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アフリカの東に位置する小国ウガンダ。若者の失業率が70%以上にもなるこの国で今、一人の日本人がイノベーションを起こそうと奮闘しています。外資系コンサルタントとしての約束されたキャリアを捨てて、日本から遠く離れたこの地で挑戦することを選んだわけとは―。

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今回はウガンダで、次世代を担うビジネスプロフェッショナルを育成するためのプログラムを運営する「WBPF Training」代表、伊藤淳さんにお話をうかがいました。

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大怪我を転機に見つめ直した人生の歩み方

今でこそアフリカを中心に活躍する伊藤さんですが、新卒でアクセンチュアのコンサルタントとして働き始めたころは、まさか自分が途上国で起業することになるとは考えてもいなかったと言います。

そんな伊藤さんに転機が訪れたのはコンサルタントとして働き始めて4年後、2009年のことでした。大好きだったスノーボード中に大怪我、1か月もの間寝たきりでの生活を余儀なくされてしまいます。

一人では何もできない状況の中で、自分を支えてくれる家族や友人、同僚の暖かさが身に染みたそうです。またそれと同時に、それまで自分のことしか考えてこなかった自らの身勝手さに気づかされました。

「これまでお世話になった人や社会のためにつながることをやりたい。」そんな思いが、伊藤さんの中で大きくなっていきます。

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マサイ族の青年との出会いが教えてくれたこと

怪我から復帰した伊藤さんは、早速会社がCSR活動の一環として行っている、途上国のソーシャルセクターにコンサルタントを派遣するプログラムに応募。2010年、念願かなってケニアのNGOに派遣されることになります。

伊藤さんが派遣されたのは、マサイ族を支援するケニアの小さなNGO。コンサルタントとしての経験を生かしてNGOの経営改革や組織改革に着手した伊藤さんは、次々とそれらのミッションで成果を上げていきます。

その中で、NGOの同僚であった一人のマサイ族の青年に「アクセンチュア」で仕込まれた仕事の仕方を伝えていきます。

同い年でしたが、大学を卒業したばかりの彼は、当然プロフェッショナルとしての社会人のイロハがほとんどありませんでした。僕も若かったので、今考えるとかなり厳しいやり方で接していたと思います。それでも彼はなんとかくらいついてきてくれた。
半年後、見違えるほど成長した彼を、僕はそのNGOの代表に推薦しました。マネジメントの合意を得て、彼は代表になりました。彼は、数年前にそのNGOを退職、現在は比較的規模の大きい国際NGOの部門代表をしています。ついこの間は、ニューヨークで行われた国際カンファレンスでプレゼンをしてきたそうです。

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「Work with Africa」を目指して

「人は大人になっても変われる!」

青年の成長を間近で目にした伊藤さんの中で、そんな思いが確信へと変わっていきました。9か月後、任期を終え日本に帰国。先進国よりもダイナミックでポテンシャルのある途上国でのビジネスに強く惹かれるとともに、社会起業家を支援するSVP東京などへの参加やアフリカビジネス勉強会の開催を通じてアフリカビジネスへの関心やネットワークを強めていきます。

数多くのグローバルな社会課題に直面するアフリカ大陸。そこに、今後の地球の未来を担う大きなイノベーションの可能性を感じました。Work for Africa(アフリカのために働く)という考え方に対して、僕は違和感があります。そうではなくて、Work with Africa(アフリカと共に働く)、ここに住む人たちと共に新しい世界の未来を創造したいという思いが僕の中で強くなってきました。

伊藤さんに2度目のアフリカでの仕事のチャンスが訪れたのは、それから2年後、2013年のことでした。アフリカとのかかわり方を模索する中でもう一度現地に行く必要があると感じた伊藤さんは、東アフリカで医薬品のサプライチェーン拡大を目的とするプロジェクトの責任者としてケニアの首都ナイロビへと派遣されることになります。

しかし、そこで感じたのは自分が会社員として働きながら、アフリカにコミットすることの限界でした。

再度、現地に滞在すれば自分のやるべきことを見極める事ができるのでは?と考えていました。しかし、実際には本業をしながら中途半端な状態で模索できる事ではないと痛感しました。その時はまだ明確に起業するか決めていなかったのですが、覚悟が決まったというか、まずは現地にフルコミットできる状態を整えようと、悩んだ末、仕事を辞める決意をしました。

