みなさん、英語は得意でしょうか?
私は苦手です。今も苦手です。
社会人一年目の頃、外国の方約100人(日本人は私だけ)の前でプレゼンする機会があったのですが、壇上に立つだけで足が震え、声が裏返り、途中で頭が真っ白になりました。
悪夢だったらまだいいです。覚めればそれで終わります。けど現実は何も変わらず、私を見つめる異国の人たちの顔がどんどん不安げになり、プレゼンが終わると不思議な拍手が起こりました。
「彼は日本人なのに全部英語でプレゼンしてくれた。素晴らしい!」
司会の方としては好評のつもりだったと思いますが、私にっては屈辱でした。
「ちくしょう、絶対見返してやる!」
と気合いを入れたものの、苦手意識が簡単に消えるわけはありません。今も英語は苦手なままです。
ただ英語でプレゼンするのが苦手かというと、最近はそうでもありません。むしろ楽しんでいます。
今回は、英語が苦手なままで、それでも楽しくプレゼンするために編み出した、ちょっとしたコツを7つご紹介します。
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苦手なことを、あえて楽しむ
そもそも、どうしてこんな記事を書こうと思ったかというと、nanapiの創業者であるけんすうさん(@kensuu)のブログ記事を読んだからです。
話すのが苦手な人のためのプレゼンの裏技テクニック|けんすう|note
まだ読んでない、という方はぜひ先に上の記事を読んでください。ハウツー記事のはずなのになぜか面白く、途中でついつい笑ってしまいました。記事で笑わせられるなんてズルいです。
で、笑いながら気がつきました。「あー、けんすうさんは苦手なことを楽しむ人なんだな」と。苦手を無理やり克服するのではなく、苦手なままで楽しむ方法を考える。これですよ、これ。
中には苦手なものを克服することが楽しいという人もいるようですが、私はそんな人ではありません。きっとこれからもなれません。
なので諦めました。苦手は、苦手のままでいい。英語が苦手なら、苦手のまま楽しむ方法を考えよう。
こう考え方を変えると、意外とアイデアが出て来るもので、「次はあれをやってみよう」と少しだけワクワクしてきました。イタズラを思いつき、試してみようとするあの頃のあの感覚です。
そんな悪ガキのような発想から生まれたテクニックなので、きっとみんなの参考になるわけではありません。
でもいいんです。私のように英語が苦手な人が、少しでも英語のプレゼンを楽しめるようになったら、それで十分です。
では、英語プレゼンの裏技をご紹介します!
その前に、自己紹介を
忘れていました。まだ自己紹介していませんでした。
改めまして、こんにちは。三輪開人と申します。NPO法人e-Educationの代表として、途上国で教育支援をしてます。
e-Educationは「最高の授業を世界の果てまで届ける」というミッションを掲げ、バングラデシュをはじめとした途上国の貧しい高校生に映像授業を届け、彼らの大学受験を応援しています。東進ハイスクールの途上国版、といえばイメージが湧きますでしょうか?
最近は高校生だけでなく、彼らを教える先生のトレーニングプログラムも始めました。一人の先生の教え方が変われば、100人、1000人という生徒の教育が変わります。当たり前の話ですね。
ただ、これがかなり難しいんです。教え方を変えるのは、今までのやり方を否定することにもなります。これまでの人生を否定されたら、誰だって嫌ですよね。私も嫌です。
なので私たちはアプローチを変えました。まずは、先生の心に火をつけることから始めること。先生がやる気になれば、きっと新しい指導法も楽しく吸収してくれるはず。
そう信じて、先生のやる気をあげるために英語でプレゼンした様子を撮影した動画がこちらになります。
The Power of Teacher The Power of Technology – YouTube
これは先日、バングラデシュの中学校の数学の先生に対しておこなったプレゼンです。対象は約30人。全員数学の先生ですが、英語はみんな理解できます。バングラデシュは貧しいけど凄い国なんです。
そんな先生たちに私が伝えたかったことは「先生には社会を変える力があり、テクノロジー(新しい技術)を使えばもっと凄い教育ができる」ということ。メッセージはこれだけです。
詳しくはぜひ上の動画をご覧ください。英語がわからないという方は、気にしないでください。きっと私の英語が下手なだけです(実際、文法や単語のアクセントなどは本当にヒドイです)。
本当は動画を公開するのも避けたかったのですが、それだと「本当は英語が得意なんじゃないか?」と疑われそうなので、あえて公開しました。英語が得意なみなさん、笑ってくれて構いません!
