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ミャンマーに駐在されていて、かつ軍や体育学校の学生に柔道を指導している戸田祐樹さん。

前編中編では、戸田さん自身のパーソナルストーリーや志について伺いました。インタビューの最後を締めくくる今回の記事では、体育学校における活動について、始まりや、活動の様子、そして将来への想いをご紹介いたします。

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体育学校

体育学校との出会い

体育学校で指導することになったきっかけは、軍の柔道大会で体育学校の先生と知り合ったことだそうです。先生に体育学校での指導をお願いされた戸田さんは、体育学校に足を運びました。

「体育という授業がないこの国に、これだけの広さの敷地があり、これだけの施設があるのは正直驚きました」と戸田さん。

そこはサッカー場が6つ以上もありました。野球場、陸上トラックをはじめ、様々なスポーツ施設が入る、巨大な体育学校だったのです。

ところで、戸田さんはミャンマーに赴任した頃から、「日本人が柔道を出来る場所を探している」という話を複数から聞いていました。

「これは、ミャンマー人にとっても日本人にとっても、良いことではないか」と考えた戸田さんは、体育学校の学生たちに柔道の指導を始めることを決めたのです。

戸田さんは以下のように語ります。

体育学校で指導するにあたり、ここでは双方にメリットが生じているんですよ。日本人にとっては、柔道ができる環境があるということ、現地の人と交流ができるということ。ミャンマー人にとっては「本場の柔道」を学べるということ。逆にデメリットは・・・練習が急に中止になったり、することですかね(笑)

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成長していく生徒たち

生徒たちの様子も伺ってみました。

生徒は日々成長しています。練習を重ねるごとに、次第に簡単に投げられなくなっているんです。逆に本気で投げられそうになることもあります(笑)。集中力がなかったり、何度教えてもできなかったりすることもあるけれど、それは日本人でも同じことです。ミャンマーだから、途上国だから、というわけでもないんですね。

そして、今初心者の生徒も大半は、1年かそこらで黒帯の実力はつくといいます。そもそも生徒たちは日本人の同い年と比べ、明らかに体は引き締まっており、彼らの基礎体力については、ミャンマーにいる日本人の柔道経験者の中でも定評があるのです。

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スポーツ環境の改善を目指して

戸田さんは、ミャンマーでの3年間を通して、生徒たちの上達だけでなく、柔道をとっかかりにスポーツ環境の理解と、その改善に貢献していくことを目標の一つとしています。

まずこの国には体育という授業がほとんどない。体育がないということで人々の運動能力がどう影響するのかわかります。体育といっても、単に指導だけでなく、「保健」の部分も大事になります。僕は最初「サプリメントを導入すればもっと強くなるのでは・・・」と思ったけれども、一部の人を除き、どうやらこの国に、それらはまだまだ先なのかもしれませんね。
まず回転運動ができていないのでそこから教えなくてはいけない。さらに、その前の段階の衛生面に関しても教えなくてはいけない。柔道場のモップなどはとても汚く、掃除しても逆効果になります。ミャンマーは掃除をする文化はあっても、単にごみを「寄せるだけ」ですし、きめ細やかな分別などは行いません。掃除を行うことで衛生面の改善につながり、モラル向上にも役立ちます。

このように、ボトムのスポーツ環境を引き上げることは、ミャンマーにとっては革命的なことなのです。そして、戸田さんは3年という期間にこだわらず、長期的なビジョンを描いています。

1年や2年程度でこういう問題は改善できるものではない。だから、しっかりと僕が彼らに教えてきたことを引き継いでいきたいです。5年、10年たったときに、スポーツ環境が向上していったとき、「そういや、昔 日本人がきていろいろ教えてったな」「仕事そっちのけでミャンマー人に指導していて、アイツ、半端なかったな」そう思ってでもいただけたら、それはそれでいいのかなと思っています。

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元世界チャンピオンも訪問!

なんと元世界チャンピオンの篠巻政利さんも来られました。

日本から旅行などで来緬された柔道経験者が道場を訪れては練習に参加してくださいます。これは嬉しいことです。さらに世界チャンピオンの方まで来て下さりました。これは、子供たちにとって新しい”世界”を知ってもらう良い機会と思っています。これは、僕らが体育学校との交流を始めなかったら、なかったことです。

そして練習後、篠巻さんが学生達の前でお話をしました。

一つの技は1〜2年やっても身につきません。日々練習です。時に、指導者と自分の柔道が違うことがあります。そうした時は、自分の考えを貫いてください。そしてこの中でミャンマー代表選手として活躍する選手がでることを楽しみにしています

柔道を知り、世界を知る人の言葉は、彼らにどう響いたのでしょうか。


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