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こんにちは。e-Educationフィリピン担当の秦大輝です!フィリピンの首都マニラのスラム街に住む高校生たちに、大学受験対策の映像授業を提供するために日々走り回っています。

落ち込んでいたいた気分を180度変えてくれた不思議な体験は前回の記事でご紹介しました。今回はその続きを書き綴りたいと思います。

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マニラにニーズはあるのか?1対1のヒヤリング開始

マニラでゼロからのスタート。ニーズがあり映像授業で解決できる社会問題があるかどうかを知らなければなりませんでした。

先週は、この国の教育に詳しい人から情報を仕入れるため、現地の教育学部や地域開発学部の優秀な教授・学生10人にアポをとっていました。

そんな簡単な作業ですが、その当時の僕にとっては、かなり高いハードルでした。なぜならTOEIC250点というスコアが表している通り英語が全くしゃべれないからです。

撤退したミンダナオ島では、いつも英語がペラペラの佐藤くんに話す事を任せていました。任せていたというよりも頼っていたといった方が適切かもしれません。

一応、日本にいる時からコツコツとリスニングなどをしていたつもりでした。しかし、ほとんど何を言っているか分からず、毎回「いま何て言っていたの?」と終わった後、佐藤君に質問していました。

ですので、これから1対1で話さなければならないということは、僕にとって苦痛でした。

逃げる事のできないインタビューの連続

11月21日火曜日、天気は晴れ。さわやかな朝。初めてのアポは忘れもしません。フィリピン大学開発学部4年の女の子ジェイさんとのアポイントでした。

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「どうしよう。やっぱり一人で不安なんだけど・・」

そんな溢れ出てくる不安がありました。考えて出てくることは全てネガティブなこと。憂鬱な朝。しかし、アポイントを取った以上、僕は逃げれませんでした。

マニラに来てからずっと、アポイント前日の日曜日も、自己紹介や団体について聞きたいことなど、自分が言いそうなフレーズを書き出して、全て丸暗記しようと何度も練習しました。リスニングもTEDもたくさん聞いてその日に備えました。

集合場所は、フィリピン大学の学生寮前。「そもそも家からフィリピン大学ってどうやっていけばいいのか・・」

そんなことも分からず、道行く人に場所を聞きながら、やっとのことでたどり着いた目的地。余裕を持って出たため、1時間以上前に着いてしまい、わざと集合場所から距離をおいたベンチに腰掛けました。

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「時間ギリギリにまた来よう。ここで待っていよう、誰かに話しかけられるのは嫌だ。」

心の中では現地の人の話を聞かなければならない、積極的な姿勢にならないといけないことは分かっていました。ただ英語で1対1で話す事への恐怖は大きいものでした。

集合時間直前までベンチで待ち、5分前になると今来たふりをして集合場所に移動しました。

ボロボロだった初インタビュー

笑顔でこちらを見ている感じのいい女性がいました。彼女が最初のアポイントを受けてくれた女性ジェイさんでした。

あいさつと最初のちょっとした雑談をした時点からなぜか汗がでてきました。彼女に団体の資料を渡して、昨日練習した丸暗記の英文を棒読みしました。

なんとか理解したようなので、次に、作った質問リストを見ながら、聞きたかったことを質問しました。「この映像授業でこの国のためになるもっとも効果的な事業はなにか?アイデアを教えて下さい!!!」

その後、質問を理解した彼女は真剣に、アイデアを多くだしてくれました。というか、くれているようでしたと言った方が適切かもしれません。

そんな感じで約束の2時間がなんとか過ぎました。お礼をいって、彼女も満足げに帰っていきました。

2時間の収穫は、何だったのか。そこには絶望がありました。結論をいうと、全く言ってる意味がわからなかったのでした。

落ち込んでしまったけど、そんな暇はない!

彼女の聞いている最中、自分の英語力のなさに寂しい気持ちになりました。なぜか自分がけなげに見えてかわいそうになりました。

なぜか最終的に、「帰国子女ずるい」という全く検討違いのことに怒りを感じるようになっていました。英語は多少頑張ったつもりだったんだけどな・・・

僕の英語力は語学学校時代に比べて進化しているどころか下がっている気さえしました。ここまで仲間に頼りっぱなしだった自分の甘さをうらみました。

でも、その落ち込みは今の危機的状況がすぐに消してくれました。

落ち込んでいる暇はない。なぜなら、今週あと6人とのアポイントが入っていて、なんと1時間後にまた開発学部の生徒ジェロームさんとのアポイントがあったからです。

「やばい!!つべこべ言わずやるしかない!!」

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アドレナリンがでるような湧き出るやる気というよりも、やらないと前に進まないという負の感情からのモチベーション。あせりでした。

とりあえず、言いたかったフレーズと聞きとれなかった単語だけはチェックしておこうと1時間復習しました。

そして、その後のアポイント、ジェローム君と2時間にわたって話を聞きました。結論からいうとこれも全く分からなかった。

危機感を持ちながらも甘える嫌いな自分

その日のアポイントが終わってから、よりいっそう勉強に熱が入るようになりました。その日の夜も24時まで勉強していました。

しかし、危機感があるからといって、僕はそこまで集中力が持つ方ではなかったのです。1時間くらい経つ度に、今日は頑張ったから寝ていいと自分を正当化させて勉強から逃げさせようとする心理が起こりました。

