皆さん、こんにちは!NGO e-Education Project共同代表の三輪です。
先週から始めた「代表コラム」のコーナー。こちらは、e-Educationに関する質問についてお答えしつつ、NGOの活動をもっと深く知って頂くためのコーナーになります。
前回は、NGO e-Education Projectの活動の簡単な紹介をしましたが、今回は私たちの主な活動内容である映像教育事業についてお伝えできればと思います。
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私たちが映像をつかった教育支援にこだわる3つの理由
「なぜ途上国で映像(DVD)をつかって教育支援を行っているのか」
これは私たちがよく頂く質問になりますが、私たちが映像をつかった教育支援にこだわるのにはいくつかの理由があります。
その中から、主な理由を3つに分けてご紹介したいと思います。
【1】いつでも、どこでも、何回でも
途上国の教育課題の例を一つご紹介します。
バングラデシュの農村で暮らす貧しい高校生たちは、必ずしも学校に毎日通えるわけではありません。親の仕事を手伝わなければならない学生もいれば、家族の看病のためにしばらく学校に通えなくなる学生もいます。
これに対して、映像(DVD)教育であれば、彼らの悩みを解決することができます。
昼間学校に通えない高校生でも、夕方からDVDで授業を受けることができます。PCセンターが近くにあれば、遠い学校へ通わなくても勉強に追いつくことができます。
学校にしばらく通えず、学校の勉強に追いつけない学生たちもサポートできます。DVDであれば、分からない授業を何度も受けることができるため、遅れを取り戻すことができるのです。
さらに、生徒の勉強の目標や実力はバラバラであり、DVDがあることで、一人一人に合ったカリキュラムを作ることができます。
私自身、高校3年生の夏までずっと部活動を続けており、DVD授業のおかげで大学受験対策の遅れを取り戻すことができました。
日本では当たり前になりつつある映像授業が、途上国の教育課題解決に役立っているのです。
バングラデシュの農村に作ったDVD予備校
【2】ローコスト、ハイクオリティ
途上国の最も深刻な教育課題の一つは「優秀な先生不足」です。
バングラデシュでは4万人の先生が不足しており、優秀な先生達は高い給料を求めて都心部に移住してしまうため、農村部には優秀な先生がいません。
JICAをはじめとしたODA機関や国際協力機関が途上国の教員育成を行っているものの、初等教育に比べて優先度が落ちがちな高校の先生育成においては、多くの国が間に合っていません。
さて、この問題を解決するためには、どうしたら良いでしょうか?
各学校に優秀な先生を配置し、全授業を指導できる状態が一番だと思いますが、これを実現するためには非常にコストがかかります。途上国の厳しい国家予算から、この費用を捻出することはやはり難しいです。
そこで映像(DVD)教育の登場です。DVD教育の最大のメリットは拡散性と再現性です。一度撮影した授業はDVDにして、各地方の学校やPCセンターに提供することができ、どこでも同じ質の授業を受けることができます。
そして費用も抑えることもできます。優秀な先生1人の授業1年間分を撮影するコストは、100人の先生を育成するコストに比べて遥かに安いです。さらに翌年になれば、コストはほぼ0であり、費用を抑えて質の授業を大量に作成することが可能になるのです。
さらに嬉しいニュースもあります。私たちが作った映像授業が教員育成の現場でも使われ始めたのです。質の高い授業を必要としているのは生徒だけではなく、先生たちが見ることで彼ら自身の授業の質も向上するのです。
【3】永遠に続く教育支援の形
最後のポイントを紹介する前に、よく頂いている質問(意見)をもう一つご紹介します。
「大学生が途上国で教育支援を行うのには、時間的な限界がある」
私たちe-Education Projectは、日本の大学生が中心となって、途上国の教育支援を行っています。1年近く大学を休学して参加している者もいますが、ご指摘の通り時間的な限界は確かに存在します。
しかし、「時間的な限界がある=途上国支援は不可能」だと決めつける必要はないと考えます。
私たちが作成した映像(DVD)は、それを必要としている人たちの手元に残ります。DVDを作成した学生がいなくなった後でも、作ったコンテンツは現地にしっかり残るのです。
仮にDVDを無くしてしまったとしても、バックアップデータからすぐにDVDを作成することができます。私たちは日本でもバックアップのデータを管理しているので、現地から要請があれば、すぐにデータを送ることもできます。
「学校は作ったけど、先生がいなくて授業ができなかった」
これはよく途上国の教育支援の問題としてあげられる問題の一つですが、もしそこにDVDの授業が加わったらどうでしょう?さらに、現地の公立学校やPCセンターにDVDを届けたらどうなるでしょう?
日本の大学生たちが現地を離れた後でもDVDは形としてしっかり残り、子供たちの可能性をずっと切り開き続けるツールになり得ると私たちは考えています。
バングラデシュでは日本人スタッフなしで予備校を運営しています
映像(DVD)作成はあくまでスタートライン
最後に一つ補足をすると、私たちは映像をつくること自体をゴールにしているわけではありません。むしろDVDを作ってからが最も大変であり、現地の人たちが「使い尽くす」ことができるよう、可能な限りのサポートを行っています。
授業のDVD化はあくまでスタートラインです。DVDをどのように活用し、どう広めていくかは、今も必死に探しているところです。何かご意見ありましたら、ぜひ宜しくお願いいたします!
【予告】次回のテーマは「インターネットとDVDの違い」です!
長くなりましたが、私たちが映像(DVD)をつかった途上国教育支援にこだわる理由をお分かりいただけたでしょうか?
次回は、なぜインターネットによる動画配信をせずに、DVDによる教育支援を中心に実施しているのか、その理由についてご紹介します。
それではまた来週!
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