さて、動画はご覧いただけましたでしょうか?
では、このプレゼンを参考に、今度こそ英語プレゼンの裏技テクニックを7つご紹介します!
【1】英語をあえて使わない
まずはイントロから。英語が苦手な人は、間違いなくイントロでつまづきます。
じゃあ、私はどうしているかというと、とにかく明るく“Hello, Everyone!”と大声で話すことから始めます。明るく、大声で、がポイントです。
メラビアンの法則というものがありまして、人は話を聞くとき、半分(55%)の人は、顔の表情から相手の感情を読みとろうとするそうです。要は見た目が大事ということですね。
なので、最初はオーバーにいきます。バングラデシュの友人によると、私は真顔だと怒っているように見えるらしく(失礼な話です)、口角を上げて元気に第一声を出すよう心がけています。良かったら、鏡を見て練習してみてください。
“Hello, Everyone!”
これができたら第一関門突破です。楽勝ですね。
ちなみに第二関門はもっと楽勝でして、私は英語を使いません。
「アッサラーム・ワライクム!」
「バロ・アチェン?」
「アミ・オ・バロアチ!」
これ、なんて言っているか分かりますか?
全てベンガル語(バングラデシュの公用語)でして、上から「こんにちは!」「お元気ですか?」「私も元気です!」という意味です。はじめて聞いたという方でも、1分あればきっと覚えられます。3回くらい声に出して見てください。
「アッサラーム・ワライクム!」
「バロ・アチェン?」
「アミ・オ・バロアチ!」
覚えられましたか?楽勝でしょう。
たった3つの挨拶言葉ですが、プレゼンの冒頭で使うと、間違いなく笑いを取れます。けんすうさんも「最初の5秒くらいで、笑いがとれるのが理想」と言っていましたが、途上国なら楽勝です。その国の言葉で挨拶するだけです。
たかが挨拶と思うかもしれませんが、挨拶は「聞き手の心を開く」意味でも非常に重要です・・・と書こうとしたところ、けんすうさんが全く同じことをおっしゃっていたので、引用箇所を貼り付けておきますね。
さらにいうと、実は聴いている人も新しい人のプレゼンがはじまると緊張していたりします。どんな話なんだろう?おもしろいのかな?と身体が硬直している状態です。
というわけで、最初に笑いを取ることで、話し手も聞き手も双方がすごく楽になるのです。
プレゼンを組み立てる時、ついつい自分の伝えたいことを意識してしまいがちですが、聞き手の気持ちを考えるのは本当に大事です。
もしあなたが聞き手で、語り手の外国の人がいきなり英語で難しい話を始めたら緊張しませんか?私なら確実に心の壁ができます。
英語が苦手だからこそ、苦手な聞き手の心情も理解できるもの。ということで、挨拶は超簡単に、できれば英語を使わずにいきましょう。
【2】接点をみつける、なかったら作る
「聞き手の心を開く」ことが大事と言いましたが、挨拶が終わったら、ここでもう一つ仕掛けます。
冒頭で使うこのスライドは、昨年私が『Forbes』という有名な経済誌から「アジアで活躍する若手リーダー30人(30 Under 30 Asia)」に選んでもらった時の話なのですが、自分のことを自慢したいわけではなく、隣にいる彼の話をしたいのです。