「ウガンダ人は仕事ができない」のか

伊藤さんが9年弱務めたアクセンチュアを退職したのは2013年12月。その直後、2014年1月、ウガンダへ拠点を移し活動を始めました。

工学部の出身だったこともあり、新しい持続可能性の高い製造業の在り方に興味があった伊藤さんは、ほとんどネットワークがない状態から周囲の助けを借りて現地の製造業者、行政機関、NGO機関などに会いに回ったそうです。

「ウガンダ人は仕事が出来ない、特にエリートが…」

色々と動き回る中で伊藤さんはよくこんな言葉を耳にするようになります。調べてみると、確かにウガンダでは企業の要職に、ウガンダ人以外の外国人が就いているケースが多いことが分かりました。

しかも、他アフリカ諸国であるような欧米人、中国人、インド人だけではなく、他アフリカ諸国出身の人材が就いています。なぜこんなことが起きているのか?

調査を続ける中で伊藤さんは、ウガンダ人が使えないと言われる原因が、極度の暗記教育、高い離職率、インターンや新入社員研修などの実用的な育成システムの機会がないからであるという結論に達します。

それなら、「プロフェッショナルを育成するトレーニング機会を提供する事で変われるのではないか?」と考えます。周囲からは「子供のころの教育が大きい。大人になってから育成できるものなのか?」との疑問の声もあったそうです。

しかし、伊藤さんの胸の中には、ケニアで見違えほど成長した青年の姿が浮かんでいました。

「人間は大人になっても変われる」

ここにビジネスチャンスを見出し、2014年6月、ビジネスプロフェッショナルの育成を目指したプログラムを運営するWBPF Training(World-class Business Professional Fundamental Training)をスタートします。伊藤さんがアフリカと初めて出会ってから4年が経っていました。

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アフリカ発のイノベーションを目指して

アフリカ発の持続可能性の高い新しい未来は誰が創造するのか?それは国連開発目標のようなトップダウンの形でもないし、僕らのような外国人が作るものでもない。それは現地の人から生まれるものだと思います。この事業の目的は、会社という枠を超えて、ウガンダの、アフリカの社会や経済の未来を当事者意識を持って創造できる人材基盤を構築することにあります。

伊藤さんは昨年の6月までに企業へのニーズ調査を終え、すでに2回、ウガンダの企業・団体に対し6-7週間のトレーニングプログラムを実施。それぞれ上々のフィードバックを得ています。

また、今年からは事業を拡大するため、パートナーとして一緒にウガンダで事業を作り上げてくれる方を募集しています。即戦力として活躍できる人材を求めているそうなので、興味のある方はぜひこちら(wbpftraining[at]gmail.com)へ連絡してほしいとの事です。
※[at]を@に変えてご連絡ください。

最後に伊藤さんはアフリカという場所の面白さについてこのように話してくれました。

これから20年、30年で世界は大きく変わっていくと思います。グローバルな社会課題はたくさんありますが、そのほとんどすべてがアフリカに集約していて、かつ一番深刻で、またそれに対する抵抗力がない。だからこそ、僕は、アフリカが世界で最もイノベーティブなソリューションが生まれる場所の一つだと信じています。

課題先進国としてのアフリカ。伊藤さんのお話を聞いていると、これまでの先進国のイノベーションを途上国に輸入するというモデルから、途上国のイノベーションを先進国に輸入するというモデルへのパラダイムシフトはもうそこまで迫ってきているのかもしれないと思えてきます。

ウガンダ発のイノベーションを起こそうと奮闘する伊藤さんたちの活動が、アフリカ、そして世界へ広がっていく日はそう遠くないかもしれません。

また、伊藤さんの他のインタビューも公開されていますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。

【ウガンダインターンのお知らせ】
伊藤さんと一緒にウガンダの起業家育成に取り組まれたいという方は、ぜひ伊藤さんご本人(wbpftraining[at]gmail.com)までご連絡よろしくお願いします。
※[at]を@に変えてご連絡ください。

途上国の教育課題を若者の力で解決する

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