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こんにちは!e-Education Projectインドネシア担当の尾崎綜志です。
教育機会の恵まれないインドネシアの子供たちに最高の教育を届けるため、現在活動しています。

少し間があいての記事となりました。前回までの記事では進まないプロジェクトの様子その合間に見たインドネシアの文化についてご紹介してきました。

今回は、授業撮影の開始、そして形となって立ちはだかってくる壁の連続についてお話ししたいと思います。

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塾BTAとの交渉

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左からマイケルさん、アイさん

何度も延期されていた地元の塾BTAとの交渉がついに始まりました。パートナーのアイさんに仲介してもらいながらBTAのトゥーチルさんやマイケルさんとお話をします。議題は撮影内容や支払う金額、そして今後の予定についてでした。

事前に内容を伝えていたこともあり概ねスムーズに議論は進みましたが、一つ問題になったのは英語でした。BTAは英語の先生から協力的な返事をもらえていないとのことなのです。原因はお金でした。我々もボランティア事業であり、決して高い金額を先生に支払うことが出来るわけではないからです。

その日は一日中塾に居座り、空いた時間を狙って先生と直接お話をさせてもらう機会を作りました。数学、経済の先生とはお話をしてプロジェクトの趣旨を理解してもらい、より具体的な話をすることが出来ました。

英語の先生とも直接お話をして、プロジェクトの可能性や先生にとってのメリットを必死で説明したところ、「協力しよう」と言って頂きました。
最後に今後のスケジュールを確認して最初の撮影日を決め、長い一日が終わりました。

ついに撮影開始

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経済のウィム先生

次の週の月曜日、ついに撮影初日です。場所は相変わらずBTA校舎。当日はあいにくの大雨でしたが、そんなことも気にならないくらい楽しみにしていました。塾に着いて先生を待ちます。しかしなかなか先生が現れません。1時間遅れで経済の先生が到着しました。

「ごめんね、雨が強くて遅れてしまった」

日本だったら通用しない遅刻の理由ですが、インドネシアではれっきとした理由です。というのは、降る雨が非常に強く下水も完備されていない為にすぐに浸水被害が出てしまうからです。案の定、他の先生は浸水のため家から出られずその日は経済の撮影のみにとどまりました。その後も浸水被害は続き、ついにその週は経済と数学のみに終わりました。

第2の英語の先生探し

BTAの授業の撮影が開始したとはいえ決して順調ではなく、またどんなアクシデントが起こるかもわかりません。リスクを回避する目的もあり、英語と数学についてはもう1人の先生、すなわち第2の先生の授業を撮影しようと動き始めました。

数学については以前第77高校の先生に協力して頂く約束をしていたので、問題は英語です。候補に上がったのは第8国立高校でした。

第8国立高校へ

第8国立高校はインドネシアで最も難関かつ有名な高校。そこの先生ならば良い授業を行なう先生が絶対にいるはずです。

第77高校に数学の先生を探しに行った時と同様、直接高校に乗り込もうと考えていましたが、名門の第8高校はそうは行かない様子でした。あらかじめ必要な書類を提出していないと入る事すらできなかったのです。そこで僕らは第8高校出身のインドネシア大学生を探してプロジェクトを説明し、アポイントメントをとってもらうようお願いしました。

協力してくれた大学生の名前はアリファ。アリファは僕の作った英語の書類をわざわざインドネシア語に訳してくれました。彼女のつてを使ってアポイントの約束もお願いし、連れて行ってもらってようやく第8国立高校にたどり着きました。

感じるもどかしさ

受付で来校の理由を伝えると応接間のような所に通され、英語の先生にお会いすることができました。早速先生にプロジェクトの説明をします。しかし返事はあまり良いものではありませんでした。

先生: 「良いプロジェクトね。ただ、学校の許可がおりないと協力することが出来ないのよ」
僕: 「そんな…先生が個人的に協力して頂くことは出来ないのですか?」
先生: 「私にはあまりフリーの時間がないわ。でも私の仲間を集めて1人1レッスンずつくらいの授業なら出来るかもしれない」
僕: 「わかりました。ありがとうございます。もし学校の許可が出るとしたらいつ頃になるのでしょうか?」
先生:「学長次第だからわからないわ」

複数人の先生に1レッスンずつお願いするのも1つの方法ですが、教え方の違いで生徒が混乱するのではという懸念がありました。一番良いのは1人の先生に全面協力してもらうこと。それが学長次第ならば学長に直接会うのが一番です。そのまま学長に会えないか聞こうとするとアリファに止められました。

アリファ: 「力になれなくてごめんね。でもいきなり学長に会いにいくのはいくらなんでも失礼だと思う」

インドネシアは先生など目上の人に対する礼儀を非常に重んじる文化があります。ここまで協力して時間を割いてくれたアリファにこれ以上迷惑をかける訳にもいかず、泣く泣くこの日は帰ることにしました。

数学の先生がまさかの…

英語はうまく行きませんでしたが、落ちこんでいる暇はありません。数学の第2の先生の撮影があります。数学は既に77高校の先生と撮影開始の約束を取り付けていました。

撮影開始は朝7時。77高校は住んでいるところから2時間以上かかってしまうため、高校の近くにあるティヨの実家にお邪魔することにしました。パートナーのリアン、ティヨと共に撮影に向かいます。

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夜には大学の経済学部に通うティヨのお兄さんとティヨで経済の問題を作ってもらいました。

朝はティヨのご両親に車で高校まで送って頂きました。

「頑張れよ!」

お父さんに見送られ、77高校の先生と約束した教室へ向かいます。しかし時間になっても先生が現れません。

「また浸水かな…」

半分諦めかけていた頃、慌てた様子で先生が現れました。良かった、撮影できる、と思ったのも束の間、先生が発した一言は衝撃的なものでした。

「ごめんね、もうこれから撮影協力できなくなってしまった。」

僕ら3人の期待は見事に絶望へと変わりました。


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