彼はVirat Kohli(ビラット・コーリー)というインドのクリケット選手で、クリケットが好きな人であれば知らない人はいません。ちなみに、バングラデシュの人たちはみんなクリケットが大好きで、インドはライバル国。数学の先生であっても100%彼のことを知っています。
“Do you know him? I got the same award(彼を知っていますか?私は彼と同じ賞をもらいました)”
これでバングラデシュの先生たちの心を鷲掴みできます。下を向いていた先生も顔を上げ、スマホで写真を撮り始めます。中には握手を求めてくる先生もいます(嬉しいけど、後にしてほしい)
これは特殊な例かもしれませんが、聞き手と自分の接点を作れるのであれば何でもいいです。その国の民族衣装を着て「今日のプレゼンのために買って着ました。似合っていますか?」と聞くのもいいですし、「昨日食べた◯◯◯というバングラデシュの食事が美味しかった」などもありです。
大事なのは「私(聞き手)とあの人(語り手)にはこんな接点があるんだ」と感じてもらうことで、これができたらプレゼンはほぼ成功と言っていいです。
「第一印象が全て」という言葉があるように、はじめの印象が良ければ、その後の話は大体良いように聞こえます。逆に、はじめの印象が悪いと、どんなに良い話をしても、聞き手の心に響いてくれません。
しかし、はじめて会う人たちとの接点を見つけるのは簡単ではないですよね。
そこで私がつかっている裏技があります。それは感謝の気持ちを伝えることです。
「金曜日(バングラデシュの人にとっては日曜日)なのに、セミナーに来てくれてありがとう」
「家族と過ごす時間を削って、生徒のためにセミナーに参加してくれたことが嬉しい」
「そんな先生に会えて幸せです。本当にありがとうございます」
こう言われて、嫌な人はいないでしょう。プレゼンは、そもそも自分の話を聞いてもらうものであって、聞き手は自分のために時間を割いてくれているわけです。これだけで十分感謝の対象になり得ます。接点は作れるんです。
ということで、ここでも練習してみましょう。準備はいいですか?相手の心を開く魔法の言葉です。それではご一緒に。
“Thank you very much! I am so happy to meet you!”
【3】最初にメッセージを全部出し切る
笑いが取れて、聞き手との接点を確認できたら、すぐにプレゼンの一番大事なメッセージを伝えましょう。
ほとんどの人が一度は聞いたことがあると思いますが、日本以外のほとんどの国は「結論を先に」という文化があり、日本人は苦手だったりします。
そんなこと分かっているよ、と感じる方が多いと思います。でも、最初と最後でメッセージが同じか、もっと具体的に言えば、同じスライドを使えるかどうか確認してみてください。意外とズレているかもしれません。
3つメッセージがある(一つ一つ紹介していく)からズレてて当たり前、と思う方。ちょっと待ってください。聞き手は、本当にあなたの狙いを汲み取ってくれますか?仕掛けを理解してくれますか?
