皆さん、こんにちは。現在、e-Educationインドネシアプロジェクト担当としてインドネシアで活動しています、田中瑞幹です。
第一回目投稿ではe-Educationの活動に参加するに至った経緯、第2回目投稿ではインドネシアの秘境バドゥイについてご紹介しました。
早いもので、インドネシアでの生活も3ヶ月を迎えています。そこで、第3回目投稿の今回はインドネシアに来て約3ヶ月で行ってきたこと、そしてそれを通じて感じたことを赤裸々にお話ししようと思います。
3ヶ月間、何をしていたのか
日本語学習に励む技能実習候補生
最近、多くの人から「インドネシアで何しているの?」という質問を受けます。一括りに日本語教育と言っても様々な形があり、イメージしづらいのも事実です。正直、インドネシアに来るまで僕自身も何をしたらいいかわかっていませんでした。
また、日本語教育というと僕自身が日本語を教えているということをイメージされる方も多いと思いますが、恥ずかしながら僕には日本語を教える力などありません。
では、一体何をしてきたのか。
端的に言うと、教育機関にお願いして日本語を学んでいる人や教えている人にアンケートやインタビューをしてきただけです。約3ヶ月間、高校生や大学生、技能実習候補生、働きながら日本語を学ぶ人、高校・大学・日本語学校の先生にひたすら話を聞きました。
「インドネシアの日本語教育の問題点は何か」「もっと日本語教育の質を上げるために何が必要なのか」「日本語を学ぶあるいは教える難しさはどこにあるのか」「なぜ日本語を学んでいるのか」「映像で授業を受けることをどう思うか」「どうやったら楽しく学べると思うか」
調査場所を見つけ、足を運び、ビミョーなインドネシア語と英語、そして日本語を交えながら説明し、アンケートやインタビューを行う、それの繰り返しです。
時にはやる意味を感じなくなったり、しんどくなったりすることもありましたが、それでも繰り返し調査を行うことで、少しずつインドネシアの日本語教育の現状が掴めてきました。
本当に日本語学習者数世界第2位なのか
国際交流基金によるとインドネシアの日本語学習者数は中国に次ぐ世界第2位と言われています。確かに、多くの高校で日本語の授業が行われ、インドネシア大学やパジャジャラン大学といった有名な大学でも日本語学科が存在します。
しかし、一方で、彼ら全員が、何が何でも日本語を学びたいとは思っていないというのも事実です。多くの場合、日本の文化や日本人に興味を持ち、日本語学習を始めます。また、以前はインドネシアでも日本のアニメが頻繁に放送され、日本という国が身近にあったということも大きな要因です。
その反面、授業で学ぶ日本語は文法中心であり、尊敬語や謙譲語、漢字など日本人もあまり好まない分野も勉強しなくてはなりません。インドネシア人にとって学習モチベーションを維持することは難しいのです(日本人の英語学習のような感じです)
また、高校においては日本語が第2外国語の選択肢としてあります。この3ヶ月間で幾つかの高校を訪問し、各学校の日本語の授業を見学してきました。
僕の想像は、みんな日本語が大好きで、学ぶことを楽しんでいるというものでした。しかし、現実には日本語を好きで学んでいる生徒は数名程度。その他の生徒は、選択科目に日本語があるから仕方なくといった雰囲気です。
実際、某高校の先生は、「近年、日本語を学びたいと言っている生徒は減っている。授業に来ない生徒もいるよ」と言っていました。確かに、日本の文化(着物や日本食、お茶、アニメ、漫画、映画など)の認知度は計り知れません。日本人より詳しい人に会うことも頻繁にあります。
一方で、日本語への入り口がアニメや漫画である生徒が多く、それに伴い、学校の授業に対してモチベーションが上がらない生徒も多いということを忘れてはならないと感じます。
そんな中にも、真剣に日本語を学んでいる生徒はいる
放課後に日本語学習に励む理系の大学生
しかし、大事なことは、そんな中にも真剣に日本語を学んでいる人はいるということです。
ここで、具体例を紹介させてください。
以前、ジャカルタにある某大学を訪問した際、ある一人の女の子に会いました。彼女はカリマンタン(ジャワ島の上にある島)出身で、現在は大学で日本語を学んでいます。この日は、9月に行われる日本語弁論大会に向けて、原稿の修正をしてもらうために学校に来ていました。そこで、少し話を聞いていると、彼女は高校時代独学で日本語を学んでいたというのです。
「地元には日本語の先生がいないから独学でするしかなかった。どうしても大学で日本語を学びたくて、ジャカルタの大学に出てきた。将来は日本へ留学し、日本で働きたい」
彼女は恥ずかしがりながら、きれいな日本語で答えてくれました。また、先日はバンドンにある某有名理系大学を訪問しました。ここは、インドネシアの大学の中でも三本の指に入る大学です。
そんな中、将来のインドネシアを担う精鋭たちが、なんと放課後を使って日本語を学んでいるのです。集まっているのは、すでに卒業が決まっている4年生。彼らは、将来、日本の企業で働きたいという夢を持っています。
理系ということもあり、日中は研究に追われ、午後4時過ぎから8時前まで日本語を学び、その後論文執筆というタイトなスケジュールの中でも日本語を学んでいる姿は純粋にカッコよかったです。
「大変ではないですか?楽しいですか?」という僕の質問には、「はい、日本語を学ぶのは楽しいですよ。早く日本語ができるようになって、日本で働きたいんです」と笑顔で答える彼らに、僕は圧倒されるだけでした。
「真剣に日本語を学びたい、何が何でも日本で学びたい・働きたい」そんな人を応援したい
ダルマ・プルサダ大学日本語会話クラブの学生達
冒頭で話したように、インドネシアに来て約3ヶ月、本当に多くの日本語教育機関に足を運び、日本語教育の現状を掴んできました。
その中で、日本語を仕方なく学ぶ生徒ややる気のない先生も見てきました。しかし、一方で、日本語教育を変えたいと奮闘する先生やどんな環境や状況でも必死に日本語を学び、いつか日本で学んだり働いたりしたいと思っている人は少なからずいます。
こうした人を応援したい。3ヶ月目にしてようやく自分のやるべきことが見えてきました。
インドネシア生活も残り7ヶ月。まだまだ道のりは長いですが、1日1日を大切にしながら、彼らの応援をしていきたいと思います。
皆さん、引き続きご声援よろしくお願いいたします。
高校生の自分に負けないために。確かな覚悟を持って、インドネシアで自分の殻を破ってきます(同志社大学4年・田中瑞幹)
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