「頑張ったから」、それが僕の口実でした。

夜型人間の僕にとって、まだやれる時間があるのは分かっていました。2時くらいまで頑張るべきだ。でもこれ以上やっていても無駄。そういう2つの感情がありました。

友人の背中を見て気づいた大事なこと

頑張ったからいい・・か。ふと隣のベッドに寝そべった時、「英語の勉強」というフレーズで、ふと思い出したシーンがありました。

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それは、僕がこっちにくる前に日本の大学のパソコンルームでずっとフィリピンについて調べていて缶詰になっていたときのこと。

その時学校にいく度に、見る光景がありました。友人の女性が学校のベンチで1人で英語のスピーチの練習をしていた姿でした。聞くと、スピーチのコンテストがあるということで必死に取り組んでいました。それも毎回学校にいく度に練習しているのです。

聞くと家でもずっとやっているということで「すごいなあと」と感銘を受けました。24時を回ったその時間、その時は妙に僕の頭の中にその姿が離れませんでした。

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今ベッドに横たわっていて、多分このまま寝てしまうという予感を持っても動かない僕は、他の人から見て、どんな風に映るのだろう。

そして、次第に自分が恥ずかしくなってきました。友人が英語ができるのに、さらなる高みを目指して本気で英語を勉強している。

僕は人の期待とかいろんなものを背負って、たぶん一般的に社会の人からみるともっと英語をマスターしないといけない立場にいる。

言い訳ばかりで本気になっていない姿勢に恥ずかしさを感じるとともに、こみ上げてくるやらないといけないという義務感を強く感じていきました。

また、あることも思い出しました。僕のここに来た理由でした。子どもたちにあきらめないでチャレンジし全力を尽くして欲しいそれを映像授業で後押ししたい。そんな思い。
さて今の自分が「不可能はないんだ!全力を出そう!」と子どもたちに言えるのか?そんなこという資格もないんじゃないか。僕はまだ本気になれていない。

「自分の努力って、まだまだじゃん!!」

すぐに飛び起きて机に向かっていました。夢中でした。それは一種の悔しさでした。嫌いなだけどやらないといけない教材にも勇気を出して取り組みました。時計の針は2時を回っていました。

その日以降、以前にも増して英語と向き合うようになっていました。

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6人目のインタビューもいつも通りに始まった

連日のインタビューで毎回失望し、疲れながら迎えた週末の天気は、マニラに来て初めての土砂降りの天気でした。6人目のインタビューは、フィリピン大学の言語学で教えているカピリ教授へのインタビューの日でした。

路上には歩いているだけで、靴はベチャベチャ。傘を差しても意味がないような天気。

そしていまだに緊張する時間がありました。インタビューになれていたかと言えば、まだまだ1対1でじっくり会話することが大きなプレッシャーで、正直やりたくなかったです。憂鬱という表現がぴったりでした。

先生との待ち合わせしている部屋の前を行ったり来たりして、時間になったら勇気を出して部屋のノックをしていました。「こんにちは!よろしく!」元気な教授。そして僕もなんとか笑顔を作ってそれに答えます。いつも通りの憂鬱なインタビューが始まりました。

訪れた奇跡!相手の英語が聞こえる?

団体についての説明が終わりました。丸暗記ですが何度も繰り返していたので、それなりに形になっていました。そしていつも通り質問を重ね、アドバイスをもらう。

真剣に先生の話に今日は聞き入っていました。少し時間が経って、「何を言っているか分からない」という感覚が今日はないことに気づきました。

「あれ何か違和感なく理解できてる?!今日はなんか分かる!」

完璧とはいかないまでも、ほとんど内容が分かっている自分に気づきました。英語が聞こえる!!!

インタビューが終わり、笑顔で先生と分かれた後、すぐ良くしてもらっていた知り合いに電話しました。

「ねえ!何を言っていたか分かった!英語が分かるんだけど!!!」

感動で、英語教材の広告によくあるベタなフレーズを僕は声を荒げて報告していました。

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リスニング力が急激に上がったのではなく、単純に教育関係特有の単語と、その分野の内容の知識がついたこと、そしてその会話のパターンになれたことがこの結果につながったのでした。

それでも今の自分には嬉しかった。自然と笑顔になりました。僕を鼓舞してくれた友人への感謝。そして逃げたいものに立ち向かって得た高揚感。興奮しすぎて同じ建物を2周くらいぐるぐる回っていました。

やればできるじゃん。ベタですが本当にそんな風に思いました。

いつもと違う帰り道

冷静になってみると、さっきまで使っていた傘が必要無くなっていることに気づきました。土砂降りの雨は上がって、雲も少なく、きれいなオレンジ色の夕日が出ていました。

久しぶりに降った雨が汚れた排気ガスを落として、新しい空気を作っていました。生暖かい風も心地よかった。

バスの乗り換えでいつも通る歩道橋。そこからふと見下ろした街は、いつも見ていた車の排気ガスで包まれた嫌悪感を覚えていたものとは違っていました。

水はけの悪い道路は雨をためて、水分を含んだ街が夕日の光を反射させていました。

全てが僕に味方してくれているような不思議な感覚がありました。

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途上国の教育課題を若者の力で解決する

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