これはプレゼンが上手い人でも意外と陥っている罠の一つです。本人は順序立てて、相手を楽しませようとあえて次のメッセージを隠しているつもりかもしれませんが、聞き手としては「全部先に教えてよ」と思っている人も少ならずいます。私もその一人です。
私の場合、メッセージを最初に3つ全部出しくれれば、その3つの言葉がどう繋がるのか、(英語で正確に理解できない分)想像で補うことができます。一方、全体のメッセージが分からないままプレゼンを聞いていても、次にどんな話が来るのか不安は増えていきます。お化け屋敷が嫌いな人をお化け屋敷に連れて行くようなものです(全然違うかもしれませんが、私はそんな気持ちです)。
ちなみに、「3つのメッセージ」を流行らせた仕掛け人はApple創業者のスティーブ・ジョブズだと勝手に思っています。「伝説のプレゼン」と言われたスタンフォード大学卒業式の基調講演で、ジョブズはこんな言葉からプレゼンを始めます。
Today I want to tell you three stories from my life. That’s it. No big deal. Just three stories(本日は自分が生きてきた経験から、3つの話をさせてください。たいしたことではない。たった3つです)
【和訳参照:ジョブズ氏スピーチ全訳:日本経済新聞】
このスピーチを聞いて刺激を受けた人も多いのではないでしょうか?ジョブスのように英語でプレゼンしたいと思って、失敗した人もいるのではないでしょうか?少なくとも、苦い思いをした人を一人知っています。もちろん私です。
話を戻しましょう。
英語が苦手な人は、メッセージを1つに絞ることをお勧めしますし、3つメッセージがあっても、全部最初に出し切ることを強くお勧めします。
ちなみに、私の場合、メッセージは単語だけ切り出すのではなく、文章として全文公開します。
“Teacher will make the big education impact and social movement through using technology(先生が先端技術を使うことによって、大きな教育改革や社会変革が進んでいく)”
メッセージを作る時も2つポイントがあります。
一つ目は誰でも理解できる言葉であること。日本語訳をそのまま英語にしようとすると、「教育改革」「社会変革」が主語になり、「先生」は原因を示す言葉となり、(私のような英語レベルだと)うまく伝わらない危険性があります。
難しすぎる言葉を選ぶのも厳禁です。聞き手の知らない言葉を出したところで、新しい疑問が浮かぶだけです。改革をreorganizationというより、日本人でも馴染みがあるmovementを使った方が語り手としても聞き手としても楽です。シンプルで、力強い言葉を選びましょう。
二つ目は全文をスライドに書くこと。私はあまり文字の多いスライドが好きではないのですが、それでも英語でプレゼンする時は、メッセージを全部書ききるようにします。
理由は単純。緊張してメッセージを忘れそうになっても、見て思い出せるからです。さすがにメッセージをハッキリ言えないと、何のためのプレゼンなのか伝わらないので、変なプライドは捨てて全文書きましょう。
また繰り返しになりますが、これは聞き手にとってありがたいです。英語を聞くのは自身がないけど、文字なら何とか読むことができるという人もいるのではないでしょうか(あ、これも私です)。
自分の発音が悪くても理解してもらえますし、聞き手も安心してメッセージを受け取ってくれます。まさに一石二鳥。ぜひ試してみてください。
もう、いっそのこと自分で話さないという手もあります。聞き手に頑張って読んでもらえたら、それで十分です。あえてスティーブ・ジョブス風に言うなら、こんな風にでしょうか。
“Today I want to tell you one message from my life. This is it. Just one message”(本日は自分が生きてきた経験から、1つお伝えしたいことがあります。(スライドを指差して)これです。メッセージは1つだけです)
【4】知識を語るな、経験を語れ
「書を語るな、体験を語れ」
これは大好きな小飼弾さんのブログ『404 Blog Not Found』の格言の一つなのですが、英語でプレゼンする時にも役立つ心構えです。
