ASEAN10か国をバックパックを背負ってまわる鈴木さん
アセナビというWEBメディアをご存知でしょうか?「“ASEANで働く”を近くする」というビジョンのもと2013年、二人の大学生によって立ち上げられたアセナビには東南アジア諸国で働く日本人の生の声が掲載されています。
今回はアセナビのファウンダーあり、大学を休学してASEANで働く日本人へのインタビューを行った鈴木佑豪さんに、アセナビのこと、またその行動力の源についてうかがってきました。
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「ASEANで働く」ことのギャップを埋める
――早速ですがアセナビ立ち上げるまでに至るまでの道のりを教えてください。
私が中国に留学していたときは、丁度チャイナプラスワンという形でASEANの存在が注目され始めた時期でした。その時は東南アジアがどこからどこまでかも分からなかったのですが、そのころから必ずASEANの時代が来るということを漠然と感じ始めます。
そこで自分が何かできないか考えました。私たちの世代は、上の世代から海外で働かなければいけないとか、これからはグローバルに働ける人材にならなければいけないという風に言われます。でも、実際に自分の周りに目を向けると、海外に働くということがどういうことなのか、自分も含めて分からないという人がほとんどでした。そのギャップを埋めるために何ができるか考えたら、東南アジアで働いている人の声を聴いて、それを届ける媒体が必要なのではないかという結論に至りました。
一番最初はマレーシアに飛んだのですが、最初は正直どうすればいいか分からなかったですね。とりあえず街を歩いていて日本人ぽい人を見つけたら、後をつけて話しかけるタイミングを伺ったりしていました。ただやっぱりビビッて話かけられなかったですね(笑)。これはまずいなということで作戦を変更することにしました。
海外の日系ホテルに行くとよくロビーなどに日本人向けのフリーペーパーが置いてあるのですが、このフリーペーパーを編集している会社に連絡して現地の日本人を紹介してもらうようにしました。またその次からはインタビューをした方からまた別の人を紹介してもらうという形で、通称「いいとも」方式で人を紹介してもらいながら、最終的には130人の方にお話を伺うことができました。
ソルさんのインタビュー風景
10年後の世界を見越した組織体制づくりを
――130人というとすごい数だと思いますが、その中でも特に印象に残っているインタビューはありますか?
私の中ではソルさんという方のインタビューが 一番自分の中で印象に残っています。ソルさんは日本のリクルートグループを退職後、ベトナム発のアジアのコングロマリッド企業を作るというビジョンを持って起業された方です。ソルさんは「社員全員がモチベーションを高く持って働けばどの会社にも負けない」という考え方のもと、社員のモチベーション維持に並々ならない力を注いでいます。
具体的には社内報を使った会社の現状や目標の共有、社員全員の社員旅行に4半期に1回の決起集会など、現地の社員と同じ目線に立って社員と伴走するという態度が徹底されていました。結果としてソルさんの会社では離職率が10%以下。東南アジアでは離職率が20%を超えるところも珍しくないことを考えれば、この数字がどれほどすごいことかご理解いただけるかと思います。また、ソルさんの会社はマネージャー層にも日本人以外の人を入れていて、ベトナム人やインド人にも大きな責任を任せているようです。
ソルさんが私に話してくれた「10年後の世界を見越して今の組織体制を作っている」という言葉を聞いて、確かに10年後はもしかしたらソルさんの会社のように、世界中の人が国籍に関係なく一つの組織で働く時代、国籍に関係なく働けるようにしなくてはいけない時代になっているのかもしれないと感じました。ソルさんのような組織に対する考え方を東南アジアに進出している他の日系企業に持ち込めれば、日本の競争力をより高めることができるのではないかというのが、私が130人の方にインタビューして得た1つの仮説です。
鈴木さん、アンコールワットにて
一歩踏み出すことで機会をつかむ
――最近の大学生は鈴木さんのようにアクティブに何か取り組む方が多い一方で、何かやりたくても、そもそもきっかけがないという方も多いように感じます。そういう方に向けて「きっかけのつかみ方」のような部分で何かアドバイスをいただけないでしょうか?
