこの国の人が得られるはずであった1ステップ上のサービスを受けられるのは数年先となってしまいます。
国の発展にはキーパーソンが現れるだけではなく、その人を支える環境が非常に重要になると感じた時間でしたし、結局どんな大きな仕事も根底にはこのような人間味のある瞬間があってそれを一緒に乗り越える必要があることがわかりました。
パートナーの信頼
e-Education代表の三輪さん
ただ、彼はこの9年間このような苦悩はありましたが諦めることなくそれを乗り越えて来たんです。なぜ、続けてこれたのでしょうか?
その答えはこの1年間バングラデシュにいて以上によく理解できました。それは「ある1人からの圧倒的な信頼」があったからです。
その人こそがe-Education代表の三輪開人です。この1年、三輪さんもバングラデシュを拠点として多くの時間をこの国で過ごしていました。
Bacbonのオリジナルタブレットが届いたときのマヒンと三輪さん
マヒンの仕事がうまく行ったときは誰よりも一緒に喜び、うまく行かなかったときは遅くまで反省会をともにし、お互い忙しいはずなのに常に連絡を取り合っています。
経営戦略を立てるときもお互いの考えている方向性はピタリと一致していて、こんなに息の合ったパートナーは見たことがないと思いました。
多くの人が国境を一歩またげば「バングラデシュ人は〇〇だから」「日本人は◯◯だから」と大枠に括って話してしまいがちなところ、個人単位の信頼をここまで強く築いている二人の姿は今後も私の心のなかに残っているでしょう。
この2人から国際協力や社会企業でもっとも大切なものを学んだ気がします。
おわりに
1年間の滞在で、社会課題へのアプローチの仕方はもとより、人として誇れる姿を学びましたし、何よりも「国際協力は信じることで始まる」という根本的な部分に気づけたことは大きな収穫でした。
この成長著しいバングラデシュで人間味あふれる1年を送れたことは今後の人生を歩んでいく上で大きな財産となると確信しています。
そして、どのような形になるかわかりませんが、また戻って来たいと思いますし、将来もバングラデシュで出会った人たちとまた働けることを楽しみにしています。
インターン募集のお知らせ
そして現在このバングラデシュで来年3月から渡航できるインターン生を募集しています。
まだまだ成長を続けるBacBonは日本人の協力を必要としており、1年間マヒンのもとで社会起業や国際協力、教育開発などさまざまなことを学べるチャンスとなっています。
詳細は以下のリンクからご覧ください。途上国の発展に貢献したいという強い意志をお持ちの方、ご応募お待ちしています。
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