トジョウエンジン読者のみなさま、こんにちは!バングラデシュでインターン中の北川修平です。前回の記事ではバングラデシュでの人間関係を、僕がいかに乗り越えたかお話ししました。
いきなりですが、みなさんは、現在e-Educationバングラデシュが抱えている大きな問題をご存知でしょうか?
それは「お金」です。実はこの問題を解決することこそ、僕に課せられた任務の1つだったのです。今日は実際に僕がインターンとしてこの「お金」の問題にどのように取り組んだのか、そのことについてお話ししたいと思います。
お金はどこからやってくるのか?
2010年に授業を開始したe-Educationバングラデシュは現在200人以上の生徒を抱えています。当然、授業のためには教室代や教科書代をはじめ多くのお金が必要となります。
しかしながら、e-Educationの対象となっている生徒の多くは貧しい家庭に育った高校生です。そんな彼ら彼女らに十分な授業料を払う余裕は、もちろんありません。したがって授業はすべて無料で提供しています。では、授業に必要なお金はどこから来ているのでしょうか?
そのようなお金は、現在ほぼすべて、寄付によって賄っています。しかしながら、その寄付もいつまでもらえるかは分かりません。どうしても、活動を安定して継続させるためには自前での資金調達が必要となってくるのです。「いかに自分たちの力でお金を稼ぐか」。e-Educationバングラデシュはまさにこの大問題に直面していました。
「絶対に成功させてやる!」
「映像授業に広告をつけたら、面白いと思うんだよね」
出国前に会ったe-Education副代表の三輪さん(三輪開人)はそう言っていました。e-Educationバングラデシュで使われている映像授業に広告枠を設けて、それを企業に売ること。e-Educationバングラデシュが自らの力で資金調達をする方法として三輪さんが目をつけていたのが、この「広告」でした。
「あ、それ面白いですね!!やってきます!」と軽く引き受ける僕。こうして僕のインターンの任務の1つにこの広告による資金集めが付け加えられましたのでした。「これを成功させられれば、すごくかっこいいじゃん!」その時の僕は単純にそう思っていました。
またなんとなく、これはうまくいきそうだという自信もありました。「絶対に成功させてやる!」そんな思いで僕は意気揚々と、e-Educationバングラデシュの活動の本拠地でありゲストハウスのあるチャンドプールへと乗り込んでいったのでした。
なさけなくて、途方にくれて
「だめだ、だめだ。それをやりたいんだったら、自分で新しいプロジェクトを立ち上げるんだね。」授業に広告を付けて資金を集めたい。チャンドプールに着いて早々、e-Educationバングラデシュ副リーダーであるトゥヒンは、そんな提案をした僕に向かってはっきりと言いました。
その言葉の背後には「これは僕たちのプロジェクトなんだから、お前はそんなことをする必要はない」という思いがはっきりと感じられました。
予想もしていなかった完全却下に僕は動揺してしまいました。たぶん、うまくいくだろう。そんな僕の甘い考えは全く通用しないことが、この時初めてわかりました。
結果を出さなくてはいけないと焦る気持ちとは裏腹に、広告による資金集めは遅々として進みませんでした。「自分で別のプロジェクトを立ち上げるんだね。」トゥヒンの言ったその言葉が、僕の頭の中でぐるぐると回っていました。
時間は限られているにもかかわらず、まったくどうすればいいのか分からない。他のe-Educationのメンバーのようにどんどんとプロジェクトを押し進めている自分の姿を想像していた僕は、現実とのあまりのギャップに自分がなさけなくて、なさけなくて、どうしようもなくなってしまったのです。
自分を送り出してくれた三輪さん(三輪開人)になんて説明すればいのだろうか。チャンドプールのゲストハウスについて1週間で僕は自分のあまりのなさけなさに、いつしか朝、ベッドから起き上がる事すら苦痛に感じるようになってしまいました。ベッドから起きたら、この現実を直視しなくてはいけない。窓のない、薄暗いゲストハウスの一室で僕はひとり途方に暮れていました。
「失敗したくない」からの脱出!
そんな時、ふと、1冊の本が僕の目に留まりました。それは日本から僕が持ってきた、e-Education代表の税所さん(税所篤快)の「前へ!前へ!前へ!」でした。僕がe-Educationとであったきっかけであり、僕の原点でもあるその本を、僕はすがりつくような思いで読み始めたのです。
たった十数人の生徒から始まったe-Education誕生の物語。その本の中の1つの場面で、ページをめくる手が止まりました。それは代表の税所さん(税所篤快)が、e-Educationを始めるために、資金集めをしようとする場面でした。
「失敗したくない。」そんな思いから、資金集めに踏み込めない税所さんはあることに気が付きます。それはあきらめない限り、常に可能性はあり続けるということでした。たとえ何社に断られようとも、必ず次がある。失敗することで失うことなんて何もない、そう気づいた税所さんは資金集めへと奔走し始めるのでした。
再スタートの決意
「これって・・・おれじゃん・・」
自分はただのインターンだ。失敗することで失うものなんて、それこそ何もない。だったら、何度だって当たって砕けてやろうじゃないか!ゲストハウスの小さなベランダから見える夕日に、僕は固く誓ったのでした。
それからの日々はとにかく提案の繰り返しでした。考え、提案し、修正する。今までの「失敗したくない」という思いから、頭の中だけで考えてうじうじしていた自分はいつの間にかどこかに行っていました。
夜中にどうすべきか考えていたら、あまりにも興奮しすぎて、半分眠っていた現地メンバーのアリフを無理やりたたき起し、2人で朝まで話し合ったこともありました。
結果から言えば、実はこのとき考えた広告による資金集めのモデルは、企業との交渉を目前にしてストップがかかってしまい、僕のインターン期間では実現することはできませんでした。資金集めは日本に帰ってからの僕の宿題という形になってしまいました。
あきらめずに取り組み続けた末に得た自信
ただ、この経験から僕が得たものがあります。それは自信です。あのとき、確かに逃げずに壁に立ち向かっていったという自信。その自信さえあれば、日本でもあきらめずに「前へ!前へ!前へ!」進むことができる。僕はそう信じています。
もちろん、バングラデシュで広告を実現できなかったという悔しさはあります。ただ、まだまだあきらめたわけではありません。日本にいながらできること、日本にいなくてはできないことが山積しています。だからこそ僕はこれからも進み続けたいと思っています。
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