メッセージを補完する話は、大きく分けて「知識」と「経験」の2つに分けることができるのですが、英語が苦手な人はできる限り後者を選択することを強くお勧めします。
これが国際学会のように「知識」をシェア・議論する場であれば話は別ですが、そうでない場合、例えば会社説明であったとしても、聞き手の関心は語り手自身であり、自分の「経験」をベースに会社のことを説明した方が、聞き手の心に届きます。
それだけではありません。やっぱり楽なんですよ、経験を英語にする方が。自分のことならいくらでも語れるものですし、無理に難しい英語に変換する必要はありません。
一方、知識を語ることは二重の難しさがあります。一つは引用元へ敬意を払う必要があり、過度な意訳ができないこと。また聞き手の前提知識や語学力が足りなくて話が理解できないこともあり、お互い歩み寄れないという悲しい事件が起こったります。
さて、悲しい思い出が頭をよぎったので、ここで話を切り替えます。どうしたら「経験」をうまく語れるかという質問に答えましょう。
答えはシンプルで、写真や動画を使うことです。英語を使わなくても理解してもらえます。最高です。
今はものすごい便利な時代で、インターネットで「無料 画像」と検索すると超ハイクオリティな写真素材サイトがいくらでもでてきますので、ぜひ素敵な写真を活用しましょう。ここではお気に入りのサイトを少しだけ紹介しますね。
海外でプレゼンするのであれば、最後の3つを使うだけで圧倒的な差別化になりますが、それでも「体験」を語る以上、自分が被写体であるに越したことはなく、普段から自分の写った写真や動画を撮っておきましょう。
そしてここでもう一つスライド作成テクニックを。それは「半透明の黒画像で暗転させ、その上に巨大な文字を入れる」です。言葉だと説明しにくいですね。こちらです。
いかがでしょう。この暗転前後のスライド2セット(4スライド)は、どちらもButやHoweverなど逆説で繋ぐ箇所なのですが、スライドを暗転させることで聞き手もスムーズに理解できます。
この「黒で暗転」にはもう一つマニアックな使い方があります。私はできる限り聞き手の顔を見ながら話すように心がけているのですが、そうすると後ろのスライドが見えず、返しモニターや自分のパソコンが見れない会場の場合、この黒で暗転する光の変化で今のスライドがあっているか確認できます(興味のない方は、気にせずスルーしてください)
脱線ついでにもう一つ。上の暗転スライド例で紹介した写真は「ラオスという国では小学生の多くが算数に苦手意識がある」という説明でいつも使うのですが、(今回は忘れましたが)ここでこんな質問を投げかけたりします。
“By the way, what subject do you feel difficulty?”(ところで、何の教科が苦手ですか?)
すると、十中八九、会場に英語が苦手な人がいるので、笑顔でこう答えてあげましょう。仲良くなれます。
“Me, too! English is very difficult for me!”
【5】いつもより笑う、オーバーに笑う
私は去年50回くらい英語でプレゼンする機会があり、少しずつ肩の力を抜いてプレゼンできるようになって来ましたが、最初はメモをパソコンの横におき、少しずつ見なくてもプレゼンできるようトライしてきました。
ただ、最初はうまくいかず、TED風にステージの中央に立ったはいいものの、何を話すか忘れてしまい、その場で固まってしまったことがあります。想像して見てください。最悪ですね。
ここで紹介したいのは、そんな時に使えるフレーズ。ずばりこれです。
“Sorry, I forgot what i want to say next(すいません、次に何を話したかったのか、忘れてしまいました)”
いかがでしょう?普通でしょう?ポイントは言葉じゃありません。
これを笑って言えるかです。申し訳なさそうに言うか、堂々と笑いながら言うかで聞き手の印象はビックリするほど変わります。
これも考えてみれば当然なのですが、聞き手も人間であり、緊張して何を話そうとしたか忘れることは誰にだってあります。つまり、文章を忘れた時は、聞き手の共感を作る絶好のチャンスであり、活かさない手はありません。
とは言っても、いきなり実戦でやるのは難しく、できれば事前に練習してみましょう。笑顔で、堂々とSorryという練習をしてみましょう。ちなみに、私は直前にこの練習をしている姿をバングラデシュの仲間に見られて「何の練習をしているんだ」と笑われました。良い思い出です。