きっかけと言えばアセナビへと至る道の始まりは、振り返ると大学1年生の夏に、日本の伝統工芸品を扱う会社でインターンを始めたことだったのかもしれません。その会社に入って約半年後、いきなり会社の社長から「中国で行商して来い」という指令を受けて中国で日本の伝統工芸品を売ると飛び込み営業をすることになりました。片言の中国語と英語で、1か月間雑貨や建材を扱っている業者や家具屋をまわり、最終的になんとかいくつか契約をいただくことができたときには感動しましたね。
ではそもそもなぜ中国へ営業に行く選択肢自体があったのかというと、きっかけはその社長の講演会にたまたま参加したことでした。その講演会で聞いた「日本の伝統工芸品を扱う」というキーワードにビビッときてしまい、その場でその社長に「今度詳しくお話聞かせてくれませんか?」とお願いしたんです。今は学生でも社会人の方と会う機会は多いと思いますが、そこで自分が面白いと思う人に会ったら、「今度ごはん行きませんか」とか、「コーヒー飲みに行きませんか」という風に一歩踏み込むことが大切なのかもしれません。
カンボジア、プレアヴィヒアにて
最初のハードルは高く感じるもの
――ただ、「断られたらどうしよう」といったことを考えてなかなかその「一歩を踏み出す」勇気を持てない学生も多いかと思います。なにか鈴木さんが考える「失敗する恐怖」みたいものを克服する方法はありますか?
私自身が思ったのは、最初のハードルというのはどうしても高く感じてしまうということです。ただ、そのハードルを一度、勇気を出して飛び越えてみて感じたのは思ったよりも難しくなかったなということ。たぶん誰でも知り合いに一人ぐらいは「行動力があってなんでもどんどん挑戦する」タイプの人がいると思います。そういうタイプの人もおそらく一番最初のハードルを越えるときは怖かったはずです。
ただ、一度超えてしまうとあとはハードルがハードルとして感じられなくなってくる。だから、もし自分が一歩踏み出せないような性格だと思っていても、一回乗り越えてしまえばガラッと変わることがあるということを伝えたいですね。特に学生時代は何も失うものもありませんし、お金も少しバイトすれば貯めることができるので何か挑戦するには最適な時期だと思います。
私の場合最初のハードルというのは高校生の時、アメリカに1年間留学したことですね。高校3年生だったのですが、周りが受験勉強をしている中で自分はそのまま特にやりたいこともなく漠然と大学へ進学することに違和感を覚えました。そこでアメリカに1年間留学しようと思ったのですが、やはり周囲とは違う道を進むということに正直不安があったことを覚えています。ただ、そこから徐々に周囲のレールとはずれていくようになりましたね(笑)
アセナビ運営メンバーでの合宿風景
アセナビは現在、学校が長期休みの時に東南アジア諸国をまわり、現地で働かれている方からうかがったインタビューをコアコンテンツとして配信しています。今後は、インタビュー記事だけではなく、東南アジア諸国に長期滞在したことのある学生がその国の魅力を発信する記事も発信してます。今後は、東南アジアに拠点を置くメディアとの協同によるコンテンツも配信予定とのこと。
また現在、アセナビでは運営に関わってくれる学生、社会人を募集しているそうなので、東南アジアというキーワードにビビッと来る方はぜひasenavi.info[at]gmail.comまで連絡してください。メンバー募集に関する詳細は、こちらよりご覧ください。※[at]を@に変更してください
今後さらに世界の中で存在感を増すであろう東南アジア諸国。日本で暮らしているだけではどうしても見えづらいその国の姿を、「働く」という切り口から伝えようとするアセナビのようなメディアは今後ますます求められていくのかもしれません。アセナビ、要チェックです!
高校時代にはアメリカ、大学2年時には中国へそれぞれ1年間留学。2013年4月から180日間かけてASEAN10か国を周りながら現地で働く日本人130人を取材。その内容をまとめたWEBメディア「アセナビ」ファウンダー。現在は大学を卒業し、2015年4月より人材系企業就職予定。
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