池袋で西武デパートの地下一階を通ると、頭の中にいつもこんな質問が浮かんできます。こんなにたくさんのケータリングの店に、売れなかった食べ物は結局どうしたのか?
もちろん、店の人も一生懸命その無駄が減るように毎日の販売量により生産量を調整していると思いますが、閉店時間に近づくと、食べ物の値段はとても安くなり、たまには1割、2割になる時もあります。
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従来マージンが比較的に高い外食業界でも、市場の全体が縮小している今、「無駄なコスト」を削減するという課題の重要性は段々上がってきました。
一方、東京みたいな生活費レベルが非常に高い都市で、高額の食費を負担できない低収入者が何千人も存在しているでしょう。仕方がなく無駄になった食べ物。豊かな食生活ができない低収入者。こんな状況の中に、改善の余地は必ずあると思います。
売れ残った食べ物をチャリティー団体に配る
今回ご紹介するソーシャルビジネスは、この不平等を取り組む米・シカゴの「Zero Percent」という会社。
同社がやっていることは極めて単純で、「売れ残った食べ物をケータリングの店からチャリティー団体に配る」だけです。
「What」より「How」の部分は面白いので、紹介させていただきます。
ポイント①:アプリで「マッチング」のプロセスを便利に
Zero Percentのアプリでは、下記のことができます。
- チャリティー団体とレストラン・ケータリングは、アプリで簡単にネットワークに登録できる
- レストラン・ケータリングは売れ残った食べ物が出たら、ワンボタンで周辺のチャリティー団体に一斉発信
- チャリティー団体にはメッセージがリアルタイムに届き、ピックアップする/しないの選択がすぐできる
これで、供給と需要のマッチングは全てスマホ上のシンプルな操作で実現しました。
ポイント②:物流アルゴリズムで配送を最適化
- チャリティー団体が自らピックアップするオプションに加えて、Zero Percentは自社の一台の車で配送することも可能
- 限定的なキャパシティーを最大限に活用するため、食べ物の種類・量・賞味期限・距離等の要素を考慮する複雑な物流アルゴリズムを自社開発した
- 将来の規模拡大と共に、物流アルゴリズムの効率と横展開の可能性(例えば、花屋の配送?)も倍増
ポイント③:win-win-winのビジネスモデル
- チャリティー団体:自らのピックアップは無料で、Zero Percent社の配送には一定の手数料を払う(金額不明)。食べ物獲得のコストは、運賃だけ
- レストラン/ケータリング:2つのプランを提供。共通的なメリット(チャリティー活動での課税削減、売れ残り処理コストの削減等)以外のメリットは
- Basicプラン(無料) :毎日1回売れ残り食べ物の発信、過去7日の売れ残り状況の分析/レポート機能
- +αプラン($30/月) :毎日無限回の発信と導入以来の売れ残り状況の分析/レポート機能
- Zero Percent:上記の両方からの収入で、好循環を維持
分かりやすいソーシャルビジネスで、分かりやすいメリットをもたらす、素晴らしいビジネスアイデアだと思います。
しかし、よく考えてみると、まだまだ懸念点があり、ビジネスモデルを磨き上げるスペースはまだまだあります。例えば以下のようなことが挙げられます。
- ただの食べ物を得るため買うのをやめる「Free rider(ただ乗り)」が増えるでは?
- 売れ残り分析の精度がデータの量と共に上がると、結局的に売れ残りの食べ物全体の量が少なくなれば、モデルはどう続くか?
- 売れ残りの食べ物の量には変動が激しい。Zero Percent社自社が配送するキャパシティー(車・運転手)を保有すれば、最適な規模(ニーズを満たしながら、メンテコストを最小限に)はどう決めるか?
上記に対して、明確な答えはまだ分かりませんが、下記のポイントは模索する価値があると思います。
- 「Free rider」問題:「チャリティー団体」の定義を標準化し、必要な場合書類の提出や視察も行い、悪意の目的で無料の食料品を獲得する可能性を抑える
- 供給量の減少問題:各レストラン/ケータリングの生産ロットの把握、契約の長期化(月間⇒年間)、無料提供⇒低価格提供
- コスト問題:配送関連の資産を持たず、レンタカー・カーシェアリング等のサービスで配送を実現
どんな国でも、収入格差が存在すれば、過剰生産の食料品をシェアする問題は必ず存在します。
Zero Percentのさらなる成功が、全世界の格差社会にとっていい事例になっていくことでしょう。
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