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皆さん、こんにちは!e-Education Project共同代表の三輪です。

この「代表コラム」では、e-Education Projectのメンバー全員が日々心がけている5つのこだわり(=クレド)について紹介しており、前回は、「最高の授業」を作るためのこだわり「Hyper Local」についてご紹介しました。

今回は、DVDを作る上で、どんなにお金を積まれてもこれまで絶対に譲らなかったこだわりについてご紹介します。

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【私たちの5つのクレド(※クレドとは?)】
(1)Chance Maker
(2)Hyper Local
(3)Contents Owner←今ここ!
(4)Youth Innovation
(5)Best Partner

もしもDVD作成費として300万円貰えるとしたら?

e-Education Project活動1年目の2010年。私たちは大きな壁にぶつかっていました。

「DVDを作るお金がない」

バングラデシュの農村部には優秀な先生がおらず、大学受験の夢をあきらめる高校生たちがいました。そんな彼らの悩みを解決するために、有名な先生の授業をDVDに収録して届けるというプロジェクトを考えついたのですが、肝心のDVD作成費が足りませんでした。

講師への謝金、カメラの購入費、編集費、農村でDVD授業を実施するための設備費。ざっと見積もっても100万円近い出費でした。ポケットマネーで何とかなる額ではありません。

アイデアを形にするために日本企業への営業を開始しました。バングラデシュの教育課題の現状を伝え、DVD授業を作成して届けるための協力を募ったのです。

嬉しいことに、日本の大手教育企業から協力を前向きに検討するという回答をもらいました。何度か打ち合わせをし、最大300万円の協力をして頂けるというところまで来ました。

しかし、です。契約書案に以下のような記載がありました。

「DVDのあらゆる権利は、株式会社◯◯に帰属する」

喉から手が出るほど欲しいDVD作成費でしたが、この1行を見て協力の話を白紙に戻してもらいました。

なぜ断ったのか、その理由が分かりますでしょうか?

DVDは、一歩間違えると教育格差を広げるツールになる

私たちは、恐れていることがあります。

それは私たちが作ったDVDが、最終的に途上国の教育格差を広げるツールになってしまうことです。

想像してください。DVDを再生するためにはパソコンやDVDプレイヤーが必要です。しかし、農村部でこれらのIT機器を持っている人はほとんどおらず、一方で都心部の人たちは一家に数台あるのが途上国の現状です。

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途上国でパソコンを持っている人のほとんどは富裕層

もし私たちが作ったDVDを予備校を始めとした民間企業に渡したらどんなことが起こりうるでしょう?少なくとも、農村の人たちが誰でも自由に質の高い教育を受けられる保証はなくなってしまいます。

私たちが作ったコンテンツを届けたい人たちへしっかり届けきるために、私たちは一つのこだわりを持つことにしました。

“Contents Owner”になろう!

どんなにお金を積まれても譲らないこだわりになります。

“Contents Owner”とは?

よく誤解されてしまうのですが、“Contents Owner”とはDVDのあらゆる権利を自団体に帰属させることではありません。

昨年ハンガリーで作成した映像コンテンツの権利は、現地の大学と共同保有という形式を取っており、現在進めているインドネシアの映像コンテンツも現地NGOと共同保有する方針で動いています。

ただ、どちらの国でも、そして他の全ての国でも、DVD作成時に絶対譲らないことがありました。それは「使用目的」です。

「どんなに貧しい人たちでもアクセスできるように」

表現の方法が多少変わるものの、私たちはこういった文言を必ず契約書に入れるようにしています。DVD授業の講師、提供先のNGOなど、あらゆる場面で「使用目的」を確認してきました。

この「使用目的」で合意が取れている限り、私たちはDVDを貧しい人たちに自由な形式で届けることができ、都心部と農村部間の教育格差を広げない抑止力を持つことができるのです。

経験の所有者になり、知恵を磨く

「使用目的」の他に譲らないもう一つのこと、それはコンテンツの「作成体験」です。

私たちはDVDの作成を全て外部に委託することはありません。撮影や編集作業を委託することはありますが、先生の選定や作成計画自体を外部の団体に全て任せたことはこれまで一切ありません。

当たり前のように聞こえるかもしれませんが、この作成時の体験こそがe-Education Projectの最大の財産になるのです。

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バングラデシュでは撮影から編集まで全てe-Educationメンバーが行っています

私たちはこれまで8カ国で映像教育プロジェクトを立ち上げてきましたが、各国でDVDを作ってきた経験は、新しい国で同様のプロジェクトを立ち上げるための「知恵」になりました。

これはガイドラインにまとめられているような知識ではありません。「知恵」は不確かな課題を経験に基づいて突破するための武器であり、各国でプロジェクトを進めながらこの「知恵」を皆で磨いています。

まとめ

最後にもう一度整理します。

私たちは、DVDを作成する上で、どんなにお金を積まれても譲らない2つのことがあります。

  • “貧しい人たちのために”という「使用目的」
  • DVDをつくる“知恵”を磨くための「作成体験」

この2つを獲得し、守るために、メンバー全員が心がけているこだわり、それが“Contents Owner”です。

【次回予告】誰がイノベーションを起こすのか?

いかがでしょう?私たちのDVD作りのこだわりが理解いただけたでしょうか?

次回は、4つ目のクレド“Youth Innocation”についてご紹介します。私たちは「途上国の教育課題を若者の力で解決する」ことをミッションにしていますが、なぜ「若者の力」なのか解説します。

また、この「代表コラム」のコーナーでは、読者の皆さんからの質問やご意見もお待ちしております。もし私たちe-Education Projectの活動にご興味ある方はぜひSNSでコメントいただければ幸いです。

ではでは、また来週!


途上国の教育課題を若者の力で解決する

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