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トジョウエンジンでも以前から、インターネットで世界の多くの人々に開かれているオンライン教育のかたちである「MOOCs(Massive Open Online Courses)」の途上国での可能性に注目してきました。

先日、e-Educationプロジェクトの実施国の一つでもある東アフリカのルワンダで、オンライン上のMOOCsと実際の現場実習の両方を混ぜ合わせた教育業界初の「Kepler」大学が、今年9月にオープンすることが発表されました。

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昔と今をブレンドする新コンセプトの大学「Kepler」

MOOCsのコンセプト自体はとても新しいですが、「Kepler」のルーツはそうではありません。

ルワンダでは、”certificate of vulnerability”と呼ばれるルワンダ政府オフィシャルの証明書があります。これは、貧しかったり、両親を1994年のジェノサイドで亡くした学生達には配布されるというもの。

これまで9年間に渡り、NGO団体「Generation Rwanda」は、毎年20人ほどの成績優秀なルワンダ人を地元の大学へと進学させるプログラムを行なってきました。

同団体は、次第にそのサポートを広げていき、カウンセリングやヘルスケアの分野でもサービス提供をスタート。なんと98%のプログラム参加者が最終的には卒業し、さらにこれら98%の卒業生が仕事を見つける事ができたのです。

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「成功モデル」の背景にある2つの問題点

しかし、「Generation Rwanda」の職員は、この成功モデルに大きく2つの問題点があることに気付いていました。

1. このモデルではスケールアップさせていくことはできない。

共同創設者のヘイグさんは以下のように言います。

200人の卒業生を出せたことは素晴らしい。しかし、そこには大きな穴があります。それは、アフリカの若年人口の急激な増加です。現在たった7%の人口しか高等教育を受けることが出来ていません。さらにその数は、1000万人ほどに10年後には増えていくでしょう。

2. 資金不足の国立大学の質

年間の学費が、2000〜3000ドル程度の大学は、地元の人にとってはとても高価。これによって、多くの若者の希望を奪っています。

教育システムは、人の将来のポテンシャル(フロー)ではなく、その時(ストック)に持っている力だけを重視し過ぎる傾向があるのです。

ルワンダの大学教育を一新させる!

ヘイグさんは、「Generation Rwanda」に新たな人材をリクルーティングし、「Kepler」というネーミングで、大学を作ってしまおうと決断。採用した男性の名はホダリ。ヘッジファンドでの豊富な経験を持っており、開発事業での知識ばかりだったヘイグさんの「Generation Rwanda」にさらなる力を加えました。

彼らのミッションは、「Generation Rwanda」インパクトをスケールアップさせるだけではなく、その質も向上させることです。

必然的にヘイグさんとホダリさんは、オンラインで誰でも無料で世界トップ大学の講義が聞けてしまうMOOCsを提供するプラットフォームedxCourseraUdacityなどを使って改革しようと考えました。

MOOCsには様々なサービスがあり、世界中で数百万人〜数千万人規模の利用者がいます。しかし、最終的に全てのコースを修了した生徒は数が少ないのです。

そして今では、この無料オンライン教育サービスが従来の大学のモデルを超え、学ぶことへのアクセスを増やすことができるようになるかが争点となっています。

「Kepler」大学では、この秋から試験的なクラスを、2600以上の応募の中から選抜された50人ではじめます。その50人は、電気やインターネット環境が整った家で共同生活をします。

また、8人の教授が授業を受け持つ予定です。2人はアメリカの公立高校で教師経験があり、ジャマイカ人とナイジェリア人が1人ずつ、そして4人のルワンダ人で成り立っています。

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MOOCsをベースに、オフラインでも学習

最初は、学生は一つの学位課程(ビジネスに焦点を合わせた一般的な研究と同様のもの)の取得を目指します。コンセプトとしては、MOOCsのビデオを見て、問題をオンラインで問いていくというもの。そして生徒個別で、上記の先生に会い、会話やディベートなどを西洋スタイルで練習していきます。

ヘイグさんは、このように大学について語ります。

私たちのカリキュラム(教育課程)のデザインディレクター達は、全て地元に関係するものを使っています。ただ単にMOOCsのコースを修了してもらうだけではなく、それに加え学生達に、課外授業や討論などといったブレンディッド・ラーニング(混合的な学習)を学んでもらいたいのです。

このプログラムでは、Telecomsなど地元企業でのインターンシップも組まれており、実務の経験も積むことが可能になります。

ブレンディッド・ラーニングと授業料の安さが特徴

この大学の掲げる「ブレンディッド・ラーニング」は、オンラインや一般的な学習方法より良い結果を出してきました。このプログラムは全て「College for America」が、アメリカ教育省から特別な承認を受け、何時間授業を受けたかではなく、生徒の知識に基づいて学位を授与します。

最後になりますが、このプログラムの最も注目すべき点は授業料の安さです。「Kepler」は、なんと年間1000ドル(約10万円)で、卒業後に現実的に払える金額となっているのです。

「Kepler」は、一般の大学のサービスを提供しません。また、研究へのサクセスは無く、教授は普通の教授と比べ格段に安い給料しかもらっていません。

しかし、このような学びの形があれば、ルワンダのみならず、途上国でも豊かな学習が可能になるかもしれません。ぜひ注目していきましょう。

[Kepler]


途上国の教育課題を若者の力で解決する

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