それから笑顔というか感情の作り方について少し補足を。
英語に苦手意識のある人にほぼ共通する特徴は、プレゼンしている際に笑えないことであり、感情の変化が少ないことです。緊張しているのですから仕方ないようにも思えますが、逆に考えると、感情をうまくコントロールできればプロっぽく見えます。
ここでコントロールという言葉を使いましたが、笑顔は技術であり、練習でうまくなります。まずは騙されたと思って、鏡に向かって笑いかけて見てください。全力で。
最初の笑顔が10だとしたら、次は20の笑顔を。その次は30と徐々にレベル(?)を上げていき、最後100の笑顔になるよう10回連続で笑顔を作って見ましょう。
いつもより笑う、オーバーに笑う
どうですか?気持ち悪くないですか?はい、それでいいんです。
これは私の偏見もかなり入っていると思いますが、外国の人たちと比べると、日本人は笑顔を作るのが下手な印象を受けます。慣れていない、と言う説明が正しいのかもしれませんが、作るのも然ることながら、見るのもそんなに慣れていないのです。
なので、言葉を選ばずにいえば、外国の人たちの笑顔はクシャっとしており、写真でみると凄く変な顔に見えたりしますが、近くで見ていると何だかとても温かい気持ちになります。
「笑顔は綺麗なものではなく、変な顔だけど温かい気持ちになるもの」
こう言い聞かせて、いつもの何倍も明るい笑顔を目指して鏡の前で練習しましょう。ちなみに、プレゼン会場のトイレの鏡を使って練習すると、たまに運営スタッフや仲間に見つかって恥ずかしい思いをするので、その点だけご注意を。
あと笑顔に関連して「間の取り方」についても紹介ます。ここでいう「間」とは「心地よい沈黙」と言い換えることができ、プレゼンが上手いと思う人はほぼ例外なくこれができていると思います。
言葉に緩急をつけたり、声の大小を使い分けたりできるプレゼンターは増えて来た気がしますが、「心地よい沈黙」を狙って作れる人はあまり多くありません(これはチャンスですよ)
というわけで、練習してみましょう。先ほど紹介した相手の心を開く魔法の言葉“Thank you very much! I’m so [ ] happy [ ] to meet you!!”の[ ]にほんの少しだけ間を入れてみてください。そしてsoとhappyの言葉に力を込め、to meet youは最後駆け抜けるように言い切りましょう。もちろん満面の笑顔で。
いかがでしょう?何かそれっぽくなったような気がしませんか?それでいいんです。それだけでいいんです。
英語が苦手な人の場合、どうしても早口になってしまったり、言葉が平坦になって、抑揚をつけることができません。そこで役立つのが「心地よい沈黙」であり、笑顔で黙る瞬間を作れるようになれば緩急はできるし、次の言葉を考える時間もできるし、まさに一石二鳥です。
参考までに、私は上の動画の中で何度か意図的に「心地よい沈黙」を入れていれています。どこかわかりますでしょうか?
笑いながら、次の言葉を出す前に、心の中で「トントン」と2カウントしています。イメージは『硝子の少年』のラストです(わかる人にだけ、わかってほしい)
いつもより笑う。オーバーに笑う。困った時こそ笑う。練習は必要ですが、これができるようになると英語のプレゼンも徐々に楽しくなってきます。
【6】最後にもう一度メッセージを、ただし一手間加えて
プレゼンもあと少し。ここでもう一度、冒頭で紹介したメッセージを伝えましょう。
ここもけんすうさんの記事と同じ意見なので、該当箇所を引用します。
まとめは、最後、一言で話してしまう。
話が下手すぎてマジで何も伝わっていなかったとしても、最後のスライドだけ見れば、何を話したのかわかるようにしておくといいです。
会場ではたぶん真面目に聴いていない人も結構いて、仕事してたり寝てたりします。そういう人も、最後のスライドを見れば、わかった気になります。
伝えたいことが伝わればなんでもいいので、最後にもこういう締めをいれておくとよいと思います。
本当にその通りですね。
ただ、全く同じことを繰り返し言うと、熱心に聞いてくれた人からすると「さっきそれは聞いたよ!」と思われるかもしれないビビリな私は、ここで一手間かけます。
左が冒頭のメッセージ。右が最後のメッセージ。何か少し違いませんか?
そしてこんなスライドが続きます。
簡単なクイズですが、いわゆるひっかけ問題です。
「世界で一番使われている言語は日本語?ベンガル語?」と聞くと、ほとんどの人が「英語!」と回答してくれるので、ここぞとばかりに大声で“No!”と叫びます(メッチャ楽しいです)
そして続けます。
「世界で一番使われている言語は英語なんかじゃない。数学だ!」
「人類の歴史は数学にと一緒に進化して来た。だから数学の先生はただの先生なんかじゃない、人類の歴史を作る人なんだ!」
「だから私はこう言いたい。数学の先生こそが、最新技術を使って、教育を変え、社会を変革していくんだ!」
と、文字起こしすると結構激しいことを言っていますが、ここで恥ずかしがってはいけません。堂々といきます。
イメージはビル・プルマン。映画『インデペンデンス・デイ』の大統領演説のように、目の前の数学の先生たちの心に火を灯せるよう、気持ちを込めて一つ一つ言葉を贈ります。
「ラオスの教育は、これから数学の先生たちによってきっと変わっていくはず」
「さあ、次の国はどこだ?」
会場から「バングラデシュだ!」と言う声が聞こえてくるので、ここで「オボッショイ!(もちろんだ!)」と叫びます(2つ目の仕掛けです、確実に笑いが取れて、超楽しいです)
ここでスライドをまた切り替えます。
「バングラデシュという言葉は、とても広い言葉だから使いたくない」
「だから私は、こんな言葉でプレゼンを締めたい」
「数学教育を変えましょう!ここから、今から、そしてもちろん、あなたたちの力で!」
ここまで全力で言い切ると、会場がワッと湧きます。スタンディングオベーションになることもあります。
「いやいや、日本だとそうはならないよ」と思ったら、その考えこそ捨てなければなりません。聞き手は日本人ではないので。
他の国の人たちに通じるか分かりませんが、バングラデシュでは毎回喜んでもらえますし、私は満面の笑顔を返してくれるバングラデシュの先生たちが大好きです。
【7】締めは、感謝の言葉を2回に分けて
終わり方も重要です。「拍手をここでしてね」というタイミングを、全員がわかるようにします。
具体的には「ご清聴ありがとうございました」スライドとともに、お辞儀をするのが一番ラクです。
できれば、最後はゆっくりというと、拍手の準備ができます。
拍手しやすいと、拍手が大きな音になるんですね。そうすると、成功した感がでるじゃないですか。みんなも「あれ、いいプレゼンだったのかな」って思ってもらいやすいくなります。ずるいテクです。
これもけんすうさんの記事と同じ方法を使っていまして、拍手をもらうために、たっぷりタメを作ってからお辞儀するようにしています。
ただ、最後の疾走感のまま突っ走るとタメができないことも多く(プレゼン動画を確認したら実際できていませんでした)、ここで海外ならではの裏技をもう一つ使います。
それが2ヶ国語で最後の挨拶をすること。冒頭の挨拶と同じですね。
“Thank you very much!”と言うと、プレゼンの締めっぽいことが聞き手に伝わり、今度は現地の言葉で「オネック・ドンノバッド(本当にありがとうございました)」と笑顔で言いながらお辞儀をすると、ここで拍手がもらえます。
お辞儀はゆっくりと、感謝の気持ちを込めて
以上、英語で話すのが苦手な人のためのプレゼン裏技テクニックをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
プレゼンを上達させるには、①良いプレゼンをいっぱい見ること、②実践を重ねること、③質の高いフィードバックをもらうことの3つが重要だと思うのですが、英語が苦手だと①プレゼンを見ても今ひとつ参考にならず、②実践の回数も少なく、③フィードバックをもらう勇気が出ない、と中々苦しい人も多いのではないでしょうか。
③はひとまず諦めるとして(それが最初からできるのなら苦労はしません)、②の予行練習は一人でもできます。鏡の前で笑顔を作り、自分の動画をスマホで撮影してみる。「これは俺じゃない!」と最初は現実から逃げたくなりますが、きちんと受け止めましょう。それは自分です。
でも、繰り返し撮影をしていると少しずつ自分に変化が生まれます。言えなかった単語が言えるようになり、笑顔が豊かになったり。そんな小さな変化を楽しめるようになれば、苦手な英語のプレゼンであってもきっと好きになれます。
最後に①ですが、英語ネイティブな人のプレゼンを見ても正直参考にならないと思っていた(今も思っている)自分ですが、2011年に公開されたこちらの動画を見て、感動しました。
TEDxTokyo -Black – A Yo-Yo Story – [English] – YouTube
スピーカーはヨーヨー世界チャンピオンのBLACKさん。とてもシンプルな英語で、表情豊かで、文字通り全身を使った英語のプレゼンは、私にとっての目標となり、英語でプレゼンする前には必ず見るようにしました。現在再生回数が約8万回ですが、おそらく視聴数1%以上は私だと思います。
2013年にはTEDの本場アメリカのTED Talkに登壇し、日本人として初めて正式にスピーチをされました。こちらの動画の再生回数は現在850万回を超えており、初めて見たときは鳥肌が立ちました。会場のスタンディングオベーションも納得です。
「プレゼンは、英語力なんかじゃ決まらない」
BLACKさんの動画を見ると、いつもそんなメッセージをもらえる気がします。
英語が苦手な方にとって、英語のプレゼンは苦行に近く、それがキッカケでプレゼン自体が嫌いになる人だっているでしょう。
でも、少し考え方を変えるだけで、英語は苦手なままでも楽しくプレゼンできるようになるし、少しずつ英語そのものも楽しめるようになってきます。
私は未だに苦手意識がありますが、そんな今だからこそ、同じような悩みを抱える人に、英語でプレゼンするのを楽しんで欲しくてこの記事を書きました。
少しでも参考になって、英語でプレゼンする苦手意識が少しでも薄れたら、これほど嬉しいことはありません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
【おまけ1】英語プレゼン上達のためのコツ「7つのS」
記事の途中で、昨年50回くらい英語でプレゼンしたと言いましたが、そのうち数回は「英語プレゼン上達のコツ」というテーマでした。講師を間違えています。私が聞きたいくらいです。
ただ、せっかく頼まれた以上は期待に応えたく、私のバイブル『プレゼンテーションZEN』と、著者であるガー・レイノルズ氏のプレゼン動画を見ながら、自分なりに少しだけアレンジを加えて「7つのS」という言葉を作りました。
- Simple(シンプルにいこう)
- Short(短くまとめよう)
- Story(ストーリーを語ろう)
- Smile(笑顔で話そう)
- Slow(ゆっくり伝えよう)
- Surprise(サプライズを作ろう)
- Study(もっと学ぼう)
最後の2つだけ少しだけ補足すると、まずSurpiseですが、良いプレゼンには予想外のプレゼントがあります。情熱的なメッセージ、巧みな比喩。忘れられない驚きの瞬間があります。聞き手の予想や期待を裏切るような仕掛けを楽しみながら作りましょう。
そしてStudyですが、あえて日本語にするなら「努力」です。プレゼンは努力なしには成長しません。良いプレゼンを見て、実践を重ね、改善を繰り返すことで磨かれます。良いプレゼンにゴールはありません。コツコツ勉強を続けていきましょう。
といったことを、英語でプレゼンしています。自分が実践できているかと聞かれると正直不安ですが、Studyあるのみです。良かったらぜひご一緒に。
【おまけ2】日本語プレゼン上達のためのコツ(6万字)
第一回カタパルト・グランプリ(出展:INDUSTRY CO-CREATION)
今からちょうど1年前。ICC(INDUSTRY CO-CREATION)主催の「カタパルト・グランプリ」に登壇しました。
注目のベンチャー企業総勢20社が、1社12分間のプレゼンテーションを行う大会。「プレゼンの達人たちによる天下一武道会」とも呼ばれるこの大きなイベントで、光栄なことに優秀することができました。
バングラデシュに移り住む前の最後のプレゼンであり、いつも以上に気合を入れて挑みましたが、まさか優勝できるとは思ってもいませんでした。
あの時大会に出る上で考えたことや、プレゼンをする上で意識したこと、参考にした動画などは以下2つの記事にまとめています。合計6万字というかなりのボリュームですが、良かったらぜひ合わせて読んでもらえると嬉しいです。
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